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3「KY・TEIZI」
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3「KY・TEIZI」
「帰れ!・帰れ!・帰れ!・帰れ!・帰れ!」
コンサート会場は突如、帰れコールに包まれた。
ステージから「う~~るせんだ~~つぅの!帰りたがったらおめえらが帰れや!
俺は俺の歌を聞きてぇ客がいるから歌うそんだけ・・・
なんか文句あっか!このやろう・・・」
「ば~~か。おめぇが帰れ!・・馬鹿野郎が!
おめぇは誰だ・・・?」客席からの罵声がつづく。
「誰だ!今、馬鹿野郎と云ったのは?どいつだ~
出てこいコラ?」
ステージと客席は大荒れ。
ステージ横では本日のメインミュージシャンのリョウが見守っていた。
スタッフから、ところであいつ誰だ?関係者は誰も解らない。
そのうちスタッフが気ぜわしく動き始めた。
「あいつ、もしかして部外者じゃねえのか?」誰かが叫んだ。
「マジで?」
「ウソでしょ・・・」
「オイ!誰か引きずり下ろせ!」チーフリーダー久慈の声だ。
ステージにスタッフの4人が出て、その男を羽交い締めにし退場させた。
会場は笑いの渦に包まれた。
会場から「あいつ誰?・・・馬鹿だけどおもしれェ」
「はははは・・」会場は笑いでどよめいていた。
楽屋では「あんた、いったい誰?誰かの関係者?
警察に通報するよ」
「俺、ミュージシャンのTEIZIだけど・・・」
「えっ???」
「TEIZI」彼は満面の笑みで答えた。
スタッフは「解った。で、今日は何?」
「何って・・おめぇ、一曲歌おうかと思ってステージに上がっただけだんべ」
「一曲歌う???で誰が許可したの?」
「許可っておめぇ・・・??必要なの?」
「当たり前だ」
TEIZIは辺りを指さして「そっだらこと何処に書いてあるんだ?オイ」
「じゃあ聞くけど、ステージに勝手に上がって良いって
何処に書いてありますか?」
「書いてねえけんども、客が暇そうだったから、ここらでオラが一曲、
歌ってやんべかと思って・・・そしたらおめえ、帰れ帰れって人っ
この歌を聞く前に言うもんだから、礼儀を教えてやろうと思ってつい・・・
なっ、オラ悪くねっぺ・・・?」
「悪いです」
「あ~~んら、おめっ!礼儀、教えることのどこが悪いってんだ?」
「あんたねぇ、時と場所があるでしょ。
あんたは勝手に他人の家に入ってきて、
礼儀が悪いとどやしつけてるだけなの」
「う~ん、なるほど。おめぇは頭良いな。
さては、おめぇ大学出が?」
「で、どうなんです?」
「オラが悪かった。どんもすみませんでした」スタッフに深々と頭を下げた。
「あっ、解ってくれれば、それで良いですけど・・」
スタッフはTEIZIのあっけない返答に拍子抜けした。
「じゃあ、今日のところは大目に見ますから、おとなしく帰って下さい」
「はい!失礼しました」いさぎよい返事だった。
TEIZIは楽屋を後にした。
リョウのコンサートは無事終わりアンコールの拍手が始まった。
リョウが渇いた喉を潤し、ギターをもって再びステージに向かおうとした時だった。
会場で歓声が上がっていた。
一瞬リョウは戸惑った・・・なに?何にが起こったのか解らなかった。
ステージ上ではギターを持った、あのTEIZIが立っていた。
