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2「テロリスト・テイジ」
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2「テロリスト・テイジ」
昭和32年5月に村井テイジは誕生した。
テイジは子供の頃から人と同じ事をするということにずっと抵抗を感じていた。
当然、学生になっても性格は変わらず、クラスみんなから何時も離れた存在だった。
なぜクラスのみんなと順応できないのか?
そう、テイジには普通のみんなと違う世界が視えていたのだった。
いつも周りと温度差があり馴染むことが出来ずにいた。
それは高校に入学して間もない頃。新しい学校とクラスに早くなじもうとしてた時、
同じクラスの斉藤正治の視線がやけに気になっていた。
ある日の放課後だった。
その正治君が「おい村井」声をかけてきた。
「なに・・・?」
「チョット体育館の裏に顔貸せや」正治の威圧的な態度。
「いいけど・・・?」
2人は体育館裏にいた。
正治君は急にテイジの胸ぐらを掴んだ「こら、村井おめえ生意気なんだよ。むかつくんだ・・・」
と言い終わらないうちにテイジの顔面をいきなり殴った。
不意のパンチにテイジは驚いた。
「正治君、僕は君に何をしたって言うの?」
「何時も俺に眼飛ばしやがて・・・」
テイジは意味が解らない「なんで僕が正治君に??・・・」
「うるせんだよ・・・」そう言って一方的に正治君は
その場を急ぎ足で去っていった。
その場に一人残されたテイジは狐に摘まれたように呆然と立ちつくしていた。
その日テイジは、夕食が終わり部屋に戻り、なんとなく殴られた左頬を触った瞬間だった。
突然、目眩がして目の前が暗くなった。一瞬昼間の後遺症か?と思った。
が、次の瞬間視界が明るくなった。
でも感覚が何んか変・・・どこか違う?
でも見覚えのある教室がそこにはあった。
視線の先には自分と斉藤正治の二人だけがいた。
もうひとりのテイジが斉藤に向かって怒鳴っていた。
「おい正治。少し金カンパしてくれ、3千円もあれば
良いからよ・・・」
テイジは正治を恐喝していたのだった。
「テイジ君、勘弁してよ・・・なんで僕が君にカンパするの?その理由が解らないんだけど・・・」
正治の声は震えていた。
瞬間テイジは正治の顔面にパンチを見舞った。
そしてテイジは自分に戻った。
???今の・・・なに???
「君のもうひとつの世界」心の奥で声がした。
どういう事?テイジは自問した。
「パラレル・ワールド」
パラレル・ワールド???聞いたことのない言葉だった。
また自問した?
それ何?
「平行する複数の世界と自分」
聞いたこと無いけど?
「この世界以外にも複数の世界が存在。その同時に進行する世界がパラレル・ワールド」
今度はその意識をハッキリと感じられた。
「じゃあ、今日の放課後に正治君に殴られたことと、今僕が正治君を
喝上げしたことと関係があるの?」
「正次君も別世界の僕の君への恐喝を視てきた。それを、恨みに感じて放課後こっちの君を殴った」
「今起こった恐喝を、なんで昨日僕を殴った正治君が知ってるの?」
「時間が軸が無いから」
時間軸が無いっていう意味が解らないけど・・・
「そのうち解る」
「別世界の僕が正治君を恐喝したから。それを知った
