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Chapter 15
心よりカラダが正直になってます ④
しおりを挟む「『彩乃、乗りな』ってカッコいい~!」
わたしは、ぱちぱちぱち…と手を叩いて讃えた。
「なに言ってんのよ。突然、L◯NEがきてびっくりしたじゃない。なんで、こんな時間にこんな場所でいるのよ?」
後部座席で、腕も脚も組んでいた誓子さんが訊く。
——ケンちゃんの前では、あんなに「乙女」なのになぁ。
誓子さんのおうちは、わたしがいたマンションにほど近い、高額所得者が住む街として全国に名を轟かせる田園調布だった。
——おうちも車もわかりやすいなぁ。
「誓子さん、こんな深夜に突然、すいません。あとでちゃんとお話しますから。……あ、お車を出していただいて申し訳ありません」
運転手さんにもミラー越しに頭を下げる。
「いえいえ、いいんですよ。お嬢さまがホスト遊びに狂われたときで慣れておりますから」
「お…お黙りなさいっ、川上っ!」
だけど、言われた運転手さんの川上さんは動じない。初老の彼はまるで誓子さんの「じいや」のようだ。
「誓子さん、もしかして、ケンちゃんとのことで?」
わたしがそう訊くと、
「……なによ、悪い?」
決まり悪そうに誓子さんは答えた。
——そんなにお見合い相手のケンちゃんのこと、気に入ってたんだ。
「ケンちゃんとは、誤解がとけましたか?」
わたしの問いに、誓子さんが急にいきり立った。
「うちの父が悪かったのよっ。こっちから断ったくせに、わたしに彼を諦めさそうとして、向こうから断られたように装ったの!もう、パパとは今、絶交中よっ!!」
——やっぱり、ケンちゃんの言い分の方が正しかったんだ。
「……で、ケンちゃんとは進展しました?」
すると、今度は急にもじもじしだした。
「実は明日……映画でも観に行こう、って誘われてる」
——そうだよなぁ。普通、そういうふうに距離を詰めていくよなぁ。
街中で、将吾さんとわかばちゃんが腕を組んで歩いているのを見たとき、「あ、デートだな」って思った。
やっぱり好きな人には、将吾さんだって、そういうことをするんだ、と思った。
そして……
やっぱりその相手は……わたしじゃなかったんだ、と思った。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
誓子さんのおうちはベタな言い方だけど、これぞ「白亜の豪邸」だった。
夜目にもわかる、まるでカリフォルニアの青い空の下にありそうな白壁のプール付きの邸宅である。建物の前には椰子の木も植わっている。
「お部屋は余ってるから、好きなだけいればいいわ。でも、今夜はいろいろ話を訊きたいから、わたしの部屋ね」
絶交中のお父上ご自慢の地下のワインセラーから、赤丸急上昇中な人気のカリフォルニアワイン、オー◯ス・ワンを無許可で調達してきた。フルーティでぽってりした味がいい。
誓子さんもイケる口のようで、注いだかと思えば、グラスをぐるんぐるん回して空気を含ませ、こくこく呑んでいる。
「ビバ!オー◯ス・ワン!!」
誓子さんが声も高らかに讃える。
オー◯ス・ワンのどこが「ビバ!」なのかは不明であるが、一宿一飯の恩義を受ける身、ここは波風を立たせたくはない。わたしも「ビバ」っておこう。
おそらく「ビバ」った効果で心が開放されたのか……(?)
——わたしは、今までの経緯をすっかり誓子さんにしゃべっていた。
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