続・不思議な黒石(二風谷の妖精) 全13作

當宮秀樹

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2「三つの石」

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2「三つの石」

 アヤミの持っていた黒い石を見たミルキーは、自分の持っている赤い石をポケットから取り出した。

「これは私たちの世界で先祖代々受け継がれた石ダニ。この赤い石はメノコの赤石というダニ。 
他にオッカイの青石とカムイの紫石の三つの石があるダニよ。 
そのうちの一つがこのメノコの赤石ダニ」 

アヤミが「あなた達の仲間もみんな持ってるの?」 

「違う。赤石と青石はカムイの使い、シャーマンが持つダニ。 紫はその上の神官が持つ。
その三つダニ」 

メメが「なんでミルキーはアヤミさんのこの黒い石に反応したの?」 

「石から出てる波動がとっても似てたから驚いたダニ」 

今度はメメが「こちらの黒い石は特殊な力があるのね。 
手に握ると思いが叶うの、叶うといっても私達の次元から他の次元に移動する力限定なのね。 
それと今アヤミちゃんはこの石を握ってるからあなたが視えるのよ。 
普通はあなたの姿は視えないのよ」 

「でもメメちゃんやケンタさんは視えてたダニよ」

「この二人は無くても視えるようになったのよ」 

「解ったダニ!」  

メメが「その赤い石は何か力あるの?」 

「ミルキーまだフチ(おばあさん)から習ってないダニ。 習う前に出て来たダニよ」  

「そっか」

メメが「その赤い石もこの黒い石も同じ波動ならもしかしたら同じ事出来るかも。 
アヤミさん試してみない? 私たちは石が無くても出来るから実験にならない。 どう?」

アヤミが「面白いですね。 ミルキーさんやってみない?」  

「ダニ!」 

「じゃあ決定! ケンタさんよろしいですか?」 

「うん、面白いね! ミルキーさん戻り方だけ教えるね、戻る時は石を握って心にこの
場所の情景を思うこと。 すると簡単に戻れるからね。 
アヤミさん、ミルキーさんは次元が元々違うからそこだけ勘違いしないでね。 
それだけ。 じゃあ行ってらっしゃい」  

アヤミとミルキーは他次元へ移動した。 

残ったメメとケンタは「メメちゃん面白い子連れて来たね」 

「でも妖精はどの次元に属するのかな?」

「仙人とか修験者とか自然を司る世界だよ。 
神界より下の辺りで人間界より上、そこに龍もいるよ」 

「でも話してる内容は人間っぽいですね」  

「僕達に合わせてるみたいだね。 元々自然相手の存在だから感覚がチョット違うかも」

ほどなくして二人が戻ってきた。 

メメが「ミルキーさんどうでしたか?」  

「出来るダニ」 

「アヤミさんは?」 

「はい、ミルキーさんの赤石も同じ感覚みたいです。 今は未来の二風谷に行って来ました。
ダムも何にも無くって澄み切った空気の中で熊も鹿も狼も皆人間と共存してました。
まるでおとぎ話の本の絵みたい。 ミルキーさんったらそれを見て泣いてましたよ。 
この世界最高ダニって。 私ももらい泣きです。 楽しかったです」

事務所入口のドアが開いた。 

「すみません。中央店の京子さんからこちらに寄るようにって言われて来ました。 
サキって言います」  

アヤミが「そろそろ時間なので行きます」と言ってサキと入れ違いに出て行った。

メメが「あっ、京子さんから伺ってます。 明日そちらに女の人を行かせるからって。 
こちらにどうぞ。 なんでも京子さんのガイドが言って来たらしいですよ。」 

「そっか……」

メメが「サキさん、どうぞ入って下さい」 

サキは奥に入ってきた。

その瞬間「あら! 可愛い!」 

メメが「サキさんに視えるのね?」

「はい! 先日もこの妖精さん位の大きさの子に会いました」 

「どこでダニ?」 

「大通公園の九丁目の花壇の処です」 

メメが「ミルキーの知り合いかなにかなの?」 

「すいません。その子、青い帽子とベスト着ていませんでしたか? ダニ」 

「そう、その話し方よ。 ダニって言ってました。 あなたのお知り合い?」 

メメが「ミルキー、何か事情あるんでしょ? 差し支えなければ聞かせて」  

「はい。さっき石の話したダニ。 その青石を無断で持ちだしたのがいて、
時空を駆け回って好き放題してるダニ。 私は村長から頼まれてその子を探しに札幌に来たダニ。 
今までウソ言ってすみませんダニ」  

