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第4章 冬
「真っ赤なそりのサンタさん」 2話
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でもね、そんなお姉ちゃんへの気持ちに変化が起きた出来事があった。これも覚えてるかな?秋に家族で紅葉を見に行った時のこと。私達、山の中でお父さんとお母さんとはぐれて迷子になってしまったでしょう?あの時のお姉ちゃんはさ、それまでの自信なさげなお姉ちゃんとは打って変わって凄く頼もしく感じたんだよ。
あの時は確か、お姉ちゃんの考えで山頂に向かって歩いたよね?でも、どんなに歩いてもお父さんとお母さんのとこには辿り着けなくて……私、一瞬お姉ちゃんのことを「やっぱり頼りにならない」って思っちゃったんだ。
でもね、後でこう思い直したの。山頂を目指したからこそキタキツネの親子に出会えたんだって。キタキツネの親子は私とお姉ちゃんを助けてくれた命の恩人だよね。えっ?何?恩「人」ってキタキツネなんだから「人」じゃないでしょって?そんな細かいことはいいじゃん!
……で、お姉ちゃんの機転がなければ、キタキツネの親子に会う事もなく私達はあの山の中で死んでいたかもしれないなって思ったんだよ。だからお姉ちゃん凄いなって思ったの!えっ?何?「私は何もしていない。キタキツネの親子が助けてくれたんだよ」って?何でそんなに謙遜してるの?もっと自信持っていいのに!
でね、あの時以来、私の中で「頼りになるお姉ちゃん」という風に変わったんだ。あんなに頼りなかったのに一体何があったんだろうとか凄く考えたよ。成長のキッカケになるような出来事がどこかであったのかもしれないって。ああ、言わなくていいから!私はあえてその事には触れなかったの。「これからはどこまでもお姉ちゃんの事を信じて頼りにしよう」って思ったから。
だから、サンタさんが何でウチには来ないのか?っていう疑問に関してもお姉ちゃんが自信を持って「大丈夫」って言ってくれるなら、お姉ちゃんのことを信じようと私は思ったんだ。
それで、何日か後にあのクリスマスイヴの日が来たのよね。あの日はスキークラブの帰り道だった。昼間、学校ではサンタさんの話題で持ち切りだったんだよ。「お願いしたプレゼントをきちんとくれるかな?」とか「靴下はどんなもの用意したの?」とか。でも私はそんな会話には加わらなかった。だってお姉ちゃんから「ウチに来るサンタさんはみんなの家に来るサンタさんとは少し違うんだ」って言われてたから!あの時、私聞いたよね。
「ウチに来るサンタさんと、みんなの家に来るサンタさんはどこが違うの?」
って。そうしたらお姉ちゃん「それはね……来てからのお楽しみだよ」って何か意地悪そうに笑うから「えー教えてよー!」って言ったら「ダーメ!教えたら楽しみがなくなっちゃうでしょ」って。もう諦めるしかなかったよね!
その後もお姉ちゃんから色々細かい注意受けたよね。何だっけ?確か「開けてからのお楽しみだからプレゼントのリクエストはできない」とか「枕元に靴下は置かなくてもいい」とかそういうやつ。
私、スキーをしている最中「もしかしたら、滑っている時にどこからかサンタさんがひょっこり出てくるんじゃないか」って期待してたの。でも特に何も起きなかった。「クリスマスイヴは今夜なのに。もうすぐ夜も更けてしまう。一体いつになったらサンタさんが来てくれるんだろう」私はもうモヤモヤが止まらなかったよ!
……で、私、確か聞いたんだよね?
「お姉ちゃん、いつになったらサンタさん来てくれるの? もうすぐクリスマスイヴ終わっちゃうよ?」
って。でもお姉ちゃんはニコニコしながら穏やかな口調で「大丈夫だよ。サンタさんは必ず、喜子ちゃんに会いに来てくれるから」って言ったね。その顔がまた自信に満ち溢れててさ。お姉ちゃんの言う事を信じようって再び思ったわけ。そうしたら突然、隣を歩いてたお姉ちゃんの足がピタッと止まった。何だろうって不思議に思って私がお姉ちゃんの方を見ると……
「喜子ちゃん、あれ……あれ見て!」
お姉ちゃんが何かを真っ直ぐに見つめてる。同じ方向に目をやったら……私、思わずあって声上げちゃったよね!今でも覚えてるよ。赤い帽子に赤い服、ふわふわした長くて白いお髭……あれまさにサンタさんだったよね!
