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おまけの番外編
イルカモシレナイ(2014年11月25日)
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4:35 p.m.
ヤバッ! もう帰っちゃったかな?
カオリン達とミユキ先生のおめでた話で異様に盛り上がって、陽が沈むまでつい喋りまくっちゃった。
忘れてたわけじゃない。ちゃんと覚えてたんだから。
駅前にあるケーキ屋さんのマカロン、今日こそ一緒に食べようって約束したんだ。
肉球デザインの可愛いやつね。
でも、渡辺が痺れ切らして帰っちゃったとしても無理はない。
悪いのはあたしだ。
例え、後輩からの一方的な要求だったとしても。
放課後の廊下、友達とバイバイしたあたしは一年四組の教室まで猛然とダッシュ!
もしかしたら、半ベソかいて教室で待っているかもしれないって……。
息を切らして、祈るような気持ちで勢いよくドアをスライドする。――いたっ!
……って、ダレデスカ?
渡辺じゃない。
その人物はたった一人、教卓にいた。
てことは、きっと先生だ。学年違うから名前までは知らないけれど、制服着てないしさ。
その先生らしき人はあたし以上に驚いてた。
と同時に、慌てて何かを隠すしぐさ。
怪しすぎる。こんな暗いのに、何か読んでるようなカンジだった。
「あの、電気点けますよ……?」
「――っ!? ダ、ダメ!!!!」
相手が拒否る前に点けちゃった。ちょっぴりワザと入ってる。
「『ダメ』じゃないですって。目によくないですよ」
「い、今やめようとしてたからっ……」
生徒相手に思いっきり挙動不審ってる。言い訳なんかしちゃってちょっと可愛い。
「ごめんなさい。邪魔する積もりはなかったんです。人探ししてて」
「え……だ、誰もいなかったけど……」
「そうみたいですね。じゃー、戻ります」
と、行く素振りからのフェイント。
「…………で、何読んでたんですか?」
「あっ! あ、あ、あの……………」
絵に描いたように真っ赤な顔。
ピュア過ぎるよ、この人。ホントに先生なんだろうか?
「もしかして、流行りのBLですか? 大丈夫ですよ。キヅラガワには言いませんから。その代わり、いつかあたしにも見せてくださいねー?」
勿論、単なる冗談だ。
第一、ただでさえ百合疑惑のある後輩のアプローチにビクビクしてるのに、同性モノとかマジ勘弁。
でも、趣味嗜好は個人の自由。これ以上の詮索はヤボってもんよ。
「今の本気にしないでください。じゃ、今度こそ本当に消えますから」
そう言い残して、あたしはその場を立ち去ろうとした。
「け、競馬新聞……だから……」
はぁぁぁ?
いや、潔白を証明しようとしたその答えが意外過ぎたのにも驚いたけどさ。
普通、正直に答えるか?
生徒の言うことなんか無視しちゃえばいいのに、どこまで小心者なんだろ?
ここでそのまま遣り過ごして行っちゃったら、逆にあたしの方が冷たくなくない?
「だから、その………か、勘違いしないで…………」
か細い声だこと。
根っからの体育会系であるあたしからしたら、超苦手なタイプだわ。
「しませんって。あたしこそ、つまんない冗談言って、先生を困らせてすみませんでした」
これでいい。
てか、消えるなら今しかない。これ以上この人に関わったら、超めんどくさくなりそうな予感しかない。
「……秋の日は釣瓶落とし」
オイオイオイオイ……。
もう手遅れなの? そして、何でことわざ?
「知らない間に暗くなっちゃったの。……つい、夢中になって」
「はあ、そうですか」
こんな場合、「はあ、そうですか」以外、何が言えるってんだ。あたしが競馬通だったら、適当に返せたけどさ。
そうだ! 競馬と言えば……
「あたし水泳部なんですけど」
「……知ってるわ。瀬戸入果さんでしょ。我が校の有名人だもの。……それに渡辺さん、あなたにとても御執心だから」
深く考えないでスルーっ!
「それでね、ウチのお飾り顧問――山ピーも競馬好きなんですよ。御存知でした?」
「や、山下先生っ!?」
「ミユキ先生に言わせれば、山下二等兵ですけどね。どうせ競馬の予想するんなら、こんなところで独り寂しくやるよりも、その山ピーと一緒にしたらどうですか?」
「いっ!? いいいいいい、一緒にひぃぃぃっ!!!!!?」
あ、また赤くなった。
てか、すっごくわかりやすい。
そっかぁ。へぇー、そうなのかぁ。
あの山ピーをねぇ……。
ふーん……。
「割れ鍋に綴じ蓋」
「……え?」
ふふん、ことわざ返し!
「今のは独り言です。気にしないでください。……それより、一か月後はちょうどクリスマスですね?」
「……ど、どういう意味かしら?」
「"聖夜来る、命短し、恋せよ先生"……詠み人知らず、なんてね」
「瀬戸さん……」
「今の時代、待ってるだけじゃ勿体ないです。女から告ってもいいんですよ? 現にあたしだって……」
「瀬戸さんっ!」
あ!
何だ。大きい声、出せるじゃん。
ちょっと怒って……じゃなく、今にも泣きそう?
「それができたらとっくに…………」
先生……
「早く……お願いだから、早く行って………」
無言で頭を下げ、あたしはその場を静かに離れた。
このお節介め!