メメが「私、嘘は嫌いなの。 もう駄目よ。 今度嘘ついたら家から出て行ってね」 

「メメさんケンタさんごめんなさいダニ……」  

ケンタが「まあ事情は解ったよ。知り合ったのも何かの縁。 お手伝いします。 
でもどうやって探すの? 札幌はそれなりに広いよ。 それに札幌にまだ居るとは限らないし」 

「すみません。その探すお手伝い役を私にやらせてもらえないですか? 
私、なぜ京子さんにここに行けって言われたのか今、解りました。 この事だったんですね」

「なるほど、彼女がサキさんをここに行くように言ったわけが解ったよ。 
僕、彼女の旦那でケンタと申します。 いつもお世話になります。 
でも、こんなお願いして良いのですか?」  

「はい」 

メメが「ミルキーさん良かったわね」  

「ダニダニ」ミルキーは丁寧にお辞儀をしていた。 

メメが「この子、嬉しい時、ダニダニって言うのよ」

みんな笑った。 その日からミルキーはサキの家にやっかいになり青石探しを始めた。

「ミルキーさんの赤石とその青石が近づいたら何らかの反応があるわけ?」 

「三つの石は三位一体ダニ。 だから近いほど共鳴が大きくて、三つが重なると凄い光になるダニ」

「今回もその共鳴を辿って札幌に来たダニ。 でも次元移動してたら解らないダニ。 
今は違う次元に居ると思うダニ」  

「大体解りました。 それで明日からどういう動きするの?」

「明日の昼頃まで待って共鳴がなかったら、別次元にカムイの森っていう処があって、
そこにカムイの窓という場所があるダニ。 その窓から青石の行方を視て飛んでみるダニ」 

「明日を待たないで直接今行ったら?」

「そこに入るにはルールがあるダニよ。 十勝岳と旭岳と二風谷にある鉱山植物を煮込み、
鹿の角のエキス少量を混ぜ煎じた液体を、カムイ神殿に奉納しないとカムイの森に入れないダニよ。 
急いでも半日以上かかるダニよ」 

「面倒くさいのね」

「これから山に戻って液体を作って戻るダニ。 急いでも帰りは明日の昼頃になると思うダニ」  

「私に出来る事、何かある?」 

「ありがとう。 でも、これは巫女のミルキーにしか出来ないの。 
明日戻ったらまたお願いしますダニ」  

「はい、じゃあ待ってますね」

翌日の昼前に鹿の胃袋で作った水筒に奉納する液体を入れてミルキーは戻ってきた。

 



三「ギジムナー」

ミルキーが「まだ青石の気配が無いのでカムイの窓から青石の居場所を突き止めるからもう
チョット待っててくださいダニ。 あっ、それと、お土産。 
ミミズクの涙で作った丸薬と丹頂鶴の爪で作った丸薬ダニ。 
ミミズクは夜でも遠くの物がよく見えるダニ。 丹頂鶴の爪は疲れた時に飲むと身体が軽くなるダニ」

「ありがとう」  

ミルキーはカムイの窓から一時間ほどで戻ってきた。 

「ミルキーさんどうだった?」 

「解りました。 青石は沖縄の小さい島にあったダニ。 今すぐ飛ぶダニよ。 
サキさんの膝に乗らして下さいダニ」 

ミルキーはサキの膝の上に乗った。 

「じゃあ行きます。 エイ!」

二人は沖縄の伊江島に飛んだ。 

「ヨイショット!」 

二人は小高い山の頂に立っていた。

「あれ? ミルキーさん、身体が大きくなってるよ?」 

「違うダニ。 サキさんが小さくなってるダニよ」

「たぶんミルキーに同調したダニ。 あっ、赤石が同調し始めたダニ」 

二人は青々とした海岸を見渡した。  

「あっ居た!」ミルキーが叫んだ。 

そしてミルキーはサキの手を握った。 次の瞬間二人は浜辺に立っていた。  

「あんた何やってるダニ?」ミルキーはいきなり語気を強めて青年に言った。 

 ビックリした青年は「なんでこんな所まであんたが来たダニ?」

「長老があんたに青石を盗まれたから取り返してこいって、命令されたダニ。 
あなたどういうことダニ? それになんでこんな所にいるダニ?」

「ご、ご、ごめん盗む気は無かったダニよ。 
お婆が最近妙に塞ぎ込んでいてオッカァもオドも心配さしてお婆に聞いたダニよ。
『お婆どうかしたか』って? そんだら沖縄の島にギジムナー族の人で昔大変世話になった
お人が居て、ひと目会いたいって言ったダニ」 