私達が驚いている間にも、サンタさんはどんどんこっちに向かってくる。私は一気にテンションが上がって担いでいたスキー板を放り投げて走り出しちゃった!「ちょっと待ちなさい!」ってお姉ちゃんに言われたし、スキー靴が硬くて何度も転びそうになった。でも、そんなの全然気にならなかったよ。それぐらい興奮してたんだから。
サンタさんは白い口髭の隙間から真っ白い歯を覗かせて、ニコニコ笑ってくれてたよね。サンタさんのそばには白い袋を乗せた、子供用の真っ赤なそりがあってさ!トナカイじゃなくてそりだよ、そり!面白いよね!でも私にはその中にはきっと沢山の夢が詰まってるんだろうなって思えたの。えっ?何?クサいって?だって本当にそう思ったんだから!
「メリークリスマス。クリスマスの日にスキーを頑張る君たちに私からのプレゼントだよ」
サンタさんは優しい声でそう言うと私達に合わせて屈んでくれて、白い袋の中から取り出した何かを目の前に差し出した。私、もう興奮しちゃって……
「うわぁ!クリスマスプレゼントだ!お姉ちゃんちゃん!見て!サンタさんからクリスマスプレゼントだよ!」
って大はしゃぎしてたよね。受け取ったクリスマスプレゼントは手のひらに収まるぐらい小さくてピンク色の包装紙に包まれて、リボンがかけられてた。生まれて初めて貰うクリスマスプレゼント。しかも、サンタさんから直接の手渡し!きっとまだ誰も経験したことがないはずって私は思った。
「サンタさん、サンタさん!本当にどうもありがとう!私クリスマスプレゼント、大事にする!」
「サンタさん、ありがとうございます。私と妹は、今日生まれて初めてあなたに会い、生まれて初めてクリスマスプレゼントを貰いました。とても嬉しいです」
私とお姉ちゃんがそう言うと、サンタさんは微笑んで、私達の頭を優しく撫でてくれたよね。「君たち姉妹に幸あれ」そう言って微笑んでくれた。そして、真っ赤なそりを引いて去って行った!「サンタさーん! バイバーイ!」って大きな背中に向かって大きく手を振ったらサンタさんも手を振り返してくれた。
私、その後のこともよく覚えてるんだ。気付いたらいつの間にか雪は止んでて、降り積もった雪の上に大きな足跡が街灯の下でくっきりと浮かび上がってた。それは、今ここにサンタさんがいたっていう何よりの証拠でしょう?それが凄く嬉しくて。雪灯りにキラキラ輝いててとてもキレイだったなぁ。私達しばらくその足跡をじっと見つめてたよね。頭がぼんやりして、まるで夢を見ているようだったな。その後の会話もよく覚えてる。
「お姉ちゃん、サンタさんって本当にいたんだね……!」
「そうだね。喜子ちゃんが会いたいと強く願ったから来てくれたんだよ、きっと」
「私が、サンタさんを呼んだの?」
そうしたらお姉ちゃんは優しく微笑みながら大きく頷いてくれた。
ねえ、お姉ちゃんに聞きたいんだけど……あのサンタさんって誰なの?いや、もちろんあの時は本当にサンタさんが私の為に来てくれたんだと思ってたんだ。でも大人になった今、思うんだ。もしかしたらお姉ちゃん、誰かに一日だけサンタさんになって欲しいって頼んだんじゃないかなって。
私、ひとつ引っかかってることがあるんだ。サンタさんがプレゼントくれた時、お姉ちゃん「……私にもくれるの?」って驚いたような顔しながら聞いてたよね?でもサンタさんは何も言わずに静かに頷いただけだった。あの時、私はまだ幼かったからこの会話の違和感に気づかなかったけど、大人になった時にふと思ったの。お姉ちゃんが誰かにサンタさんをやってほしいとお願いしたとしたら辻褄が合うんだよね。サンタさんはきっと私の面倒を見るお姉ちゃんのことを応援してくれてた。だから、お姉ちゃんにもプレゼントを用意してくれたんだと私は思うんだ。
あともうひとつあるの。お姉ちゃんは「お詫びに沢山のプレゼントを持ってきてくれる」って言ったよね?でも、サンタさんがくれたのは手のひらに収まるぐらいの小さな包みだった……。
もしかしてこれって当時まだ小学六年生だったお姉ちゃんがなけなしのお小遣いをはたいてやっとの思いで買った物だったんじゃないの?あっ、いや責めてるとかそういう訳じゃなくて……私が言いたいのは、仮にそうだったとしても、私は「沢山のプレゼント」なんていらないってことなの。手の平に収まるぐらいの小さな包みであっても、私にとっては宝物のように思えたんだから。
え?違う、私は何もしてないって?喜子ちゃんが強く願ったから、サンタさんが来てくれたんだよって?何よ、そんなにほっぺを赤くして否定されても説得力ないんだけどな!