「さっきは、どうもごめんなさい。皆さんが暇そうにしてたから、僕が、歌ッこさ一曲歌おうと思いまして、
そしたらあんな事になりまひた。どうもすみまへんでした・・・」
客席から「おう、素直に謝ったから許す。にしても、
おめぇ・・なんでギター持ってんだ?」
観客はどっと笑った。
ステージ袖では「あいつ、まだいたのか!とっととつまみ出せ~」
リョウが云った「チョット待って。一曲、聞いてみない?客も喜んでるし、僕も興味あるんだ・・・」
「僕、TEIZIって云います。王貞治の貞治と書いてTEIZIと読みます。青森から来ました。
チョット訛ってます」
「だいぶ訛ってんぞ」客が言った。
「すんません、歌います」
「曲は、オラのオリズナル曲でねぶたの星」
客席はまた沸いた。
歌は最悪だった。
そのうち客席から「おめぇ青森に帰れ!キャラは面白いけど歌は辞めたほうがいい」
「いや、心はある。顔は悪いけど」
客席は歌を聞くというより、野次合戦に変わっていった。
TEIZIの歌が終わると同時に、会場にはリョウのアンコール曲のイントロが流れた。
客は大盛り上がりで会場は揺れていた。
興奮の中、コンサートは無事終わった。
リョウが楽屋に戻る途中の通路にあのTEIZIが立っていた。
リョウは笑顔で通り過ぎた。
TEIZIはまたスタッフに呼ばれた。
スタッフが「あなた今度はなに?」
「いや、謝りたいと思って・・・」
「なんでギター持って行くの?」
「あっ、はい・・・いえ」
「で?TEIZIさんは何が言いたいのですか?」
「いえ、帰ります・・・」
「今度は無いと思うけど、あったらその時は本当に警察呼びますから。
じゃあ、そう言うことで・・・さようなら!」
TEIZIは会場を後にし駅へと向かった。
そして、そのまま青森行きの新幹線に乗り帰って行った。
新幹線の中で「どうしたもんかなあぁ~~なんで解ってくんねぇかな~や。」
あくまでも自分は最高のミュージシャンだと思っていた。
「帰れ!・帰れ!・・帰れ!」
コンサート会場は帰れコールに包まれた。
ステージからは「う~るせんだ~つぅの!帰りたかったらおめえらが帰れ!」
どこかで見たことのある場面だった。
「俺はリョウからも前フリ頼まれて歌ったことあるんだぞ・・・
だからこうして・・・&$%$(’%」
例のTEIZIだった。そして警備員に強制退去された。
「あんた困りますよ~~。何なんですか?
あんたは誰・・・?」スタッフの強い口調。
「TEIZIだよ・・・」
「TEIZI?・・で、なんなの?」
「いや、客が暇そうだから・・その・・・」
「暇そうだからどうしたの?」
「歌を・・・その・・一曲・・・僕が」
「一曲どうしたの?」スタッフの語気は荒かった。
「挨拶代わりに・・」
「なんで、あんたが挨拶するの?ここは、アヤカのステージなの。みんなこれから興奮する為に、
嵐の前の静けさをあえて作ってるの。エネルギーを充電してるの・・・わかる?」
「会場のみんなは、一曲目から弾けるために、今はエネルギーを充電してるとこなのね。
それを、あんたがたった今、台無しにしてしまったの。どうしてくれるんだ!・・・警察呼ぶか・・」
「僕、みんなに謝ってきます」
「どうやって?」
「いえ、ステージに立って・・・・」
「お・ま・え・は馬鹿か?おい、誰か警察呼べや。コイツは俺らではどうにもならねえ。
思考回路がブッ飛んでるぞあとは警察に任せようぜ」
