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10パラレ・ルワールド
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10パラレ・ルワールド
出社した京子がタイムカードを押しながら「理恵ちゃんおはよう。
社長は今日も部屋に籠もるのかなあ……? なんか聞いてる?」
理恵が「京子さんおはようございます。 私なんにも聞いてないけど、なにかありました?」
二人の会話が耳に入った真智子が「今日で二週間籠もったきり。 なんかの開発してるかしら?」
理恵が「ハーデス装置の時も睡眠取らずに研究室に籠もりっぱなしだったらしいよ。
社長のことだから絶対何か作ってるよ、なんかワクワクするけど」
二週間前の朝、社長が朝礼で「私、今日から研究室で取り組みたいことあるの。
今はまだ話せないけど頭の中に、ある設計図があるのねそれが面白いのよ。
どんな具合になるか解らないけどとりあえずやってみる。 会社のことは理恵さんお願い。
それから食事だとか身の回り一切のことは気にしないで、じゃぁ頼みます」
社員にそういい残し研究室に籠もったのが二週間前。
たまに部屋から「よし。か~。 ちくしょう~。よっしゃあ。 など普段の社長からは
連想できないような奇声が聞こえていた」
それからまた一週間後の夕方だった。 研究室のドアが開いた。 そこから出て来た社長は
ホームレスと見間違うような出立で異様にギラギラ光った目が印象的。
「誰か、水くれる?」そういってその場に座り込んだ。
「社長大丈夫ですか……?」そう叫びながら理恵が足早に近寄った。
「理恵さんごめんね、出来たよ。 完成だ!」
水を一気に飲んだ社長はいきなりイビキをかいて寝てしまった。 とりあえず社長室に布団を敷いて寝かせ、
目覚めるのを待つことにした。
結局目覚めたのは二日後の夕方だった。
社長室から「誰かいるの?」か細い声が聞こえた。
京子が「社長お目覚めですか? 何か呑みます?」
「水と食べ物。 何でもいいからちょうだい。 お願い……」
社長室に全員集合した。
「ごめんね、みんなに心配かけました。 私ね、新しい装置の開発してたのそれは多次元宇宙に行って
体験してくる装置なの」
理恵が「従来のハーデス装置とどう違うのですか?」
「ハーデスは異次元でしょ。 今度のは平行宇宙つまりパラレルワールドに行って、もうひとりの
自分に重なり合うの。 パラレルの自分はひとりだけじゃなく何人も存在するのよ。
私が体験したのは五人の私なの、ハーデスと同じくリアルなのよ」
京子が「それってあの物理学者のリサ・スティックなんとかっていう人が提唱してるあの
パラレルワールドですか?」
「そうそれ! ハーデスの場合は多次元を体験する装置でしょ。 今回の装置は自分の中にある
同時進行の複数の世界なの。 早い話が、外宇宙と内宇宙のちがい。 例えば、ある世界では
美容室を経営してる私がいるの。 それとか、化学の研究をしてる学者の私もいる。
あと、今と同じくハーデスの仕事をしてる私もいた。 全部、この私と何処かで係わってるのが解ったのよ」
真智子が「やはり頭にハーネスを取付けるんですか?」
「そうなの頭の松果体に一定のパルスを当てるの。 そのパルスの振動数を探すのに今回は手こずったの。
ところで、理恵さん明日の予約は何件入ってるの?」
「三件ですけど」
「ちょうど良かった。 明日、早速装置をみんなに体験してもらうね。
誰か予約入ってる三件を上手にローテーション組んでちょうだい。
ひとりにかかる時間は百二十分。 遂にやるわよパラレル・ワールド体験装置」
翌朝
「はい、おはようございます。 朝礼始めます。 約三週間みんなには大変迷惑掛けました。
昨日、話したようにパラレ・ルワールド体験装置が完成しました」
拍手がおこった。
「おめでとうございます」理恵が言った。
「ありがとう、でも幾つか手を加えることになると思うけど、基本は出来上がったから期待してちょうだい。
そして、なんでこんな発想をしたかというと、ある時こんな事考えたの。
パラレの自分がやってる職業なり技術というのは自分単独でやってるようにみえるけど、
実はどの自分とも何処かで繋がってるような気がしたの。
そして、既にパラレルの自分がで習得してる技術を、っちの自分が習得できるはずと考えたの。
つまり、昨日私が美容室経営者が存在するって話したでしょ。
という事は、その自分と重なれば私も美容師の技術の習得が出来るかもと思ったの。
この装置は考えようで一種の技術支援装置的な扱いが出来るかもしれないってね。
ハーデスの仕事をしているもうひとりの私が存在してたの。 そことも繋がったの、
その私はもっと面白い研究も考えてたのね、それは後々に話します。
ここまででなにか質問ある?」
京子が「パラレルの自分に会うということは、その世界で二人の自分が存在するという事ですか?」
「好い質問ね。 従来のハーデスはアストラルボディーが存在したけど、この装置は
意識だけがもうひとりの私の意識に入り込むの。 だから物理的には私ひとりしか
その世界には存在しない。 そこが従来と違うところ」
理恵が「じゃぁ、フルトランスっていうことですか?」
「……とも違うのよ。 まだどの位の割合か解らないけど向こうの意識もちゃんとあるの。
こっちの客観視してる意識もある。 配分は向こうが多いの、八十パーセントくらいむこうかな?」
理恵が「じゃぁ、あっちの社長はコンタクトとられているという実感があるんですか?」
「まったくわからないか、漠然と感づいてるかもしれない」
真智子が「相手の身体の誘導は可能なんですか?」
「意識に働きかけてるから当然可能。 どう表現したらいいかなぁ同じ身体に意識が二つって
表現したらいいのかも。 簡単にいうと自分で考えて行動してるように思うけど、
実はガイドが働きかけてるっていうケースあるでしょ、あれに近いかな」
京子が「コマは必要ですか?」
「やっぱり必要ね自分を見失わないためにもね。 あと、こっちの世界では知り合いの友人でも、
あっちの世界では全然知らないケースもあるの。 その逆もあるけど、でも今いったように
パラレルの自分の意識も同時に働いているからその辺は大丈夫。 まずは、百聞は一見にしかず、
順番に体験しましょう。
それと、これは添乗する必要ないの危険性はありません。
行く時とこっちに戻った時に説明するだけで好いと思う、ていうか早い話しこれは添乗できないよ。
じゃぁ、三十分後から開始するから順番に来てね。 持ち時間はひとり二時間にしましょう。
じぁあ研究室でまってる」
ドアをノックする音と共にドアが開き、最初に来たのは理恵。 研究室の中は社長が三週間
試行錯誤したと思われる形跡がそこら中に散乱していた。
「理恵さんごめんね、散らかったままなのよ明日綺麗にするから……」
「私、やりますからいいですよ」
「ありがとう、ひとつひとつ思い入れがあるの。 だから復讐の意味も込めて自分でゆっくり片付けたいの」
「解りました。 手が必要になった時はいってください」
「ありがとう。 じゃぁ、この装置を付けて、ハーデス装置と同じ要領で」
理恵は新開発した装置を装着し、リクライニングシートに横たわった。
「片方の鼻の穴を塞いでゆっくり大きく呼吸をしてちょうだい。
その時の意識は自分の頭の中に広大な宇宙を思い描くの、息を吸う時は宇宙が身体に
入ってくるイメージで、吐く時は宇宙全体に息というか意識が広がるようにする。
そして宇宙と一体化するイメージを持つこ。 じゃぁ、いくよ」
社長は装置に繋がっているコントロールBOXのスイッチを入れた。 理恵は軽いパルス音を
感じながら宇宙を意識して呼吸を整えた。 徐々に身体が軽く感じられて胸の奥が熱くなってきた。
そして次の瞬間意識が引っ張られ、気が付いたら宇宙空間に漂っている心地よい感じがした。
一瞬意識がなくなってしまった。
どの位の時間が経過したか解らないが気が付いたところは自宅のお風呂場で
シャワーを浴びている自分だった。
「……ここは?」
理恵はシャワーを止めて鏡を眺めていた。
「だれ?」
すぐに気が付いた。
「これがパラレ・ルワールドの私なの? なんでシャワー中なの?」
でも、もうひとりの意識が身体をバスタオルで拭いて、それを身体に巻き付けていた。
「この感覚が社長のいっていた同時に二つの意識ってやつなんだ……」
理恵が「ケンタも食事の前にシャワー浴びたら」
「うん、そうする」そのままケンタは浴室に入っていった。
「なにこれ? わたし結婚してるの? それとも同棲? それに、このケンタって人は誰?
