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6「リョウゼン」
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6「リョウゼン」
札幌の街は山から冷たい風が降りてくる季節になっていた。
シリパの会では異色の新会員さんの話しがよくなされていた。
その新人はリョウゼンといって若干二十才の青年。
彼はサバン症候群で、一度見たものは忘れずにそのまま絵に描くことが出来た。
その類い希な才能は北海道内では有名で、TVに作品が紹介されることもあった。
彼がひょんなことからここに入会してきた。 担当は京子。
「リョウゼンくん、私と一緒に二百年前の日本に行ってみない? どうせなら京都なんてどう?」
「な、なんで? なんで?」
「二百年前の京都はリョウゼンくんの描きたい物が沢山あるような気がするのよ、どう?」
「はいはい、行きましょう」
「ハイは一回でいいの。 じゃあ深呼吸を三回してから私の手を握ってね。
かるく目を閉じて…… いい? リョウゼンくん行くよ!」
ここは二百年前の京都四条大宮。
「ここから四条通りを八坂神社に向かってゆっくり移動しようね」
「はい」
「リョウゼンくんどう? 描いてみたいもの沢山ないですか?」
「京子ちゃんここの街とってもいいですね! ゆっくり移動して下さい」
「リョウゼンくんチョットまって。 君、なんか変わった?」
「実は違う世界に来ると感覚がみんなと同じくなるんですね。
何回トリップしてもこの感覚なんです」
「なるほどね!私たちのいる世界だけがリョウゼンくんの表現が普通と違うのね。
なぜかな……? 面白い」
京子は続けた「リョウゼンくんなんでだと思う?」
「解らないです。 僕のもっと深い部分になにかあるのかも知れません」
二人は街並みや空気感を感じながら八坂にむかってゆっくりと歩いた。
「リョウゼンくん、ここが四条河原町。 昔は呉服屋さんと旅籠が多いのね。
そば屋もあるし時代劇と似てるね。 結構ゴミが少なく綺麗な街並みね。
四条大橋の手前左が先斗町で橋を越えて右が祇園で正面が八坂神社よ。
清水寺に行ってみようか?」
現代とは先斗町も祇園も全然違うと感じながら三年坂を登って清水寺に着いた。
京子が「全てが全然違うね。 全然観光化されてないよ。
すごくシンプル、門前に数十件の茶店があるだけよ。 リョウゼンくんここ絵になる?」
「はい、清水の舞台は変わってないです。
それと下に広がる町並みの茶と黒のトーンはそれなりに面白いと思います」
「なるほど。 絵のセンスは変わってないのね」
「せっかく京都に来たんだから他も観る?」
「比叡山」
「じゃあ、手を握って」
「さすがここはお坊さんばっかりね。 天台宗か…… 大きいお寺ね、これが延暦寺」
「あのお坊さん、僕……」
「えっ? よく見ると目の辺りが似てるわね。 何を話してるの?大峯千日回峰行がどうしたって?
私解らないけどリョウゼンくん解る?」
「解りますが説明が込み入って面倒くさいですよ。 聞きますか?」
「今度ゆっくり聞かせて。 もしかしてそれでリョウゼンっていう名前なの?
もしそうだとしたら君の親も凄いね」
ひととおり京都の街を見て回り二人は現代に戻ってきた。
京子の第一声が「面白い発見があったのよ。
ナベ今晩四人にマチコママの所に招集掛けてもらえるかい? 頼む……」
京子はミルキーと狸小路を歩いた。
「わたし、ここに座って商売を始めたのがこの仕事の切っ掛けなの。
メメともここで出会ったの私達の原点よ」
「京子さん久しぶりです」
狸小路の仲間に「これ鯛焼き差入れ。 みんなに配りな」
「この人達も古い仲間なの」一瞬セキロウを思い出した。
居酒屋シリパで久々に五人が揃った。
「今日は急にすみません。 実はリョウゼンくんという二十歳の自閉症の会員さんが居るの。
彼はサバンなのその事は問題じゃなく実は今日、二人で二百年前の京都へ一緒に飛んだのね、
そしてリョウゼンくんと会話をしたの。
ところが、なんか私の知ってるリョウゼンと違うのよ。
なんと、普通に私と会話してるの! つまり別世界では障害が無いのよ。
当然と言えば当然の事なんだけどね。
で、リョウゼンくんはこの世界だけの表現方法が自閉症だとしたら、
やり方次第ではこっちの世界でも健常者と同じ表現出来ると思ったのね。
リョウゼンだけじゃないわよ。
世の中に沢山いるの。 どう思う? やり方によっては潜在意識に働きかけるから
表立ってやらなくても可能性があると思うのね。
ただリョウゼンくんのようなサバンの子はその才能までなくなってしまうかどうかが課題なのね。
みんなどう思う?」
京子は一気に思いを語った。
ケンタが「京子ちゃんの言わんとしてることは解る。
でもこちら側の見解で仮にそういう子が健常者になった場合、
周りも変わらなくてはならない訳だよね。 もし絵の才能が無くなったらごく
普通の子に変わるわけだよね。 いや二十年間の社会との適応能力というものが
健常者と大きく違いが出ると思うけど、そうなった時の対応とかどう対処するの?」
