絵心向上への道

よん

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 正月休みを無駄に過ごす僕の前に、神々しい輝きを放つ一人の女性が現れた。

「あ、あなたは誰ですか?」
「私は文芸を司るミューズ」
「ミューズさん……?」
「ミューズさんではない。"ミューズ"はグループ名に過ぎん」
「ああ、女子十○楽坊みたいなものですね」
「あながち間違ってはおらんが、乃木○とか欅○を引用しないあたりがおっさん丸出しだな」
「おっさんで悪うござんしたね。……で、その薬用石鹸さんが何の御用で?」
「やめんか! 私のビジュアルが一昔前のCMに出ていた小汚いクソガキみたいに思われるじゃないか。私は新年早々、おまえに説教をしに来たのだ」
「何ですか、藪から棒に?」
「おまえ、投稿サイトに三文小説を書いてるだろう?」
「いかにも。僕はそこで三文小説を書いてます」
「おまえは自分で絵が描けないからといって、人様のイラストにその何の価値もない三文小説を押しつけて嫌がらせをしているな?」
「いかにも。僕は人様のイラストに何の価値もない三文小説を押しつけてそれを公開しておりますが、嫌がらせの積もりは毛頭ありません」
「黙れ! おまえは既に7人の絵描きさんにそのクソほども価値のない三文小」「もうやめてくれぇ――ッ!」

 甲子園で敗退した高校球児の如く、僕は四つん這いで号泣した。

「泣くな、底辺よん
「その悪意あるルビに、涙がいよいよ止まりません!」
「おまえは自作の小説に自分の絵を載せようとは思わないのか? 他の書き手の大半はそうしておるぞ?」
「そうしたいのは山々ですが、僕には絵心がまるでありません」
「そんなことはとうに知っている。そして、この私は文芸を司るミューズだぞ」
「おお、そ、それでは……?」
「世間ではミューズ9柱中、絵画を担当する女神はいないとされている。だが、何を隠そうこの私はミューズ10番目の女神だ。我が名はエビス」
「蛭子さん?」
「よりによって、絵画を司る女神にその漢字をチョイスするとは罰当たりな! 私が側にいる限り、おまえの画力はグングン上達するであろう」
「あ、あ、あ、ありがとうございますぅぅぅッ!」
「私の指導は頗るシンプル……実践あるのみだ。では手始めに、ペイントとマウスのみで描いてみろ。お題は今年の干支【酉】だ。一発描きな?」
「フッ、舐めてもらっちゃ困りやすぜ。それくらいお安い御用……」


































































「どうです、エビスさん?」
「逆に問おう。こんなイラストで何故ドヤ顔できる? そういうところだぞ、底辺よん
「せめて否定すんの絵だけにしろやッ!」
 
 こうして、僕とエビスの特訓はスタートした。
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