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Sista Kapitel
⑥
しおりを挟む彼女にとっては、初めてのくちづけだ。
——グランホルム大尉が、こんなことをするなんて……⁉︎
くちびるが離れたあと、リリはびっくりして彼を見上げた。
「私たちは確かに、互いのことをなにも知らない。だから、互いを知って理解り合うのはこれからにはなるが……それでも、私はどうしても……」
大尉の頬が朱に染まっていた。それどころか、彼の耳までもが、真っ赤に色づいていた。
「あなたを私の伴侶としたいのだ。どうか……わかってほしい」
意を決して、彼はリリの薔薇色に輝く頬を、その大きな手のひらでそっと包んだ。
彼にとっては、どんなに敗色濃厚な海戦の最前線へ赴かねばならないときよりも勇気と度胸が試されるような気がした。
「どうか……あなたのこの可憐なくちびるで、私に『Ja』と応えてくれ……」
大尉の無骨な親指が、リリのくちびるをつーっとなぞる。
「私のことを『Kapten Granholm』ではなく、あなたの夫として『ビョルン』と呼んでくれ……」
リリの翠玉色の瞳を見つめる彼の琥珀色の瞳が、哀しいほどせつなげだ。
「そして、あなたのことを……『Fröken Liljekonvalj』ではなく、私の妻として『リリ』と呼ばせてほしい……」
それから、大尉は言い淀みながらも——
「あ、いや……でも……やはり……可能であれば……あなたに、私の子を産んでほしい」
どうしても妥協できない一点を述べた。
「——グランホルム大尉」
リリはしばらく逡巡したのち、厳かな面持ちで彼を見た。
そして、きっぱりと告げた。
「私……やっぱり、イェーテボリの修道院へ行くわ」
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