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変身ヒーローと異世界の魔物
危機
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「風の神の名において、我が命ずる! 風の刃よ、我が槍に宿りて斬り刻め! 真空裂傷撃!」 俺はマテリアルソードで目の前の木を斬り倒して、ヨミの前に立った。
長い金髪に白銀の鎧を身に纏い、槍を持った戦士が槍を突き出す。
その切っ先には風が渦を巻いていた。
魔法を使った技か。
俺はそれを槍の真ん中から斬り落とす。
「な!?」
金髪の戦士はすぐにバックステップで距離を取った。
「あ、あなたは……」
倒れたままヨミが俺を見上げる。
これは、思っていた以上に重傷だ。
センサーがヨミの客観的情報を分析して俺の脳に直接伝える。
このまま放っておけば、消滅する。
「何だお前は!」
「そうよ! 私たちの邪魔をするつもり!?」
戦士は一人だけじゃなかった。
後ろに4人女がいる。
戦士姿の女が2人に、魔道士姿の女が2人。
「獲物を横取りするつもりか!? そいつは俺たちが追い詰めたんだぞ!」
「黙ってないで何か言いなさいよ! あんたも冒険者なら、ギルドに違反者として申請してやるわ!」
その時だった。
センサーが背後からの攻撃に反応した。
「サンダーパラシス!」
呪文は聞こえなかった。魔法の名前が森の中から聞こえてきて、雷が辺りに走る。
『チャージアタックツー、クリアムーンサークル!』
それを回避する方法が提示される。
マテリアルソードからエネルギーが放出される。
そのまま弧を描くように振るうと、俺とヨミを襲おうとした雷は薙ぎ払われて静電気だけを残して消えた。
「今のは……」
『通常技です。必殺技ほど威力はありませんが制御が簡単で扱いやすい攻撃方法です。フォームによっていろいろありますが、必要に応じて使用が可能になります。以前の彰ならば全て扱えたのですが……』
記憶のことはこの際後回しだ。
問題は、敵が目の前の連中だけじゃない。
森の中にも潜んでいる。
「今の、何?」
「誰か、攻撃した?」
戦士とその仲間の女たちが口々にそう言っていた。
森の中にいるヤツはこいつらの仲間じゃないのか。
面倒な。
『センサーですでに捕捉しています。隙を窺っているようですね。息を潜めていても、人は熱を発しますから私には丸見えなんですが』
つまり、俺にも後ろにいるヤツのことは把握できていた。
「おい! よく聞け! この魔物は討伐させない! それでも攻撃するというなら俺が相手になる! このまま立ち去れば無事にこの森から逃がしてやるが、戦うなら命の保証はできない!」
殺すというのは半分脅しだった。
それで引き下がればいいんだがな。
「お前、何を言ってるんだ? ギルドの冒険者じゃないのか? その魔物はギルドに討伐の仕事が依頼されてるんだ! だから、倒す! 人間の平和を脅かす魔物に、生かしておく場所などない!」
「そうよ! 素人が出しゃばらないで欲しいわ!」
「邪魔するなら、こっちだってあんたごと殺してやるわ!」
……無駄な警告だった。
むしろ、挑発と受け取られたか。
「こいつは悪いことをする魔物じゃない。それでも、殺すつもりなのか!」
「……おいおい、大丈夫かよ。魔物は存在するだけで人間にとって害悪だろうが! これだから田舎の素人は嫌なんだ」
話し合いの余地はないな。
仕方ない。
殺さない程度に戦うしかないか。別にこいつらも悪いことをしてるってわけじゃない。
ちょっと前の俺と同じで、理解していないだけだ。
金髪の戦士は斬り落とされた槍を仲間に渡し、剣を借りていた。
そして、左手にはナイフが握られている。
二刀流か?