見たことないけど……」
しばらくして浴室のドアが開き裸のケンタが出て来た。
「どういうこと? なんで素っ裸なの?」
「そこに下着出しておいたからね」
「うん」
理恵は思わず「あんた誰?」と叫んでしまった。
「……?」ケンタは完全に言葉を失っていた。
次の瞬間気を取り直したケンタが「俺のこと?」
「そう、あんた」
「理恵、大丈夫か?」
「あっ! ごめんケンタ。 私なんでこんなこといったんだろう?」
「理恵ビックリさせるなよ、なんだよ今の『あんた誰?』って、俺、焦ってしまったよまったくもう……」
「ごめん、ごめん私も解らない……」
こっちの理恵は瞬時に理屈が解ったから、しばらく様子を伺うことにした。
翌日、理恵は書道教室に座って生徒の指導をしていた。 この世界の理恵は書道の先生をしていた。
書家の書らしい字を畳み大の紙にバランスよく「山川草木」と書きあげていた。
「なかなかやるじゃない、私も習字は6段で書は好きなの、どこか影響し合ってるのね」
次の瞬間さっき感じた宇宙が見えまた気が遠くなった。 次に視界に入ったのが、なにかの研究室?
試験管やビーカー、遠心分離器など、実験に必要な実験道具が部屋中いっぱいに散乱していた。
「ここ何? どこかの化学実験室?」
ひとりの男性が「山崎さん、そこのトレーとってくれる?」
「はい、解りました」
「えっ、私は高橋でしょ、なんで山崎で返事したの?」
トレイを男性に手渡した「はい、どうぞ」
「ありがとう。今日はもう遅いから返っていいよ。 明日又続き頼むね」
「はい、帰えらせていただきます。 教授もたまには早く帰って身体休めてください。
奥さん心配しますよ」
「ああ、ありがとう」
この世界の理恵は山崎という名の女性で、新薬の開発をする研究所の開発スタッフをしていた。
理恵は、この私は頭の中に化学式がいっぱい詰まっている。
今取り組んでいる研究は副作用の無い精神安定剤の開発か……
これも面白そう、このままどんな生活をしてるのか監察しよう。 高層マンションに山崎は入っていった。
へ~こんな部屋に住んでるのか? 職業柄か几帳面に整理され分類も完璧にされてる。
寝室らしい部屋に入ってみると写真が目に入った。 なに、この私も結婚してるの?
しかもあのケンタと……ということはもしかしてこっちの私のお相手もケンタなの?
山崎ケンタっていう名前なんだ……タイプじゃないし……やだ!
また、次の瞬間景色が宇宙になり気が遠のいた。 次に何処かのこじんまりとした研究室らしき
部屋が視界に入った。 ここは、いつも見慣れた会社の研究室だった。
社長が「お疲れ様。次の客待ってるから、三十分したらB室に待機してて」
はい、B室? とりあえずトイレにで用を足して戻ってきた。
あれ?いつのまにAやBやCだのドアにプレートが貼ってあるの?
社長B室っていってたからここね、部屋に入り待機した。
「山崎さん」どこかで声が聞こえた。
しばらくするとまた「山崎さ~ん」同じ声だった。
この声は京子さんだ。 なんだろう? ドアがノックされた。
理恵が「はい」
ドアが開いて入ってきたのが京子だった。
チョッと苛ついた顔して「山崎さん、私が呼んだの聞こえませんでした?」
「京子さんが言ったのは山崎で……」
「聞こえてるじゃない」
「山崎っていうのは聞こえたけどそれがなにか?」
「あなた、今、なにかっていった?」
「そう、言いいましたけど」
京子が憮然とした態度で「山崎理恵さんって他にいるの?」
「なんで? 私は高橋理恵でしょ。 京子さんもしかして私をからかってるの?」
京子はそれ以上言葉が出なかった。 そして出て行った。
三分ほどして社長が京子と入ってきた。
社長が「理恵さん、よく私の話し聞いて。 理恵さんあなたは今パラレ・ルワールドの世界に来てるの。
もうひとりの私が装置を完成させたの。 憶えてる?」
「あっ、私もしかして」
「そう、そのもしかなのよ。 理恵さんあなたはこっちの世界では結婚してて山崎さんという
名前に変わってるのよ」
「社長、私理解できました。 でもこっちの私の意識が見あたりませんけど? どうしてでしょ?」
「……? それはチョット今は解らない。 でもよくいらっしゃいました。 ようこそもうひとつの世界へ」
「あっ、初めましてっていうのも変?」理恵が言った。
京子が「そうよね、変な感じよね! そっちの世界の会社の雰囲気はどう? 私は結婚してる?」
理恵が「私も京子さんも社長も独身です。 既婚者は真智子さんだけです」
社長が「真智子さんっていう人が働いてるの?」
「えっ、こっちでは勤務してないのですか?」
「そのうち面接に来るかもね? 楽しみ」
それから理恵はコマを回して実験室に戻った。
社長が「どうだった?」
「この装置も凄いです。 私の行った世界でこの会社に出たんです。
似てるけどどこか違うんですね。 私は山崎っていう人と結婚していて名字が変わってました。
他に、書道の先生や化学実験室の助手もしてました。 それと気になることがひとつ、
最後にハーデス観光に出たんです。 そこはこっちと多少違うんですけど。
私の意識が百パーセント優先してるんです。 あっちの世界の私の意識が関与してなかったんです。
だから一瞬戸惑いました」
「なるほどね、まだまだ課題はあるのね」
それから数ヶ月が過ぎ、ひとりの男性客が会社に訪れた。
「おはようございます」京子が応対した。
年の頃なら三十歳前後の男性。
「ネットで申込した山崎と申します」
「はい、お待ちしておりました」
京子は待合室に通し「この誓約書確認していただきましたら、今日の日付と住所とお名前を
記名捺印して下さい。 担当の者が案内いたしますからここでお待ちください」
ドアがノックされ理恵が入室してきた。
「お客様、本日ガイドさせていただく高橋理恵と申します。 よろしくお願いいたします。
え~と、お渡しした誓約書頂けますか?」
「はい、どうぞ」
「はい、山崎ケンタさまですね・・・・」
その時理恵は動揺して書類を落としてしまった。
ケンタが「大丈夫ですか? よろしくお願いいたします」
理恵は瞬間的に「これが運命の人?」淡い期待が胸を過ぎっていた。
数ヶ月後この二人は交際し、そして婚約を発表し結ばれることになった。
「安田様ですね。私、今回ハーデスのガイドを勤めます山崎理恵と申します。 よろしくお願いいたします」
THE END
ツアー雑誌MOMOの記者新見が、ハーデス観光に訪問していた。
「高橋社長ご無沙汰しております」
「新見さんお久しぶりです。 お元気でしたか? その後なにか変化はありましたか?」
「はい、ここで経験したあと、この世界と別世界が微妙に関係し合っていることが解り、
物事がなんでこうなったのか、など根底を考えることが私の中で癖になりました」
「そうですか、それは結構なことです。 じつは新しい装置を開発したので、今日はそれを紹介いたします」
「そういえば前回社長が言っておられましたよね『開発中の商品がある』とそれが完成したんですか?」
「そうなの。 前回話した開発中の商品は被験者よっては思うような結果が得られず、
正直いって商品として世に出すわけにはいかなかったの。 そんな時、我が社に入社した
