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Chapter 7
⑤
しおりを挟む学生時代、妻は姉に倣ってテニス部だったそうだ。
彼女の姉、清香の家族——つまり、水島家のことだが——はみんなテニス好きで、休日には一家で楽しんでいるらしい。
すると『おねえちゃまの家はいいなぁ、家族で楽しそう。うちもやりたいなぁ』と妻が羨ましがったので、うちもコートを借りて家族でテニスをすることになった。
——あれは、大地が悪いのだ。
当時、中学生だった息子は、中高一貫の男子校に通っていたが、サッカー部に所属していたにもかかわらず、周りがヒョロい秀才ばかりだったため、いろんな運動部に「助っ人」として駆り出されていた。
その中には、従兄弟の慶人から頼まれたテニス部もあった。ヤツはおれに似て運動神経がすこぶる良い。
とりあえず、大地 vs おれ&紗香 でストロークを行うことになったのだが……
——大地のヤツ、いきなりおれに対して、弾丸サーブを打ち込んできやがった。
そっちがその気なら、こっちは「親父の威厳」を見せつけてやらねばならぬ。
咄嗟にそう思ったおれは、思いっきり取りづらい角度にリターンしてやった。
おれも若い頃、サッカー部だったにもかかわらず、水島に頼まれてテニス部へ助っ人に行っていたのだ。
ライン上で跳ねたスライスボールは、想定したバウンドではないはずなのに、大地はギリギリのところで打ち返してきた。
おれはそのボールが浅くなるのを見越して、するするとネットへ詰め、ラケットのフェイスをしっかり合わせてボレーをした。
今度こそ決まったか、と思われたのに、またしても大地に拾われ、しかも前に出たおれを嘲笑うかのような弓なりのロブショットである。
すぐさま振り向いてボールを追いかけ、打ち返す。今度はドライブをかけてやった。
すると、ヤツはカウンターでストレートに打ってきやがった。
——そこからは、押しも押されもせぬラリーの応酬である。
水島家のような「はい、いくよー」と言ってボールをポーンと打ち「はーい、オッケー」とボールをポーンと打ち返す悠長なストロークなんか、我が上條家にできるはずがなかったのだ。
ものすごいスピードで行き交うボールに恐れをなした紗香が、知らぬ間にコートから去っていたのは言うまでもない。
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