BL小説集

えんがわ

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1度堕ちた天使は、もう天使には戻れない

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昔、俺はずっと家族から

「可愛いね♡」


「まるで、天使みたいだわ!」


「きゃー!ほっぺマシュマロ可愛い!」


なんて言われてたのも、声変わりが始まる前。


声変わりが始まると、夜な夜なミシミシと体がなり背は伸びていくばかりだった。


小さい頃は、可愛いと言っていた家族も


「もう、あのころの天使には会えないのね。」


「体ばかり、大きくなりよって……」などと言われる始末。


大好きな、あなたからも「醜い姿になってしまったね。」と言われる。


俺は、どうしたらよかったのだろうか──────────


──────────────────────────────


「きゃー!!西園寺先輩かっこいい!!」


「朝から、西園寺先輩に会えるなんてラッキー!!」


「西園寺くんが、眠そうにしてるわ!そんな姿も素敵!!」


っち……。どいつもこいつも「かっこいい、かっこいい」って……


こんな、顔どこがいいんだよ。


あの人に認められなきゃ、俺は俺ではないというのに……。


「西園寺、お前モテモテだなぁー。」と


つんつんと俺の腕をつつき、からかう陽介……。


「こんな顔のどこがいいんだよ。」


「お前、世の男全員敵に回したぞ。1発俺に殴られろ」


「やだよ。」





「おーい!颯!こっちだ!こっち、今もっちゃんが屋上で待ってから。俺ジュース買ってくるな。颯何がいい?」


「こうちゃん!。俺、麦茶!」


「おっけー。じゃあ、もっちゃんとお留守番よろしくな。」


1つ上のこうちゃんは、家族ぐるみで仲がいい。


俺のお兄ちゃんみたいな人だ。こうちゃんは、俺の頭をわしゃわしゃしてジュースを買いに行った。


「もっちゃーん!!」


「おう。颯、今日の昼メシなんだ?」


「えっとね。サラダチキンとカットりんご」


「お前は、女子か!いつか体壊れんぞ?」


「いいんだよ。こんぐらいしないと俺──────────」


あの人に認められないから──────────。


もっちゃんは、何かを察したのか


「颯。口開けろ」


ん?口?俺は、あっと口を開ける


「ほれ。俺の卵焼きだ。上手いだろ?」


「ん?ほいひ……」


ガチャ


「お?なにやってんの?餌付け?俺もやる!」


こうちゃんが、買ってきたジュースを地面におき


こうちゃんのお昼ご飯の鮭おにぎりを口に突っ込まれる。


「ムグッ」


うー。炭水化物が……


「今お前、太るとか考えてただろ。お前は、もっと食った方がいいんだよ。わかったか?」


こうちゃんが、俺の顔を覗き込み笑いかける。


「で、でも……。俺、頑張らないと……あの人にみと」


「しっ。それ以上あいつの話するな。わかったか?あいつのために無理して頑張らなくていいんだ。」


「頑張らなくて、いいって?だって、俺……可愛くないと俺じゃない……」


俺は、可愛くならなきゃいけない。


でも、中学校からぐんぐんと身長は伸びるし骨格も筋肉も少しついてきて


その度に、あの人の目に俺は映らない。だから、もっと努力しないといけないんだ。


「お前は、十分可愛いよ。」


こうちゃんは、俺の頭に手を乗っけて言う。


「こうちゃんに、言われても意味ないよ……」


俺は、屋上から飛び出した。


可愛いって言ってくれるのは、嬉しい。


でも、俺が本当に言われたいのは……。


ドン!


