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Chapter 3
②
しおりを挟む妻がこのクィーンサイズのベッドで眠るのは、ここ大阪に赴任するにあたってこの2LDKのマンションを借り、一緒に家具や身の回りのものなどを用意していたとき以来だ。
サイドテーブルにはいつの間にか、白い陶器のアロマランプがあって、そこはかとなくオリエンタルでスパイシーな香りが漂ってくる。
「……おい」
隣に身を沈める彼女を、おれはぐいっ、と引き寄せた。
「いい香りだな……」
おれの腕の中にすっぽり入った小柄な彼女が、おれを見上げて、ふふっ、と微笑んだ。
「お昼間に、梅田の華丸百貨店へ行って買ってきたの」
そう言う彼女の前髪をかき上げ、広い額に軽くキスをした。そして、そのまま、鼻筋をなぞるようにしてキスを進ませ、ぷるっとしたくちびるに辿り着く。
そのまま、啄むようなキスをしていたら……
「……明日……仕事でしょ?……いいの?」
すでに甘い息遣いになっている彼女が囁く。 確かに明日は金曜日で、仕事がある。
だが、この前抱いたのは……いつだっけ?
……あぁ、そうだ。
三月・四月の年度末・年度始めは忙しくて——三月末の彼女の誕生日も帰れなかった——先月のゴールデンウィークもこっちで接待ゴルフ三昧で、東京の家には一泊しかできなかった。
もしかして、二月に東京へ帰った時以来じゃないか?
——だったら、なおさら……
アロマランプのオレンジ色の柔らかな光の中で、うるうると潤んだ瞳で、 微かに開いたくちびるで……
おれを見上げる、こんなに色っぽくて、艶やかな、おまえを目の前にして……
——おれの方が、止められるわけないだろ?
焦らすように、舌でくちびるをなぞったあと、口の中へ差し入れて、深くふかく交わらせる。そのくちびるから離したら、彼女が名残惜しげな甘い息を吐いた。それから、耳を食むようにして甘噛みし、首筋の方へ落としていく。
彼女のパイル織のルームウェアはワンピースだ。足元から捲り上げるのに苦労する。
「……もっと、脱がせやすいのにしてくれよ」
そう吐息で囁いたら、にこっと子どものような愛らしい笑顔が返ってきた。
——先刻までの表情とのギャップがすごい。
だから、ちょっとふざけて「はい、バンザイ」と促すと、くすくす笑いながら両手を上げて「協力」してくれた。ちっちゃい女の子のようだ。
ところが……
抜き取るようにして脱がせたルームウェアをベッドの外に放つと、もうそこには「女の子」はいない。成熟した色っぽい表情のオンナに戻っていた。
出逢ってから三十年近く経つけれど……
——全然、飽きないな、おれの奥さん。
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