9 / 12
9覚者Ganzi
しおりを挟む
9覚者Ganzi
彼の名はGanzi。 東京生れの東京育ち三十七歳で死を遂げた不世出の天才Ganziの物語。
彼を知る人の中には彼を「石と戯れる覚者」と呼ぶものもあった。
彼は幼少の頃より瞑想が好きで玩具で遊ぶより瞑想が好きという実にユニークで変わった子供だった。
母が「Ganziひとりで何をやってるの? また座禅組んでるのかい気持ち悪い子ね。
お兄ちゃん達と外で遊びなさい」
「はーい」と言いつつ違う部屋でひとりまた座禅を組んでいた。 それは五歳の頃の話であった。
小学六年生、宿題の詩を作っていて急に「死」という言葉が頭を過ぎった。
「人間死んだらどうなるんだろう? お父さんやお母さんが死んだら? 僕が死んだら?」
そう考え始めるといたたまれなくなってしまった。
Ganziは死んだら解決出来ると思い自殺を考える事も少なくなかった。
中学に入ったが同級生や取り巻く環境が自分と大きく違う事への疎外感。
どうしようもなく重圧に感じリストカットをした事もあった。
しかしいつもこの世に引き戻された。
そんなGanziも地元の高校に進学、同級生と交わったかのように見えたが、
根本は解決されていなかった。
一時は忘れていたあの感情がことあるごとに蘇ってくる。
その回数が増え始め、ついにそれは起きてしまった。
学校帰りにふらっとビルの屋上へ向かってしまったのだった。
「嗚呼!
神よ教えて下さい。
何故僕は存在するのかよく解らないのです。
お聞かせくださいお願いします。
僕は生きていていいのでしょうか?」
神は答えてくれなかった。 ついにGanziは意を決した。
「ここから飛び降りて死のう」意識したのは死だった。
「これで終われる。 楽になれる……」
屋上に立ち飛び降りようと
足を
踏ん張った
瞬間
それは起きた。
一瞬、頭の中の何かが弾けた。
その経験は初めて。
目にする全てが輝いてついさっきまでと変わって視えた。
というより見ている自分の中で完璧に何かが弾け飛んでいた。
それまでの価値観や総ての総てが変わった。
涙が溢れ大泣きしてしまった。
そう、Ganziは悟りを開いたのだった。
全てのからくりが解った。
というよりからくりが無いのが解ったのだった。
はじめから存在しないからくりを自らでっち上げていたんだ。
「宇宙と一体」それが答えだった。
それから部屋に籠もったまま三十日間が過ぎた。
腹は減らない疲れもしない。
悟りの境地を思う存分味わっていたのだった。
部屋から出て来たGanziは新しく生まれ変わっていた。
あの過敏なまるでガラス細工のような心の青年Ganziとは大きく変わっていた。
彼には学校という存在自体もう用を足さなかった。
先生の意識や同級生の意識が手に取るように把握できた。
教科書に書かれている内容の間違いや、起源など全てが手に取るように把握できた。
Ganziは退学する事にした。
通学する意味がなくなった。
今の彼には人間的な葛藤は存在しない。
人間的意味合いのなにかを頑張ろうとかなにかを学ぼうとか、そのような次元にもういなかった。
障害が無いのでいつも自由な存在だった。
当然、死さえも超越していた。
絶対自由これがGanziの境地であった。
まだ十八歳のGanziは沖縄県の宮古島で琉球そば屋のアルバイトをしていた。
なぜ沖縄かというとGanziのガイドが沖縄行きを促した為である。
そこで二年間働いた。
人間的にはもう大人としての扱いをされる年齢である。
沖縄の琉球でひとりの覚者と出会いより深い悟りを得た。
もう 沖縄に居る理由が無くなった。
そして東京に帰郷したGanziは気ままに生活をしていた。
立ち食いそば屋でアルバイトをしていたGanziにある客が「店員さん何かやってるの?」
「いや、なにもやってないですよ」
「そうかい? 店員さんがやたら光って見えるんだけど」
「そうですか、お客さんも光ってますよ」
その後その客はGanziのもとで勉強することになった。
