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8体外離脱
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8体外離脱
外は一面雪で白く化粧された。 ケンタはガンジから教わった瞑想を実践していた。
もう何時間座っただろうか? 足が痛くなったのでここらで休憩と思った瞬間だった。
座っているケンタの眉間を何者かに両手でこじ開けられる感覚をおぼえた。
次の瞬間その存在が眉間からケンタの中に入ってきた。
「私とあなたは一体です」といわれたた途端意識は身体から飛び出した。
座っているもう一人の自分を眼下にどんどん上昇し、まるで地図を見ているように北海道が下に広がった。
なおも意識は上昇し次の瞬間宇宙に漂っていた。
そして円く青い地球がバスケットボール大の大きさに視え宇宙空間に浮かんでいた。
不思議と座っている自分の意識と宇宙にいる意識の二つが同時に感じられた。
不思議体験は慣れてるが、この体験はまた違った感覚だった。
それ以降のケンタは石がなくても色んな世界を行き来できるようになった。
がそれはひとつの経験でしかないことも今のケンタは理解していた。
ある日、母から一本の電話が入った。
「ケンちゃん久しぶり」
「どうしたの」
「じつは京子ちゃんのお母さんから頼まれたんだけど、実家に全然連絡が無いらしいのよ。
携帯も繋がらないらしいの、それでケンタくんなら何か解るかもって聞いてほしいって頼まれたの。
ケンちゃん心当たりある?」
「最近会ってないよ。 どうしてるのかあって思ってたから連絡取ってみる。
何か解ったら連絡するし、京子ちゃんの家にも連絡するように伝えておくよ」
ケンタは京子に電話をしたが応答がない。 京子と仲良しの理恵ちゃんにも連絡をした。
「あっ理恵ちゃん? 僕ケンタだけど久しぶり。 実は京子ちゃんのことなんだけど~」ひととおり話した。
「私も京ちゃんに用事あって連絡取りたいけど取れてないのよね。 ケンタくんのほうが家近いし
住所教えるから観てこない?」
「……うんいいけど」
ケンタは翌日訪ねた。
ピンポーン ピンポーン
「は~い」ドアの向こうから気だるそうな声がした。
「京子ちゃん。 ケンタだけど」
「な~に?」
「ちょっといい?」
「何か用事」ドアが開いた。
「どう元気?」
「元気ない……」
「余市のおばさんが連絡取れないって心配してたよ。 それと理恵ちゃんも心配していたけど。
どいうわけか僕が代表して見に来た。 京子ちゃんどうかしたの……? 」
「ここで話してもなんだから散らかってるけど部屋に入れば?」
「お邪魔します」ケンタは部屋に入った。
「本当だ、汚れてるね」
「なに……! ケンタ私に殴られたい……」
「あっ、いや…… ごめん」
「じつは金星からもどってからなの、地球と金星との温度差の違いでやる気が出ないのよね」
「どういうこと?」
「出社しても人の心の裏が見え見えだし、どこに行ってもそういうのが鼻につくのよ」
「無視すればいいジャン? 気の合う同僚いないの?」
「居るにはいるけど週刊誌の話題ばっかで…… 私そういうのって興味ないし結局距離が出来ちゃうのね」
「で、ちゃんと会社には行ってるの?」
「行くことは行ってる…… でも辞めるかも」
「そっか、かえって石が災いしたかもね? ごめんね。僕のことで巻き添えにして」
「それはないよ! 経験した事は最高に楽しかった。 又、貸してくれる?」
「いいけど京子ちゃんが生きてる世界は今だからね。 居場所はここだからね。
石を逃避の手段に使うんだったら貸さない。 麻薬依存患者みたいに石依存になって
現実逃避になったら大変だから……!」
京子は泣いていた。
「なんで泣くの?」
「ケンタくんに言われたらなんか腹立つ……」
「……とにかくおばさんと理恵ちゃんに連絡してよ! じゃあ」
数日後ケンタは石を持って京子のアパートに行った。
「石持ってきたけど……」
「ありがとう」
「京子ちゃん会社行った? 」
「行ってるよ。 私そんなにヤワじゃないから大丈夫。 実家に電話も入れといたし」
「安心したよ。 はいこれ」石を渡した。
「ありがとう」京子は不気味な笑みを見せた。
「今度はどこへ行くの?」
「嘘偽りのない世界に行って波動チューニングして意識を高めようと思うの」
「へえ~面白いこと考えたね京子ちゃん。 それは良い考えだと思うよ」