スタッフのひょんなアイデアで問題が解決したの、この商品はその新人さんに担当してもらうことになったの」
「その新人さんが新商品の開発に加わってこの商品ができました」
「そう、じつにその人の奇想天外な言葉がヒントだったのよ……」
「それは面白い話しが聞けそうです」
「まだシークレットなの、でも、ハーデス装置は雑誌MOMOさんに記事が載ったおかげで大反響でした。
今回、掲載するかしないはともかくMOMOというよりも新見さん個人に
体験していただきたくて連絡したの……」
「それは光栄です」
高橋は内線で中川さんを社長室に呼んだ。 ドアがノックされた。
高橋が「どうぞ」
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは年の頃なら三十代なかばの小柄な女性。
社長が「彼女が担当の中川です」
「初めまして中川と申します。 宜しくお願いいたします」
「こちらは雑誌MOMOさんの新見さん。 当社が世話になってる担当の方」
「社長世話になってるのは私です。 新見です宜しくお願いいたします」
三人はソファーに腰を下ろした。
高橋が「新見さん。今回の装置は『サムサラ』という名が付いております。 従来の装置は新見さんも
経験されたように霊界と呼ばれる所に魂を飛ばし、そこで経験をするといういわば体外離脱装置でした。
今回はサムサラの和訳はズバリ『輪廻』という意味です。 人間は幾多の輪廻転生を経て今に至っております。 その幾多の転生を思い出すための装置なんです。 今があるのは、その幾多の転生の蓄積でもあるんです。
当然、これからも転生は続くでしょう。
このサムサラ装置の目的は、ただ前世を知るという単純な傍観目的ではなく、前世等で培った才能を
この世で活かすことを目的としてます。 人によっては前世で大きな犯罪を犯してしまった魂もあります。
でも、それを知ったならば同じ間違いを犯さず、逆に人助けに繫がることを考え実行することも今世で
可能なんです。
マイナスのカルマを今世で断ち切るんです。
また、この心の底から湧き出てくる感情は、どこからくるものなのか。 多くの人が心当たり
あることでしょう。 その感情の根源を知った時の喜び。 当然、知らないからこの世は面白という
意見もあります。 それはそれで正解かもしれません。 でも当社は生きる目的に繫がればと考え、
このサムサラ装置を世に出したんです」
新見はじっと聞いていた。
高橋は続けた「前世で培った経験や技・知識を今世で活かしたり、来世に繋ぎたいと思いませんか?
自分の伴侶がなんで今一緒にいるのか? 親兄弟は自分とどんな繋がりなのか?
その答えが転生の中にあるんです。 当社は知らないで人生を歩むより少しでも知った上で人生を歩みたい、
その為にこの装置を役立てたい。
また、自分がなにをやりたいのか? どんな仕事をしたいのか解らない、そういう方のお役に立てばと、
そう考えております」
じっと高橋の顔を視ていた新見が口を開いた。
「それって、誰でも経験できますか?」
「はい、できます。 今まで当社スタッフやその関係者がほぼ百パーセントの確率で前世を思い
出しております」
「これから質問することは疑ってるわけではありません。 単純な質問です。
気を悪くせずにお聞き下さい」新見の気を悪くしないようにとの心配りだった。
「ハイ、なんなりと……」
「やはりヘッドギアを装着するのですか?」
「はい」
「事前に暗示めいたことはお話しされないのですか?」
「必要ありません」
「前世とおっしゃいましたが、その垣間見た世界が前世だと誰が判断するのですか?」
「当然自分自身で解ります。 ガイドの力もあります」
「今、時にはガイドとおっしゃいましたが、どういうことですか?」
「今までの経験からガイドは基本的に節介はしません。 いつも縁の下の力持ち的存在。
普段は息を潜めておりますが、ここぞという時など助言してくれます。 ガイドとはそういういわば
黒子的な存在です」
「では、垣間見た前世が真実かどうかは解らないわけですか? 場合によっては幻影だと
いうこともあり得るんですね?」
「鋭い質問ですね、でも当然の疑問です。 ハッキリ云います。
ズバリ物理的確証はひとつもありません。 すべてメンタルの問題です。
前回経験されたハーデス装置もそうですが自己判断以外にありません。
あの世が存在するといってもなにひとつ証拠はありませんし示せません」
「相変らず高橋社長は率直にお答えくださいます。 わたしも早く体験してみたくなりました。
お願いできますか?」
「では、中川が案内いたします。 要領は前回と同様です。 では、のちほど、
素敵な体験になりますように……」
新見は中川に別室へ案内され、例のごとく装置を装着し心を落ち着け期を待った。
内心不安と期待が入り乱れた。 この感覚は最初にここで出会ったあのハーデス装置を
装着した時と同じ感覚だったことを思い出した。
中川が「では、作動する前にひと言付け加えます。 私も一緒に添乗しますが調子が悪くなった
場合や戻りたくなった場合この石を握って『戻りたい』と念じて下さい。
簡単にこの現実に戻ることが出来ます。 ではいい旅をしましょう」
二人は椅子に身を任せ深く息をして呼吸を整えた。 ヘッドホンからザーというノイズ音が
聞こえ軽い目眩を感じた。 基本的には以前同様右耳と左耳に周波数の違うパルス音を聞かせ、
脳に特殊な刺激を与えることで、潜在してる記憶に表面意識を同調させる仕組み。
前回と決定的に違うのはアストラル体を霊界に飛ばすか、潜在意識に飛ばすかの違い。
ふたりは意識が段々遠のき、自分がどうしてここにいるのか、分からなくなってきたその時だった。
目の前が明るくなり視界が突然開けてきた。
「……? ここは?」新見が言葉を発した。
「新見様の記憶の一部です。 場所はハッキリしませんが、アジアだと思います。
中国かチベットのような山岳部のような雰囲気がしますね……?」
新見の口から咄嗟に「たぶん中国です」
「記憶が少しずつ蘇ってきたようですね。 因みにどの位前ですか?」
「四百年以上前西暦千六百年頃でしょうか? あっ、何となく思い出しました。
ここは私の心の奥深くにあるもので、たしかこの町で女性として生まれ育ったんです。 間違いありません」
「もっとハッキリしてきますよ。町の雰囲気と空気感を感じて下さい」
新見は感極まって泣き出してしまった。
「新見様思い出されたようですね」
「はい、思い出しました……。 まるで昨日のことのよう」
「皆さんそうおっしゃいます。 ここは時間という概念がないので四百年以上前のことでも、
昨日のことのように感ずるんです。 では、新見様の住んでいる所に移動しましょう」
次の瞬間二人は川の畔に立っていた。 その川で洗濯をしている女性が視界に入った。
側では二人の女の子と黒い子犬が戯れていた。 牧歌的で童話の背景画のような雰囲気が伝わってきた。
新見が「あの洗濯をしてる女の人が私…… 名はチュンリー」
そうですか名前まで思い出いだされましたか、新見様の魂においてとっても想い出に残る場所、
