砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭

文字の大きさ
37 / 44
الفصل ٩「砂漠のWedding」

しおりを挟む

   だが、しかし——

「Stay here! 」
〈待て、行くな!〉
   ラジュリーは彼女たちを制した。

「Pack up my wife's things immediately. We'd like to leave here right now.」
〈私の妻の荷物を直ちにまとめろ。今すぐここから出たい〉

   指示を受けた二人は、まるで弾かれたように即座に動き出した。
   そして、ラジュリーはと言うと……なぜか、この部屋からとっとと出て行ってしまったのだ。

——あれれ? この部屋で「初夜」を迎えるんじゃなかったの?


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   支度が済んで天幕テントの外に出ると、意外なことにまだ昼間だった。
   サングラスの隙間から入ってくる、ひさしぶりの灼熱の太陽の陽射しが、目に眩しすぎて痛いくらいだ。

   約二日、ほぼテントの中にいたのだ。時間の感覚がすっかり狂っていた。

「Come on.We have to arrive before the sun goes down. So dangerous in the desert at night.」
〈乗ってください。陽が落ちる前に到着しなければ。夜の砂漠はとても危険です〉
   ファティマさんがまとめてくれたあたしの荷物を、ワファーさんがラントクルーサーランクルに詰め込みながら言った。

   そして、あたしたちはロデオのように上下左右に揺さぶられる、広大な砂丘の海にまた漕ぎ出た。
   だが、どういうわけか、さほど「ロデオ状態」は続かずにアスファルトの舗装路に入る。

   車酔いが一段落して人心地ついたあたしは、隣に座るファティマさんに、前から気になっていたことを尋ねてみた。

「Do Muslims in this country ever fall in love?」
〈この国のイスラム教徒ムスリムの人って、恋はしたりしないの?〉

「We do. Of course we do.」
〈しますよ、もちろんします〉

「But you guys are going to marry whoever your parents decide, right?」
〈でも、親の決めた人と結婚するんでしょ?〉

「We do. Of course we do.」
〈しますよ、もちろんします〉
   ファティマさんは同じ言葉を繰り返した。

「So you guys fall in love, but eventually break up?」
〈じゃあ、好きになっても、結局は別れちゃうってこと?〉
   びっくりしたあたしは声も大きくなる。

「We will not part, never.」
〈わたしたちは愛する人とは別れませんよ、絶対に〉
   ファティマさんは穏やかに微笑みながら首を左右に振る。 
「Because we cannot go against God's will.」
アッラーの御意志にそむくようなことはできませんから〉

——えっ、もしかして……昔のヨーロッパ貴族のように、夫も妻も、それぞれが愛人と「婚外恋愛」するのがあたりまえ、とか?

   しかし、そんなあたしの不埒な考えは、こっぱみじんこに砕かれた。

「We fall in love with the fiancé our parents have chosen for us.」
〈わたしたちは、親が決めた婚約者と恋をするのです〉

——えっ?

「We fall in love between the engagement and the wedding.」
〈わたしたちは、婚約が決まってから結婚式までの期間に恋をします〉

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。 お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。 少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり…… 純真女子の片想いストーリー 一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男 ムズキュンです♪

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました

蓮恭
恋愛
 恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。  そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。  しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎  杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?   【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

処理中です...