「あの~う、チョット待って下さい」アヤカ本人だった。
スタッフが「アヤカさん、こいつは・・・」
「いえ、すぐ終わります。ごめんなさい」
アヤカ.は振り返ってTEIZIに視線をむけた。
「TEIZIさん・・・と云いましたね。私の歌、聞いたことあります?」
テイジはアヤカに視線を向けて云った「???あんた誰?」
スタッフが「コイツ、やっぱ、つまみ出せオイ!」
アヤカは微笑み淡々とした口調で「私がそのアヤカと申します」
「えっ?お姉さんがか・・・?僕、ファースト・メッセージのアルバム持ってます。なんか、
アルバムの写真と実物では全然違うはんで解りまへんでした。
アルバムはやっぱり綺麗に修正するんだな~や」
「どっちが綺麗ですか?」
「アルバムだな」即答だった。
スタッフが「おい、やっぱ警察呼べ・・・」
TEIZIは言った「メモリーや、はぎの月は確かに良いけど・・・
オラ個人的には時を返してと日常の物語が好きだな」
「どういうとこが好きなの?」
「日常の物語は静かなメロディーでいて、しっかりとしたアヤカらしいアレンジがオラは好きだ。
時を返しては歌詞が好きだ。特に2番目の歌詞の始まりは良いな~あのアルバムは良く出来てると思ったよ」
「君ね、いい加減にその生意気な・・・」
その時、アヤカはスタッフを制した。
「ちゃんとアルバム聞いてくれてるんですね、ありがとうございます。
皆さん、今日は大目に見てあげて下さい。本当に私のアルバム、
聞いてくれてるみたいで、アヤカ嬉しいんです。
どうか私に免じて何とぞお許し下さい」
「アヤカさんのお気持ちは解りました。でも、コイツは・・・解りました・・
アヤカさんがそう言うなら・・
但し、今度、なにかしでかしたら即刻警察呼びますからね・・・」
TEIZIが「アヤカさん、よかったね」
スタッフは「あんたね・・・まっ、いいかこのまま帰って下さい」
「僕、チケット買って青森から東京さ来たんですけど・・・
客席から見させて下さい・・・ほらプレミア席だんべ・・・なぁ」
スタッフは係員に「席にお連れして」
アヤカがステージに立った時、プレミア席にTEIZIの姿を確認した。
歓声の中でもひときわTEIZIの大きな声援がアヤカの耳に残った。
コンサートは何事もなく終了した。
TEIZIは会場を後にし東京駅へと向かい、そのまま青森行きの新幹線に乗って帰って行った。
新幹線の中で「どうしたもんかなあぁ~~なんでみんな解ってくんねぇかな~
まだオラを理解するのには少し
時代が早かったようだな・・・?」
ある土曜日の夜、井の頭公園の野外ステージに
あのTEIZIがギターを抱えて座っていた。
TEIZIの廻りにはビールの空き缶が散乱していた。
そこに中年の男が近寄ってきた。
「よう、兄さんなんか歌ってくんネエかな?」
「おい、じじい。他人にものを頼む態度がいい年こいて
解らねえようだな~~や」
「なんじゃいおめぇ・・・偉そうに。青森で相手にされねえもんだから東京に出て来たか?」
「えっ・・・?おめぇさん、オラのこと知ってるだか?」
「いや、おめぇの事なんか知らねえ、その訛りは青森しかいねえべ。バーカ」
「おめぇさん、洞察力あんな。見上げたもんだ。
きっと名のあるお方か?」
「そういう問題じゃあねえ、その訛り聞けば誰でも
青森だって解るってぇの・・・」
「いや、てぇしたもんだ!おめぇ様、なになさってる
お方だ?」
「そんなこといいから。なんか歌うのか?
