もう一度、愛してくれないか

佐倉 蘭

文字の大きさ
39 / 51
Chapter 9

しおりを挟む

 紗香はハンドルネームを学生時代の呼び名ニックネームから「サーヤ」にしたが、伊東の母親は応援している新進のタカラジェンヌ「遼河りょうが は◯ひ」から漢字を変えて「凌牙りょうが」にしたらしい。
  本名は伊東 照代てるよで、ちなみにアラ還だそうだ。

 彼女たちは、互いの夫と息子が同じ会社にいるだけではなく、専務とその専属秘書として勤務しているのがわかり、一気に親近感が増した。

「ねぇ、すっごい偶然だと思わない?ううん、世の中に偶然なんてないのよ、これはもう『必然』よ」

 ——おい、妙な信仰宗教に入信したんじゃないだろうな⁉︎

「見ず知らずのネット上の人間に、むやみやたらに個人情報をさらすんじゃない。今回はたまたま本当につながりのある人だったからよかったものの、いつもそうとは限らないんだからな」
 おれは腕組みをして、強く言った。

 けれども、いつもなら素直に「はーい」と子どものように応える紗香が、今日はぷいっ、と横を向く。
  ——なんだ、反抗期か?

「凌牙」が歳下のホストではなく、正真正銘あのオバサンだとわかって——姿を見たことは皆無だが、おれの中ではすっかり藤◯直美だ——ホッとしたおれに余裕が甦ってきた。

 そして、その「凌牙」であるところの伊東の母親が、タカラヅカにハマって家を空けるのが度が過ぎたのか、亭主——だんじり命でコンサバティブな泉州男だ——の逆鱗に触れてしまったようだ。

 それが、今回の発端である。

 亭主の方にすれば、今まで仕事にかまけて女房を顧みなかった分、定年後はいろいろと考えを巡らせていたらしい。

 ——同じように結婚生活をほとんど会社人間として過ごしてきてしまった男として、わからなくもないが……

 ただ、女房の方からすれば、上の娘が結婚し下の息子も就職して家を出て、子どもたちをしっかり巣立たせたのだから、これからはパートで稼いだ金で自分のやりたいことをしたい、と思うのも道理である。

 —— 他人ひとのことならわかるんだがな。

 きっかけは些細なことでも、女房を本気で怒らせたら、家出や離婚騒ぎになるんだな。

   ——恐ろしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...