頭にゲンコツ一発、自らお見舞い。
あたしはまだまだ、恋が何だかわかっちゃいないんだ。
ヤバッ! もう帰っちゃったかな?
カオリン達とミユキ先生のおめでた話で異様に盛り上がって、陽が沈むまでつい喋りまくっちゃった。
忘れてたわけじゃない。ちゃんと覚えてたんだから。
駅前にあるケーキ屋さんのマカロン、今日こそ一緒に食べようって約束したんだ。
肉球デザインの可愛いやつね。
でも、渡辺が痺れ切らして帰っちゃったとしても無理はない。
悪いのはあたしだ。
例え、後輩からの一方的な要求だったとしても。
放課後の廊下、友達とバイバイしたあたしは一年四組の教室まで猛然とダッシュ!
もしかしたら、半ベソかいて教室で待っているかもしれないって……。
息を切らして、祈るような気持ちで勢いよくドアをスライドする。――いたっ!
……って、ダレデスカ?
渡辺じゃない。
その人物はたった一人、教卓にいた。
てことは、きっと先生だ。学年違うから名前までは知らないけれど、制服着てないしさ。
その先生らしき人はあたし以上に驚いてた。
と同時に、慌てて何かを隠すしぐさ。
怪しすぎる。こんな暗いのに、何か読んでるようなカンジだった。
「あの、電気点けますよ……?」
「――っ!? ダ、ダメ!!!!」
相手が拒否る前に点けちゃった。ちょっぴりワザと入ってる。
「『ダメ』じゃないですって。目によくないですよ」
「い、今やめようとしてたからっ……」
生徒相手に思いっきり挙動不審ってる。言い訳なんかしちゃってちょっと可愛い。
「ごめんなさい。邪魔する積もりはなかったんです。人探ししてて」
「え……だ、誰もいなかったけど……」
「そうみたいですね。じゃー、戻ります」
と、行く素振りからのフェイント。
「…………で、何読んでたんですか?」
「あっ! あ、あ、あの……………」
絵に描いたように真っ赤な顔。
ピュア過ぎるよ、この人。ホントに先生なんだろうか?
「もしかして、流行りのBLですか? 大丈夫ですよ。キヅラガワには言いませんから。その代わり、いつかあたしにも見せてくださいねー?」
勿論、単なる冗談だ。
第一、ただでさえ百合疑惑のある後輩のアプローチにビクビクしてるのに、同性モノとかマジ勘弁。
でも、趣味嗜好は個人の自由。これ以上の詮索はヤボってもんよ。
「今の本気にしないでください。じゃ、今度こそ本当に消えますから」
そう言い残して、あたしはその場を立ち去ろうとした。
「け、競馬新聞……だから……」
はぁぁぁ?
いや、潔白を証明しようとしたその答えが意外過ぎたのにも驚いたけどさ。
普通、正直に答えるか?
生徒の言うことなんか無視しちゃえばいいのに、どこまで小心者なんだろ?
ここでそのまま遣り過ごして行っちゃったら、逆にあたしの方が冷たくなくない?
「だから、その………か、勘違いしないで…………」
か細い声だこと。
根っからの体育会系であるあたしからしたら、超苦手なタイプだわ。
「しませんって。あたしこそ、つまんない冗談言って、先生を困らせてすみませんでした」
これでいい。
てか、消えるなら今しかない。これ以上この人に関わったら、超めんどくさくなりそうな予感しかない。
「……秋の日は釣瓶落とし」
オイオイオイオイ……。
もう手遅れなの? そして、何でことわざ?
「知らない間に暗くなっちゃったの。……つい、夢中になって」
「はあ、そうですか」
こんな場合、「はあ、そうですか」以外、何が言えるってんだ。あたしが競馬通だったら、適当に返せたけどさ。
そうだ! 競馬と言えば……
「あたし水泳部なんですけど」
「……知ってるわ。瀬戸入果さんでしょ。我が校の有名人だもの。……それに渡辺さん、あなたにとても御執心だから」
深く考えないでスルーっ!
「それでね、ウチのお飾り顧問――山ピーも競馬好きなんですよ。御存知でした?」
「や、山下先生っ!?」
「ミユキ先生に言わせれば、山下二等兵ですけどね。どうせ競馬の予想するんなら、こんなところで独り寂しくやるよりも、その山ピーと一緒にしたらどうですか?」
「いっ!? いいいいいい、一緒にひぃぃぃっ!!!!!?」
あ、また赤くなった。
てか、すっごくわかりやすい。
そっかぁ。へぇー、そうなのかぁ。
あの山ピーをねぇ……。
ふーん……。
「割れ鍋に綴じ蓋」
「……え?」
ふふん、ことわざ返し!
「今のは独り言です。気にしないでください。……それより、一か月後はちょうどクリスマスですね?」
「……ど、どういう意味かしら?」
「"聖夜来る、命短し、恋せよ先生"……詠み人知らず、なんてね」
「瀬戸さん……」
「今の時代、待ってるだけじゃ勿体ないです。女から告ってもいいんですよ? 現にあたしだって……」
「瀬戸さんっ!」
あ!
何だ。大きい声、出せるじゃん。
ちょっと怒って……じゃなく、今にも泣きそう?
「それができたらとっくに…………」
先生……
「早く……お願いだから、早く行って………」
無言で頭を下げ、あたしはその場を静かに離れた。
このお節介め!
頭にゲンコツ一発、自らお見舞い。
あたしはまだまだ、恋が何だかわかっちゃいないんだ。
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