発達障害者の私が就労施設に通ってみて思ったこと。

星名雪子

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3、B型施設のメリットとデメリット

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私が通った作業所は、お花の先生監修の元で利用者が作った「フラワーアレンジメント」の作品を、注文が入ったお店や企業に販売し、余った花をドライフラワーにするなどのエコ活動も行っている。また、ネットオークション出品業務を委託されており、パソコン作業や梱包といった軽作業も行っている。個人の能力によって役割が決められ、その日の朝に当日自分がやる作業が発表される。以下、私が感じた作業所のメリットとデメリットを挙げてみた。

【メリット】
・行政から交通費が支給される。

・私が通った作業所は、工賃は成果物に対してではなく出勤日数に応じる。なので、作品の完成度などには関係なく、通えば通った分だけ工賃がもらえる仕組み。B型作業所の工賃はだいたい成果物に対して発生するので、この仕組みはかなり珍しく、また他の作業所よりは高い工賃を得ることができるようになっている。

・流行りの曲がBGMとして流れており、常に和気あいあいとした雰囲気。皆、基本的にお喋りを楽しみながら作業をしているので、緊張することなく作業に取り組める。私はこの作業所にしか行っていないため、他の作業所がどんな雰囲気なのか分からない。

しかし、利用者や職員によると「良い意味で作業所らしくない。他と違って皆凄く仲が良い」とのこと。数人の利用者に話を聞いたところ、他作業所では、色々な理由で会いたくない人がいたり、一方的に好意を寄せられ付きまとわれ、危うく家を知られそうになり今の作業所に移った。という人もいた。私は初作業所にして良い所に入ることができたようだ。また職員は障害に理解があるため、何かミスをしても怒られることはまずない。ミスを連発しても笑顔で対応してくれる。

・程度や障害が違っても利用者は皆、障害者なので「自分と同じ人達の輪の中にいる」という安心感がある。私は旦那と少し険悪な感じになってしまったことがあるのだが、その期間は家にいるよりも作業所にいる方が安心した。作業所の誰かに自分の悩みを打ち明けたりはしなかったのだが、知らない内に「仲間意識」のようなものが芽生えていたのかもしれない。

・作業内容が簡単過ぎて良い意味で「仕事」をしている感覚はない。(主に梱包など軽作業)それは恐らく、私がこれまで一般企業に長らく務めていた経験があるからだと思う。中には重度の知的障害者もおり、職員が付きっきりで全ての作業を行っていたので作業内容をどう感じるかは、障害の度合いによって違うと思う。

・フラワーアレンジメントは「仕事」というよりも「お花の教室」感覚。客に納品するものなのでもちろんその意識を持って真面目に取り組んでいるが、楽しいのでついつい「仕事」であることを忘れる。花に詳しくなったり、時には余った花を無料でもらうことができる。私は6月に紫陽花を3本、無料でもらったのだが、かなり楽しむことができてお得だった。

・就活の際に社会福祉法人の就職支援施設と連携を取り、全面的に活動の支援をしてくれる。具体的には作業所での作業や態度などを評価して、就労支援施設に報告をしてくれて、施設はその評価を元に応募先の企業にアピールしたりといったことをしてくれるらしい。就活に関しては次のページでより詳しく綴っているので興味のある方はぜひそちらを参考にしてほしい。



【デメリット】※この作業所に限らず全ての就労施設に当てはまること

・同居家族や配偶者にそれなりの収入があると作業所に世帯収入に応じた高額な利用料を払わなければならないという信じられない制度がある。働きにいっているのに利用料を払わなければいけないというのはどう考えても理解し難い制度である。

・工賃が安すぎる。この作業所では1か月・22日フル通所で約¥44000という目安があるのだが、22日というのはつまり週5~週6ペースである。毎日頑張って通所しても、この金額では一人で生活していくにはかなり厳しい収入である。それならA型作業所に行くか、無理してでも一般企業で週3、4日程度で働いた方がもっと高額な収入が得られるし、生活も安定するのではないだろうか。

・様々な障害を持った利用者がいるので、どうしても作業内容や工賃に不公平さが出てしまう。例えば、重度の知的障害を持った利用者が1日かかってようやくひとつの成果物を作ることができたとする。それでもこの人は週5~6ペースで通所しているのでそれなりの工賃を得ることができる。一方、軽度の障害や精神疾患を持っている人で調子が良い時はハイペースで仕事をこなし、1日で多くの成果物を作ったとする。この人は心身の色々な事情で週2、3日しか通うことができないので工賃はかなり安い。この場合はどうしても両者間に不公平さが生じてしまう。この場合は相手が重度の障害を持っているから仕方ないと割り切るしかないのかもしれない。長く通っていると個人の能力に合わせて「能力給」という手当がつくようになるが、私は4ヶ月通ってもつかなかったのでもしかしたら半年~一年経たないとつかないのかもしれない。

・必ずしもやりたい作業をできるわけではない。私は体験の際に「お花とPC作業がやりたい」と事前に希望を伝えた。お花はサイズが大中小とあり、大きいほど難易度が高くなる。小サイズから始め、慣れて来ると大サイズになる。PC作業は全体的に難易度が高いため、まずは作業所の雰囲気や仕事に慣れてから、という感じでとにかく最初は希望通りの作業ができる訳ではない。私は約1か月程経ってからPC作業、大サイズのお花の担当になった。

中には希望通りの仕事ができずに文句を言う利用者もいるらしい。しかし、一般企業でもやりたくない仕事を延々とやらされる事も多々あるので訓練だと割り切るしかないのかもしれない。

・通う為には行政の発行する「福祉サービス受給者証」という証明書みたいなものが必要なのだが、これが手元にないと工賃も交通費も発生しない。じゃあ、申請したらその場でもらえるのかというとそんなことはなく、発行まで10日ほど待たされる。じゃあ、手元に来てから通えばいいと思うかもしれないが、それもできない。その場合は「体験」扱いとなり、どんなに通所してもタダ働きになってしまう。融通が利かない。さすがは「お役所仕事」である。

・交通費支給が3ヶ月ごと。(自治体による)つまり3ヶ月まとめて支払いなので、それまでは実費で払う必要がある。明らかに行政の怠慢というか「1か月ごとに支給するの面倒だからまとめて払うわ」という魂胆が丸見えである。

・通所の際に、1か月どれぐらいのペースで通うのかや具体的な目標を書いた書類を行政に提出しなければならないのだが、通うペースを変えた場合はその都度、行政に連絡を入れる必要がある。例えば、最初は不安だから週2日ペースで通所を決めたとする。2か月経って慣れてきたからと週4ペースに変える場合は再び行政にその書類を提出しなければならない。

以上が大まかなメリットとデメリットだ。

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