「おっと。ごめんね。って、颯?」


「ヒュッ……氷雨にいちゃ……?」


あの人が、学校にいる……
なんで?どうして?僕のかわりが見つかったから?僕は捨てられるの?やだ。やだ。僕頑張ったんだよ?可愛くなる努力だって……


「颯?俺は、弟の方だよ。時雨。神崎 時雨だよ。」


「時雨ちゃ……」


あの人の三つ下の、俺と同い年の弟。


「なんで、時雨ちゃんがこ……こに?」


「あれ?颯の親から聞いてない?俺ら、戻ってきたんだよ。颯の家の隣!これからよろしくな。」


あの人に、似てる時雨。氷雨兄ちゃんと違って、優しくないし少し怖かった?気がする。


俺は、氷雨兄ちゃんしか見てなかったからあまり時雨のことは知らない。


「って、え?隣に引越し……」


あの人が、帰ってくる。努力した姿を見たら、認めてくれるかもしれない!


でも、俺はまた身長が伸びた。また、あの人は僕を見てくれない。


「じゃあ、また後でな。颯」


時雨は、ニカッと笑って教室に戻って行った。


──────────────────────────────


「颯。今日、氷雨くんと時雨くんが引っ越して来たんだって。よかったわね。」


母は、家に帰ってきた俺にそういった。


「よかった」のだろうか?氷雨兄ちゃんが、帰ってきて……本当に……?