Ganziが世に出たのはそれから間もなくだった。
世に名前が出ることは当の本人は全く気にしていなかった。
本を出版したのは世の中が変わる前にはクンダリーニの目覚める人間が多く出るからとされていたため。
クンダリーニは日本では馴染みが薄く、古くはヨガ修行の一部に類していた。
日本ではヨガというと美容に関連づける人が多かった。
そしてなによりもクンダリンーニヨガは危険を伴う為、グルと呼ばれる指導者の下で行うことが
望ましいとされていたからであった。
Ganziのその本を読んだ者がなにかに導かれるように全国から集ってきた。
あえて本は理解しがたく制作されていた。
それは意図的に理解しがたく書いていたからで、インドでも古くからクンダリーニヨガは
グル(指導者)が必要不可欠とされていた。
それほどクンダリーニヨガとは難解で危険な行のひとつなのだった。
間違うと発狂の恐れや廃人や自殺に陥る可能性がある。
原因はクンダリーニが尾てい骨で刺激を受け背骨から、はい上がり頭頂から突き抜けるまでの
過程で各チャクラが刺激を受ける。
すると下級の幻影に惑わされる危険があるというものだった。
天国と地獄が自分の中で起こると言われている。
その過程でそれに気を取られる恐れがあるからだった。
自分の状態が把握出来ないで終わってしまうケースも少なくない。
それを見極め修正してくれるのが師の存在。
簡単にいうとGanziが本で究極に触れず、あえて少し難解に書いたのは危険防止の為もあり、
真剣に修行したい人間はGanziのところに来るだろうというひとつの試しが含まれていた。
「悟りが先かクンダリーニが先か」晩年、クンダリーニの指導者になったが経緯は本を出版した数年前に遡る。
Ganziの頭の中に「インドへ行け」と指示がありインドへ渡った。
インドの街を散歩していると、向こうにGanziと同じ風体の人間が歩いていた。
声をかけたが男は無視して歩き出した。
小走りで追いかけると男はヨガ道場に入っていったのでGanziも入った。
そこにひとりのヨギが座っているのを確認した。
Ganziがそのヨギの上に目をやると、額にあった絵の伝説の聖者と同じ人物だった。
名前は伝説の聖者大聖ババジだった。
Ganziはそのババジから直系のクンダリーニヨガを学び、生身の人間としては
最後の人間として究極の悟りを果たし日本に帰郷した。
Ganziは短い生涯であったが組織を作ったり自分の教えを残そうとは生涯しなかった。
覚者Ganziの生涯がここに終わる。
「スズメが鳴いてスズメを生き、
石ころが唄って石ころを生きる」
彼の名はGanzi。 東京生れの東京育ち三十七歳で死を遂げた不世出の天才Ganziの物語。
彼を知る人の中には彼を「石と戯れる覚者」と呼ぶものもあった。
彼は幼少の頃より瞑想が好きで玩具で遊ぶより瞑想が好きという実にユニークで変わった子供だった。
母が「Ganziひとりで何をやってるの? また座禅組んでるのかい気持ち悪い子ね。
お兄ちゃん達と外で遊びなさい」
「はーい」と言いつつ違う部屋でひとりまた座禅を組んでいた。 それは五歳の頃の話であった。
小学六年生、宿題の詩を作っていて急に「死」という言葉が頭を過ぎった。
「人間死んだらどうなるんだろう? お父さんやお母さんが死んだら? 僕が死んだら?」
そう考え始めるといたたまれなくなってしまった。
Ganziは死んだら解決出来ると思い自殺を考える事も少なくなかった。
中学に入ったが同級生や取り巻く環境が自分と大きく違う事への疎外感。
どうしようもなく重圧に感じリストカットをした事もあった。
しかしいつもこの世に引き戻された。
そんなGanziも地元の高校に進学、同級生と交わったかのように見えたが、
根本は解決されていなかった。
一時は忘れていたあの感情がことあるごとに蘇ってくる。
その回数が増え始め、ついにそれは起きてしまった。
学校帰りにふらっとビルの屋上へ向かってしまったのだった。
「嗚呼!
