私達の春夏秋冬

星名雪子

文字の大きさ
10 / 10
あとがき

あとがき

しおりを挟む
以前、「小学校時代を過ごした北海道のある田舎町、そこで経験したスキーの思い出話。」というエッセイを書き、その一番最後に「あの町で過ごしたことを1本の長編小説にし、文学賞に送った。(中略)結果が出たらその作品をここで公開しようと思っている」と書きましたが、それがこの作品です。

ここに載っているということは文学賞に応募した結果はお察し頂けるかと思います。残念な結果となってしまいましたが、「黄色い車が教えてくれたこと」に引き続き「文学賞に自分の作品を応募する」という目標が達成できたので個人的には良い経験になったと思っています。

発達障害をテーマにした「ふしぎな友達」という小説のあとがきを書いた時に「私小説風のフィクション」というジャンルについて触れましたが、この作品も「私小説風のフィクション」といえるのではないかと個人的に思っています。それぞれの章について少し解説をさせて頂きたいと思います。

【蛍の思い火】
この連作短編の中で一番初めに出来た作品です。しかも、それまで二次創作小説を書いていた私が初めて書いた、完全オリジナル小説なので、個人的にはとても思い入れがあります。書いたのはもう10年以上も前のことなので、どうしてこの物語を書こうと思ったのかキッカケはもう覚えていません。おそらく、心に残っている大切な思い出を「小説」という目に見える形で残しておきたかったのだと思います。一番初めの読者は両親と妹でしたが、皆とても感動して喜んでくれたのを今でも覚えています。

細かい箇所は創作で、当時、私は中学生、妹は小学3年。この田舎町から札幌に引っ越しをすることになったのですが、その最後の思い出として笠原さんが私達に「蛍鑑賞ツアー」をプレゼントしてくれた思い出が元になっています。連作短編集にするにあたり何度か加筆・修正を繰り返してこの形になりました。


【真っ赤なそりのサンタさん】
「蛍の思い火」の次に出来た作品です。元々は姉視点の一人称でしたが、連作短編集にするにあたり、妹視点の二人称に変更してみました。二人称が果たしてこういう書き方で合っているのか不安でもう少し勉強が必要だなと思いつつも、思い切って挑戦してみました。

全体的にファンタジーになっていますが、このサンタさんの正体……実は「友達のお父さん」なのです。当時、毎年クリスマスになるとサンタに扮した友達のお父さんが、真っ赤なそりにプレゼントを乗せて来てくれました。我が家だけではなく小学校の生徒全員の家を訪問していたのですが、それは生徒が少なかったからこそできたイベントだったのだと思います。中身はどこにでも売っているお菓子の詰め合わせでしたが、クリスマスにプレゼントを貰う習慣がなかった私と妹にとっては宝物のようでした。雪深い道をわざわざサンタの恰好をして、ささやかなプレゼントを届けてくれた、その友達のお父さんに今でも感謝の思いは尽きません。私にとってのクリスマスの思い出は「友達のお父さんサンタさん」なのです。


【雪解け水とふきのとう】
最初は「蛍の思い火」と「真っ赤なそりのサンタさん」の2作品のみでしたが、せっかくだから四季をテーマにした連作短編集にしてみようと思い立ち、改めて書いた小説でこちらは殆どが創作となっています。当時、過ごした春の出来事や物事の中で印象深いものや思い出に残っているものをキーワードとして散りばめた感じです。私にとって北海道の春は「雪解け」のイメージが強く、特に毎年3月の卒業式シーズンが思い出深いです。慕っていた6年生や先生を卒業式で見送った後、小川のような雪解け水の下にふきのとうを見ることが多く、どこまでも青く澄んだ空と相まって何だか切ない気分がしたのを今でもよく覚えています。作中に少し登場した「春の滝」も実在するものです。(春にしか流れないので正式名称ではなく、私達が勝手に付けた名前ですが)都会に住んでいる今では絶対に味わえないなぁと、思い出す度にノスタルジックな気分になります。


【赤黄色の森の中で】
最後に完成した作品です。もちろん創作ですが、家族で紅葉を見にドライブに出かけたことは事実でとても思い出に残っています。私は今でもドライブが好きですが、思えばこの家族での紅葉ドライブが原点というかキッカケなのかなぁと思っています。もちろんキタキツネの親子との交流はありませんが、ドライブをしていて道路にキタキツネが飛び出してきたことは何度もあります。その度に家族全員ではしゃいでいたことを思い出しながら、想像を膨らませて書いてみました。


物語は創作ですが、登場人物には皆、モデルがいます。知美先生は私の小学校時代の恩師、笠原さんは小学校の用務員的なおじさん、姉妹は小学校時代の私と妹です。基本的には私自身の体験に基づいていますが、主役である姉妹二人の関係性をより深め、姉の成長物語とする為に完全に創作小説として書きました。その辺りが「私小説風のフィクション」といえるのではないかなと個人的には思っています。

私と妹の子供時代を支えてくれた、両親、そして恩師と用務員のおじさんには感謝の思いでいっぱいです。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

青春リフレクション

羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。 命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。 そんなある日、一人の少女に出会う。 彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。 でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!? 胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

想い出は珈琲の薫りとともに

玻璃美月
ライト文芸
――珈琲が織りなす、家族の物語  バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。  ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。   亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。   旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。

処理中です...