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これから100年、どうぞよろしくお願いいたします
しおりを挟むまばゆい光だった。
魔王が『それ』を認知した瞬間、その世界には目も開けていられない程の光が埋めつくし、そして魔王は力を失った。
これで終わるはずだった。
…しかし、終わらなかった。
「なんだこれは」
魔王は気がつくと、いつもの自身の寝台に横たわっていた。
…記憶の限りでは、自分は聖剣士に致命傷を負わされ、聖なる巫女に消滅させられた――はずだったのだが。
広い寝室の、魔人5人は余裕で大の字になれる寝台のど真ん中で、彼はただただ『眠っていた』。そしてただただ『目を覚ました』。まるでそれが当たり前かのように。
「…おい、誰かおらぬのか」
魔王は未だ混乱の最中にある思考はそのままに、とにかく状況把握すべしと部屋の外へ声をかける。
何の反応もない。
仕方ないと身体を動かそうとして――思った以上に重い身体に気がついた。這い出すように寝台を出るが、広いそこから抜け出すのも一苦労である。
あれは夢だったのかと思い始めていたが、絶対夢ではない、この身体がそれを物語っている。
「…っ」
なんとか寝台から降りると、夜着のまま重い身体を引きずるようにして部屋の出口へ向かう。いつこの夜着に召し変えたのかも記憶にないのだが、さらりとした手触りはいつものものだ。部屋の様子もいつも通り。ただ自身の記憶と身体の異変だけがいつもと違った。
あと数歩でドアに辿り着く――というところで、唐突にそのドアが力いっぱい開け放たれた。
「っ!」
「…あら、魔王さま、起きてらしたのですか?」
そこに居たのは、記憶の途切れる寸前、彼に向かって両の手を翳しまばゆいほどの光で魔を圧倒した――巫女その人であった。
「……」
魔王は状況が今ひとつ読み込めず、その場で立ち尽くす。
よく見れば巫女の両手には朝食のようなものがあった。
「魔族は夜型だと聞いていたのですけど、明るい時間にも起きてくるのですね」
勝手知ったる顔で部屋に入ってきた巫女は、そんなことを言いながら魔王の横を通り過ぎ、豪奢なソファの前のこれまた豪奢なテーブルへ、その朝食を載せた盆を置いた。
戦いの最中には特に気にも留めていなかったが、巫女はまだ魔族で言うところの150歳くらい――人間で言えば15歳ほど――の幼さの残る少女だった。
それがあんなにもおびただしい光を放っていたなんて。
魔王は現状に理解が及ばないままそんなことをぼんやり思った。まだ寝起きなのかもしれない。
そんな無言の魔王を振り返り、巫女はその無表情を変えることもなくこう言った。
「とにかく、これから100年もあるんですから、どうぞよろしくお願いいたしますね」
魔王は仇敵であるはずの巫女にまさかのよろしくされてしまい、
「はぁ?」
こう返すのが精一杯だった。
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