ママが「う~ん、確かに会は病院と違うからとっても難しいよね」
メメが「京子さんの云うように自閉症は肉体的問題が無いから治ると思います。 ただ、
それをよしとする家族の場合はかまわないけど、
今がいいと思ってる家族もいると思うと正直考えちゃいます」
ママが「条件付きならどうかしらね? 例えば自閉症が発覚してすぐとか、
つまり幼いうちって事よ。あと、例えば四十才くらいの大人の場合、
いきなり健常者になったら世の中を上手く渡っていけず、
逆にストレスを感じると思うのね。 数十年分の世の中を健常者の
目線で勉強しなきゃいけないから大変なことだと思うの。
それなら元のままが良かったと思ったって遅い気がするのね。 どう思うナベちゃん?」
「僕はすぐに結論出せません。 現にリョウゼンくんはうちの
事務所の会員さんでよく知ってるけど、いつも笑顔で楽しそうなんですよ。
この会が大好きみたいなんです。 彼を健常者にするっていう事は彼本人と
周りが変わらなければ成立しないと思います」
「うん、さすがナベちゃんねそれで?」
「わかりません……?」皆こけた。
京子が「そうよね。簡単に結論出せる問題じゃないよね。
世の中自閉症という障害があっても、すごい発明や発見を
する科学者や物理学者がじっさい存在するんだもの。
チョット私、軽率だったかも反省します。 ごめんなさい」
ママが「でも、リョウゼンくんのケースはとっても役に立ったわ。
なんか人に言えないけど重要なこと学んだ気がする。
いい勉強になりました。 ありがとう京子ちゃん」
メメは「本当に可能性って無限ですね。 ところでミルキーさんは今の話しどうでしたか?」
「ミルキーも勉強になったダニ。 私達の世界には病気がないから考えた事ないダニね。
私たちは基本が動物と自然と調和に限定されてるダニ。 でも人間って面白いダニ。
今度生まれる時は人間も良いかも……ダニ」
みんな笑っていた。
ママが「京子ちゃん、それでリョウゼンくんのこと今後どうするの?」
「親御さんに一度打診する。 せっかくの可能性だからやり
過ごすのもどうかと思うのよ。結論はお任せね」
シリパの会の壁には数枚の絵が飾ってあった。 すべて京都の古い町並みであった。
リョウゼンくんの事は身内の希望で今のままでよしとされた。
だが、シリパの会には日の目を見ない極秘のプロセスが追加された。
リョウゼンはシリパの会にいつもどおり顔を出し、
みんなと楽しいひと時を過していた。
札幌の街は山から冷たい風が降りてくる季節になっていた。
シリパの会では異色の新会員さんの話しがよくなされていた。
その新人はリョウゼンといって若干二十才の青年。
彼はサバン症候群で、一度見たものは忘れずにそのまま絵に描くことが出来た。
その類い希な才能は北海道内では有名で、TVに作品が紹介されることもあった。
彼がひょんなことからここに入会してきた。 担当は京子。
「リョウゼンくん、私と一緒に二百年前の日本に行ってみない? どうせなら京都なんてどう?」
「な、なんで? なんで?」
「二百年前の京都はリョウゼンくんの描きたい物が沢山あるような気がするのよ、どう?」
「はいはい、行きましょう」
「ハイは一回でいいの。 じゃあ深呼吸を三回してから私の手を握ってね。
かるく目を閉じて…… いい? リョウゼンくん行くよ!」
ここは二百年前の京都四条大宮。
「ここから四条通りを八坂神社に向かってゆっくり移動しようね」
「はい」
「リョウゼンくんどう? 描いてみたいもの沢山ないですか?」
「京子ちゃんここの街とってもいいですね! ゆっくり移動して下さい」
「リョウゼンくんチョットまって。 君、なんか変わった?」
「実は違う世界に来ると感覚がみんなと同じくなるんですね。
何回トリップしてもこの感覚なんです」
「なるほどね!私たちのいる世界だけがリョウゼンくんの表現が普通と違うのね。
なぜかな……? 面白い」
京子は続けた「リョウゼンくんなんでだと思う?」
「解らないです。 僕のもっと深い部分になにかあるのかも知れません」
二人は街並みや空気感を感じながら八坂にむかってゆっくりと歩いた。
「リョウゼンくん、ここが四条河原町。 昔は呉服屋さんと旅籠が多いのね。
そば屋もあるし時代劇と似てるね。 結構ゴミが少なく綺麗な街並みね。
四条大橋の手前左が先斗町で橋を越えて右が祇園で正面が八坂神社よ。
清水寺に行ってみようか?」
現代とは先斗町も祇園も全然違うと感じながら三年坂を登って清水寺に着いた。
京子が「全てが全然違うね。 全然観光化されてないよ。
すごくシンプル、門前に数十件の茶店があるだけよ。 リョウゼンくんここ絵になる?」
「はい、清水の舞台は変わってないです。
それと下に広がる町並みの茶と黒のトーンはそれなりに面白いと思います」
「なるほど。 絵のセンスは変わってないのね」
「せっかく京都に来たんだから他も観る?」
「比叡山」
「じゃあ、手を握って」
「さすがここはお坊さんばっかりね。 天台宗か…… 大きいお寺ね、これが延暦寺」
「あのお坊さん、僕……」
「えっ? よく見ると目の辺りが似てるわね。 何を話してるの?大峯千日回峰行がどうしたって?