こっちの彼が放課後、僕へ復讐したって云うことなの?」
「ピンポーン、当り!」
「君でもピンポーンっていう云うんだ・・・」
「僕は君だから・・・」
「話し戻すけど、僕がそもそもの原因って事なの?」
「正解」
腑に落ちないテイジだった。
翌日、学校でテイジは正治に近寄った。
「意味が解ったよ、君もあっちの世界視えるわけ?」
正治はなんのことか理解できなかった。
「おい、村井もう一回殴ってやろうか?」
「???なんだよ、もういいよ・・・」
テイジは頭が混乱してきたので席についた。
そして、もうひとりの自分を念じて目を瞑った。
「どうした?」返事がきた。
「どうしたのじゃないよ。正治君に全然無視されたけど」
「彼は潜在意識で反応してたんだ。だから表面意識では全然解ってない」
「じゃあ謝った僕の立場はどうなるの?」
返答がなかった。
「無視かよ・・・・!心に呟いた」
テイジはその後パラレル・ワールドにトリップすることが増え、向こうの世界に親友と彼女が出来た。
こちらの世界の興味がだんだんと失せてきた。
高校を卒業して社会に出たが全てにおいて仕事に身が入らず、ある時この世を去る決心をした。
村井テイジ22歳。梅雨の時期で濡れた紫陽花から淡い香りのする頃。
こっちの世界はもういい・・・ハッキリいってこんな僕つまらん。
5階建てのマンションの屋上にテイジは立っていた。
飛び降りようとしたその時「待った!」大きな声が胸に響いた。
久々の感覚を感じ意識を内に向けた。
「パラレルの君が大変なことになってるんだ。
君の助けがほしいから死ぬのを少し待って欲しい。
死ぬのはそれからにしてくれないか?」
テイジは思った。
「こっちの僕も死のうとして大変なのに・・・
なんでパラレルの僕の手助けをしないといけないの?」
なんの返答もなかった。
死ぬ気が失せたテイジはその場に倒れ込んだ。
気が付いた時には何処か知らない街を歩いていた。
「ここは何処・・・?」
辺りを見渡すとアーケードがあり扇町と書いてあった。
「大阪の南森町にある扇町商店街?なんで?この街に?」当然の疑問である。
商店街を歩いていると後ろから声をかけられた。
「テイジやんか」
テイジは後ろを振り返った。そこに立っていたのはいかにも極道風のこわおもてのお兄さん。
「どなたですか?」
「なに、ねぶたい事言うとんねん!」
「な、なんですか?」テイジは少しムッとした。
「ほう、なんですか?ときたか・・・このボケが。
しばいたろか~ほんま」
「僕はあなたのこと知りませんけど・・・」
「なんやて?お前は村井テイジちゃうんかい・・・こら!」
「はい、確かに村井ですけど、おたくの言ってる村井さんとは違うと思います。
僕は今、ここへ来たばかりですけど・・・」
「なにこらっ!しょうもない標準語使いよってからに」
そうこうしてるうちにもうひとりの村井テイジが現われた。ふたりのテイジはお互い、
顔を合わせたまま止まってしまった。
大阪のテイジが言った「あんさん、どなたはんでっか?」
「僕は東京から来た村井と申します」
「わては、村井テイジ言いマンネン」
さっきの極道風のお兄さんは気色悪そうに去っていった。
「あの極道風のお兄さん、いきなり言い掛かりつけて
来たんで困ってました。いったい何なんですか?」
「すんまへんな・・・悪う思わんといてや。あれがこの辺の挨拶なんや。とでも謝って欲しんかい?
