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【第零部 そらいろ ~天色事変~】
三大天上人
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「父上! 父上!」
タミが声をかけてもヨナの返事はない。
雲の上を飛んでいた二人は真っ逆さまに落ちていく。海面に激突する寸前に、バサァと翼の音がしたと同時に大きな風が吹き、二人は空高くへと舞い上がる。舞い上がった二人を犬神が背に乗せる。
「危機一髪だったね」
黒い翼を生やした鬼の天邪鬼が大きな風をお越し、二人の窮地を救ったのだ。
「助けてくれてありがとう、テンテンさん」
タミは仰向けの状態でニコニコしながら両手を振る。
そこに紫色の蝶が鱗粉をまきながらやってきて、結界のようなものを作る。そして人の姿となり、ヨナとタミの傷を治していく。
「ありがとう、リンさん」
リンはニッコリと微笑み、蝶の姿に戻っていく。
しばらくして、ヨナは目を覚ます。
「父上!」と嬉し涙を流しながら手足をバタバタさせるタミ。
「ワン、天邪鬼、リン。来てくれたのか。助かった。ありがとう」とタミを抱きながら深々と頭を下げるヨナ。
「ヨナ、調子はどうだい?」と犬神のワンタンが声をかける。
「リンのおかげで問題はない」
「そうか、では行くぞ」と言ってワンタンはアメフリのいる積乱雲へと飛ばしていく。
* * *
積乱雲に着くと妖狐の背に乗った言音、鵺の背に乗った香絃、怪狸の背に乗った和音の三大天上人が待っていた。
「言音様! どうしてここに」とヨナが問うと「妖モノたちだけにイイカッコばかりされると私たちの立場というのもね。というのは冗談だ。我らは友人ではないか。私たちは人間ではあるが私たちにも出来ることがあるだろうと思い、ここに来た」と言音は答える。
言音はヨナたちに微笑みくるっと背を向け、印を結びはじめる。
「言色邌飛 道よ! 開け!」と言音が唱える。丸い白の光の玉が現れ二つに割れ、光の道を作り出す。道は積乱雲まで続き、門口のように入り口を作り出す。門口が開いたのと同時に大小無数の黒い火の玉が飛び出してくる。
「香色四散! 柴胡! 正体をみせよ!」と香絃が印を結び唱える。香絃が香りで正体を見破る力を使い、黒い火の玉の正体を露にする。黒い火の玉は人間たちに住処を奪われた魚や虫などが怨念と化して妖怪になり果てたものたちであった。
「音色風音! 翡翠! 恨み辛みは忘れ眠れ!」と和音が印を結び唱える。宝石が砕けるような音がきこえ緑色の生暖かい風が吹き荒れる。その音と風を浴びた妖怪の成り果てたモノたちは眠りに落ちていく。
言音は門口を指差す。
「言音様、香絃様、和音様。ありがとうございます」とヨナは深々と頭を下げる。香絃と和音はそんなヨナの肩をトントンと叩く。
「私たちはここまでだ。あとは頼んだぞ」と言音たち一列に並び深々と頭を下げる。
そう。この使命はタミとヨナに託されたのだ。
アメフリがいる積乱雲の中にはヨナの能力である防御壁やタミの治癒能力がなければ入ることが出来ない。皆はタミの治癒能力があれば安全だという考えがあるのだが、タミの治癒能力がなくなったのを知るものはタミだけである。しかもタミはハノイの天女の羽衣で仕立てられた羽織物を着ているため見た目を相手の都合の良いようにみせてしまっている。羽衣はそれだけでなく着ている本人の思考を読むため、タミが『他人には怪我をしているようにみせたくない』と思っていることが見た目に反映されているのだ。そう、タミは体中に傷を負っているのだがそれもタミ本人だけにしか見えていない。タミは痛みに耐えながらも笑顔を保ち続けている。