私解らないけどリョウゼンくん解る?」
「解りますが説明が込み入って面倒くさいですよ。 聞きますか?」
「今度ゆっくり聞かせて。 もしかしてそれでリョウゼンっていう名前なの?
もしそうだとしたら君の親も凄いね」
ひととおり京都の街を見て回り二人は現代に戻ってきた。
京子の第一声が「面白い発見があったのよ。
ナベ今晩四人にマチコママの所に招集掛けてもらえるかい? 頼む……」
京子はミルキーと狸小路を歩いた。
「わたし、ここに座って商売を始めたのがこの仕事の切っ掛けなの。
メメともここで出会ったの私達の原点よ」
「京子さん久しぶりです」
狸小路の仲間に「これ鯛焼き差入れ。 みんなに配りな」
「この人達も古い仲間なの」一瞬セキロウを思い出した。
居酒屋シリパで久々に五人が揃った。
「今日は急にすみません。 実はリョウゼンくんという二十歳の自閉症の会員さんが居るの。
彼はサバンなのその事は問題じゃなく実は今日、二人で二百年前の京都へ一緒に飛んだのね、
そしてリョウゼンくんと会話をしたの。
ところが、なんか私の知ってるリョウゼンと違うのよ。
なんと、普通に私と会話してるの! つまり別世界では障害が無いのよ。
当然と言えば当然の事なんだけどね。
で、リョウゼンくんはこの世界だけの表現方法が自閉症だとしたら、
やり方次第ではこっちの世界でも健常者と同じ表現出来ると思ったのね。
リョウゼンだけじゃないわよ。
世の中に沢山いるの。 どう思う? やり方によっては潜在意識に働きかけるから
表立ってやらなくても可能性があると思うのね。
ただリョウゼンくんのようなサバンの子はその才能までなくなってしまうかどうかが課題なのね。
みんなどう思う?」
京子は一気に思いを語った。
ケンタが「京子ちゃんの言わんとしてることは解る。
でもこちら側の見解で仮にそういう子が健常者になった場合、
周りも変わらなくてはならない訳だよね。 もし絵の才能が無くなったらごく
普通の子に変わるわけだよね。 いや二十年間の社会との適応能力というものが
健常者と大きく違いが出ると思うけど、そうなった時の対応とかどう対処するの?」
ママが「う~ん、確かに会は病院と違うからとっても難しいよね」
メメが「京子さんの云うように自閉症は肉体的問題が無いから治ると思います。 ただ、
それをよしとする家族の場合はかまわないけど、
今がいいと思ってる家族もいると思うと正直考えちゃいます」
ママが「条件付きならどうかしらね? 例えば自閉症が発覚してすぐとか、
つまり幼いうちって事よ。あと、例えば四十才くらいの大人の場合、
いきなり健常者になったら世の中を上手く渡っていけず、
逆にストレスを感じると思うのね。 数十年分の世の中を健常者の
目線で勉強しなきゃいけないから大変なことだと思うの。
それなら元のままが良かったと思ったって遅い気がするのね。 どう思うナベちゃん?」
「僕はすぐに結論出せません。 現にリョウゼンくんはうちの
事務所の会員さんでよく知ってるけど、いつも笑顔で楽しそうなんですよ。
この会が大好きみたいなんです。 彼を健常者にするっていう事は彼本人と
周りが変わらなければ成立しないと思います」
「うん、さすがナベちゃんねそれで?」
「わかりません……?」皆こけた。
京子が「そうよね。簡単に結論出せる問題じゃないよね。
世の中自閉症という障害があっても、すごい発明や発見を
する科学者や物理学者がじっさい存在するんだもの。
チョット私、軽率だったかも反省します。 ごめんなさい」
ママが「でも、リョウゼンくんのケースはとっても役に立ったわ。
なんか人に言えないけど重要なこと学んだ気がする。
いい勉強になりました。 ありがとう京子ちゃん」
メメは「本当に可能性って無限ですね。 ところでミルキーさんは今の話しどうでしたか?」
「ミルキーも勉強になったダニ。 私達の世界には病気がないから考えた事ないダニね。
私たちは基本が動物と自然と調和に限定されてるダニ。 でも人間って面白いダニ。
今度生まれる時は人間も良いかも……ダニ」
みんな笑っていた。
ママが「京子ちゃん、それでリョウゼンくんのこと今後どうするの?」
「親御さんに一度打診する。 せっかくの可能性だからやり
過ごすのもどうかと思うのよ。結論はお任せね」
シリパの会の壁には数枚の絵が飾ってあった。 すべて京都の古い町並みであった。
リョウゼンくんの事は身内の希望で今のままでよしとされた。
だが、シリパの会には日の目を見ない極秘のプロセスが追加された。
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