ボケが・・・それより、あんたに興味ありますねんけど・・年は幾つ?」
「22さい・・・」
「歳もわてと一緒やん。それはええけど折角の初顔合わせや、お好み焼きでも
食べながら話さへんか?・・・」
「良いけど僕、お金持ってないよ」
「お金はかまへんからわてに任せて。
けどお金持たんと、どないして大阪に来たん?」
「うん、好み焼き食べながらゆっくり話すよ」
2人は店に入った。
「いらっしゃいませ???あんれ、たまげた・・・
テイジはん、あんさん双子でおましたん?」
「いや、今日初めて会うたんや初顔合わせ。
お好み焼きでも食べながらゆっくり話そかって
言うことになってん」
「そうでっか、それにしてもよう似とりまんなぁ・・・」
水を差し出しながら2人をじろじろ見る店員だった。
「豚玉でええか?」
「うん、それで」
鉄板にお好み焼きをセットし終え、東京のテイジが「君もパラレル移動出来るの?」
「パラ・・・?パラレルって・・・それ何の話し?」
「平行宇宙だよ」
「平行宇宙って何・・・?」
「解った、じゃあ質問を変えるね。君、最近困ってる事無い?」
「お宅はんも初対面の相手に失礼なこと聞きまんなぁ。
一発どついたろか・・・」
「あっ、気悪くしたよね・・・そうだよね・・ごめんなさい」
「まぁええけど。それより何かしっくりきいへんけど、
何か事情あってここ大阪に来たんか?」
東京のテイジは今までの経緯を全部話して聞かせた。
「ホンマかいな?」
「本当だよ。これ見る?」
取り出したのは運転免許証。
手に取ったテイジは「ホンマや住所以外、ワイと同じや。
でも、待ってや??このひらなりって何?」
「ひらなり?・・・ああ、平成ね。・・えっ?」
大阪のテイジが財布から免許証を取り出した。
「ほら、比べてみいや」
「平成がない・・・西暦表示になってる?」
「なんや、そっちの世界はまだ天皇の元号制があるの?こっちは昭和の天皇が
亡くなった後、昔からある元号制の廃止があって西暦表示に変わったんや」
「じゃあ天皇家は?」
「普通にあるよ。変わったのは元号だけやけどな」
その時、大阪のテイジの携帯が鳴った。
「もしもし、へい・・・そうですか・・・解りました。
今、食事してますので食べたら行きます。ほな」
「ゴメンな急用やさかい、急いで食べよか!オッチャン先におあいそしてんか」
2人は店を出た。
「ところで、これからどないしますの?」
「別にあてはないけど・・・」
「じゃあ、ワシと一緒に行きまひょか」
「いいの?お邪魔じゃないの?」
「かましまへん」
2人のテイジは、雑居ビルの地下にいた。
「お待たせ・・・です」
「なんや?お前、兄弟おったんか?」
「はい、そんなようなもんです。東に児童の児と書いて東児と言います。訳あって
離ればなれになっとりました。こいつは東京で自分が大阪です」
「テイジに東児か・・・俺、ヤスシや。宜しく」
「東児です。宜しくお願いいたします」
「テイジ、ここのことは説明したんかい?」
「いえ、まだです」
「そうか、東児くん、よく聞いてや。他言したら大阪湾に沈みますが聞きますか?
それとも即刻帰りますか?どうします?即決で返事してくれます?」
テイジはこの事かと思い「聞きます」答えた。
「じゃあ簡単に話します。ようく聞いておいてや。
そして聞いたら最期や。もう一度聞きます。どうします?」
「聞きます」東児は即決した。
「よっしゃあ!我々はある国からの指示で動いていて
総勢56名からなる組織や。56名ほぼ全国に散らばり情報屋として活動してます。
目的はひとつ、この日本国を解体して北海道はロシアに、東京以北は韓国に、そこから南は
中国に譲渡される予定で動いとりまんのや。
その切っ掛けを与える仕事をわしらがするという段取り。
これから徐々に、そしてこの先5年かけて実行に移す計画や。
具体的な計画は今の段階では言えんけど。もう、実行部隊が動いとります。テイジの仕事は、
ネットでの情報かく乱と情報の伝達。これからの日本は面白くなりまっせ」
テイジには単なるテロとしか思えなかった。
大阪のテイジとヤスシは40分ほど打合せをし
その場から離れた。
「テイジ君は間違ってると思う。僕と一緒に
大阪から逃げようよ」
「もう無理なんや。わしは組織の中枢にいる人間やから、組織を離れる言うことは
死を意味するんや・・・
それに組織の奴ら俺の家族にまで害を及ぼす。
過去にそういう例をわしはこの目で見てんのや。
気を使こうてもうてありがとう。テイジくん」
テイジはなんでこの大阪に来たのかが解った。
でも、この先どうしたら良いのか見当が付かない。
何かハリウッドのテロ映画かドラマの世界に思えた。
その日はミナミの町に出て漫画喫茶で話しをした。
テイジはテロに反感を感じているのも解った。
この先、正直行き詰まりを感じた。
テイジが大阪に来てから半月が過ぎ、集会にも何度か顔を出したが
少し気になることがあった。
組織の首謀者が誰なのか全然解らないこと。
解ったのは、実行のさいの段取りだけが先行され、声明文や目的の核心が不明確・・・という事。
大阪のテイジやそれ以外の仲間も解っていないようだ。
全員に共通するのは、何かに怯えてるという点。
ある時、大阪のテイジにこんな話をしてみた。
「ねぇ、このことが実行され成功した時、
一番得するのは誰・・・?」
大阪のテイジは返答に困った。
「お前、なんちゅうこと聞くんや、しょうもない・・・」
「誰にどんなメリットがあるの?簡単な疑問だけど」
大阪のテイジは宙を見た。
「そうやな、みんな違う方に気をとられて、肝心要なこと見落とすところやった。
単純なことやがな。 誰の為にやるのやろ?中国?ロシア?韓国?アメリカ?