そしてこの光景が最も印象に残っているのかも知しれませんね……」
「はい、幸せの絶頂期でした」
「でしたといことは?」
「はい、ここで娘がこのあと溺れたの」
「え?」中川は言葉に詰まった。
「私が付いていながら、本当に情け無くってしかたがありませんでした。その後、
私は水が怖くてしょうがありません。今でも水が怖いの」
「そうですか、たぶんこの時の精神的後遺症がまだ残っているのかも知れませんね」
「そうかも知れません。 いや、そうだと思います!」
その時だった。女の子のひとりが足を滑らせて川に落ちてしまった。
それを見た母親は咄嗟に自ら川に入り、上流から流れてくる我が娘を引き寄せようと腕を伸ばした。
力んだ瞬間母親は自らの足を滑らせよろけてしまい娘に手が届かず、娘はそのまま
流れに呑まれてしまった。 執拗に娘を必死で追いかける母親の姿がそこにあった。
娘は最後に母親に向って「危ないからもういい。
お母さんありがとう」そう言って水面から消えてしまった。
当然母親には川の流れで聞こえていなかった。 この光景を視て新見も心が締め付けられた。
中川が「その先を視てみましょうか」
「その先?」
「はい、その後の娘さんです」
「……?」新見には言葉の意味が飲み込めていなかった。
流れに呑まれた娘はそのまま一キロほど下流に流された。 その時だった水面の上に光り輝く
球体が現われ、川から人の形をしたような光を、その球体がすくい上げている光景だった。
中川が「あの光り輝く球体は娘さんのガイドです。 娘さんの魂を引上げ天上界に導こうとしてるのです」
「天上界……」
「そです、天上界です。 娘さんはこうなることを潜在的に選んだのです。 つまり自分で望んだのです。
娘さんの死因は深いところにあったのです」
「原因?」
「そうです、この段階では詳しくは分かりませんが、母親あるいは身内に何かを分からせているのかも
知れませんね? もしくは自分自身に潜在してる深い問題ということも考えられますね」
「自分自身の……?」
「そうです、輪廻転生してきた理由です。 長い人生だけが天寿を全うしたとは限らないのです。
生まれることだけが目的の魂も存在します。 つまり、天寿とは人によってみな違います。
私はこの仕事をしてから沢山自分や他人の転生を視てきました。
輪廻転生の仕組みはひとつの偶然もない、本当によくできてるといつも痛感してます。 完璧です」
「つまり、娘の死も必然的ということですか?」
「はい、必然です。 先程申し上げたとおり本人と、ご家族の関係において何かしらのタイミングが
あって事が起きたわけです。 そこを知るにはもう幾つかの前世を視る必要がありますが、
蜘蛛の巣のように入り組んでますので、亡くなった娘さんの前世を視るのが本当は早道です」
「そうですか知ることは?」
「今、娘さんが転生してたらその娘さんの転生を視る方法しかありません」
「それは出来ないのですか?」
「今の段階では不可能です。 娘さんの転生先を知ることは出来ません。
転生してるかどうかも分かりませんから」
「わかりました。 ありがとうございます」
「では、もうひとつの転生視てみませんか?」
「はい、お願いします」
「では、先程渡した石を握って、近い過去を念じてみましょうか?」
「はい」
新見は石を握りしめて近い過去生を念じた。 また目眩がしてそして明るい場所に変わり
景色も雰囲気も一変した。
中川が「はい、新見様の中のもうひとつの前世です」
そこは、日本の昔で家屋は木造で茅葺き屋根や瓦屋根が印象的。
中川が「日本風ですね、しかも江戸時代かそれ以前かもしれませんね?」
新見が「たぶん二百年ほど前の大阪辺りかも……」
「新見さんは思い出すのが他の方達より早いですね、今まで方は思い出すのに数分ほどかかりましたよ」
「そうなんですか…… 街並みを見た瞬間すぐに理解できちゃうみたい」
「そうですか、では先程とおなじく景色に溶け込んで下さい」
次の瞬間、御服問屋の前方が現われた。
「まいどおおきに。 また宜しゅうおたのもうします」
問屋の上り框の所で中年男性が丁寧に挨拶をしていた。
新見が囁いた「あの番頭さんわたしです。 男性だったんですね、ここの店のいとはんと結婚し、
ゆくゆくは暖簾分けしようっていう話しを旦那さんからされました」
「それでどうなったんですか?」
「祝儀を挙げました。 そして子供を三人授かりました」
「そのお嫁さんは現在でも縁があるんですか?」
「妹だと思います。 たぶん間違いないです」
「そうですか。 今も妹さんとは仲がよろしいのですか?」
「はい、年子なので双子のように勘違いされることもあります。 そのくらい二人はいつも一緒でした」
「縁って面白いですね。 私もこの会社に世話になってから、つくづく実感しております。
縁って本当に良くできてるなあって……」
そして二人は町を探索して終えた。 社長室に移動し三人がソファーに腰掛けていた。
社長が「新見さんどうでした新商品は……?」
新見は「このサムサラ装置も面白いです。 前の装置は違う次元を客観的に見学するという感じでしたけど、
これは自分の内面、いや魂の一部ですから違った意味で凄いです。
今の自分に影響を与えているのはこのサムサラ装置で視た自分ですから。
因みに私はこの装置のほうが正直好みです。 もっともっと自分の内面を視たくなりました。
同時に来世は今をどう生きるかで変わるということも実感してます。
今の大切さを痛感しました。 本当に貴重な体験をありがとうございました」
こうして輪廻転生体験装置サムサラは、雑誌MOMOで取り上げられ、ハーデス観光は
再び脚光を浴び広く世間に知られることとなった。
社会的にも、全国のハローワークで装置を導入し、個人の潜在している過去世で培った能力を引出し、
職業の斡旋事業にのり出した。
職業訓練校では内在した能力を顕在化し発揮させるというカリキュラムが組まれた。
THE END
出社した京子がタイムカードを押しながら「理恵ちゃんおはよう。
社長は今日も部屋に籠もるのかなあ……? なんか聞いてる?」
理恵が「京子さんおはようございます。 私なんにも聞いてないけど、なにかありました?」
二人の会話が耳に入った真智子が「今日で二週間籠もったきり。 なんかの開発してるかしら?」
理恵が「ハーデス装置の時も睡眠取らずに研究室に籠もりっぱなしだったらしいよ。
社長のことだから絶対何か作ってるよ、なんかワクワクするけど」
二週間前の朝、社長が朝礼で「私、今日から研究室で取り組みたいことあるの。
今はまだ話せないけど頭の中に、ある設計図があるのねそれが面白いのよ。
どんな具合になるか解らないけどとりあえずやってみる。 会社のことは理恵さんお願い。
それから食事だとか身の回り一切のことは気にしないで、じゃぁ頼みます」
社員にそういい残し研究室に籠もったのが二週間前。
たまに部屋から「よし。か~。 ちくしょう~。よっしゃあ。 など普段の社長からは
連想できないような奇声が聞こえていた」
それからまた一週間後の夕方だった。 研究室のドアが開いた。 そこから出て来た社長は