まぁいいや。それがお姉ちゃんだもんね。本当にお姉ちゃんは優しいんだから。分かったよ。私、お姉ちゃんのこと信じる。あれはお姉ちゃんが「頼りになるお姉ちゃん」になったからこそ起こした奇跡だったってことね!ふふっ、またほっぺが赤くなってるよ!
ねぇお姉ちゃん、私思うんだけどね。立派なトナカイもいないし、頑丈でかっこいいそりもない。あるのは子供用の真っ赤なそりと、沢山の夢が詰まった白い袋だけ……ちょっと滑稽だけどさ、朝起きたら枕元にプレゼントが置いてあるだけの姿の見えないサンタさんよりもずっと素敵。そう思わない?
サンタさんを知らない私にとっては、あの真っ赤なそりのサンタさんこそが本物なの。うん、大人になった今でも私、本気でそう思ってるんだ。
あの時、私は自由奔放でまだ幼かった。でもお姉ちゃんはそんな私の事を優しく包み込んで守ってくれたね。本当にありがとう。私、お姉ちゃんに会う度にいつもそう思ってるの。これからも「頼りになるお姉ちゃん」でいてね!
完
あの時は確か、お姉ちゃんの考えで山頂に向かって歩いたよね?でも、どんなに歩いてもお父さんとお母さんのとこには辿り着けなくて……私、一瞬お姉ちゃんのことを「やっぱり頼りにならない」って思っちゃったんだ。
でもね、後でこう思い直したの。山頂を目指したからこそキタキツネの親子に出会えたんだって。キタキツネの親子は私とお姉ちゃんを助けてくれた命の恩人だよね。えっ?何?恩「人」ってキタキツネなんだから「人」じゃないでしょって?そんな細かいことはいいじゃん!
……で、お姉ちゃんの機転がなければ、キタキツネの親子に会う事もなく私達はあの山の中で死んでいたかもしれないなって思ったんだよ。だからお姉ちゃん凄いなって思ったの!えっ?何?「私は何もしていない。キタキツネの親子が助けてくれたんだよ」って?何でそんなに謙遜してるの?もっと自信持っていいのに!
でね、あの時以来、私の中で「頼りになるお姉ちゃん」という風に変わったんだ。あんなに頼りなかったのに一体何があったんだろうとか凄く考えたよ。成長のキッカケになるような出来事がどこかであったのかもしれないって。ああ、言わなくていいから!私はあえてその事には触れなかったの。「これからはどこまでもお姉ちゃんの事を信じて頼りにしよう」って思ったから。
だから、サンタさんが何でウチには来ないのか?っていう疑問に関してもお姉ちゃんが自信を持って「大丈夫」って言ってくれるなら、お姉ちゃんのことを信じようと私は思ったんだ。
それで、何日か後にあのクリスマスイヴの日が来たのよね。あの日はスキークラブの帰り道だった。昼間、学校ではサンタさんの話題で持ち切りだったんだよ。「お願いしたプレゼントをきちんとくれるかな?」とか「靴下はどんなもの用意したの?」とか。でも私はそんな会話には加わらなかった。だってお姉ちゃんから「ウチに来るサンタさんはみんなの家に来るサンタさんとは少し違うんだ」って言われてたから!あの時、私聞いたよね。
「ウチに来るサンタさんと、みんなの家に来るサンタさんはどこが違うの?」
って。そうしたらお姉ちゃん「それはね……来てからのお楽しみだよ」って何か意地悪そうに笑うから「えー教えてよー!」って言ったら「ダーメ!教えたら楽しみがなくなっちゃうでしょ」って。もう諦めるしかなかったよね!