せや、これがホンマに日本の為になるんか?
なんや、怖くなってきたで、どないしよう?
東児、なんか言ってえな・・・」
2人の間に沈黙が走った。
しばらくして、東京のテイジが「とりあえず、
この組織の一番の頭は誰なの?」
「・・・解らん?」
東京のテイジは言葉を失った。
「解らんって・・・じゃあ、誰が何の為に?」
大阪のテイジは頭を抱えうずくまってしまった。
「中止しよう!」東京のテイジが呟いた。
「もう無理や・・・今日が実行日や」
「えっ?!」またも言葉を失った。
「実行場所は何処と何処なの?」
「東京発、福岡行きの新幹線と福岡発、千歳着の飛行機。
東京国会議員会館の3ヶ所で正午丁度に時限爆弾が・・・」
聞いたテイジは固まってしまった。
実行まであと1時間しかない。
「もう、中止出来ないんや。数ヶ月前から爆弾は解らないようにセットされてるし
外そうものなら、その場で爆発する仕組みになってるんや。 もう遅いで・・・」
東京のテイジは時間が止まったような感覚になった。
そうだ!パラレルのもうひとりのテイジに相談してみよう。
テイジは集中した。
即、返答があった「どうしたの?」そこにいたのはイラストレーターのテイジだった。
挨拶もそこそこに事の経緯を説明した。
そして出た解決策がこうだった。
3人各々に新幹線と飛行機に乗り込み、時限爆弾を外し抱えたまま瞬間移動して棄てるという、
漫画のような無謀な案だった。
タイミングが悪ければ当然その場で爆死。
テイジは早急な結論をせまられた。
残り時間10分に迫った。
外して太平洋に瞬間移動するまではもうぎりぎりの時間。3人のテイジは決心した。
3人は固い握手をして消えた。
新幹線に乗り込んだのは大阪のテイジだった。
「しゃあないなぁ、他の2人に迷惑かけてもうたがな。
わては死んでお詫びしよう。
2人のわて、ゴメンなさい・・・」
博多から札幌への飛行機にはイラストレーターのテイジが乗り込んだ。
「寒いなあ、ここは荷物室か?・・・突然の事で心の整理も何にも出来無いまま、ここに来てしまった。
夢なら早く覚めてほしい」
「僕はビルから飛び降りようとしたんだから、このまま場所が変わっただけだし。
人を救って死ねるんなら光栄だと思う。ただ、イラストレーターのテイジには申し訳ないと思う。
テイジさん、ごめんなさい」
次の瞬間、ビルの屋上にテイジはいた。
「なに?今の?超リアルなんだけど・・・?
