カラダから、はじまる。

佐倉 蘭

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Secret 2

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「ところで、おとうさん……田中が『オンナの整理が完全に終え』たって、なんでわかるの?田中が自分で言ったの?」

   あぁ、それはな…と父が遠い目になる。

「田中からは聞いてない。そもそも、おれは『身辺整理しろ』とも言ってない。おれが七海との見合い話を持ちかけたあと、ヤツはものすごい勢いで『整理』し始めたらしい。それでおれは、どうやら田中は七海と本気で見合いしたいんだな、と思って見守ることにした。それでも、なかなか言うことを聞かないオンナがいたらしく、結局は半年も待たされる羽目になったがな」

——どうして、おとうさんがそこまで田中のことを知ってるの?

「田中のことはなんでも高木に聞いている。現に、つい先刻さっきまで聞いていた。ヤツのことに関しては高木が一番よく知ってるし、頼りになるからな。高木は公私ともに田中の『秘書』だ。仕事だけでなく、私生活もしっかりと把握している」

——えっ?

「高木って……田中の補佐役の子よね?」

   田中は庁内社内のBBQやボーリング大会などのイベントや同期会なんかには参加するけれども、私生活プライベートには絶対に立ち入らせない分厚い「壁」があった。

   それでなくとも、人造人間サイボーグの風貌なのだ。近寄りたくてもなかなか近寄れない。
   世間話をするみたいに、自分の見合い話を戸川部下にする本宮とは違う。

「そんなに……親しいんだ?」
   わたしの声がかすれた。

   つい今しがた、入り口ですれ違った凛として美しいおも立ちと洗練された優雅な所作が心に浮かんだ。まさに、高木は「秘書」だった。

——それって……田中のプラベも把握するくらい、彼から信頼されているってこと?


「……七瀬」

   父が穏やかな目でわたしを見ている。

「リーダー研修のメンバーから外して、悪かったな」

   わたしは首を左右に振った。

「田中と本宮が選ばれたのは妥当だと思ってるから……もう、大丈夫よ」

——もしかして、思いっきり凹んでいたのはバレてたのかな?

「田中は上も認める逸材だから、大事に育てるように言われておれに任されている」

   父よりも「上」ということは——金融庁の事務方トップ……もしかしてさらに「上」の、内閣府——つまり、内閣官房筋かもしれない。

「本宮は見合いをして『順調』らしいから、いつまでここにいるかわからんが……もし『転職』して政治家にでもなったら、『古巣』に恩返しをしてもらわんとな。そのための布石だ。
   それに、残るにせよ、出ていくにせよ、ヤツもいずれ人の上に立つ人間であることは間違いない。だから、リーダー研修を受けて人脈を広げることは、決して無駄にはならないさ」

   あの要塞みたいな鉄壁の防御力の田中の「行状」まで知ってる父ならば、オープンテラスでお茶を飲んでいるような本宮のことなんて、筒抜けもいいところなのだろう。

「……おかあさんにそっくりの七海のことは皆目わからんが、おれにそっくりなおまえのことはわかっているつもりだぞ」

——はい?

「ふらふらして……自分を『安売り』するな」

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