カラダから、はじまる。

佐倉 蘭

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【Extra Secret】あなたは知らない

Epilogue ②

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   本宮は、なかなかしつこかった。

   T大生だった頃から、七瀬に憧れていたらしいので無理もないが、それとなく何度もアタックしていたみたいだ。
   残念ながら、七瀬にはまーったく気づかれていなかったようだが……

——頭はすこぶるいいはずなのに、バカだな。
   あのひとはああ見えて「押し」に弱く、わかりやすくガンガン攻め込んでいけば、そのうちほだされて流されてくるだろうに……

   しかし、今の本宮の立場では華子との結婚は「既定路線」のはずだ。
   なのに、もう後戻りはできない状態にもかかわらず、隙あらば七瀬に近づこうとして「時間」を巻き戻そうとしていた。

   もちろん——高木が黙って見ているわけがない。


   田中と七海の結婚式のとき、披露宴会場バンケットルームを出たところで七瀬と本宮が話しているのを、高木は偶然見かけた。

   それとなく傍に寄って、聞き耳を立てていると……

『七瀬……きみに、話があるんだ。二次会を途中で抜け出してくれないか?』

   本宮が七瀬にそう告げているではないか。

   高木はすぐさま脇へ移動して、礼服ブラックスーツのポケットからスマホを取り出し、華子に通話した。

『……もしもし、僕だ。すぐにこっちに来た方がいい。でないと、後悔するぞ。
   本宮さんがとうとう意を決したのか、ずっと好きだった庁内社内の女に——これから告白コクる気だ』


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   その後、かなり「攻め込んだ」方法で七瀬のハートを射止めた高木は、すぐに「結婚前提の交際」として庁舎内会社内に広めた。

   案の定、本宮が血相を変えてやってきた。

『高木……七瀬と結婚するって、本当か⁉︎』

——華子に手を出したというのに、今さらなにを言う?


   あの日、高木の「通報」によって速攻で披露宴が行われたホテルに駆けつけた華子は、
『浮気は絶対に許さないからぁーっ⁉︎』
と、人目もはばからず本宮の前で泣きわめいたらしい。

   そんな華子をどうにかなだめるために、本宮は仕方なく上の客室をリザーブしたのだが、その「流れ」で彼女と一夜をともにしてしまったそうだ。
   この「情報源ニュースソース」は華子なので、ガセではない。


『本宮さん、華子のことをよろしくお願いしますね。なにぶん不束ふつつか者でご迷惑をおかけするとは思いますが、僕の——従妹いとこなので』

   突然、高木はしれっと「カミングアウト」した。

『……はぁ?』

   本宮の端正な顔が大きく歪んだ。

『えっ……おまえが、華子の従兄いとこ?』

   しかし、一転して、虚を衝かれた表情に変わる。

『……ということは……まさか……おまえが……華山院の……?』

   そのまま絶句する本宮に、高木はフフッと笑った。

——あぁ、やはりバカではないな。さすがにT大出身だけあって、察しのいい人だ。

 『あ、それから……華子は結婚して「華山院 華子」なんていう、へんてこりんな名前には、絶対になりたくないと言ってます。だから、プロポーズする際には「『本宮 華子』になってくれ」と申し込めば、バッチリ受けてくれますよ?』

   高木はせめてもの慰めとして、本宮にそうアドヴァイスしておいた。

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