しかし、槍の時ほどの構えじゃない。
「行くぞ!」
右手で持った剣で斬りかかる。
それを躱して近づこうとすると左手のナイフで斬りつける。
コンビネーションは上手い。
中級冒険者と言うだけのことはあるんだろう。
だが、武器の性能が違いすぎた。
「捉えた!」
何度か躱してからネムスギアを傷つけるほどではないと分析できたので、そのまま受け止める。
ネムスギアの鎧と剣がぶつかってガギッと音を立てた。
俺の方はまあ傷一つついていないが、剣の刃が少し欠けていた。
「そんな!? グフッ」
俺は拳で金髪の戦士の腹を打ち抜いた。
そのまま俺に寄りかかるようにしてズルズルと倒れた。
一応手加減したから、気絶してるだけだと思う。
「ガイハルト様!」
俺は金髪の戦士を担いで女たちの前に降ろす。
「な、何するつもり?」
「そいつを連れてこの森から立ち去れ。次は死ぬことになると言っておけよ」
「あ、あんた何者なの……? まさか、森を支配するとか言う魔族……?」
「さあな。どっちかっていうとこことは違う世界を救ったヒーローなんだが……もしかしたら人類にとっては脅威でもあるのかもな」
女たちは金髪の騎士を連れてその場から逃げた。
見た限り、あの金髪の戦士が一番強そうだったからな、あそこまで圧倒的な戦力差を見せつけてそれでも戦いを挑むならある意味尊敬するが、そもそもあいつらは仕事でここへ来てるんだ。
大切だと思う者を守りに来た俺とは覚悟が違う。
命を懸けてまでする仕事ではないと言うことだ。
ちなみに、背後から俺たちのことを狙った冒険者はすでに逃げていた。
俺は変身を解除してヨミのところへ戻る。
「間一髪ってところだったな」
「あ……ありがとう……」
しかし、ずいぶん派手にやられたものだ。
オークデーモンの時だってすぐに再生できたのに。
「せ、せっかく助けていただいたのに……ダメかも知れません……再生が、追いつかない」
「え? おいおい、嘘だろ。脱皮は?」
「す……するだけの、魔力が……」
「ど、どうすればいい。せっかく助けに来たのに、死んじまったら意味が……」
「いえ、私は……うれしかったから……意味は、きっとありましたよ……」
「おい! 何とかできないのか!」
『……損傷が激しすぎます。人間であれば、すでに死んでいるほどの重症でしょう』
「分析はいいんだよ! 助ける方法を探せ!」
『……魔物の体組織がどういう風に構成されているのか、まだ分析できていないのですが、ナノマシンを使った治療を試してみますか?』
「何でもいいからやるしかないだろ!」
『では、彰の手からヨミさんの体へナノマシンを送り込みます。怪我をしている部分に触れてください』
俺はそう言われてヨミの左腕に触れた。
「っつ……」
声にならない声を上げる。
「少しだけ、我慢してくれ。それと、絶対助けるから俺を信じろ」
「フフッ……ありがとう、ございます。アキラさんの言葉なら信じられる、気がします……」
『止血と縫合は終了しました』
俺はヨミの体の傷ついたところに次々触れて行く。
小さな傷はそれですぐに治すことができたが、折れた腕やちぎれた足、えぐり取られた腹の部分は元に戻すことはできなかった。
次第に弱々しくなっていく。
このままじゃ、ダメだ。
「俺が、怪我をするとどうなるんだ?」
『彰の体の半分はナノマシンですから。そこは一時的に機械が補修します。そして、自然治癒を待って人間の細胞と入れ替えます。人間の細胞は日々変化していきますから』
「それを、ヨミにもしてあげられないか」
『……危険です。ネムスギアのナノマシンは適性があります。開発者である博士は適性がありませんでした。だから、2度目の変身の時に――』
「今はその話はいい。できるのかできないのかだけだ」
『理論的には可能でしょうが、拒否反応の方が強かった場合、ネムスギアのナノマシンがヨミさんにトドメを刺すことになるでしょう』
俺の体なら、拒否反応は出ないのか。
「ちなみに、片腕を失ったら、どれくらいで元に戻る?」
『――は? 言っている意味が理解できません』
「俺の体の細胞があれば、ナノマシンへの拒否反応が出ない確率が上がるんだろう」
『まさか!?』
「助けるためだ。片腕ごとナノマシンをヨミに移植してくれ」