神よ教えて下さい。
何故僕は存在するのかよく解らないのです。
お聞かせくださいお願いします。
僕は生きていていいのでしょうか?」
神は答えてくれなかった。 ついにGanziは意を決した。
「ここから飛び降りて死のう」意識したのは死だった。
「これで終われる。 楽になれる……」
屋上に立ち飛び降りようと
足を
踏ん張った
瞬間
それは起きた。
一瞬、頭の中の何かが弾けた。
その経験は初めて。
目にする全てが輝いてついさっきまでと変わって視えた。
というより見ている自分の中で完璧に何かが弾け飛んでいた。
それまでの価値観や総ての総てが変わった。
涙が溢れ大泣きしてしまった。
そう、Ganziは悟りを開いたのだった。
全てのからくりが解った。
というよりからくりが無いのが解ったのだった。
はじめから存在しないからくりを自らでっち上げていたんだ。
「宇宙と一体」それが答えだった。
それから部屋に籠もったまま三十日間が過ぎた。
腹は減らない疲れもしない。
悟りの境地を思う存分味わっていたのだった。
部屋から出て来たGanziは新しく生まれ変わっていた。
あの過敏なまるでガラス細工のような心の青年Ganziとは大きく変わっていた。
彼には学校という存在自体もう用を足さなかった。
先生の意識や同級生の意識が手に取るように把握できた。
教科書に書かれている内容の間違いや、起源など全てが手に取るように把握できた。
Ganziは退学する事にした。
通学する意味がなくなった。
今の彼には人間的な葛藤は存在しない。
人間的意味合いのなにかを頑張ろうとかなにかを学ぼうとか、そのような次元にもういなかった。
障害が無いのでいつも自由な存在だった。
当然、死さえも超越していた。
絶対自由これがGanziの境地であった。
まだ十八歳のGanziは沖縄県の宮古島で琉球そば屋のアルバイトをしていた。
なぜ沖縄かというとGanziのガイドが沖縄行きを促した為である。
そこで二年間働いた。
人間的にはもう大人としての扱いをされる年齢である。
沖縄の琉球でひとりの覚者と出会いより深い悟りを得た。
もう 沖縄に居る理由が無くなった。
そして東京に帰郷したGanziは気ままに生活をしていた。
立ち食いそば屋でアルバイトをしていたGanziにある客が「店員さん何かやってるの?」
「いや、なにもやってないですよ」
「そうかい? 店員さんがやたら光って見えるんだけど」
「そうですか、お客さんも光ってますよ」
その後その客はGanziのもとで勉強することになった。
Ganziが世に出たのはそれから間もなくだった。
世に名前が出ることは当の本人は全く気にしていなかった。
本を出版したのは世の中が変わる前にはクンダリーニの目覚める人間が多く出るからとされていたため。
クンダリーニは日本では馴染みが薄く、古くはヨガ修行の一部に類していた。
日本ではヨガというと美容に関連づける人が多かった。
そしてなによりもクンダリンーニヨガは危険を伴う為、グルと呼ばれる指導者の下で行うことが
望ましいとされていたからであった。
Ganziのその本を読んだ者がなにかに導かれるように全国から集ってきた。
あえて本は理解しがたく制作されていた。
それは意図的に理解しがたく書いていたからで、インドでも古くからクンダリーニヨガは
グル(指導者)が必要不可欠とされていた。
それほどクンダリーニヨガとは難解で危険な行のひとつなのだった。
間違うと発狂の恐れや廃人や自殺に陥る可能性がある。
原因はクンダリーニが尾てい骨で刺激を受け背骨から、はい上がり頭頂から突き抜けるまでの
過程で各チャクラが刺激を受ける。
すると下級の幻影に惑わされる危険があるというものだった。
天国と地獄が自分の中で起こると言われている。
その過程でそれに気を取られる恐れがあるからだった。
自分の状態が把握出来ないで終わってしまうケースも少なくない。
それを見極め修正してくれるのが師の存在。
簡単にいうとGanziが本で究極に触れず、あえて少し難解に書いたのは危険防止の為もあり、
真剣に修行したい人間はGanziのところに来るだろうというひとつの試しが含まれていた。
「悟りが先かクンダリーニが先か」晩年、クンダリーニの指導者になったが経緯は本を出版した数年前に遡る。
Ganziの頭の中に「インドへ行け」と指示がありインドへ渡った。
インドの街を散歩していると、向こうにGanziと同じ風体の人間が歩いていた。
声をかけたが男は無視して歩き出した。
小走りで追いかけると男はヨガ道場に入っていったのでGanziも入った。
そこにひとりのヨギが座っているのを確認した。
Ganziがそのヨギの上に目をやると、額にあった絵の伝説の聖者と同じ人物だった。
名前は伝説の聖者大聖ババジだった。
Ganziはそのババジから直系のクンダリーニヨガを学び、生身の人間としては
最後の人間として究極の悟りを果たし日本に帰郷した。
Ganziは短い生涯であったが組織を作ったり自分の教えを残そうとは生涯しなかった。
覚者Ganziの生涯がここに終わる。
「スズメが鳴いてスズメを生き、
石ころが唄って石ころを生きる」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる