不思議な黒石(ケンタ編・京子編)

當宮秀樹

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9原始人蛯子&晃平

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9原始人蛯子&晃平


 今日は久々に本を読んだ「イリュージョン・退屈した救世主の物語」題名が面白いのでつい買ってみた。 
面白い! 読んでビックリ! ガンジと雰囲気や口調がよく似ていると思った。

「全ての人は救世主だ」いいフレーズだなあ。 

町のパン屋さんだって自動車の整備工だって救世主なんだ。 人の役に立つということはそれだけで救世主。 
リチャードバックって上手いこと言うな。 僕もテーマを決めてタイムスリップしようかな。 
よし、原始地球に決めた。 ケンタは瞑想に入った。


果てしなく広い草原が見える。 人らしき存在が石で作った武器のような物を持って茂みに潜んでいる。 
 10メートルほど離れたところで餌を食べている鹿を狙ってるようだ。

「あっ!」つまずいた。 

気配に気づいた鹿は一気に逃げ去った。 ヘマをした人間は悔しそうに宙を仰いでいた。 

あれ誰かに似てる……? 髭を剃ったら蛯子にソックリだ。 ケンタは腹を抱えて笑った。 
あいつは原始人のまま今も進化してねえのか。 あいつはエビコって名前にしよう……

エビコはまた動物の気配を探ってるようだ。

この時代の人間は半径一キロ先まで動物の気配を読み取ってるのか? 感覚が非常に発達してるのが解る。 
ていうか現代の人間は感覚が退化してると思った。 おまけにそれだけじゃなさそうだ。 
動物のオーラも見えてるようだ。 オーラの違いが動物の違い、この感覚は人間というよりも動物に近いな。  

ケンタはエビコとコンタクトとってみたいと思った。 とりあえず自分の肉体を念じてみよう。

ケンタはエビコの前に出てみた。 エビコは驚いた様子で固まっていた。

なんだ? どうしたんだ? ケンタはとまどった。

「それわね、あなたを神と思ってるのよ」

また、ガイドか?

「こんにちわ。 私アケミ」 

「あっハイ……」

久々のガイドとの対話だった。

「彼らは感覚で生きている。 余計な理屈はない。 だからあなたの何倍も感覚は発達してる。 
でも動物とは違うれっきとした人間。 感情はあるしちゃんと思考する。武器を作るときとかね。 
基本、その日に食す物はその日に捕獲する。

作物を植えるようになるのは、まだずっと先。 水のそばに定住するようになった頃に農耕の始まりがあるの。 定住すると不作の時もあるから食物の保管も考え不作の時に補うの。 文明は生きるため必要に応じて
進化してきた」

ケンタは原始人エビコを見た。 

震えてる。
  
そうか、神が目の前に出たら焦りまくるよな…… そう思いながらケンタに良からぬ考えが浮かんだ。 
ちょっと念を送ってやろう。 

「その者、今日の日没までに鹿を五匹仕留めて我に捧げよ。 さもなくば汝の命をもらう」 

原始人エビコは震えていた。 そこに、ちょうど通りかかったのがやはり晃平ソックリの原始人。 
なにやら会話をしていて二人して震えていた。

「こいつら二人はこの頃からつるんでるのか……」

ガイドのアケミがいさめた。
 
「ケンタくん遊ばないで下さい。 この二人にとっては大問題。 まさにあなたは神的存在!」

「すみません」  

「僕は訂正して一匹でよい! と念を送った」  

二人は必死になって狩りを始めた。 日没間近、何とか仕留めたが鹿でなく猪だった。 
猪と鹿を間違えたのは晃平のせいだと、エビコは責任を晃平になすりつけていた。 
原始人晃平は半ベソをかいてうなだれてしまった。 

「なんとかしなさい」とアケミに言われた。  

ケンタは二人に念を同時に送った。 

「もうよい。 私は二人の真剣さを見たかった。 合格! 二人にはご褒美をあげよう」偉そうに言ってやった。
 
「よけいなことは言わないの」アケミからまた注意を受けた。
                    
この時代の人間的純粋さには頭が下がる。

今の時代の人間は知恵はついたけど肝心なものが忘れさられた。 それはたぶん人間にとって
一番必要なものだろう。 ケンタは改めて勉強になった。

その後この時代に再び立ち寄ると、あの二人は自分達をシャーマンと称し神を語っていた。

もう一度喝を入れてやろうとケンタは思った。
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