ホームレスと見間違うような出立で異様にギラギラ光った目が印象的。
「誰か、水くれる?」そういってその場に座り込んだ。
「社長大丈夫ですか……?」そう叫びながら理恵が足早に近寄った。
「理恵さんごめんね、出来たよ。 完成だ!」
水を一気に飲んだ社長はいきなりイビキをかいて寝てしまった。 とりあえず社長室に布団を敷いて寝かせ、
目覚めるのを待つことにした。
結局目覚めたのは二日後の夕方だった。
社長室から「誰かいるの?」か細い声が聞こえた。
京子が「社長お目覚めですか? 何か呑みます?」
「水と食べ物。 何でもいいからちょうだい。 お願い……」
社長室に全員集合した。
「ごめんね、みんなに心配かけました。 私ね、新しい装置の開発してたのそれは多次元宇宙に行って
体験してくる装置なの」
理恵が「従来のハーデス装置とどう違うのですか?」
「ハーデスは異次元でしょ。 今度のは平行宇宙つまりパラレルワールドに行って、もうひとりの
自分に重なり合うの。 パラレルの自分はひとりだけじゃなく何人も存在するのよ。
私が体験したのは五人の私なの、ハーデスと同じくリアルなのよ」
京子が「それってあの物理学者のリサ・スティックなんとかっていう人が提唱してるあの
パラレルワールドですか?」
「そうそれ! ハーデスの場合は多次元を体験する装置でしょ。 今回の装置は自分の中にある
同時進行の複数の世界なの。 早い話が、外宇宙と内宇宙のちがい。 例えば、ある世界では
美容室を経営してる私がいるの。 それとか、化学の研究をしてる学者の私もいる。
あと、今と同じくハーデスの仕事をしてる私もいた。 全部、この私と何処かで係わってるのが解ったのよ」
真智子が「やはり頭にハーネスを取付けるんですか?」
「そうなの頭の松果体に一定のパルスを当てるの。 そのパルスの振動数を探すのに今回は手こずったの。
ところで、理恵さん明日の予約は何件入ってるの?」
「三件ですけど」
「ちょうど良かった。 明日、早速装置をみんなに体験してもらうね。
誰か予約入ってる三件を上手にローテーション組んでちょうだい。
ひとりにかかる時間は百二十分。 遂にやるわよパラレル・ワールド体験装置」
翌朝
「はい、おはようございます。 朝礼始めます。 約三週間みんなには大変迷惑掛けました。
昨日、話したようにパラレ・ルワールド体験装置が完成しました」
拍手がおこった。
「おめでとうございます」理恵が言った。
「ありがとう、でも幾つか手を加えることになると思うけど、基本は出来上がったから期待してちょうだい。
そして、なんでこんな発想をしたかというと、ある時こんな事考えたの。
パラレの自分がやってる職業なり技術というのは自分単独でやってるようにみえるけど、
実はどの自分とも何処かで繋がってるような気がしたの。
そして、既にパラレルの自分がで習得してる技術を、っちの自分が習得できるはずと考えたの。
つまり、昨日私が美容室経営者が存在するって話したでしょ。
という事は、その自分と重なれば私も美容師の技術の習得が出来るかもと思ったの。
この装置は考えようで一種の技術支援装置的な扱いが出来るかもしれないってね。
ハーデスの仕事をしているもうひとりの私が存在してたの。 そことも繋がったの、
その私はもっと面白い研究も考えてたのね、それは後々に話します。
ここまででなにか質問ある?」
京子が「パラレルの自分に会うということは、その世界で二人の自分が存在するという事ですか?」
「好い質問ね。 従来のハーデスはアストラルボディーが存在したけど、この装置は
意識だけがもうひとりの私の意識に入り込むの。 だから物理的には私ひとりしか
その世界には存在しない。 そこが従来と違うところ」
理恵が「じゃぁ、フルトランスっていうことですか?」
「……とも違うのよ。 まだどの位の割合か解らないけど向こうの意識もちゃんとあるの。
こっちの客観視してる意識もある。 配分は向こうが多いの、八十パーセントくらいむこうかな?」
理恵が「じゃぁ、あっちの社長はコンタクトとられているという実感があるんですか?」
「まったくわからないか、漠然と感づいてるかもしれない」
真智子が「相手の身体の誘導は可能なんですか?」
「意識に働きかけてるから当然可能。 どう表現したらいいかなぁ同じ身体に意識が二つって
表現したらいいのかも。 簡単にいうと自分で考えて行動してるように思うけど、
実はガイドが働きかけてるっていうケースあるでしょ、あれに近いかな」
京子が「コマは必要ですか?」
「やっぱり必要ね自分を見失わないためにもね。 あと、こっちの世界では知り合いの友人でも、
あっちの世界では全然知らないケースもあるの。 その逆もあるけど、でも今いったように
パラレルの自分の意識も同時に働いているからその辺は大丈夫。 まずは、百聞は一見にしかず、
順番に体験しましょう。
それと、これは添乗する必要ないの危険性はありません。
行く時とこっちに戻った時に説明するだけで好いと思う、ていうか早い話しこれは添乗できないよ。
じゃぁ、三十分後から開始するから順番に来てね。 持ち時間はひとり二時間にしましょう。
じぁあ研究室でまってる」
ドアをノックする音と共にドアが開き、最初に来たのは理恵。 研究室の中は社長が三週間
試行錯誤したと思われる形跡がそこら中に散乱していた。
「理恵さんごめんね、散らかったままなのよ明日綺麗にするから……」
「私、やりますからいいですよ」
「ありがとう、ひとつひとつ思い入れがあるの。 だから復讐の意味も込めて自分でゆっくり片付けたいの」
「解りました。 手が必要になった時はいってください」
「ありがとう。 じゃぁ、この装置を付けて、ハーデス装置と同じ要領で」
理恵は新開発した装置を装着し、リクライニングシートに横たわった。
「片方の鼻の穴を塞いでゆっくり大きく呼吸をしてちょうだい。
その時の意識は自分の頭の中に広大な宇宙を思い描くの、息を吸う時は宇宙が身体に
入ってくるイメージで、吐く時は宇宙全体に息というか意識が広がるようにする。
そして宇宙と一体化するイメージを持つこ。 じゃぁ、いくよ」
社長は装置に繋がっているコントロールBOXのスイッチを入れた。 理恵は軽いパルス音を
感じながら宇宙を意識して呼吸を整えた。 徐々に身体が軽く感じられて胸の奥が熱くなってきた。
そして次の瞬間意識が引っ張られ、気が付いたら宇宙空間に漂っている心地よい感じがした。
一瞬意識がなくなってしまった。
どの位の時間が経過したか解らないが気が付いたところは自宅のお風呂場で
シャワーを浴びている自分だった。
「……ここは?」
理恵はシャワーを止めて鏡を眺めていた。
「だれ?」
すぐに気が付いた。
「これがパラレ・ルワールドの私なの? なんでシャワー中なの?」
でも、もうひとりの意識が身体をバスタオルで拭いて、それを身体に巻き付けていた。
「この感覚が社長のいっていた同時に二つの意識ってやつなんだ……」
理恵が「ケンタも食事の前にシャワー浴びたら」
「うん、そうする」そのままケンタは浴室に入っていった。
「なにこれ? わたし結婚してるの? それとも同棲? それに、このケンタって人は誰?
