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秋
涼音の涙
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言い争いが耐えない日々が突如として続いた。私が咄嗟に出した言葉のせいで彼女の涙を見る時、どうしてこんなことでと考えるようになった。私の言葉のどこが彼女を傷つける要因になったのか、理解できなかった。
彼女の啜り泣く声が、襖の向こうで聞こえるこの晩。私は耳を塞いで彼女の声を遠のけた。
「自分といることが、彼女の不幸になるならば」
そういった考えが脳を蝕む。彼女の幸せを慮ると、私が彼女の不幸を招くピクラスになっているのでは無いかと心を追い詰めるようになっていた。
彼女の笑顔が好きだった。だがもう彼女の笑顔を見ることは出来ない。
重石を載せた錯覚をするほど足を動かすのが苦痛だったが、やっとの思いで襖を開けると涼音は涙を拭って笑った。
私は膝まづいて、涼音の前で言った。
「涼音、しばらく離れよう」
一緒に住む最後の日まで、私は涼音の大粒の涙を拝まなくてはならなかった。
涼音が泣き縋って来るのを、受け止めることしかできない。
「私は、お前の笑顔が見たいんだ」
「何を言うの、私は貴方と一緒にいないと笑うことさえできない」
「でも最近のお前は泣いてばかりじゃないか、私と離れればいい」
「いやだ、そんなこと」
泣く涼音の肩をあやして、私たちは一晩そのままでいた。
彼女の啜り泣く声が、襖の向こうで聞こえるこの晩。私は耳を塞いで彼女の声を遠のけた。
「自分といることが、彼女の不幸になるならば」
そういった考えが脳を蝕む。彼女の幸せを慮ると、私が彼女の不幸を招くピクラスになっているのでは無いかと心を追い詰めるようになっていた。
彼女の笑顔が好きだった。だがもう彼女の笑顔を見ることは出来ない。
重石を載せた錯覚をするほど足を動かすのが苦痛だったが、やっとの思いで襖を開けると涼音は涙を拭って笑った。
私は膝まづいて、涼音の前で言った。
「涼音、しばらく離れよう」
一緒に住む最後の日まで、私は涼音の大粒の涙を拝まなくてはならなかった。
涼音が泣き縋って来るのを、受け止めることしかできない。
「私は、お前の笑顔が見たいんだ」
「何を言うの、私は貴方と一緒にいないと笑うことさえできない」
「でも最近のお前は泣いてばかりじゃないか、私と離れればいい」
「いやだ、そんなこと」
泣く涼音の肩をあやして、私たちは一晩そのままでいた。
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退会済ユーザのコメントです
応援の言葉とお気に入り登録ありがとうございます!純文学は難しいので頑張ります!