大阪のテイジやイラストレーターのテイジやこの僕など・・
わけ解らないけど・・・それに、なんで僕がテロからこの国を
護らないといけないの?」
テイジは自殺するのが面倒くさくなったので辞めた。
END
昭和32年5月に村井テイジは誕生した。
テイジは子供の頃から人と同じ事をするということにずっと抵抗を感じていた。
当然、学生になっても性格は変わらず、クラスみんなから何時も離れた存在だった。
なぜクラスのみんなと順応できないのか?
そう、テイジには普通のみんなと違う世界が視えていたのだった。
いつも周りと温度差があり馴染むことが出来ずにいた。
それは高校に入学して間もない頃。新しい学校とクラスに早くなじもうとしてた時、
同じクラスの斉藤正治の視線がやけに気になっていた。
ある日の放課後だった。
その正治君が「おい村井」声をかけてきた。
「なに・・・?」
「チョット体育館の裏に顔貸せや」正治の威圧的な態度。
「いいけど・・・?」
2人は体育館裏にいた。
正治君は急にテイジの胸ぐらを掴んだ「こら、村井おめえ生意気なんだよ。むかつくんだ・・・」
と言い終わらないうちにテイジの顔面をいきなり殴った。
不意のパンチにテイジは驚いた。
「正治君、僕は君に何をしたって言うの?」
「何時も俺に眼飛ばしやがて・・・」
テイジは意味が解らない「なんで僕が正治君に??・・・」
「うるせんだよ・・・」そう言って一方的に正治君は
その場を急ぎ足で去っていった。
その場に一人残されたテイジは狐に摘まれたように呆然と立ちつくしていた。
その日テイジは、夕食が終わり部屋に戻り、なんとなく殴られた左頬を触った瞬間だった。
突然、目眩がして目の前が暗くなった。一瞬昼間の後遺症か?と思った。
が、次の瞬間視界が明るくなった。
でも感覚が何んか変・・・どこか違う?
でも見覚えのある教室がそこにはあった。
視線の先には自分と斉藤正治の二人だけがいた。
もうひとりのテイジが斉藤に向かって怒鳴っていた。
「おい正治。少し金カンパしてくれ、3千円もあれば
良いからよ・・・」
テイジは正治を恐喝していたのだった。
「テイジ君、勘弁してよ・・・なんで僕が君にカンパするの?その理由が解らないんだけど・・・」
正治の声は震えていた。
瞬間テイジは正治の顔面にパンチを見舞った。
そしてテイジは自分に戻った。
???今の・・・なに???
「君のもうひとつの世界」心の奥で声がした。
どういう事?テイジは自問した。
「パラレル・ワールド」
パラレル・ワールド???聞いたことのない言葉だった。
また自問した?
それ何?
「平行する複数の世界と自分」
聞いたこと無いけど?
「この世界以外にも複数の世界が存在。その同時に進行する世界がパラレル・ワールド」
今度はその意識をハッキリと感じられた。
「じゃあ、今日の放課後に正治君に殴られたことと、今僕が正治君を
喝上げしたことと関係があるの?」
「正次君も別世界の僕の君への恐喝を視てきた。それを、恨みに感じて放課後こっちの君を殴った」
「今起こった恐喝を、なんで昨日僕を殴った正治君が知ってるの?」
「時間が軸が無いから」
時間軸が無いっていう意味が解らないけど・・・
「そのうち解る」
「別世界の僕が正治君を恐喝したから。それを知った
こっちの彼が放課後、僕へ復讐したって云うことなの?」