その後もお姉ちゃんから色々細かい注意受けたよね。何だっけ?確か「開けてからのお楽しみだからプレゼントのリクエストはできない」とか「枕元に靴下は置かなくてもいい」とかそういうやつ。
私、スキーをしている最中「もしかしたら、滑っている時にどこからかサンタさんがひょっこり出てくるんじゃないか」って期待してたの。でも特に何も起きなかった。「クリスマスイヴは今夜なのに。もうすぐ夜も更けてしまう。一体いつになったらサンタさんが来てくれるんだろう」私はもうモヤモヤが止まらなかったよ!
……で、私、確か聞いたんだよね?
「お姉ちゃん、いつになったらサンタさん来てくれるの? もうすぐクリスマスイヴ終わっちゃうよ?」
って。でもお姉ちゃんはニコニコしながら穏やかな口調で「大丈夫だよ。サンタさんは必ず、喜子ちゃんに会いに来てくれるから」って言ったね。その顔がまた自信に満ち溢れててさ。お姉ちゃんの言う事を信じようって再び思ったわけ。そうしたら突然、隣を歩いてたお姉ちゃんの足がピタッと止まった。何だろうって不思議に思って私がお姉ちゃんの方を見ると……
「喜子ちゃん、あれ……あれ見て!」
お姉ちゃんが何かを真っ直ぐに見つめてる。同じ方向に目をやったら……私、思わずあって声上げちゃったよね!今でも覚えてるよ。赤い帽子に赤い服、ふわふわした長くて白いお髭……あれまさにサンタさんだったよね!
私達が驚いている間にも、サンタさんはどんどんこっちに向かってくる。私は一気にテンションが上がって担いでいたスキー板を放り投げて走り出しちゃった!「ちょっと待ちなさい!」ってお姉ちゃんに言われたし、スキー靴が硬くて何度も転びそうになった。でも、そんなの全然気にならなかったよ。それぐらい興奮してたんだから。
サンタさんは白い口髭の隙間から真っ白い歯を覗かせて、ニコニコ笑ってくれてたよね。サンタさんのそばには白い袋を乗せた、子供用の真っ赤なそりがあってさ!トナカイじゃなくてそりだよ、そり!面白いよね!でも私にはその中にはきっと沢山の夢が詰まってるんだろうなって思えたの。えっ?何?クサいって?だって本当にそう思ったんだから!