「今の私を変えるにはそれが良いかなと思って。 ついでにミュージシャンやってる私の別世界に行って
音楽を覚えようと思うの」
「面白い! それは可能なことだよ。 発想がすごいね! 京子ちゃん頭いい」
「ケンタくんに誉められると腹立つ……」
「……」ケンタくんはむかついたまま家路についた。
ひと月後、ケンタは京子に電話をした。
「京子ちゃんその後どう?」
「どおって?」
「音楽は?」
「やってるわよ。 今、作曲にはまってしまい、もう十五曲作ったわよ」
「へ~どんな感じの曲?」
「レッドツェッペリンって知ってる?」
「知ってるよ」
「あんな感じ」
「バリバリのロックじゃん」
「私的にハードロックが妙に落ち着くのね」
「なんの楽器使って作ってるの?」
「カスタネット」
「えっ……?」僕は聞き直した。
「カスタネットで? どうやって? ロックを?」
京子は笑いながら「ケンタくん、ばっかじゃないの? そんなんで作曲出来るわけ無いでしょ。
ガハハハ……かついだだけ。 ケンタくんてマジ面白い」
当然のようにむかつくケンタ。
「ヤマパの電子ピアノ。 向こうの私はピアノで音楽やってたのね。 その意識を取り込んだら
一週間でピアノ弾けるようになったの。 そしたら作曲意欲が出てきたの。
天国への階段って知ってる?」
「ああ、あの曲は有名だね」
「それ聞いてからツェッペリンの意識も取り込んだのね。 そしたら曲調がツェッペリン風になったのよ」
「でロックなわけだ。 どんな曲作ったの?」
「『ギロチン』とか『猫丸め』とか、『犬バーガー』とか、『兄の夜はおねえ』とか『豚の鼻』とかだよ。
聞いてみる?」
「いい、今度ゆっくり聞かせてね」
京子は続けた「まずは、インディーズからと思ってるよ。 いきなりメジャーっていう柄じゃねぇし」
ケンタは京子ちゃんには制限が無さ過ぎ! この人には少し制限が必要だと思った。
京子との電話を切った直後また電話が鳴った。 理恵ちゃんだった。
「ケンタくんその後、京子ちゃんと会ってる?」
「うんさっきも電話で話したよ。 バリバリ元気だった。 彼女は全然心配ないよ!」
「それならいいけど会社辞めたって聞いたから心配だったの」
「えっ会社辞めたの? そんなこと言ってなかったけど」
「なんでも彼女、『わたしやりたいことが出来たから』っていってたらしい。 私も電話してみるね」
「あいつ……」
京子のフットワークの良さに脱帽したケンタだった。
外は一面雪で白く化粧された。 ケンタはガンジから教わった瞑想を実践していた。
もう何時間座っただろうか? 足が痛くなったのでここらで休憩と思った瞬間だった。
座っているケンタの眉間を何者かに両手でこじ開けられる感覚をおぼえた。
次の瞬間その存在が眉間からケンタの中に入ってきた。
「私とあなたは一体です」といわれたた途端意識は身体から飛び出した。
座っているもう一人の自分を眼下にどんどん上昇し、まるで地図を見ているように北海道が下に広がった。
なおも意識は上昇し次の瞬間宇宙に漂っていた。
そして円く青い地球がバスケットボール大の大きさに視え宇宙空間に浮かんでいた。
不思議と座っている自分の意識と宇宙にいる意識の二つが同時に感じられた。
不思議体験は慣れてるが、この体験はまた違った感覚だった。
それ以降のケンタは石がなくても色んな世界を行き来できるようになった。
がそれはひとつの経験でしかないことも今のケンタは理解していた。
ある日、母から一本の電話が入った。
「ケンちゃん久しぶり」
「どうしたの」
「じつは京子ちゃんのお母さんから頼まれたんだけど、実家に全然連絡が無いらしいのよ。
携帯も繋がらないらしいの、それでケンタくんなら何か解るかもって聞いてほしいって頼まれたの。
ケンちゃん心当たりある?」
「最近会ってないよ。 どうしてるのかあって思ってたから連絡取ってみる。
何か解ったら連絡するし、京子ちゃんの家にも連絡するように伝えておくよ」
ケンタは京子に電話をしたが応答がない。 京子と仲良しの理恵ちゃんにも連絡をした。
「あっ理恵ちゃん? 僕ケンタだけど久しぶり。 実は京子ちゃんのことなんだけど~」ひととおり話した。
「私も京ちゃんに用事あって連絡取りたいけど取れてないのよね。 ケンタくんのほうが家近いし
住所教えるから観てこない?」
「……うんいいけど」
ケンタは翌日訪ねた。
ピンポーン ピンポーン
「は~い」ドアの向こうから気だるそうな声がした。
「京子ちゃん。 ケンタだけど」
「な~に?」
「ちょっといい?」
