砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭

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الفصل ٩「砂漠のWedding」

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   一応、会社にはマーリク氏からの、
『これから着手する我々の新しいホテルの内装には、この地域の特性を反映して、砂漠の要素を加えたいと思っている』
という建築計画プランニングを受けて……

『君は自分の目で確かめなければならないのではないか?』
というマーリク氏の意向によって……

   あたしは一週間の予定で「砂漠出張」を申請し、それは無事林室長によって認められたため、ここへは有給を使ってやってきたのではなく、しっかりと「出張扱い」になってはいるのだが……

——まさか「三日三晩」にわたる自分の「wedding結婚式」になるなんて……⁉︎


「… Okay.  Lazuli hasn't been harmed by them, has he?」
〈…じゃあ、ラジュリーは彼らから危害を加えられていないのね?〉
   あたしは、彼女たちに改めて確認する。

「Yes, of course, ma'amアキーラ.」
〈はい、もちろんです、奥様〉
   ファティマさんがきっぱりと断言したあと、ワファーさんも深く肯いた。

「Actually, they are men from our tribe and it is blanks fired from their guns. They carry to take the bridegroom to their tent, and that's when our "ritual".」
〈実は、彼らは私たちの部族の男たちで、彼らの銃から放たれたのは空砲です。彼らが花婿を担いでテントへ連れて行くのが「儀式」の始まりなのです〉
   ファティマさんが説明したあと……

「However, they came out of their tent unexpectedly fast, so we were in a hurry.」
〈ただ、彼らが思いの外テントから出てくるのが早かったので、焦ってしまいました〉
   ワファーさんがそう言って首をすくめた。

「A bride should never be seen by other men, that's for sure.」
〈花嫁がほかの男たちに姿を見られるなんて、絶対にあってはならないことですから〉

   イスラム教徒ムスリムの彼らにとって、よりによって結婚式に「自分の妻」をほかの男たちに見られるなんて、屈辱以外の何物でもないらしい。

——なるほど!

   だから彼は、あたしの顔を見られないようにするために、『Don't look at me!〈こっちを見るな!〉』と言ってたんだ。
   ワファーさんがあたしの前に立ちはだかり、ファティマさんが自身の黒装束アバヤであたしを隠すようにしていたのも納得だ。

「Let's see…maybe there will be a "separate" wedding for men and women?」
〈ちょっと待って…もしかして「男女別」の結婚式ってこと?〉

「「Exactly.」」
〈そのとおりです〉
   彼女たちの声が揃った。

——ええぇーっ、見ず知らずのひとたちの中で、三日間もどうして過ごせばいいのっ⁉︎

「Don't worry about your security. I’ll take good care of you.」
〈身の安全に関しては心配ありません。わたしが奥様をしっかりとおまもりしますから〉
   ワファーさんが自信たっぷりに請け負う。先ほどの堂々とした迅速な対応といい、彼女の腕っ節ならボディーガード役もできるだろう。

——だけど、そういう心配をしてるわけじゃないんだけどね……

「For now, let me show you “how we sit”. Could you please sit like this during the wedding?」
〈それでは、「わたしたちの座り方」をお見せします。式の間はこのようにお座りくださいますか?〉

   ファティマさんが改めて座り直した。 くるぶしまである黒装束アバヤに隠れてよく見えないが、どうやら膝を左右に開いてまるで胡座あぐらをかいているみたいだ。

「Or you can also sit like this.」
〈または、このようにも座ります〉
   ファティマさんと同じように胡座をかいていたワファーさんが、片方の足を立て膝にする。

   知らず識らずのうちに正座をしていたあたしは、足を崩して胡座の方をやってみた。
   アバヤの中でぱかっと足を開いても外からはわかりづらいため(日本では)見るからにお行儀の悪そうな立て膝より、抵抗感が少なかったからだ。

——“When in the desert, do as the Bedouins do.〈砂漠に入ってはベドウィンに従え〉”だわ。

「Please don't show me the soles of your feet.」
〈足の裏は絶対にお見せにならないでくださいませ〉
   正座を崩す際に、ファティマさんから注意された。この地では、足裏を人前で見せることは厳禁なのだそうだ。


「Now, ma'amアキーラ, let's get you into your bridal gown.」
〈では奥様、花嫁衣装にお召し替えしましょう〉

   ファティマさんの声を合図に、今までどこにいたのか黒装束アバヤ姿の女性たちが、テントの影からわらわらと出てきた。

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