ピンポン


「あら。来たわね。颯、玄関に行ってお出迎えしてちょうだい。」


「わ、わかった……。」


俺は、玄関に行って鍵を開けた。


開いた先にいるのは、氷雨兄ちゃんと時雨ちゃん。


「氷雨にぃ」


「颯……。また、醜くなったの。もう、あの頃の颯はどこにもないんだね。」


氷雨兄ちゃんは、にっこりと笑って僕の頬を指でなぞる。


あぁ。ダメだった。俺は、もう……可愛くなれない──────────


ヒュッ


「ご、ごめな、さい。ぼ、僕。が、頑張った。けど、けど、あ、その、ひさm」


「そんな、醜い姿で俺の名前呼ばないでよ。汚らわしい。」


「あ……。ご。ごめんなさっ…………っ…………。」


「泣かないでよ。面倒臭いな。」


「氷雨。お前いい加減にっ……!」


時雨ちゃんが、氷雨兄ちゃんの胸ぐらを掴もうとする。


「時雨ちゃん!神崎さんは、何も悪くないよ……。俺が、こんなだから悪いんだ……。ね?」


俺は、時雨と氷雨兄ちゃんの間に入って喧嘩するのを止める。


「リビングで母さんが待ってるから……。ぼ、僕いない方がいいよね。外でて……」


「なにそれ……。俺達が、何かしたみたいじゃん。やめてよ。俺の勝ちが下がる。颯ならわかるでしょ?」


氷雨兄ちゃんが、俺の頬をまたなぞる。


「わ、わかった。」


──────────────────────────────


「あら、氷雨ちゃんと時雨ちゃん久しぶりね。菓子折りはクッキーでいいかしら?」


「はい。それでいいですよ。」


氷雨兄ちゃんは、母さんににっこりと笑う。


もう、僕には見せてくれない……


「氷雨兄ちゃん。昔の颯のアルバム見る?」


「ぜひ」


氷雨兄ちゃんは、紅茶を持ってニコッと笑う。


アルバム……。僕が1番見たくないものだ。だって──────────


「やっぱり、あの頃の颯は可愛いわね。」


「ええ。そうですね、ほんと天使のように可愛い」


「でも、今は本当に……」


「そうですね、あの頃の面影もすっかり無くなって」


「ほんと、体も声も全部男の子になっちゃって……あの頃の女の子みたいな颯が懐かしいわ。」


ほらね。家族も、氷雨兄ちゃんも、昔の僕しか好きじゃないの……。


アルバムを見れば、可愛い颯が恋しい。今の颯は醜い。天使はもうどこにもいない。


「可愛い」僕はどこにもいない。そして必ず言うんだ。


「ほんと、可愛い努力をしないからこんなになるのよ。」


ってさ。僕は、頑張ったんだ。余計なものがつかないようにダイエットだってした。


顔だって、絶対に傷をつけないようにして。高い声も頑張って出せるように頑張ってるし


それでも、低い声も、高い身長はどうにもならないんだ。


「颯も、もっと努力しなさいよ。」


僕だって、努力してるんだよ……。母さん……。


「そ、そうだね。母さん。」


僕は、笑えてるかな?可愛いって……言ってくれないかな……


「ほんっと、可愛くない。」


僕の中で、何かが割れたきがした。


「あ、えっと、きょ、今日こうちゃんと遊ぶ……約束してたんだった……。ちょっと行ってくる。」


「あら。こうちゃんによろしく言っておいてね。」


俺は、最低限の荷物をつかんで外に出た。


──────────────────────────────


「う''っ…………。っ…………。ぁっ…………」


家族も、氷雨兄ちゃんも、俺を見てくれない。


もう、何を頑張ってもダメかな……


可愛いって言われたくて、頑張ってきたんだよ。


その努力だって、母さんには何も伝わらないし


氷雨兄ちゃんには、名前で呼ぶなって言われちゃった。


もう何を努力しても、「可愛い」はもうない。


「くっそ……。なんで、頑張った、のに……。」


「おーい。颯?俺ら、遊ぶ約束なんかしてねぇーだろ。ほら、俺ん家行くぞ。」


こうちゃんが、俺の肩をぽんと叩き腕を引っ張る。


「こ、うちゃん」


「おーうおーう。そんなに泣くと目が腫れるぞ?」


俺は、こうちゃんに抱きついた。


「こ、うちゃん。お、れもう、ダメだったよ。氷雨兄ちゃんに嫌われちゃった。」


「氷雨さん来てたのか?だから、時雨が……。」


「時雨……ちゃ?」


「はぁー。氷雨は、見る目ねぇな。こんなに颯は可愛いのにな。」


こうちゃんは、俺にハグしながら、なでなでしてくれる。


「こうちゃん。母さんにね。もっと可愛くなる努力しなさいだって」


「あぁー。氷雨が来たから、アルバム見たのか……」


「もう、俺疲れちゃったよ……」


俺はこうちゃんの腕の中で寝てしまった。


もう、俺は「天使」には戻れない。


1度堕ちてしまった天使は、再び天使には戻れないんだ。


──────────────────────────────


西園寺 颯

小さい頃は、それはそれは可愛かった。
小学校の高学年になると、声変わりが始まり身長も伸びていく。
現在178cmだがミリ単位で少しづつ伸びてる。179cmも超えそう
小さい頃、氷雨に可愛がられて「可愛い」=「好き」だと思ってる。
「可愛いくない」=「死」。


こうちゃん

1つ上の頼れる兄ちゃん。颯は可愛い弟。
「可愛い」は、颯にとって生きる糧なのは理解してるから、「可愛い」は口癖並に言う。
でも俺じゃダメみたいだ(´・ω・`)

もっちゃん

こうちゃんと同学年。
颯が、少食過ぎて心配。実は、颯のために、おかずを少し多めに持ってきてる
もっちゃんがあだ名だけどクラスでは「クマ」である。

神崎時雨

神崎氷雨の弟。めっちゃ、そっくり
颯と小さい頃遊んでたけどなんでも氷雨が1番だったから悔しい。
くそゲス兄貴が、颯泣かして結構怒(#・∀・)おこだよ!
実は、1番颯に「可愛い」って言ってたりする。
今の颯も、滅茶苦茶可愛いだろ。兄貴の目は節穴か?!

神崎氷雨

こうちゃんとは、古い仲。
実は、変態ロリコン野郎だったから、颯に「可愛い」と言って
颯の頭に「可愛い」=「好き」を植え付けたやつ
弟趣味悪い。あれのどこが可愛いの?は?
あの、堕天使のどこが可愛いんだよ?てめぇの目は節穴か?

西園寺家

以外とお金持ち。
可愛い可愛い自分の息子が、身長高くなって声も低くなり可愛いの欠片もなくなった。
あれだよ。ポケモ〇の進化前は、可愛いやつが進化後、可愛くなくなる的なやつだよ。


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