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Chapter 4
⑤
しおりを挟む「……はい」
麻琴は通話に出た。
『麻琴さん、今日は突然キャンセルして、ごめんね。この埋め合わせは今度きっとするから』
松波はすまなそうな声で言った。
彼の声が小さかった。にもかかわらず、周囲からは物音が聞こえてくる。「外」からの通話であることは歴然としていた。
そして「だれか」に遠慮して声を落としていることも……
「いいえ」
麻琴は硬い声で短く答えた。
「気になさらないでください。もう、結構ですので。……では」
それだけ言って、通話を切ろうとした。
ピンキーリングは後日会社で突っ返そう、と思った。
『待ってくれ、麻琴さん』
松波があわてて引き留める。
『……僕の話を聞いてほしいんだ』
「その前に、わたしの話をちゃんと聞いてください」
麻琴のスマホを握る手に、ぎゅっ、と力がこもった。
「わたしは『今度からはもう結構』という意味で言ったんです。先生がうちで勤務された日の『お食事』は、これからはもう遠慮させてください」
『えっ? ちょっと待ってくれよ。いったい突然どうしたの?』
すると、そのとき——
『恭介、いつまで通話してるの?』
久城 礼子の声が入ってきた。心なしか、不機嫌そうな声音だ。
『礼子、すぐに戻るからって言っただろ?』
松波も彼女を呼び捨てにしていた。しかも、麻琴が聞いたことのないぞんざいな口調だ。
それは、彼らの仲がどういうものなのかを如実に顕してあらわしていた。
「わたし、松波先生の大切な方に申し訳が立たなくなるようなことはしたくないんです。……失礼します」
一気にそう告げると、麻琴は通話を切った。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
スマホをヘッドボードに置いた麻琴は、その身をベッドに横たえた。
——松波先生には、 ちゃんとした「相手」がいた、っていうことよね?
そもそも、なんだかんだと理由をつけて、松波を受け入れていなかったのは麻琴の方だった。
——本来ならば、ホッとしてもいいはずなのに……何なのかしら?このモヤッてする気持ちは……?
結局、麻琴は夜明け近くまで眠れなかった。
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