障害者の観点から読むダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」

星名雪子

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作業所にいた知的障害者のAくん

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私は以前、障害者が通う就労継続支援施設しゅうろうけいぞくしえんしせつ(通称:作業所)に通っていた。そこには私と同じ発達障害者の他、知的障害者も数人いた。その中にいつもニコニコしていて明るくどんな作業も一生懸命に真面目にこなす男性の軽度知的障害者がいた。(年齢はわからないが恐らく20代)頻繁ひんぱんに会話をした訳ではないが、彼は私の名前をきちんと覚えてくれて一緒に作業する時は声を掛け合ったりもした。私は彼に好感を持っていた(恋愛感情ではなく人間性を好いていた)チャーリィが現実にいたら一体どんな人なのだろう?と考えた時ふと彼の姿が浮かんだ。(以下Aくんとする)

そこで私は考えた。もしAくんがチャーリィのように何らかの治療方法を試して知能が上がったとしたら?それまでは屈託くったくのない笑顔で気さくに話しかけてくれたのに、急にキリッとした顔つきになって私のやる作業に対してあれこれと指示を出してきたら戸惑ってしまうと思う。私だけではなくきっと他の通所者や職員もみんな戸惑うに違いない。

チャーリィはパン屋で働いており、知能が上がっていくにつれて作業のレベルも上がっていった。そんなチャーリィの事を仲間は明らかに避け始め、中には憎悪の目を向ける者もいた。それは彼らがそれまでチャーリィの事を「自分より下の人間」だと認識していたからだ。中にはチャーリィが理解できないのを良い事に嫌がらせをする者もいた(チャーリィは気づかなかった。それどころか好かれてると思っていた)そんなチャーリィが急に「自分より上の人間」になってしまった事に皆、戸惑いや苛立ちを感じているのだ。

元々自分は人より劣る人間だと思っているので私は一緒に働く仲間の事をそんな風に見た事はない。だから、Aくんが知能が向上したとして抱く「戸惑い」はパン屋の仲間がチャーリィに抱く感情とは違う。考えてみて欲しい。それまで接していた人が段階的にとはいえ全くの別人になってしまったとしたら?誰だって戸惑うし、どう接していいのかも分からなくなると思う。

その後、取る選択肢は「受け入れる」「受け入れない」の二択になるだろう。私はもしもAくんが本来の人間性(明るくて真面目)を損なっていなければ今まで通り接すると思う。これもきっと人によって対応が全く異なるのだろう。
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