歌わねぇのか?どっちなんだ?めんどくせえ」
「解ったよ。歌うけどリクエストなんかあるけ?」
「ビバリの愛凛々でもやってくれよ」
「じじぃ、・・・ちゃんとさんを付けろや・・・
ビバリさんと呼べ!ビバリ先生とか言い方あるべ」
「おめぇビバリ好きなんだか?」
「いや!そうでもねぇけど。どうしてだ?」
「いんや、面倒くせからいい・・・」
「解った。じゃあ『川の流れたように』歌います」
「おめぇ!一曲歌うまで長げぇよ・・・」
「すらず、すらず歩いてきた、細く長いこの道~」
男性は「まったく、人の話し聞いてねえし・・・」
「青森兄さん、もういい・・・」
「どうしたんだ?これからだべ???」
「兄さんと、この歌の意見が合わねぇようだな。
まっ、そういう事もあるさ。次、歌おうや」
「・・・そっか?なに聞きてぇだ?」
「そしたら、最近の歌いこうか?アヤカなんてどうだ?」
「あぁ、つい最近彼女と会ったよ。彼女、僕を気に入ったみたいでさ、
スタッフに僕のこと紹介してたよ。
さすがの僕も少し照れたけどね・・・」
「兄さん、急に標準語になったけど・・・どうかしたか?」
「そんなことないよ」
「めんどくせぇ・・・いいから歌えや」
「じゃぁリクエストに応えて。アヤカのアルバム・ファーストメッセージから
『はぎの月』聞いて下さい・・・」
「ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道・・・」
TEIZIが歌い終わった時には爺さんの姿は
消えていた。
「みんな、アヤカの曲の良さが解らねんだな・・・」
翌日も朝早くから井の頭公園でギターを抱えて
池を眺めていた。池の向こうに知った顔があった。
おっ、昨日の爺さんだ。
「お~~い爺さん」大きな声で叫んだ。
爺さんは知らん顔して足早に去ろうとしていた。
明らかに避けているとしか思えない足取り。
TEIZIは執拗に追いかけて爺さんの前にでた。
「爺さん、おはよう!」満面の笑みを浮かべていた。
「おう、昨日の君か?ワシは用事があるんで。
それじゃあな・・・」
「昨日、急にいなくなってどうした?」
「腹が痛くなってのう、折角歌ってるのに水を差すようで悪いと思ったで黙って帰った」
「そっか。心配したぞ。んで、もう大丈夫か?」
「いや、まだ少し病むけど昨日よりは良くなったよ」
「昨日の続き、歌おうか?」
「いや、そそそれにはおよばん。ワシは急ぐんで、
それじゃ。兄さんがんばれよ・・・」
老人は去っていった。
なんだよ、ひとが折角、青森から歌っこさ歌いに来たのに・・・
聞いたのは途中で腹痛くて帰った爺いだけか・・・
また、誰かのコンサートに飛び入りすっぺかな・・・。
吉幾二にすっぺか?
百昌夫か?ドリカムもいいな・・・
なんかワクワクするな・・・・
E N D
「帰れ!・帰れ!・帰れ!・帰れ!・帰れ!」
コンサート会場は突如、帰れコールに包まれた。
ステージから「う~~るせんだ~~つぅの!帰りたがったらおめえらが帰れや!
俺は俺の歌を聞きてぇ客がいるから歌うそんだけ・・・
なんか文句あっか!このやろう・・・」
「ば~~か。おめぇが帰れ!・・馬鹿野郎が!
おめぇは誰だ・・・?」客席からの罵声がつづく。
「誰だ!今、馬鹿野郎と云ったのは?どいつだ~
出てこいコラ?」
ステージと客席は大荒れ。
ステージ横では本日のメインミュージシャンのリョウが見守っていた。
スタッフから、ところであいつ誰だ?関係者は誰も解らない。
そのうちスタッフが気ぜわしく動き始めた。
「あいつ、もしかして部外者じゃねえのか?」誰かが叫んだ。
「マジで?」
「ウソでしょ・・・」
「オイ!誰か引きずり下ろせ!」チーフリーダー久慈の声だ。
ステージにスタッフの4人が出て、その男を羽交い締めにし退場させた。
会場は笑いの渦に包まれた。
会場から「あいつ誰?・・・馬鹿だけどおもしれェ」
「はははは・・」会場は笑いでどよめいていた。
楽屋では「あんた、いったい誰?誰かの関係者?