「ピンポーン、当り!」
「君でもピンポーンっていう云うんだ・・・」
「僕は君だから・・・」
「話し戻すけど、僕がそもそもの原因って事なの?」
「正解」
腑に落ちないテイジだった。
翌日、学校でテイジは正治に近寄った。
「意味が解ったよ、君もあっちの世界視えるわけ?」
正治はなんのことか理解できなかった。
「おい、村井もう一回殴ってやろうか?」
「???なんだよ、もういいよ・・・」
テイジは頭が混乱してきたので席についた。
そして、もうひとりの自分を念じて目を瞑った。
「どうした?」返事がきた。
「どうしたのじゃないよ。正治君に全然無視されたけど」
「彼は潜在意識で反応してたんだ。だから表面意識では全然解ってない」
「じゃあ謝った僕の立場はどうなるの?」
返答がなかった。
「無視かよ・・・・!心に呟いた」
テイジはその後パラレル・ワールドにトリップすることが増え、向こうの世界に親友と彼女が出来た。
こちらの世界の興味がだんだんと失せてきた。
高校を卒業して社会に出たが全てにおいて仕事に身が入らず、ある時この世を去る決心をした。
村井テイジ22歳。梅雨の時期で濡れた紫陽花から淡い香りのする頃。
こっちの世界はもういい・・・ハッキリいってこんな僕つまらん。
5階建てのマンションの屋上にテイジは立っていた。
飛び降りようとしたその時「待った!」大きな声が胸に響いた。
久々の感覚を感じ意識を内に向けた。
「パラレルの君が大変なことになってるんだ。
君の助けがほしいから死ぬのを少し待って欲しい。
死ぬのはそれからにしてくれないか?」
テイジは思った。
「こっちの僕も死のうとして大変なのに・・・
なんでパラレルの僕の手助けをしないといけないの?」
なんの返答もなかった。
死ぬ気が失せたテイジはその場に倒れ込んだ。
気が付いた時には何処か知らない街を歩いていた。
「ここは何処・・・?」
辺りを見渡すとアーケードがあり扇町と書いてあった。
「大阪の南森町にある扇町商店街?なんで?この街に?」当然の疑問である。
商店街を歩いていると後ろから声をかけられた。
「テイジやんか」
テイジは後ろを振り返った。そこに立っていたのはいかにも極道風のこわおもてのお兄さん。
「どなたですか?」
「なに、ねぶたい事言うとんねん!」
「な、なんですか?」テイジは少しムッとした。
「ほう、なんですか?ときたか・・・このボケが。
しばいたろか~ほんま」
「僕はあなたのこと知りませんけど・・・」
「なんやて?お前は村井テイジちゃうんかい・・・こら!」
「はい、確かに村井ですけど、おたくの言ってる村井さんとは違うと思います。
僕は今、ここへ来たばかりですけど・・・」
「なにこらっ!しょうもない標準語使いよってからに」
そうこうしてるうちにもうひとりの村井テイジが現われた。ふたりのテイジはお互い、
顔を合わせたまま止まってしまった。
大阪のテイジが言った「あんさん、どなたはんでっか?」
「僕は東京から来た村井と申します」
「わては、村井テイジ言いマンネン」
さっきの極道風のお兄さんは気色悪そうに去っていった。
「あの極道風のお兄さん、いきなり言い掛かりつけて
来たんで困ってました。いったい何なんですか?」
「すんまへんな・・・悪う思わんといてや。あれがこの辺の挨拶なんや。とでも謝って欲しんかい?