見たことないけど……」
しばらくして浴室のドアが開き裸のケンタが出て来た。
「どういうこと? なんで素っ裸なの?」
「そこに下着出しておいたからね」
「うん」
理恵は思わず「あんた誰?」と叫んでしまった。
「……?」ケンタは完全に言葉を失っていた。
次の瞬間気を取り直したケンタが「俺のこと?」
「そう、あんた」
「理恵、大丈夫か?」
「あっ! ごめんケンタ。 私なんでこんなこといったんだろう?」
「理恵ビックリさせるなよ、なんだよ今の『あんた誰?』って、俺、焦ってしまったよまったくもう……」
「ごめん、ごめん私も解らない……」
こっちの理恵は瞬時に理屈が解ったから、しばらく様子を伺うことにした。
翌日、理恵は書道教室に座って生徒の指導をしていた。 この世界の理恵は書道の先生をしていた。
書家の書らしい字を畳み大の紙にバランスよく「山川草木」と書きあげていた。
「なかなかやるじゃない、私も習字は6段で書は好きなの、どこか影響し合ってるのね」
次の瞬間さっき感じた宇宙が見えまた気が遠くなった。 次に視界に入ったのが、なにかの研究室?
試験管やビーカー、遠心分離器など、実験に必要な実験道具が部屋中いっぱいに散乱していた。
「ここ何? どこかの化学実験室?」
ひとりの男性が「山崎さん、そこのトレーとってくれる?」
「はい、解りました」
「えっ、私は高橋でしょ、なんで山崎で返事したの?」
トレイを男性に手渡した「はい、どうぞ」
「ありがとう。今日はもう遅いから返っていいよ。 明日又続き頼むね」
「はい、帰えらせていただきます。 教授もたまには早く帰って身体休めてください。
奥さん心配しますよ」
「ああ、ありがとう」
この世界の理恵は山崎という名の女性で、新薬の開発をする研究所の開発スタッフをしていた。
理恵は、この私は頭の中に化学式がいっぱい詰まっている。
今取り組んでいる研究は副作用の無い精神安定剤の開発か……
これも面白そう、このままどんな生活をしてるのか監察しよう。 高層マンションに山崎は入っていった。
へ~こんな部屋に住んでるのか? 職業柄か几帳面に整理され分類も完璧にされてる。
寝室らしい部屋に入ってみると写真が目に入った。 なに、この私も結婚してるの?
しかもあのケンタと……ということはもしかしてこっちの私のお相手もケンタなの?
山崎ケンタっていう名前なんだ……タイプじゃないし……やだ!
また、次の瞬間景色が宇宙になり気が遠のいた。 次に何処かのこじんまりとした研究室らしき
部屋が視界に入った。 ここは、いつも見慣れた会社の研究室だった。
社長が「お疲れ様。次の客待ってるから、三十分したらB室に待機してて」
はい、B室? とりあえずトイレにで用を足して戻ってきた。
あれ?いつのまにAやBやCだのドアにプレートが貼ってあるの?
社長B室っていってたからここね、部屋に入り待機した。
「山崎さん」どこかで声が聞こえた。
しばらくするとまた「山崎さ~ん」同じ声だった。
この声は京子さんだ。 なんだろう? ドアがノックされた。
理恵が「はい」
ドアが開いて入ってきたのが京子だった。
チョッと苛ついた顔して「山崎さん、私が呼んだの聞こえませんでした?」
「京子さんが言ったのは山崎で……」
「聞こえてるじゃない」
「山崎っていうのは聞こえたけどそれがなにか?」
「あなた、今、なにかっていった?」
「そう、言いいましたけど」
京子が憮然とした態度で「山崎理恵さんって他にいるの?」
「なんで? 私は高橋理恵でしょ。 京子さんもしかして私をからかってるの?」
京子はそれ以上言葉が出なかった。 そして出て行った。
三分ほどして社長が京子と入ってきた。
社長が「理恵さん、よく私の話し聞いて。 理恵さんあなたは今パラレ・ルワールドの世界に来てるの。
もうひとりの私が装置を完成させたの。 憶えてる?」
「あっ、私もしかして」
「そう、そのもしかなのよ。 理恵さんあなたはこっちの世界では結婚してて山崎さんという
名前に変わってるのよ」
「社長、私理解できました。 でもこっちの私の意識が見あたりませんけど? どうしてでしょ?」
「……? それはチョット今は解らない。 でもよくいらっしゃいました。 ようこそもうひとつの世界へ」
「あっ、初めましてっていうのも変?」理恵が言った。
京子が「そうよね、変な感じよね! そっちの世界の会社の雰囲気はどう? 私は結婚してる?」
理恵が「私も京子さんも社長も独身です。 既婚者は真智子さんだけです」
社長が「真智子さんっていう人が働いてるの?」
「えっ、こっちでは勤務してないのですか?」
「そのうち面接に来るかもね? 楽しみ」
それから理恵はコマを回して実験室に戻った。
社長が「どうだった?」
「この装置も凄いです。 私の行った世界でこの会社に出たんです。
似てるけどどこか違うんですね。 私は山崎っていう人と結婚していて名字が変わってました。
他に、書道の先生や化学実験室の助手もしてました。 それと気になることがひとつ、
最後にハーデス観光に出たんです。 そこはこっちと多少違うんですけど。
私の意識が百パーセント優先してるんです。 あっちの世界の私の意識が関与してなかったんです。
だから一瞬戸惑いました」
「なるほどね、まだまだ課題はあるのね」
それから数ヶ月が過ぎ、ひとりの男性客が会社に訪れた。
「おはようございます」京子が応対した。
年の頃なら三十歳前後の男性。
「ネットで申込した山崎と申します」
「はい、お待ちしておりました」
京子は待合室に通し「この誓約書確認していただきましたら、今日の日付と住所とお名前を
記名捺印して下さい。 担当の者が案内いたしますからここでお待ちください」
ドアがノックされ理恵が入室してきた。
「お客様、本日ガイドさせていただく高橋理恵と申します。 よろしくお願いいたします。
え~と、お渡しした誓約書頂けますか?」
「はい、どうぞ」
「はい、山崎ケンタさまですね・・・・」
その時理恵は動揺して書類を落としてしまった。
ケンタが「大丈夫ですか? よろしくお願いいたします」
理恵は瞬間的に「これが運命の人?」淡い期待が胸を過ぎっていた。
数ヶ月後この二人は交際し、そして婚約を発表し結ばれることになった。
「安田様ですね。私、今回ハーデスのガイドを勤めます山崎理恵と申します。 よろしくお願いいたします」
THE END
ツアー雑誌MOMOの記者新見が、ハーデス観光に訪問していた。
「高橋社長ご無沙汰しております」
「新見さんお久しぶりです。 お元気でしたか? その後なにか変化はありましたか?」
「はい、ここで経験したあと、この世界と別世界が微妙に関係し合っていることが解り、
物事がなんでこうなったのか、など根底を考えることが私の中で癖になりました」