『決意の固さを知っている以上、止めても無駄だと言うことですね。では、その場合、失われた腕はナノマシンがすぐに補修するので義手になります。ただし、義手の維持と治療に大量のナノマシンのエネルギーが割かれるため、細胞がある程度増えて義手と入れ替わるまで変身不可能になります』
「どれくらいだ?」
『約一週間』
その間は仕事はできないし、今回のような事態にも生身で対応しなきゃならないってことか。
ま、それで助けられるならいいか。
こっちも死ぬほどのリスクがあるわけじゃないし。
「やってくれ」
『では、肉体の一部ごとナノマシンを分離します。一応、麻酔を打ったときのように神経を麻痺させておきますが、それでも痛みはありますからね』
「うあああああああああああああああああああ!!」
激しい痛みが全身を襲う。
そりゃそうか。
片腕を自分で引きちぎってるんだ。
――俺の意識は、そこで途切れた。
長い金髪に白銀の鎧を身に纏い、槍を持った戦士が槍を突き出す。
その切っ先には風が渦を巻いていた。
魔法を使った技か。
俺はそれを槍の真ん中から斬り落とす。
「な!?」
金髪の戦士はすぐにバックステップで距離を取った。
「あ、あなたは……」
倒れたままヨミが俺を見上げる。
これは、思っていた以上に重傷だ。
センサーがヨミの客観的情報を分析して俺の脳に直接伝える。
このまま放っておけば、消滅する。
「何だお前は!」
「そうよ! 私たちの邪魔をするつもり!?」
戦士は一人だけじゃなかった。
後ろに4人女がいる。
戦士姿の女が2人に、魔道士姿の女が2人。
「獲物を横取りするつもりか!? そいつは俺たちが追い詰めたんだぞ!」
「黙ってないで何か言いなさいよ! あんたも冒険者なら、ギルドに違反者として申請してやるわ!」
その時だった。
センサーが背後からの攻撃に反応した。
「サンダーパラシス!」
呪文は聞こえなかった。魔法の名前が森の中から聞こえてきて、雷が辺りに走る。
『チャージアタックツー、クリアムーンサークル!』
それを回避する方法が提示される。
マテリアルソードからエネルギーが放出される。
そのまま弧を描くように振るうと、俺とヨミを襲おうとした雷は薙ぎ払われて静電気だけを残して消えた。
「今のは……」
『通常技です。必殺技ほど威力はありませんが制御が簡単で扱いやすい攻撃方法です。フォームによっていろいろありますが、必要に応じて使用が可能になります。以前の彰ならば全て扱えたのですが……』
記憶のことはこの際後回しだ。
問題は、敵が目の前の連中だけじゃない。
森の中にも潜んでいる。
「今の、何?」
「誰か、攻撃した?」
戦士とその仲間の女たちが口々にそう言っていた。
森の中にいるヤツはこいつらの仲間じゃないのか。
面倒な。
『センサーですでに捕捉しています。隙を窺っているようですね。息を潜めていても、人は熱を発しますから私には丸見えなんですが』
つまり、俺にも後ろにいるヤツのことは把握できていた。
「おい! よく聞け! この魔物は討伐させない! それでも攻撃するというなら俺が相手になる! このまま立ち去れば無事にこの森から逃がしてやるが、戦うなら命の保証はできない!」
殺すというのは半分脅しだった。
それで引き下がればいいんだがな。
「お前、何を言ってるんだ? ギルドの冒険者じゃないのか? その魔物はギルドに討伐の仕事が依頼されてるんだ! だから、倒す! 人間の平和を脅かす魔物に、生かしておく場所などない!」
「そうよ! 素人が出しゃばらないで欲しいわ!」
「邪魔するなら、こっちだってあんたごと殺してやるわ!」
……無駄な警告だった。
むしろ、挑発と受け取られたか。
「こいつは悪いことをする魔物じゃない。それでも、殺すつもりなのか!」
「……おいおい、大丈夫かよ。魔物は存在するだけで人間にとって害悪だろうが! これだから田舎の素人は嫌なんだ」
話し合いの余地はないな。
仕方ない。
殺さない程度に戦うしかないか。別にこいつらも悪いことをしてるってわけじゃない。
ちょっと前の俺と同じで、理解していないだけだ。
金髪の戦士は斬り落とされた槍を仲間に渡し、剣を借りていた。
そして、左手にはナイフが握られている。
二刀流か?
