悪役令嬢は最強を志す! 〜前世の記憶を思い出したので、とりあえず最強目指して冒険者になろうと思います!〜

フウ

文字の大きさ
3 / 460
第1章 幼少期編

03話 前世の記憶

しおりを挟む
「いゃぁぁぁっ!!」

 胸を貫かれた激痛に思わず飛び上がる……あれ?  飛び上がる??  それに胸も痛くない。
 無残に地面に散乱したお布団、そして私が立っているのはふかふかなベッド。

「ここは……私の部屋?」

 ということは……

「今のは夢?」


 バンっ!!


「お嬢様っ!!」

「うぐっ!?」

 視界がっ!  息がっ!!
 お、落ち着け私っ!  この匂いは知ってる。
 私の専属侍女であるファナの匂い……つまり、今私はファナに抱きしめられてファナの胸に埋まってる状況と言うわけだ。
 となると、まずすべきは……

「んん~!  ぷはっ」

 よしっ!  顔を逸らして呼吸と視界を確保っ!
 ふふん!  お父様やお母様、お兄様達にも内緒の秘密の特訓で鍛えている私にとってこの程度の窮地など取るに足らないのだ!!

「あぁっ!  お嬢様!  お目覚めになられてよかったっ!!」

「ファ、ファナ?  いったいどうしたの?」

 確かに悲鳴を上げちゃったわけだし、部屋に飛び込んで来るのはわかる。
 けど、どうしていきなり抱きしめられてるんだろ?

「お嬢様!  覚えていらっしゃらないのですかっ!?」

「覚えてないって……なにを?」

「お嬢様はセドリック殿下との顔合わせで倒れてしまわれたのです」

「セドリック、第一王子……あっ」

 そうだ……そうだった。
 だんだんと思い出してきた……確か、お父様と一緒に5歳で同い年の第一王子殿下の婚約者候補の1人として第一王子であるセドリック殿下と顔合わせをするために王城に行って……

「思い出されましたか?」

「うん、
 ファナ、私は……」

「ソフィーちゃん!」

「むへっ!?」

 ま、またしても視界と呼吸がっ!!

「あぁっ!  ソフィーちゃん、目が覚めてよかったっ!」

 この匂いと声は……

「お母様!」

「もう大丈夫なの?  熱は?  痛いところはない?」

 私の顔を覗き込んで優しく微笑む美女。
 滑らかで艶やかな金髪にルビーのような赤い瞳、スラリとしたスレンダーな体型ながらも出るところは出ている身体。

 10人中10人が振り返って見惚れる超絶美形なお母様は心配そうな顔も非常に絵になる。
 流石は私の大好きなお母様っ!

「まだちょっと頭がぼーってするけど、もう大丈夫」

「あら、それはいけないわ。
 熱は無いようだけど、まだ病み上がりなんだからゆっくりと身体を休めないと」

 そう言って私を抱き上げたお母様にベッドに寝かされ、ファナがお布団をかけてくれる。

「心配かけてごめんなさい……」

「ふふふ、無事ならいいのよ。
 でもソフィーちゃんの悲鳴を聞いてビックリしたのよ?  怖い夢でも見たの?」

「それは……」

 う~ん、なんて説明すればいいんだろ?

「ふふ、眉間に皺が寄っているわよ?
 詳しい話はまた後で聞くから、今は呼んだお医者様が来てくださるまでもう少し寝ていなさい」

「うん」

「私の可愛いソフィーちゃん、おやすみなさい」

「おやすみなさい、お母様、ファナ……」

 私の頭を優しく撫でて、おでこにキスしたお母様と、一礼したファナが部屋を出て行ったけど……私自身まだ何が起こったのか整理しきれてないし。

 あんな夢?  凄まじく生々しい夢を見たあとじゃあ、とてもじゃないけど寝付けそうにない!
 っと、いうわけで……ベッドでゆっくり休みつつ頭の中を整理しよう!

「よし!」

 まず、顔合わせでセドリック殿下の顔を見た瞬間に頭の中に溢れ出した……思い出した記憶。
 前にアルトお兄様やエレンお兄様のお部屋に忍び込んで、こっそりと借りた冒険小説の主人公達が同じようなことにあってたけど……

「これはいわゆる前世の記憶というやつなのかな?」

 まぁ、前世の記憶を思い出したっていっても、わかるのはどんな生活をしてたのかとかだけ。
 前世の私の名前も顔も、家族もわからないけど……どうやら前世の私は魔法やスキルが存在しない世界にある日本という国に住んでいたらしい。

 見上げるほどに高い高層ビルという建物に、道路を凄いスピードで走る車、空を飛ぶ飛行機。
 そして数々のゲーム機やスマートフォン!  魔法やスキルがない代わりに科学というものが発展した世界。

 その世界で前世の私はOL?  というもので、仕事の合間に色々なゲームをしたり。
 マンガやライトノベルというものを読んだり、アニメとか映画とかいうのを観たりして悠々自適な独身ライフを送っていたと。

「う~ん」

 他にも面白そうなモノがいっぱいあるけど、今は一旦置いておくとして……問題はさっき見た夢!

「婚約破棄された公爵令嬢が胸を剣で貫かれたと思ったら……」

 それまでは全体を俯瞰して見てるような感じだったのに!
 いきなり視点が変わったせいで剣で胸を貫かれて、首を刎ねられる恐怖を体験させられたのはちょっと納得いかないけど……

 まぁ夢だし、そういう夢だったって納得するしかないんだけども。
 とにかく!  あの悪夢を見た原因は、セドリック殿下との顔合わせで思い出したこの前世の記憶にある!!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...