100年後わたくしの力が潰えるまでに、封印中の魔王を改心させてみせますわ!

七森陽

文字の大きさ
1 / 3

これから100年、どうぞよろしくお願いいたします

しおりを挟む

 まばゆい光だった。
 魔王が『それ』を認知した瞬間、その世界には目も開けていられない程の光が埋めつくし、そして魔王は力を失った。
 これで終わるはずだった。
 …しかし、終わらなかった。

「なんだこれは」
 魔王は気がつくと、いつもの自身の寝台に横たわっていた。
 …記憶の限りでは、自分は聖剣士に致命傷を負わされ、聖なる巫女に消滅させられた――はずだったのだが。
 広い寝室の、魔人5人は余裕で大の字になれる寝台のど真ん中で、彼はただただ『眠っていた』。そしてただただ『目を覚ました』。まるでそれが当たり前かのように。
「…おい、誰かおらぬのか」
 魔王は未だ混乱の最中にある思考はそのままに、とにかく状況把握すべしと部屋の外へ声をかける。
 何の反応もない。
 仕方ないと身体を動かそうとして――思った以上に重い身体に気がついた。這い出すように寝台を出るが、広いそこから抜け出すのも一苦労である。
 あれは夢だったのかと思い始めていたが、絶対夢ではない、この身体がそれを物語っている。
「…っ」
 なんとか寝台から降りると、夜着のまま重い身体を引きずるようにして部屋の出口へ向かう。いつこの夜着に召し変えたのかも記憶にないのだが、さらりとした手触りはいつものものだ。部屋の様子もいつも通り。ただ自身の記憶と身体の異変だけがいつもと違った。
 あと数歩でドアに辿り着く――というところで、唐突にそのドアが力いっぱい開け放たれた。
「っ!」
「…あら、魔王さま、起きてらしたのですか?」
 そこに居たのは、記憶の途切れる寸前、彼に向かって両の手を翳しまばゆいほどの光で魔を圧倒した――巫女その人であった。
「……」
 魔王は状況が今ひとつ読み込めず、その場で立ち尽くす。
 よく見れば巫女の両手には朝食のようなものがあった。
「魔族は夜型だと聞いていたのですけど、明るい時間にも起きてくるのですね」
 勝手知ったる顔で部屋に入ってきた巫女は、そんなことを言いながら魔王の横を通り過ぎ、豪奢なソファの前のこれまた豪奢なテーブルへ、その朝食を載せた盆を置いた。
 戦いの最中には特に気にも留めていなかったが、巫女はまだ魔族で言うところの150歳くらい――人間で言えば15歳ほど――の幼さの残る少女だった。
 それがあんなにもおびただしい光を放っていたなんて。
 魔王は現状に理解が及ばないままそんなことをぼんやり思った。まだ寝起きなのかもしれない。
 そんな無言の魔王を振り返り、巫女はその無表情を変えることもなくこう言った。
「とにかく、これから100年もあるんですから、どうぞよろしくお願いいたしますね」

 魔王は仇敵であるはずの巫女にまさかのよろしくされてしまい、
「はぁ?」
こう返すのが精一杯だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...