「言音様、香絃様、和音様! いってきます!」とタミは笑顔で手を振る。そしてタミとヨナは積乱雲の中へ入っていく。
タミが声をかけてもヨナの返事はない。
雲の上を飛んでいた二人は真っ逆さまに落ちていく。海面に激突する寸前に、バサァと翼の音がしたと同時に大きな風が吹き、二人は空高くへと舞い上がる。舞い上がった二人を犬神が背に乗せる。
「危機一髪だったね」
黒い翼を生やした鬼の天邪鬼が大きな風をお越し、二人の窮地を救ったのだ。
「助けてくれてありがとう、テンテンさん」
タミは仰向けの状態でニコニコしながら両手を振る。
そこに紫色の蝶が鱗粉をまきながらやってきて、結界のようなものを作る。そして人の姿となり、ヨナとタミの傷を治していく。
「ありがとう、リンさん」
リンはニッコリと微笑み、蝶の姿に戻っていく。
しばらくして、ヨナは目を覚ます。
「父上!」と嬉し涙を流しながら手足をバタバタさせるタミ。
「ワン、天邪鬼、リン。来てくれたのか。助かった。ありがとう」とタミを抱きながら深々と頭を下げるヨナ。
「ヨナ、調子はどうだい?」と犬神のワンタンが声をかける。
「リンのおかげで問題はない」
「そうか、では行くぞ」と言ってワンタンはアメフリのいる積乱雲へと飛ばしていく。
* * *
積乱雲に着くと妖狐の背に乗った言音、鵺の背に乗った香絃、怪狸の背に乗った和音の三大天上人が待っていた。
「言音様! どうしてここに」とヨナが問うと「妖モノたちだけにイイカッコばかりされると私たちの立場というのもね。というのは冗談だ。我らは友人ではないか。私たちは人間ではあるが私たちにも出来ることがあるだろうと思い、ここに来た」と言音は答える。
言音はヨナたちに微笑みくるっと背を向け、印を結びはじめる。
「言色邌飛 道よ! 開け!」と言音が唱える。丸い白の光の玉が現れ二つに割れ、光の道を作り出す。道は積乱雲まで続き、門口のように入り口を作り出す。門口が開いたのと同時に大小無数の黒い火の玉が飛び出してくる。
「香色四散! 柴胡! 正体をみせよ!」と香絃が印を結び唱える。香絃が香りで正体を見破る力を使い、黒い火の玉の正体を露にする。黒い火の玉は人間たちに住処を奪われた魚や虫などが怨念と化して妖怪になり果てたものたちであった。
「音色風音! 翡翠! 恨み辛みは忘れ眠れ!」と和音が印を結び唱える。宝石が砕けるような音がきこえ緑色の生暖かい風が吹き荒れる。その音と風を浴びた妖怪の成り果てたモノたちは眠りに落ちていく。
言音は門口を指差す。
「言音様、香絃様、和音様。ありがとうございます」とヨナは深々と頭を下げる。香絃と和音はそんなヨナの肩をトントンと叩く。
「私たちはここまでだ。あとは頼んだぞ」と言音たち一列に並び深々と頭を下げる。
そう。この使命はタミとヨナに託されたのだ。
アメフリがいる積乱雲の中にはヨナの能力である防御壁やタミの治癒能力がなければ入ることが出来ない。皆はタミの治癒能力があれば安全だという考えがあるのだが、タミの治癒能力がなくなったのを知るものはタミだけである。しかもタミはハノイの天女の羽衣で仕立てられた羽織物を着ているため見た目を相手の都合の良いようにみせてしまっている。羽衣はそれだけでなく着ている本人の思考を読むため、タミが『他人には怪我をしているようにみせたくない』と思っていることが見た目に反映されているのだ。そう、タミは体中に傷を負っているのだがそれもタミ本人だけにしか見えていない。タミは痛みに耐えながらも笑顔を保ち続けている。
「言音様、香絃様、和音様! いってきます!」とタミは笑顔で手を振る。そしてタミとヨナは積乱雲の中へ入っていく。
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