あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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いつか熟して、あまくなる

知りたい

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 それから数日経ったある夜、いつものようにスタッフたちが帰った後の店の鍵を閉めて、自分も帰ろうとしていたときのこと。

「和山さん」
「……っ、卯月くん?」
 従業員が出入りする裏口の暗いところに、卯月が立っていた。和山は驚いて振り返る。

 声をかけてきたきり、卯月は何も言わなかった。深く俯いたままで顔はよく見えなくて、表情は読み取れない。わざとそうしているようにも見える。

「…………また、帰りたくなくなったか?」
「……っ、」

 和山がそう声をかけたのは、優しさからか、上司としての義務感からか。
 それは和山自身にすらわからなかったけれど、本人も驚くほどにその声はあたたかかった。
 卯月は思わず小さく息を呑んで、ぴくりと反応してしまった。

「……はい」
「うち、来るか?」
「はい」

 そう短いやりとりの後、和山はそっと卯月の髪を撫でようと手を伸ばした。指先がふわりとした髪に少しだけ触れたとき、はっとして手を引っ込める。そのときの和山は、特になんの意識もせず体が動いてしまっていた。

 和山の離れていく手を、卯月は密かに見つめていた。


 二度目の和山の家に来た卯月は、初めて来たときよりもどこか落ち着かない様子だった。そわそわとして、ソファに座ってきゅっと身を縮めていた。

「はい、どうぞ」
「……ありがとうございます」
 和山が淹れてくれたコーヒーをひと口飲んで、その豊かな香りとすっきりとした飲み口で少し落ち着くことができた。

 あたたかな湯気を頬に感じてほっとした卯月は、ぽつぽつと話し始める。
「……ごめんなさい、急に」
「いいよ。いつでも頼っていいって言った」
「……そうですね。言ってくれてました。だから、僕それを利用しちゃいました」
 利用した、なんて悪い言い方をしているけれど、卯月の目はまっすぐに和山を見つめてきている。その目を見て和山は「あ、もう覚悟してきてるんだ」と思った。何の覚悟かはわからない。それでも、そう感じた。

「今日は帰りたくなかったんじゃなくて、和山さんと話がしたかったんです」
「……うん」
 そうしなくちゃならないということは、和山もわかっている。このままほとぼりが冷めるのを待つことは、とてもできない。

「僕、和山さんのことが好きです。だから、和山さんも僕のことを好きになってくれたらいいのになって、どうしてもそう思ってしまいます。そう思ってるから、和山さんの「人を好きになれない」って言葉がどうしてなのか、聞いちゃいけないことなのかもしれないって思うけど、気になってしまうんです」
 正直でまっすぐな、それでいて真面目な卯月らしい言葉だった。和山を気遣いながらも少し我儘な気持ち。好きだからこそ、お行儀のいい自分のままではいられなかったのだろう。

 そこまで自分のために一生懸命になってくれる子が目の前にいると、さすがに適当にいなして躱して、時間に解決させる……なんて不誠実なことはできないと、和山は思った。
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