警察に通報するよ」
「俺、ミュージシャンのTEIZIだけど・・・」
「えっ???」
「TEIZI」彼は満面の笑みで答えた。
スタッフは「解った。で、今日は何?」
「何って・・おめぇ、一曲歌おうかと思ってステージに上がっただけだんべ」
「一曲歌う???で誰が許可したの?」
「許可っておめぇ・・・??必要なの?」
「当たり前だ」
TEIZIは辺りを指さして「そっだらこと何処に書いてあるんだ?オイ」
「じゃあ聞くけど、ステージに勝手に上がって良いって
何処に書いてありますか?」
「書いてねえけんども、客が暇そうだったから、ここらでオラが一曲、
歌ってやんべかと思って・・・そしたらおめえ、帰れ帰れって人っ
この歌を聞く前に言うもんだから、礼儀を教えてやろうと思ってつい・・・
なっ、オラ悪くねっぺ・・・?」
「悪いです」
「あ~~んら、おめっ!礼儀、教えることのどこが悪いってんだ?」
「あんたねぇ、時と場所があるでしょ。
あんたは勝手に他人の家に入ってきて、
礼儀が悪いとどやしつけてるだけなの」
「う~ん、なるほど。おめぇは頭良いな。
さては、おめぇ大学出が?」
「で、どうなんです?」
「オラが悪かった。どんもすみませんでした」スタッフに深々と頭を下げた。
「あっ、解ってくれれば、それで良いですけど・・」
スタッフはTEIZIのあっけない返答に拍子抜けした。
「じゃあ、今日のところは大目に見ますから、おとなしく帰って下さい」
「はい!失礼しました」いさぎよい返事だった。
TEIZIは楽屋を後にした。
リョウのコンサートは無事終わりアンコールの拍手が始まった。
リョウが渇いた喉を潤し、ギターをもって再びステージに向かおうとした時だった。
会場で歓声が上がっていた。
一瞬リョウは戸惑った・・・なに?何にが起こったのか解らなかった。
ステージ上ではギターを持った、あのTEIZIが立っていた。
「さっきは、どうもごめんなさい。皆さんが暇そうにしてたから、僕が、歌ッこさ一曲歌おうと思いまして、
そしたらあんな事になりまひた。どうもすみまへんでした・・・」
客席から「おう、素直に謝ったから許す。にしても、
おめぇ・・なんでギター持ってんだ?」
観客はどっと笑った。
ステージ袖では「あいつ、まだいたのか!とっととつまみ出せ~」
リョウが云った「チョット待って。一曲、聞いてみない?客も喜んでるし、僕も興味あるんだ・・・」
「僕、TEIZIって云います。王貞治の貞治と書いてTEIZIと読みます。青森から来ました。
チョット訛ってます」
「だいぶ訛ってんぞ」客が言った。
「すんません、歌います」
「曲は、オラのオリズナル曲でねぶたの星」
客席はまた沸いた。
歌は最悪だった。
そのうち客席から「おめぇ青森に帰れ!キャラは面白いけど歌は辞めたほうがいい」
「いや、心はある。顔は悪いけど」
客席は歌を聞くというより、野次合戦に変わっていった。
TEIZIの歌が終わると同時に、会場にはリョウのアンコール曲のイントロが流れた。
客は大盛り上がりで会場は揺れていた。
興奮の中、コンサートは無事終わった。
リョウが楽屋に戻る途中の通路にあのTEIZIが立っていた。
リョウは笑顔で通り過ぎた。
TEIZIはまたスタッフに呼ばれた。
スタッフが「あなた今度はなに?」
「いや、謝りたいと思って・・・」
「なんでギター持って行くの?」
「あっ、はい・・・いえ」
「で?TEIZIさんは何が言いたいのですか?」
「いえ、帰ります・・・」
「今度は無いと思うけど、あったらその時は本当に警察呼びますから。
じゃあ、そう言うことで・・・さようなら!」
TEIZIは会場を後にし駅へと向かった。
そして、そのまま青森行きの新幹線に乗り帰って行った。
新幹線の中で「どうしたもんかなあぁ~~なんで解ってくんねぇかな~や。」
あくまでも自分は最高のミュージシャンだと思っていた。
「帰れ!・帰れ!・・帰れ!」
コンサート会場は帰れコールに包まれた。
ステージからは「う~るせんだ~つぅの!帰りたかったらおめえらが帰れ!」
どこかで見たことのある場面だった。
「俺はリョウからも前フリ頼まれて歌ったことあるんだぞ・・・
だからこうして・・・&$%$(’%」
例のTEIZIだった。そして警備員に強制退去された。
「あんた困りますよ~~。何なんですか?
