障害者の観点から読むダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」

星名雪子

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あらすじと簡単な内容の紹介

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先日、本の整理をしていたところ、懐かしい本が出て来たので久しぶりに読み返した。初めて読んだのは学生の時だと思うが、発達障害の診断を受けてから読むのは初めてだった。1966年に出版されたこの作品はアメリカの作家ダニエル・キイスによる不朽の名作として今も世界中の人々に愛されている。

以下、あらすじを紹介しておこうと思う。(ネタバレを含む為、これから読む予定がある方はご注意を)

知的障害を持つ青年チャーリイは、かしこくなって、周りの友達と同じになりたいと願っていた。他人を疑うことを知らず、周囲に笑顔をふりまき、誰にでも親切であろうとする、大きな体に小さな子供の心を持った優しい性格の青年だった。

彼は叔父の知り合いが営むパン屋で働くかたわら、知的障害者専門の学習クラスに通っていた。ある日、クラスの担任である大学教授・アリスから、開発されたばかりの脳手術を受けるよう勧められる。先に動物実験で対象となったハツカネズミの「アルジャーノン」は、驚くべき記憶・思考力を発揮はっきし、チャーリイと難関の迷路実験で対決し、彼に勝ってしまう。彼は手術を受けることを快諾かいだくし、この手術の人間に対する臨床りんしょう試験の被験者ひけんしゃ第1号に選ばれたのだった。

手術は成功し、チャーリイのIQは68から徐々に上昇し、数か月でIQ185の知能を持つ天才となった。チャーリイは大学で学生に混じって勉強することを許され、知識を得る喜び・難しい問題を考える楽しみを満たしていく。だが、頭が良くなるにつれ、これまで友達だと信じていた仕事仲間にだまされいじめられていたこと、自分の知能の低さが理由で母親に捨てられたことなど、知りたくもない事実を理解するようになる。

また、高い知能に反してチャーリイの感情は幼いままだった。突然に急成長を果たした天才的な知能とのバランスが取れず、妥協だきょうを知らないまま正義感を振り回し、自尊心じそんしんが高まり、知らず知らず他人を見下すようになっていく。周囲の人間が離れていく中で、チャーリイは手術前には抱いたことも無い孤独感こどくかんを抱くのだった。さらに、忘れていた記憶の未整理な奔流ほんりゅうもチャーリイを苦悩の日々へと追い込んでいく。

そんなある日、自分より先に脳手術を受け、彼が世話をしていたアルジャーノンに異変が起こる。チャーリイは自分でアルジャーノンの異変について調査を始め、手術は一時的に知能を発達させるものの、性格の発達がそれに追いつかず社会性がそこなわれること、そしてピークに達した知能は、やがて失われ元よりも下降してしまうという欠陥けっかんを突き止める。彼は失われ行く知能の中で、退行を引き止める手段を模索もさくするが、知能の退行を止めることはできず、チャーリイは元の知能の知的障害者に戻ってしまう。自身のゆく末と、知的障害者の立場を知ってしまったチャーリイは、自らの意思で障害者収容施設へと向かう。

彼は経過報告日誌の最後に、正気を失ったまま寿命が尽きてしまったアルジャーノンの死をいたみ、これを読むであろう大学教授に向けたメッセージ(「ついしん」)として、「どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。」と締めくくる。(Wikipediaより)

この作品は主人公であるチャーリィの一人称視点で研究機関に提出する「経過報告」という日誌の形式で書かれているのだが、特徴は知能が向上していくにつれ、文体が変わっていくことである。ひらがなばかりで句読点もなく誤字脱字が多い読みにくい文章(幼児が書いている感じ)から始まり、手術が終わった後から徐々に漢字が増えて行き読みやすい文章に。知能が最高点に到達した際には登場する漢字や言葉は非常に難解でいちいち調べながら読まくてはならない程になる。退行が始まってからは徐々に漢字からひらがなに変わり、最後には幼児が書いたような元の文章に戻る。

文章が知的になっていくという構成は「最初は自分(読み手)よりも知能が低かったチャーリィがいつの間にか自分(読み手)を追い越していってしまう」というチャーリィの急激な変化に戸惑う周りの人物の心情を読み手が疑似ぎじ体験するという演出にもなっている。これは一人称かつ主人公の日誌という視点ならではだ。この翻訳ほんやくは「名訳」と呼ばれている。その通りだし、原文でも読んでみたいという気にもなる(英語ができないので残念ながら読めないが)作者と翻訳者の高い表現力や文章力がうかがえる素晴らしい小説である。
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