「そうですか、それは結構なことです。 じつは新しい装置を開発したので、今日はそれを紹介いたします」
「そういえば前回社長が言っておられましたよね『開発中の商品がある』とそれが完成したんですか?」
「そうなの。 前回話した開発中の商品は被験者よっては思うような結果が得られず、
正直いって商品として世に出すわけにはいかなかったの。 そんな時、我が社に入社した
スタッフのひょんなアイデアで問題が解決したの、この商品はその新人さんに担当してもらうことになったの」
「その新人さんが新商品の開発に加わってこの商品ができました」
「そう、じつにその人の奇想天外な言葉がヒントだったのよ……」
「それは面白い話しが聞けそうです」
「まだシークレットなの、でも、ハーデス装置は雑誌MOMOさんに記事が載ったおかげで大反響でした。
今回、掲載するかしないはともかくMOMOというよりも新見さん個人に
体験していただきたくて連絡したの……」
「それは光栄です」
高橋は内線で中川さんを社長室に呼んだ。 ドアがノックされた。
高橋が「どうぞ」
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは年の頃なら三十代なかばの小柄な女性。
社長が「彼女が担当の中川です」
「初めまして中川と申します。 宜しくお願いいたします」
「こちらは雑誌MOMOさんの新見さん。 当社が世話になってる担当の方」
「社長世話になってるのは私です。 新見です宜しくお願いいたします」
三人はソファーに腰を下ろした。
高橋が「新見さん。今回の装置は『サムサラ』という名が付いております。 従来の装置は新見さんも
経験されたように霊界と呼ばれる所に魂を飛ばし、そこで経験をするといういわば体外離脱装置でした。
今回はサムサラの和訳はズバリ『輪廻』という意味です。 人間は幾多の輪廻転生を経て今に至っております。 その幾多の転生を思い出すための装置なんです。 今があるのは、その幾多の転生の蓄積でもあるんです。
当然、これからも転生は続くでしょう。
このサムサラ装置の目的は、ただ前世を知るという単純な傍観目的ではなく、前世等で培った才能を
この世で活かすことを目的としてます。 人によっては前世で大きな犯罪を犯してしまった魂もあります。
でも、それを知ったならば同じ間違いを犯さず、逆に人助けに繫がることを考え実行することも今世で
可能なんです。
マイナスのカルマを今世で断ち切るんです。
また、この心の底から湧き出てくる感情は、どこからくるものなのか。 多くの人が心当たり
あることでしょう。 その感情の根源を知った時の喜び。 当然、知らないからこの世は面白という
意見もあります。 それはそれで正解かもしれません。 でも当社は生きる目的に繫がればと考え、
このサムサラ装置を世に出したんです」
新見はじっと聞いていた。
高橋は続けた「前世で培った経験や技・知識を今世で活かしたり、来世に繋ぎたいと思いませんか?
自分の伴侶がなんで今一緒にいるのか? 親兄弟は自分とどんな繋がりなのか?
その答えが転生の中にあるんです。 当社は知らないで人生を歩むより少しでも知った上で人生を歩みたい、
その為にこの装置を役立てたい。
また、自分がなにをやりたいのか? どんな仕事をしたいのか解らない、そういう方のお役に立てばと、
そう考えております」
じっと高橋の顔を視ていた新見が口を開いた。
「それって、誰でも経験できますか?」
「はい、できます。 今まで当社スタッフやその関係者がほぼ百パーセントの確率で前世を思い
出しております」
「これから質問することは疑ってるわけではありません。 単純な質問です。
気を悪くせずにお聞き下さい」新見の気を悪くしないようにとの心配りだった。
「ハイ、なんなりと……」
「やはりヘッドギアを装着するのですか?」
「はい」
「事前に暗示めいたことはお話しされないのですか?」
「必要ありません」
「前世とおっしゃいましたが、その垣間見た世界が前世だと誰が判断するのですか?」
「当然自分自身で解ります。 ガイドの力もあります」
「今、時にはガイドとおっしゃいましたが、どういうことですか?」
「今までの経験からガイドは基本的に節介はしません。 いつも縁の下の力持ち的存在。
普段は息を潜めておりますが、ここぞという時など助言してくれます。 ガイドとはそういういわば
黒子的な存在です」
「では、垣間見た前世が真実かどうかは解らないわけですか? 場合によっては幻影だと
いうこともあり得るんですね?」
「鋭い質問ですね、でも当然の疑問です。 ハッキリ云います。
ズバリ物理的確証はひとつもありません。 すべてメンタルの問題です。
前回経験されたハーデス装置もそうですが自己判断以外にありません。
あの世が存在するといってもなにひとつ証拠はありませんし示せません」
「相変らず高橋社長は率直にお答えくださいます。 わたしも早く体験してみたくなりました。
お願いできますか?」
「では、中川が案内いたします。 要領は前回と同様です。 では、のちほど、
素敵な体験になりますように……」
新見は中川に別室へ案内され、例のごとく装置を装着し心を落ち着け期を待った。
内心不安と期待が入り乱れた。 この感覚は最初にここで出会ったあのハーデス装置を
装着した時と同じ感覚だったことを思い出した。
中川が「では、作動する前にひと言付け加えます。 私も一緒に添乗しますが調子が悪くなった
場合や戻りたくなった場合この石を握って『戻りたい』と念じて下さい。
簡単にこの現実に戻ることが出来ます。 ではいい旅をしましょう」
二人は椅子に身を任せ深く息をして呼吸を整えた。 ヘッドホンからザーというノイズ音が
聞こえ軽い目眩を感じた。 基本的には以前同様右耳と左耳に周波数の違うパルス音を聞かせ、
脳に特殊な刺激を与えることで、潜在してる記憶に表面意識を同調させる仕組み。
前回と決定的に違うのはアストラル体を霊界に飛ばすか、潜在意識に飛ばすかの違い。
ふたりは意識が段々遠のき、自分がどうしてここにいるのか、分からなくなってきたその時だった。
目の前が明るくなり視界が突然開けてきた。
「……? ここは?」新見が言葉を発した。
「新見様の記憶の一部です。 場所はハッキリしませんが、アジアだと思います。
中国かチベットのような山岳部のような雰囲気がしますね……?」
新見の口から咄嗟に「たぶん中国です」
「記憶が少しずつ蘇ってきたようですね。 因みにどの位前ですか?」
「四百年以上前西暦千六百年頃でしょうか? あっ、何となく思い出しました。
ここは私の心の奥深くにあるもので、たしかこの町で女性として生まれ育ったんです。 間違いありません」
「もっとハッキリしてきますよ。町の雰囲気と空気感を感じて下さい」