あんたは誰・・・?」スタッフの強い口調。
「TEIZIだよ・・・」
「TEIZI?・・で、なんなの?」
「いや、客が暇そうだから・・その・・・」
「暇そうだからどうしたの?」
「歌を・・・その・・一曲・・・僕が」
「一曲どうしたの?」スタッフの語気は荒かった。
「挨拶代わりに・・」
「なんで、あんたが挨拶するの?ここは、アヤカのステージなの。みんなこれから興奮する為に、
嵐の前の静けさをあえて作ってるの。エネルギーを充電してるの・・・わかる?」
「会場のみんなは、一曲目から弾けるために、今はエネルギーを充電してるとこなのね。
それを、あんたがたった今、台無しにしてしまったの。どうしてくれるんだ!・・・警察呼ぶか・・」
「僕、みんなに謝ってきます」
「どうやって?」
「いえ、ステージに立って・・・・」
「お・ま・え・は馬鹿か?おい、誰か警察呼べや。コイツは俺らではどうにもならねえ。
思考回路がブッ飛んでるぞあとは警察に任せようぜ」
「あの~う、チョット待って下さい」アヤカ本人だった。
スタッフが「アヤカさん、こいつは・・・」
「いえ、すぐ終わります。ごめんなさい」
アヤカ.は振り返ってTEIZIに視線をむけた。
「TEIZIさん・・・と云いましたね。私の歌、聞いたことあります?」
テイジはアヤカに視線を向けて云った「???あんた誰?」
スタッフが「コイツ、やっぱ、つまみ出せオイ!」
アヤカは微笑み淡々とした口調で「私がそのアヤカと申します」
「えっ?お姉さんがか・・・?僕、ファースト・メッセージのアルバム持ってます。なんか、
アルバムの写真と実物では全然違うはんで解りまへんでした。
アルバムはやっぱり綺麗に修正するんだな~や」
「どっちが綺麗ですか?」
「アルバムだな」即答だった。
スタッフが「おい、やっぱ警察呼べ・・・」
TEIZIは言った「メモリーや、はぎの月は確かに良いけど・・・
オラ個人的には時を返してと日常の物語が好きだな」
「どういうとこが好きなの?」
「日常の物語は静かなメロディーでいて、しっかりとしたアヤカらしいアレンジがオラは好きだ。
時を返しては歌詞が好きだ。特に2番目の歌詞の始まりは良いな~あのアルバムは良く出来てると思ったよ」
「君ね、いい加減にその生意気な・・・」
その時、アヤカはスタッフを制した。
「ちゃんとアルバム聞いてくれてるんですね、ありがとうございます。
皆さん、今日は大目に見てあげて下さい。本当に私のアルバム、
聞いてくれてるみたいで、アヤカ嬉しいんです。
どうか私に免じて何とぞお許し下さい」
「アヤカさんのお気持ちは解りました。でも、コイツは・・・解りました・・
アヤカさんがそう言うなら・・
但し、今度、なにかしでかしたら即刻警察呼びますからね・・・」
TEIZIが「アヤカさん、よかったね」
スタッフは「あんたね・・・まっ、いいかこのまま帰って下さい」
「僕、チケット買って青森から東京さ来たんですけど・・・
客席から見させて下さい・・・ほらプレミア席だんべ・・・なぁ」
スタッフは係員に「席にお連れして」
アヤカがステージに立った時、プレミア席にTEIZIの姿を確認した。
歓声の中でもひときわTEIZIの大きな声援がアヤカの耳に残った。
コンサートは何事もなく終了した。
TEIZIは会場を後にし東京駅へと向かい、そのまま青森行きの新幹線に乗って帰って行った。
新幹線の中で「どうしたもんかなあぁ~~なんでみんな解ってくんねぇかな~
まだオラを理解するのには少し
時代が早かったようだな・・・?」
ある土曜日の夜、井の頭公園の野外ステージに
あのTEIZIがギターを抱えて座っていた。
TEIZIの廻りにはビールの空き缶が散乱していた。
そこに中年の男が近寄ってきた。
「よう、兄さんなんか歌ってくんネエかな?」
「おい、じじい。他人にものを頼む態度がいい年こいて
解らねえようだな~~や」
「なんじゃいおめぇ・・・偉そうに。青森で相手にされねえもんだから東京に出て来たか?」
「えっ・・・?おめぇさん、オラのこと知ってるだか?」
「いや、おめぇの事なんか知らねえ、その訛りは青森しかいねえべ。バーカ」