「メリークリスマス。クリスマスの日にスキーを頑張る君たちに私からのプレゼントだよ」
サンタさんは優しい声でそう言うと私達に合わせて屈んでくれて、白い袋の中から取り出した何かを目の前に差し出した。私、もう興奮しちゃって……
「うわぁ!クリスマスプレゼントだ!お姉ちゃんちゃん!見て!サンタさんからクリスマスプレゼントだよ!」
って大はしゃぎしてたよね。受け取ったクリスマスプレゼントは手のひらに収まるぐらい小さくてピンク色の包装紙に包まれて、リボンがかけられてた。生まれて初めて貰うクリスマスプレゼント。しかも、サンタさんから直接の手渡し!きっとまだ誰も経験したことがないはずって私は思った。
「サンタさん、サンタさん!本当にどうもありがとう!私クリスマスプレゼント、大事にする!」
「サンタさん、ありがとうございます。私と妹は、今日生まれて初めてあなたに会い、生まれて初めてクリスマスプレゼントを貰いました。とても嬉しいです」
私とお姉ちゃんがそう言うと、サンタさんは微笑んで、私達の頭を優しく撫でてくれたよね。「君たち姉妹に幸あれ」そう言って微笑んでくれた。そして、真っ赤なそりを引いて去って行った!「サンタさーん! バイバーイ!」って大きな背中に向かって大きく手を振ったらサンタさんも手を振り返してくれた。
私、その後のこともよく覚えてるんだ。気付いたらいつの間にか雪は止んでて、降り積もった雪の上に大きな足跡が街灯の下でくっきりと浮かび上がってた。それは、今ここにサンタさんがいたっていう何よりの証拠でしょう?それが凄く嬉しくて。雪灯りにキラキラ輝いててとてもキレイだったなぁ。私達しばらくその足跡をじっと見つめてたよね。頭がぼんやりして、まるで夢を見ているようだったな。その後の会話もよく覚えてる。
「お姉ちゃん、サンタさんって本当にいたんだね……!」
「そうだね。喜子ちゃんが会いたいと強く願ったから来てくれたんだよ、きっと」
「私が、サンタさんを呼んだの?」
そうしたらお姉ちゃんは優しく微笑みながら大きく頷いてくれた。
ねえ、お姉ちゃんに聞きたいんだけど……あのサンタさんって誰なの?いや、もちろんあの時は本当にサンタさんが私の為に来てくれたんだと思ってたんだ。でも大人になった今、思うんだ。もしかしたらお姉ちゃん、誰かに一日だけサンタさんになって欲しいって頼んだんじゃないかなって。
私、ひとつ引っかかってることがあるんだ。サンタさんがプレゼントくれた時、お姉ちゃん「……私にもくれるの?」って驚いたような顔しながら聞いてたよね?でもサンタさんは何も言わずに静かに頷いただけだった。あの時、私はまだ幼かったからこの会話の違和感に気づかなかったけど、大人になった時にふと思ったの。お姉ちゃんが誰かにサンタさんをやってほしいとお願いしたとしたら辻褄が合うんだよね。サンタさんはきっと私の面倒を見るお姉ちゃんのことを応援してくれてた。だから、お姉ちゃんにもプレゼントを用意してくれたんだと私は思うんだ。
あともうひとつあるの。お姉ちゃんは「お詫びに沢山のプレゼントを持ってきてくれる」って言ったよね?でも、サンタさんがくれたのは手のひらに収まるぐらいの小さな包みだった……。
もしかしてこれって当時まだ小学六年生だったお姉ちゃんがなけなしのお小遣いをはたいてやっとの思いで買った物だったんじゃないの?あっ、いや責めてるとかそういう訳じゃなくて……私が言いたいのは、仮にそうだったとしても、私は「沢山のプレゼント」なんていらないってことなの。手の平に収まるぐらいの小さな包みであっても、私にとっては宝物のように思えたんだから。
え?違う、私は何もしてないって?喜子ちゃんが強く願ったから、サンタさんが来てくれたんだよって?何よ、そんなにほっぺを赤くして否定されても説得力ないんだけどな!
まぁいいや。それがお姉ちゃんだもんね。本当にお姉ちゃんは優しいんだから。分かったよ。私、お姉ちゃんのこと信じる。あれはお姉ちゃんが「頼りになるお姉ちゃん」になったからこそ起こした奇跡だったってことね!ふふっ、またほっぺが赤くなってるよ!
ねぇお姉ちゃん、私思うんだけどね。立派なトナカイもいないし、頑丈でかっこいいそりもない。あるのは子供用の真っ赤なそりと、沢山の夢が詰まった白い袋だけ……ちょっと滑稽だけどさ、朝起きたら枕元にプレゼントが置いてあるだけの姿の見えないサンタさんよりもずっと素敵。そう思わない?
サンタさんを知らない私にとっては、あの真っ赤なそりのサンタさんこそが本物なの。うん、大人になった今でも私、本気でそう思ってるんだ。
あの時、私は自由奔放でまだ幼かった。でもお姉ちゃんはそんな私の事を優しく包み込んで守ってくれたね。本当にありがとう。私、お姉ちゃんに会う度にいつもそう思ってるの。これからも「頼りになるお姉ちゃん」でいてね!
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