しかし、槍の時ほどの構えじゃない。
「行くぞ!」
右手で持った剣で斬りかかる。
それを躱して近づこうとすると左手のナイフで斬りつける。
コンビネーションは上手い。
中級冒険者と言うだけのことはあるんだろう。
だが、武器の性能が違いすぎた。
「捉えた!」
何度か躱してからネムスギアを傷つけるほどではないと分析できたので、そのまま受け止める。
ネムスギアの鎧と剣がぶつかってガギッと音を立てた。
俺の方はまあ傷一つついていないが、剣の刃が少し欠けていた。
「そんな!? グフッ」
俺は拳で金髪の戦士の腹を打ち抜いた。
そのまま俺に寄りかかるようにしてズルズルと倒れた。
一応手加減したから、気絶してるだけだと思う。
「ガイハルト様!」
俺は金髪の戦士を担いで女たちの前に降ろす。
「な、何するつもり?」
「そいつを連れてこの森から立ち去れ。次は死ぬことになると言っておけよ」
「あ、あんた何者なの……? まさか、森を支配するとか言う魔族……?」
「さあな。どっちかっていうとこことは違う世界を救ったヒーローなんだが……もしかしたら人類にとっては脅威でもあるのかもな」
女たちは金髪の騎士を連れてその場から逃げた。
見た限り、あの金髪の戦士が一番強そうだったからな、あそこまで圧倒的な戦力差を見せつけてそれでも戦いを挑むならある意味尊敬するが、そもそもあいつらは仕事でここへ来てるんだ。
大切だと思う者を守りに来た俺とは覚悟が違う。
命を懸けてまでする仕事ではないと言うことだ。
ちなみに、背後から俺たちのことを狙った冒険者はすでに逃げていた。
俺は変身を解除してヨミのところへ戻る。
「間一髪ってところだったな」
「あ……ありがとう……」
しかし、ずいぶん派手にやられたものだ。
オークデーモンの時だってすぐに再生できたのに。
「せ、せっかく助けていただいたのに……ダメかも知れません……再生が、追いつかない」
「え? おいおい、嘘だろ。脱皮は?」
「す……するだけの、魔力が……」
「ど、どうすればいい。せっかく助けに来たのに、死んじまったら意味が……」
「いえ、私は……うれしかったから……意味は、きっとありましたよ……」
「おい! 何とかできないのか!」
『……損傷が激しすぎます。人間であれば、すでに死んでいるほどの重症でしょう』
「分析はいいんだよ! 助ける方法を探せ!」
『……魔物の体組織がどういう風に構成されているのか、まだ分析できていないのですが、ナノマシンを使った治療を試してみますか?』
「何でもいいからやるしかないだろ!」
『では、彰の手からヨミさんの体へナノマシンを送り込みます。怪我をしている部分に触れてください』
俺はそう言われてヨミの左腕に触れた。
「っつ……」
声にならない声を上げる。
「少しだけ、我慢してくれ。それと、絶対助けるから俺を信じろ」
「フフッ……ありがとう、ございます。アキラさんの言葉なら信じられる、気がします……」
『止血と縫合は終了しました』
俺はヨミの体の傷ついたところに次々触れて行く。
小さな傷はそれですぐに治すことができたが、折れた腕やちぎれた足、えぐり取られた腹の部分は元に戻すことはできなかった。
次第に弱々しくなっていく。
このままじゃ、ダメだ。
「俺が、怪我をするとどうなるんだ?」
『彰の体の半分はナノマシンですから。そこは一時的に機械が補修します。そして、自然治癒を待って人間の細胞と入れ替えます。人間の細胞は日々変化していきますから』
「それを、ヨミにもしてあげられないか」
『……危険です。ネムスギアのナノマシンは適性があります。開発者である博士は適性がありませんでした。だから、2度目の変身の時に――』
「今はその話はいい。できるのかできないのかだけだ」
『理論的には可能でしょうが、拒否反応の方が強かった場合、ネムスギアのナノマシンがヨミさんにトドメを刺すことになるでしょう』
俺の体なら、拒否反応は出ないのか。
「ちなみに、片腕を失ったら、どれくらいで元に戻る?」
『――は? 言っている意味が理解できません』
「俺の体の細胞があれば、ナノマシンへの拒否反応が出ない確率が上がるんだろう」
『まさか!?』
「助けるためだ。片腕ごとナノマシンをヨミに移植してくれ」
『決意の固さを知っている以上、止めても無駄だと言うことですね。では、その場合、失われた腕はナノマシンがすぐに補修するので義手になります。ただし、義手の維持と治療に大量のナノマシンのエネルギーが割かれるため、細胞がある程度増えて義手と入れ替わるまで変身不可能になります』
「どれくらいだ?」
『約一週間』
その間は仕事はできないし、今回のような事態にも生身で対応しなきゃならないってことか。
ま、それで助けられるならいいか。
こっちも死ぬほどのリスクがあるわけじゃないし。
「やってくれ」
『では、肉体の一部ごとナノマシンを分離します。一応、麻酔を打ったときのように神経を麻痺させておきますが、それでも痛みはありますからね』
「うあああああああああああああああああああ!!」
激しい痛みが全身を襲う。
そりゃそうか。
片腕を自分で引きちぎってるんだ。
――俺の意識は、そこで途切れた。
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