5 / 5
秋
涼音の涙
しおりを挟む
言い争いが耐えない日々が突如として続いた。私が咄嗟に出した言葉のせいで彼女の涙を見る時、どうしてこんなことでと考えるようになった。私の言葉のどこが彼女を傷つける要因になったのか、理解できなかった。
彼女の啜り泣く声が、襖の向こうで聞こえるこの晩。私は耳を塞いで彼女の声を遠のけた。
「自分といることが、彼女の不幸になるならば」
そういった考えが脳を蝕む。彼女の幸せを慮ると、私が彼女の不幸を招くピクラスになっているのでは無いかと心を追い詰めるようになっていた。
彼女の笑顔が好きだった。だがもう彼女の笑顔を見ることは出来ない。
重石を載せた錯覚をするほど足を動かすのが苦痛だったが、やっとの思いで襖を開けると涼音は涙を拭って笑った。
私は膝まづいて、涼音の前で言った。
「涼音、しばらく離れよう」
一緒に住む最後の日まで、私は涼音の大粒の涙を拝まなくてはならなかった。
涼音が泣き縋って来るのを、受け止めることしかできない。
「私は、お前の笑顔が見たいんだ」
「何を言うの、私は貴方と一緒にいないと笑うことさえできない」
「でも最近のお前は泣いてばかりじゃないか、私と離れればいい」
「いやだ、そんなこと」
泣く涼音の肩をあやして、私たちは一晩そのままでいた。
彼女の啜り泣く声が、襖の向こうで聞こえるこの晩。私は耳を塞いで彼女の声を遠のけた。
「自分といることが、彼女の不幸になるならば」
そういった考えが脳を蝕む。彼女の幸せを慮ると、私が彼女の不幸を招くピクラスになっているのでは無いかと心を追い詰めるようになっていた。
彼女の笑顔が好きだった。だがもう彼女の笑顔を見ることは出来ない。
重石を載せた錯覚をするほど足を動かすのが苦痛だったが、やっとの思いで襖を開けると涼音は涙を拭って笑った。
私は膝まづいて、涼音の前で言った。
「涼音、しばらく離れよう」
一緒に住む最後の日まで、私は涼音の大粒の涙を拝まなくてはならなかった。
涼音が泣き縋って来るのを、受け止めることしかできない。
「私は、お前の笑顔が見たいんだ」
「何を言うの、私は貴方と一緒にいないと笑うことさえできない」
「でも最近のお前は泣いてばかりじゃないか、私と離れればいい」
「いやだ、そんなこと」
泣く涼音の肩をあやして、私たちは一晩そのままでいた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
楽しく拝読させて頂きました!
ふたりの間に、ほんのり温かな愛情を感じます。
ほんの身近な出来事が、きれいな想い出のように描かれていますね。
毎回コメントありがとうございます。
よかった、人情に焦点を当てた小説を目指しているので。楽しめていただけて何よりです。
美しい文章ですね! 読んでいて、音楽のように心地よかったです!
純文学を目指しているのでそう言って貰えると支えになります!読んでくださってありがとうございます!
退会済ユーザのコメントです
応援の言葉とお気に入り登録ありがとうございます!純文学は難しいので頑張ります!