「お前のお婆幾つになったダニ?」 

「二百五十才くらいダニ」 

「おめえの婆さま、達者だな。 それにしても青石を持ち出すのは違反ダニ。 
長老は怒ってしまったダニ。 お前の両親は肩身の狭い思をいしてるダニよ。 
それで見つかったダニかそのお方?」  

「カムイの窓から視たらこの辺だったから来たけどまだ見つかんね」 

「そっか……」 

「ここの人たちは皆のんびりしてるから、こっちまでいい気分になって、
つい探すのを忘れるとこだったダニ」  

「事情は判ったダニ。 でも違反は違反。 帰ったら覚悟するダニよ」 

「うん! でこの女性、見た事無いダニね、どなたさん?」

「札幌であんたを捜す手伝いと、私の面倒を見てくれてるサキさんダニ」 

「こんにちは」  

「サキさんご迷惑掛けますダニ。 そのような事情で本当にすみません。 
ところで黒砂糖食べます? ここの美味しいダニよ」

ミルキーが「あんたそれどころじゃないダニ。 私達も一緒に探すから、
早く探して二風谷に帰るダニ。 で、特徴は?」  

「ギジムナーで二百五十才くらいダニ」  

「それで?」

「……? そんだけ……?」 

「あんた、ばっかじゃないの!」

サキが「まず、ギジムナーの長老を探そうよ。 そして相談するのよ」 

「サキさん頭いいダニ」 

「あんたがバカなの。 ダニ」

三人は長老を捜した。 

サキが提案した「ミルキー、あなた達は笛持ってないの?」 

「あるダニ、それが?」  

「笛の音色は吹く側の特徴が出るのよ。 つまりギジムナーと違うあなた達の笛の音色に
興味を持ち、もしかしたら向こうから寄ってくるかも……」  

「さすがサキさん。 じゃあミルキーが吹くダニね」 

ミルキーの音色はアイヌの民族音楽に近い独特な音色。

笛を吹き始めてから一時間ほど経つと。 沖縄の夕日が空一面を赤く染め、
笛の音が島の空に響いた。 三人の後ろの方でザワザワと音がした。

ミルキーは振り返った。 数人のギジムナーが居た。 

ミルキーが「あっ、初めまして。 私たち北海道から妖精探しに来た三人組です。 
宜しくお願いしますダニ」

ひとりの長老らしき者が「ニングルか?」 

「いえ、どちらかというとコロポックルです」  

「そっか、懐かしいなあ」 

「懐かしいと言いますと、コロポックルの誰かとお知り合いでしたか?」  

「そうよのう、もう二百数十年前かな。 ひとりのコロポックルのメノコが船に乗って
ここに来たことがあったワイ。 ギジムナー衆と何年か暮らしたあと台風に乗って本土に帰って行ったワイ」 

「もしかしたら僕の婆ちゃんかもしれないダニ」ひととおり経緯を話した。 

「そっか、それはそれはご苦労さんでしたワイ。 もしかしたらワシの事かもな。 じゃが、わしも会いたいが会いに行く元気がないワイ」

「それが良い方法があるダニよ。 時空を超えて行けばすぐ着くダニ。 
もし良ければ僕に触ってくださいダニ。 すぐ飛んで行って婆さんと会って戻るダニ。 どうダニ?」

「そっか、時空超えか… じゃあ頼むかワイ」そのまま二人は消えた。  

ミルキーが「まあ、勝手なこと。 なんの挨拶もなく、さっさとあの子行ってしまったダニ」  

「でも、願いが叶って良かったじゃないの」  

「サキさん、迷惑掛けてすみませんダニ」  

「いいのよ。 それよりもせっかくギジムナーさん達が居るんだから少し遊んでいこうよ」 

「そうダニね」  

それから二人は三日間ギジムナー達と飲めや歌えやで沖縄を満喫して帰郷した。

ここはサキの家。 

「ギジムナーさん達とても楽しかったね。 ずっとユンタクだもの。 
肉体が無いから酔わないはずなのに、ほろ酔いになったわね。 観念だけでも酔うのね」

「本当に楽しかったダニ。 サキちゃんミルキーせっかくここに来たからもう少し札幌に居たいダニ。 
それにシリパの会の人ともっと話しをしたいダニ……」  

「じゃそうしよう。決まり!」

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