新見は感極まって泣き出してしまった。
「新見様思い出されたようですね」
「はい、思い出しました……。 まるで昨日のことのよう」
「皆さんそうおっしゃいます。 ここは時間という概念がないので四百年以上前のことでも、
昨日のことのように感ずるんです。 では、新見様の住んでいる所に移動しましょう」
次の瞬間二人は川の畔に立っていた。 その川で洗濯をしている女性が視界に入った。
側では二人の女の子と黒い子犬が戯れていた。 牧歌的で童話の背景画のような雰囲気が伝わってきた。
新見が「あの洗濯をしてる女の人が私…… 名はチュンリー」
そうですか名前まで思い出いだされましたか、新見様の魂においてとっても想い出に残る場所、
そしてこの光景が最も印象に残っているのかも知しれませんね……」
「はい、幸せの絶頂期でした」
「でしたといことは?」
「はい、ここで娘がこのあと溺れたの」
「え?」中川は言葉に詰まった。
「私が付いていながら、本当に情け無くってしかたがありませんでした。その後、
私は水が怖くてしょうがありません。今でも水が怖いの」
「そうですか、たぶんこの時の精神的後遺症がまだ残っているのかも知れませんね」
「そうかも知れません。 いや、そうだと思います!」
その時だった。女の子のひとりが足を滑らせて川に落ちてしまった。
それを見た母親は咄嗟に自ら川に入り、上流から流れてくる我が娘を引き寄せようと腕を伸ばした。
力んだ瞬間母親は自らの足を滑らせよろけてしまい娘に手が届かず、娘はそのまま
流れに呑まれてしまった。 執拗に娘を必死で追いかける母親の姿がそこにあった。
娘は最後に母親に向って「危ないからもういい。
お母さんありがとう」そう言って水面から消えてしまった。
当然母親には川の流れで聞こえていなかった。 この光景を視て新見も心が締め付けられた。
中川が「その先を視てみましょうか」
「その先?」
「はい、その後の娘さんです」
「……?」新見には言葉の意味が飲み込めていなかった。
流れに呑まれた娘はそのまま一キロほど下流に流された。 その時だった水面の上に光り輝く
球体が現われ、川から人の形をしたような光を、その球体がすくい上げている光景だった。
中川が「あの光り輝く球体は娘さんのガイドです。 娘さんの魂を引上げ天上界に導こうとしてるのです」
「天上界……」
「そです、天上界です。 娘さんはこうなることを潜在的に選んだのです。 つまり自分で望んだのです。
娘さんの死因は深いところにあったのです」
「原因?」
「そうです、この段階では詳しくは分かりませんが、母親あるいは身内に何かを分からせているのかも
知れませんね? もしくは自分自身に潜在してる深い問題ということも考えられますね」
「自分自身の……?」
「そうです、輪廻転生してきた理由です。 長い人生だけが天寿を全うしたとは限らないのです。
生まれることだけが目的の魂も存在します。 つまり、天寿とは人によってみな違います。
私はこの仕事をしてから沢山自分や他人の転生を視てきました。
輪廻転生の仕組みはひとつの偶然もない、本当によくできてるといつも痛感してます。 完璧です」
「つまり、娘の死も必然的ということですか?」
「はい、必然です。 先程申し上げたとおり本人と、ご家族の関係において何かしらのタイミングが
あって事が起きたわけです。 そこを知るにはもう幾つかの前世を視る必要がありますが、
蜘蛛の巣のように入り組んでますので、亡くなった娘さんの前世を視るのが本当は早道です」
「そうですか知ることは?」
「今、娘さんが転生してたらその娘さんの転生を視る方法しかありません」
「それは出来ないのですか?」
「今の段階では不可能です。 娘さんの転生先を知ることは出来ません。
転生してるかどうかも分かりませんから」
「わかりました。 ありがとうございます」
「では、もうひとつの転生視てみませんか?」
「はい、お願いします」
「では、先程渡した石を握って、近い過去を念じてみましょうか?」
「はい」
新見は石を握りしめて近い過去生を念じた。 また目眩がしてそして明るい場所に変わり
景色も雰囲気も一変した。
中川が「はい、新見様の中のもうひとつの前世です」
そこは、日本の昔で家屋は木造で茅葺き屋根や瓦屋根が印象的。
中川が「日本風ですね、しかも江戸時代かそれ以前かもしれませんね?」
新見が「たぶん二百年ほど前の大阪辺りかも……」
「新見さんは思い出すのが他の方達より早いですね、今まで方は思い出すのに数分ほどかかりましたよ」
「そうなんですか…… 街並みを見た瞬間すぐに理解できちゃうみたい」
「そうですか、では先程とおなじく景色に溶け込んで下さい」
次の瞬間、御服問屋の前方が現われた。
「まいどおおきに。 また宜しゅうおたのもうします」
問屋の上り框の所で中年男性が丁寧に挨拶をしていた。
新見が囁いた「あの番頭さんわたしです。 男性だったんですね、ここの店のいとはんと結婚し、
ゆくゆくは暖簾分けしようっていう話しを旦那さんからされました」
「それでどうなったんですか?」
「祝儀を挙げました。 そして子供を三人授かりました」
「そのお嫁さんは現在でも縁があるんですか?」
「妹だと思います。 たぶん間違いないです」
「そうですか。 今も妹さんとは仲がよろしいのですか?」
「はい、年子なので双子のように勘違いされることもあります。 そのくらい二人はいつも一緒でした」
「縁って面白いですね。 私もこの会社に世話になってから、つくづく実感しております。
縁って本当に良くできてるなあって……」
そして二人は町を探索して終えた。 社長室に移動し三人がソファーに腰掛けていた。
社長が「新見さんどうでした新商品は……?」
新見は「このサムサラ装置も面白いです。 前の装置は違う次元を客観的に見学するという感じでしたけど、
これは自分の内面、いや魂の一部ですから違った意味で凄いです。
今の自分に影響を与えているのはこのサムサラ装置で視た自分ですから。
因みに私はこの装置のほうが正直好みです。 もっともっと自分の内面を視たくなりました。
同時に来世は今をどう生きるかで変わるということも実感してます。
今の大切さを痛感しました。 本当に貴重な体験をありがとうございました」
こうして輪廻転生体験装置サムサラは、雑誌MOMOで取り上げられ、ハーデス観光は
再び脚光を浴び広く世間に知られることとなった。
社会的にも、全国のハローワークで装置を導入し、個人の潜在している過去世で培った能力を引出し、
職業の斡旋事業にのり出した。
職業訓練校では内在した能力を顕在化し発揮させるというカリキュラムが組まれた。
THE END
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