「何か用事」ドアが開いた。
「どう元気?」
「元気ない……」
「余市のおばさんが連絡取れないって心配してたよ。 それと理恵ちゃんも心配していたけど。
どいうわけか僕が代表して見に来た。 京子ちゃんどうかしたの……? 」
「ここで話してもなんだから散らかってるけど部屋に入れば?」
「お邪魔します」ケンタは部屋に入った。
「本当だ、汚れてるね」
「なに……! ケンタ私に殴られたい……」
「あっ、いや…… ごめん」
「じつは金星からもどってからなの、地球と金星との温度差の違いでやる気が出ないのよね」
「どういうこと?」
「出社しても人の心の裏が見え見えだし、どこに行ってもそういうのが鼻につくのよ」
「無視すればいいジャン? 気の合う同僚いないの?」
「居るにはいるけど週刊誌の話題ばっかで…… 私そういうのって興味ないし結局距離が出来ちゃうのね」
「で、ちゃんと会社には行ってるの?」
「行くことは行ってる…… でも辞めるかも」
「そっか、かえって石が災いしたかもね? ごめんね。僕のことで巻き添えにして」
「それはないよ! 経験した事は最高に楽しかった。 又、貸してくれる?」
「いいけど京子ちゃんが生きてる世界は今だからね。 居場所はここだからね。
石を逃避の手段に使うんだったら貸さない。 麻薬依存患者みたいに石依存になって
現実逃避になったら大変だから……!」
京子は泣いていた。
「なんで泣くの?」
「ケンタくんに言われたらなんか腹立つ……」
「……とにかくおばさんと理恵ちゃんに連絡してよ! じゃあ」
数日後ケンタは石を持って京子のアパートに行った。
「石持ってきたけど……」
「ありがとう」
「京子ちゃん会社行った? 」
「行ってるよ。 私そんなにヤワじゃないから大丈夫。 実家に電話も入れといたし」
「安心したよ。 はいこれ」石を渡した。
「ありがとう」京子は不気味な笑みを見せた。
「今度はどこへ行くの?」
「嘘偽りのない世界に行って波動チューニングして意識を高めようと思うの」
「へえ~面白いこと考えたね京子ちゃん。 それは良い考えだと思うよ」
「今の私を変えるにはそれが良いかなと思って。 ついでにミュージシャンやってる私の別世界に行って
音楽を覚えようと思うの」
「面白い! それは可能なことだよ。 発想がすごいね! 京子ちゃん頭いい」
「ケンタくんに誉められると腹立つ……」
「……」ケンタくんはむかついたまま家路についた。
ひと月後、ケンタは京子に電話をした。
「京子ちゃんその後どう?」
「どおって?」
「音楽は?」
「やってるわよ。 今、作曲にはまってしまい、もう十五曲作ったわよ」
「へ~どんな感じの曲?」
「レッドツェッペリンって知ってる?」
「知ってるよ」
「あんな感じ」
「バリバリのロックじゃん」
「私的にハードロックが妙に落ち着くのね」
「なんの楽器使って作ってるの?」
「カスタネット」
「えっ……?」僕は聞き直した。
「カスタネットで? どうやって? ロックを?」
京子は笑いながら「ケンタくん、ばっかじゃないの? そんなんで作曲出来るわけ無いでしょ。
ガハハハ……かついだだけ。 ケンタくんてマジ面白い」
当然のようにむかつくケンタ。
「ヤマパの電子ピアノ。 向こうの私はピアノで音楽やってたのね。 その意識を取り込んだら
一週間でピアノ弾けるようになったの。 そしたら作曲意欲が出てきたの。
天国への階段って知ってる?」
「ああ、あの曲は有名だね」
「それ聞いてからツェッペリンの意識も取り込んだのね。 そしたら曲調がツェッペリン風になったのよ」
「でロックなわけだ。 どんな曲作ったの?」
「『ギロチン』とか『猫丸め』とか、『犬バーガー』とか、『兄の夜はおねえ』とか『豚の鼻』とかだよ。
聞いてみる?」
「いい、今度ゆっくり聞かせてね」
京子は続けた「まずは、インディーズからと思ってるよ。 いきなりメジャーっていう柄じゃねぇし」
ケンタは京子ちゃんには制限が無さ過ぎ! この人には少し制限が必要だと思った。
京子との電話を切った直後また電話が鳴った。 理恵ちゃんだった。
「ケンタくんその後、京子ちゃんと会ってる?」
「うんさっきも電話で話したよ。 バリバリ元気だった。 彼女は全然心配ないよ!」
「それならいいけど会社辞めたって聞いたから心配だったの」
「えっ会社辞めたの? そんなこと言ってなかったけど」
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