砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭

文字の大きさ
16 / 44
الفصل ٥「初対面のproposal !?」

しおりを挟む

イスラム教徒ムスリムはふつう二十代になると、父親が決めた人を妻にします。ミスター・マーリクはもう三十代ですが、まだ妻いません。彼のお父さんの決めた妻、今まですべて拒否しました」

   マーリク氏に許可を得たムフィードさんが、日本語で教えてくれる。ありがたい。
   彼は我が社側が雇った通訳ではあるが、採用するにあたってはこの気難しいマーリク氏の了承がったらしい。

「でも、彼のお父さん、もう待ちません。ミスター・マーリクは彼のお父さんの四人の妻のうち、一番目の妻の一番目の息子です。
   でも、早くミスター・マーリクが結婚しなければ、『二番目の妻の一番目の息子を会社のCEOにする』と言いました」

   要するに……

   マーリク家の「跡取り」であるCEOの座が、いい歳して結婚していないマーリク氏から異母弟に移りそうなんだ。たぶん弟の方は、父親の言いつけどおりにしっかりと妻帯しているのであろう。
   ◯番目が連発されてて、頭の中がこんがらかりそうだけれども、なんとか理解できた。

   でも、だからと言って……
「えっと……ミスター・マーリクの『事情』は、なんとなくわかりましたけれども……」
   まだ、腑に落ちないことがある。

「だったら、さっさとお父様のお選びになった方を奥様にお迎えになればいいじゃないですか?」

「What’s she saying?」
〈何て言ってるんだ?〉
   すぐさまムフィードさんが、あたしの言ったことをマーリク氏に通訳する。

「Huh? I don't wanna follow my dad’s ways. Why do I have to marry his mistress?」
〈はぁ? 親父の言いなりになんか、なりたかねえよ。なんであいつの愛人と結婚しなきゃいけねえんだよ?〉
   マーリク氏は、思春期の男子か?というようなぞんざいな口調になった。

   しかし、その口調はすぐに戻った。
「Actually, one of them is one of my brother's wives now. The only good thing about this situation is that at least she’s younger than him.」
〈実際に、そのうちの一人が今や私の弟の妻たちのうちの一人だ。唯一の利点は、その女が弟よりも若いということくらいだな〉

——ええっ、それって……父親が結婚したくてもできなかった若い愛人を息子に押し付けた、ってこと⁉︎

「It is what it is because Muslim men can only marry four women.」
〈仕方ないさ、ムスリムの男はたった四人の女としか結婚できないのだから〉
   そう言って、マーリク氏は超絶イケメンな顔を退廃的な表情に歪ませた。

   あたしの目の前に、どーんと分厚い国境の壁が突貫工事で復元された。
   いや、別にこの国の所為せいではなくて、彼らwealthy peopleカネモ一族限定の「御家騒動」だとは思うんだけれども……

——やっぱり理解わからないわっ!さっぱり理解できないわっ‼︎

「えっと、それとですね……なぜ、あたしが『第三夫人』にならなければいけないんですか?」
——そうよ!第一夫人もいないのに、なんでいきなり「第三夫人」なのよっ⁉︎

   ムフィードさんが通訳すると、マーリク氏はめずらしくびっくりしたように目を見開いた。
「Who knew! I’m surprised that you’re aiming for my “first lady” .」
〈意外だな!君が私の「第一夫人」の座を狙っているとは驚きだ〉

「いやいやいや、そんな「座」なんか、まーったく狙ってないしっ!」
   あたしは大声で叫んだ。

——冗談じゃないっ!「第一夫人」も「第三夫人」も、ついでに「第二夫人」「第四夫人」も、どんな妻もぜーんぶまとめてお断りですっ‼︎

「でも、マミコさん、大丈夫ですか?」
   ムフィードさんが心配そうに尋ねてくる。
「ミスター・マーリク怒ると、彼はほんとうに仕事キャンセルします」

——そうなんだよなぁ……
 “To be or not to be, that is the question.” 
   彼の「第三夫人」になるべきか、それともならざるべきか——それが悩みどころだ。

「それに、ミスター・マーリクがあなたを三番目の妻にするは……彼が『優しい』からです」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。 お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。 少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり…… 純真女子の片想いストーリー 一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男 ムズキュンです♪

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました

蓮恭
恋愛
 恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。  そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。  しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎  杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?   【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

恋。となり、となり、隣。

雉虎 悠雨
恋愛
友人の部屋にルームシェアすることになった篠崎ゆきは、引っ越してから三ヶ月、家が変わった以外は今まで通りの日常を送っていた。隣は赤ちゃんがいる家族と一人暮らしの背の高いあまり表情のない男。 ある日、マンションに帰ってくると、隣の部屋の前でその部屋の男、目雲周弥が倒れていた。 そして泥酔していたのを介抱する。 その一ヶ月後、またも帰宅すると隣の部屋の前でうずくまっている。また泥酔したのかとゆきが近づくと、前回と様子が違い酷いめまいを起こしているようだった。 ゆきは部屋になんとか運び入れ、また介抱した。 そこからゆきの日常も目雲の日常も変化していく。 小説家になろうにも掲載しています

君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

松本ユミ
恋愛
デザイン事務所で働く伊藤香澄は、ひょんなことから副社長の身の回りの世話をするように頼まれて……。 「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」 副社長の低く甘い声が私の鼓膜を震わせ、封じ込めたはずのあなたへの想いがあふれ出す。 真面目OLの恋の行方は?

処理中です...