ボケが・・・それより、あんたに興味ありますねんけど・・年は幾つ?」
「22さい・・・」
「歳もわてと一緒やん。それはええけど折角の初顔合わせや、お好み焼きでも
食べながら話さへんか?・・・」
「良いけど僕、お金持ってないよ」
「お金はかまへんからわてに任せて。
けどお金持たんと、どないして大阪に来たん?」
「うん、好み焼き食べながらゆっくり話すよ」
2人は店に入った。
「いらっしゃいませ???あんれ、たまげた・・・
テイジはん、あんさん双子でおましたん?」
「いや、今日初めて会うたんや初顔合わせ。
お好み焼きでも食べながらゆっくり話そかって
言うことになってん」
「そうでっか、それにしてもよう似とりまんなぁ・・・」
水を差し出しながら2人をじろじろ見る店員だった。
「豚玉でええか?」
「うん、それで」
鉄板にお好み焼きをセットし終え、東京のテイジが「君もパラレル移動出来るの?」
「パラ・・・?パラレルって・・・それ何の話し?」
「平行宇宙だよ」
「平行宇宙って何・・・?」
「解った、じゃあ質問を変えるね。君、最近困ってる事無い?」
「お宅はんも初対面の相手に失礼なこと聞きまんなぁ。
一発どついたろか・・・」
「あっ、気悪くしたよね・・・そうだよね・・ごめんなさい」
「まぁええけど。それより何かしっくりきいへんけど、
何か事情あってここ大阪に来たんか?」
東京のテイジは今までの経緯を全部話して聞かせた。
「ホンマかいな?」
「本当だよ。これ見る?」
取り出したのは運転免許証。
手に取ったテイジは「ホンマや住所以外、ワイと同じや。
でも、待ってや??このひらなりって何?」
「ひらなり?・・・ああ、平成ね。・・えっ?」
大阪のテイジが財布から免許証を取り出した。
「ほら、比べてみいや」
「平成がない・・・西暦表示になってる?」
「なんや、そっちの世界はまだ天皇の元号制があるの?こっちは昭和の天皇が
亡くなった後、昔からある元号制の廃止があって西暦表示に変わったんや」
「じゃあ天皇家は?」
「普通にあるよ。変わったのは元号だけやけどな」
その時、大阪のテイジの携帯が鳴った。
「もしもし、へい・・・そうですか・・・解りました。
今、食事してますので食べたら行きます。ほな」
「ゴメンな急用やさかい、急いで食べよか!オッチャン先におあいそしてんか」
2人は店を出た。
「ところで、これからどないしますの?」
「別にあてはないけど・・・」
「じゃあ、ワシと一緒に行きまひょか」
「いいの?お邪魔じゃないの?」
「かましまへん」
2人のテイジは、雑居ビルの地下にいた。
「お待たせ・・・です」
「なんや?お前、兄弟おったんか?」
「はい、そんなようなもんです。東に児童の児と書いて東児と言います。訳あって
離ればなれになっとりました。こいつは東京で自分が大阪です」
「テイジに東児か・・・俺、ヤスシや。宜しく」
「東児です。宜しくお願いいたします」
「テイジ、ここのことは説明したんかい?」
「いえ、まだです」
「そうか、東児くん、よく聞いてや。他言したら大阪湾に沈みますが聞きますか?
それとも即刻帰りますか?どうします?即決で返事してくれます?」
テイジはこの事かと思い「聞きます」答えた。
「じゃあ簡単に話します。ようく聞いておいてや。
そして聞いたら最期や。もう一度聞きます。どうします?」
「聞きます」東児は即決した。
「よっしゃあ!我々はある国からの指示で動いていて
総勢56名からなる組織や。56名ほぼ全国に散らばり情報屋として活動してます。
目的はひとつ、この日本国を解体して北海道はロシアに、東京以北は韓国に、そこから南は
中国に譲渡される予定で動いとりまんのや。
その切っ掛けを与える仕事をわしらがするという段取り。
これから徐々に、そしてこの先5年かけて実行に移す計画や。
具体的な計画は今の段階では言えんけど。もう、実行部隊が動いとります。テイジの仕事は、
ネットでの情報かく乱と情報の伝達。これからの日本は面白くなりまっせ」
テイジには単なるテロとしか思えなかった。
大阪のテイジとヤスシは40分ほど打合せをし
その場から離れた。
「テイジ君は間違ってると思う。僕と一緒に
大阪から逃げようよ」
「もう無理なんや。わしは組織の中枢にいる人間やから、組織を離れる言うことは
死を意味するんや・・・
それに組織の奴ら俺の家族にまで害を及ぼす。
過去にそういう例をわしはこの目で見てんのや。
気を使こうてもうてありがとう。テイジくん」
テイジはなんでこの大阪に来たのかが解った。
でも、この先どうしたら良いのか見当が付かない。
何かハリウッドのテロ映画かドラマの世界に思えた。
その日はミナミの町に出て漫画喫茶で話しをした。
テイジはテロに反感を感じているのも解った。
この先、正直行き詰まりを感じた。
テイジが大阪に来てから半月が過ぎ、集会にも何度か顔を出したが
少し気になることがあった。
組織の首謀者が誰なのか全然解らないこと。
解ったのは、実行のさいの段取りだけが先行され、声明文や目的の核心が不明確・・・という事。
大阪のテイジやそれ以外の仲間も解っていないようだ。
全員に共通するのは、何かに怯えてるという点。
ある時、大阪のテイジにこんな話をしてみた。
「ねぇ、このことが実行され成功した時、
一番得するのは誰・・・?」
大阪のテイジは返答に困った。
「お前、なんちゅうこと聞くんや、しょうもない・・・」
「誰にどんなメリットがあるの?簡単な疑問だけど」
大阪のテイジは宙を見た。
「そうやな、みんな違う方に気をとられて、肝心要なこと見落とすところやった。
単純なことやがな。 誰の為にやるのやろ?中国?ロシア?韓国?アメリカ?
