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الفصل ٩「砂漠のWedding」
⑤
しおりを挟むだが、しかし——
「Stay here! 」
〈待て、行くな!〉
ラジュリーは彼女たちを制した。
「Pack up my wife's things immediately. We'd like to leave here right now.」
〈私の妻の荷物を直ちにまとめろ。今すぐここから出たい〉
指示を受けた二人は、まるで弾かれたように即座に動き出した。
そして、ラジュリーはと言うと……なぜか、この部屋からとっとと出て行ってしまったのだ。
——あれれ? この部屋で「初夜」を迎えるんじゃなかったの?
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
支度が済んで天幕の外に出ると、意外なことにまだ昼間だった。
サングラスの隙間から入ってくる、ひさしぶりの灼熱の太陽の陽射しが、目に眩しすぎて痛いくらいだ。
約二日、ほぼテントの中にいたのだ。時間の感覚がすっかり狂っていた。
「Come on.We have to arrive before the sun goes down. So dangerous in the desert at night.」
〈乗ってください。陽が落ちる前に到着しなければ。夜の砂漠はとても危険です〉
ファティマさんがまとめてくれたあたしの荷物を、ワファーさんがラントクルーサーに詰め込みながら言った。
そして、あたしたちはロデオのように上下左右に揺さぶられる、広大な砂丘の海にまた漕ぎ出た。
だが、どういうわけか、さほど「ロデオ状態」は続かずにアスファルトの舗装路に入る。
車酔いが一段落して人心地ついたあたしは、隣に座るファティマさんに、前から気になっていたことを尋ねてみた。
「Do Muslims in this country ever fall in love?」
〈この国のイスラム教徒の人って、恋はしたりしないの?〉
「We do. Of course we do.」
〈しますよ、もちろんします〉
「But you guys are going to marry whoever your parents decide, right?」
〈でも、親の決めた人と結婚するんでしょ?〉
「We do. Of course we do.」
〈しますよ、もちろんします〉
ファティマさんは同じ言葉を繰り返した。
「So you guys fall in love, but eventually break up?」
〈じゃあ、好きになっても、結局は別れちゃうってこと?〉
びっくりしたあたしは声も大きくなる。
「We will not part, never.」
〈わたしたちは愛する人とは別れませんよ、絶対に〉
ファティマさんは穏やかに微笑みながら首を左右に振る。
「Because we cannot go against God's will.」
〈神の御意志に叛くようなことはできませんから〉
——えっ、もしかして……昔のヨーロッパ貴族のように、夫も妻も、それぞれが愛人と「婚外恋愛」するのがあたりまえ、とか?
しかし、そんなあたしの不埒な考えは、こっぱみじんこに砕かれた。
「We fall in love with the fiancé our parents have chosen for us.」
〈わたしたちは、親が決めた婚約者と恋をするのです〉
——えっ?
「We fall in love between the engagement and the wedding.」
〈わたしたちは、婚約が決まってから結婚式までの期間に恋をします〉
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