「おめぇさん、洞察力あんな。見上げたもんだ。
きっと名のあるお方か?」
「そういう問題じゃあねえ、その訛り聞けば誰でも
青森だって解るってぇの・・・」
「いや、てぇしたもんだ!おめぇ様、なになさってる
お方だ?」
「そんなこといいから。なんか歌うのか?
歌わねぇのか?どっちなんだ?めんどくせえ」
「解ったよ。歌うけどリクエストなんかあるけ?」
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「いんや、面倒くせからいい・・・」
「解った。じゃあ『川の流れたように』歌います」
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「すらず、すらず歩いてきた、細く長いこの道~」
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「青森兄さん、もういい・・・」
「どうしたんだ?これからだべ???」
「兄さんと、この歌の意見が合わねぇようだな。
まっ、そういう事もあるさ。次、歌おうや」
「・・・そっか?なに聞きてぇだ?」
「そしたら、最近の歌いこうか?アヤカなんてどうだ?」
「あぁ、つい最近彼女と会ったよ。彼女、僕を気に入ったみたいでさ、
スタッフに僕のこと紹介してたよ。
さすがの僕も少し照れたけどね・・・」
「兄さん、急に標準語になったけど・・・どうかしたか?」
「そんなことないよ」
「めんどくせぇ・・・いいから歌えや」
「じゃぁリクエストに応えて。アヤカのアルバム・ファーストメッセージから
『はぎの月』聞いて下さい・・・」
「ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道・・・」
TEIZIが歌い終わった時には爺さんの姿は
消えていた。
「みんな、アヤカの曲の良さが解らねんだな・・・」
翌日も朝早くから井の頭公園でギターを抱えて
池を眺めていた。池の向こうに知った顔があった。
おっ、昨日の爺さんだ。
「お~~い爺さん」大きな声で叫んだ。
爺さんは知らん顔して足早に去ろうとしていた。
明らかに避けているとしか思えない足取り。
TEIZIは執拗に追いかけて爺さんの前にでた。
「爺さん、おはよう!」満面の笑みを浮かべていた。
「おう、昨日の君か?ワシは用事があるんで。
それじゃあな・・・」
「昨日、急にいなくなってどうした?」
「腹が痛くなってのう、折角歌ってるのに水を差すようで悪いと思ったで黙って帰った」
「そっか。心配したぞ。んで、もう大丈夫か?」
「いや、まだ少し病むけど昨日よりは良くなったよ」
「昨日の続き、歌おうか?」
「いや、そそそれにはおよばん。ワシは急ぐんで、
それじゃ。兄さんがんばれよ・・・」
老人は去っていった。
なんだよ、ひとが折角、青森から歌っこさ歌いに来たのに・・・
聞いたのは途中で腹痛くて帰った爺いだけか・・・
また、誰かのコンサートに飛び入りすっぺかな・・・。
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沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
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辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
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たしかに私は王妃になった。
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夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
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