せや、これがホンマに日本の為になるんか?
なんや、怖くなってきたで、どないしよう?
東児、なんか言ってえな・・・」
2人の間に沈黙が走った。
しばらくして、東京のテイジが「とりあえず、
この組織の一番の頭は誰なの?」
「・・・解らん?」
東京のテイジは言葉を失った。
「解らんって・・・じゃあ、誰が何の為に?」
大阪のテイジは頭を抱えうずくまってしまった。
「中止しよう!」東京のテイジが呟いた。
「もう無理や・・・今日が実行日や」
「えっ?!」またも言葉を失った。
「実行場所は何処と何処なの?」
「東京発、福岡行きの新幹線と福岡発、千歳着の飛行機。
東京国会議員会館の3ヶ所で正午丁度に時限爆弾が・・・」
聞いたテイジは固まってしまった。
実行まであと1時間しかない。
「もう、中止出来ないんや。数ヶ月前から爆弾は解らないようにセットされてるし
外そうものなら、その場で爆発する仕組みになってるんや。 もう遅いで・・・」
東京のテイジは時間が止まったような感覚になった。
そうだ!パラレルのもうひとりのテイジに相談してみよう。
テイジは集中した。
即、返答があった「どうしたの?」そこにいたのはイラストレーターのテイジだった。
挨拶もそこそこに事の経緯を説明した。
そして出た解決策がこうだった。
3人各々に新幹線と飛行機に乗り込み、時限爆弾を外し抱えたまま瞬間移動して棄てるという、
漫画のような無謀な案だった。
タイミングが悪ければ当然その場で爆死。
テイジは早急な結論をせまられた。
残り時間10分に迫った。
外して太平洋に瞬間移動するまではもうぎりぎりの時間。3人のテイジは決心した。
3人は固い握手をして消えた。
新幹線に乗り込んだのは大阪のテイジだった。
「しゃあないなぁ、他の2人に迷惑かけてもうたがな。
わては死んでお詫びしよう。
2人のわて、ゴメンなさい・・・」
博多から札幌への飛行機にはイラストレーターのテイジが乗り込んだ。
「寒いなあ、ここは荷物室か?・・・突然の事で心の整理も何にも出来無いまま、ここに来てしまった。
夢なら早く覚めてほしい」
「僕はビルから飛び降りようとしたんだから、このまま場所が変わっただけだし。
人を救って死ねるんなら光栄だと思う。ただ、イラストレーターのテイジには申し訳ないと思う。
テイジさん、ごめんなさい」
次の瞬間、ビルの屋上にテイジはいた。
「なに?今の?超リアルなんだけど・・・?
大阪のテイジやイラストレーターのテイジやこの僕など・・
わけ解らないけど・・・それに、なんで僕がテロからこの国を
護らないといけないの?」
テイジは自殺するのが面倒くさくなったので辞めた。
END
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