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おまけの番外編
イルカハカルイ
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泳ぐにはまだ早い四月の放課後。
プール周りの清掃だけで今日の部活は終わりそうだ。
みんなはとっくにジャージに着替えてデッキブラシでゴシゴシ磨いてるんだろうな。新人のあたしが遅れるなんて、また先輩から嫌みを言われそう。
「やっぱ、全中(※全国中学校水泳競技大会)常連のエリートは違うね」ってさ。
いつもいつもそう言われるけど、過去の実績なんて関係ないし! そんな名声引っ下げる気マンマンなら、わざわざこんな弱小水泳部を選んだりしない。
それに今日はしょうがないじゃん。今の今まで生徒指導主事に説教されてたんだから。
あたしの茶髪が気に食わないんだってさ。塩素水で脱色してるだけでワザとじゃないのに。
フン! 悔しかったら茶髪にしてみろってんだ、眉毛ハゲ!
――ッ!
下足室へと向かう途中、何の前触れもなく激痛がズキンと右肩を襲う。
あたしはその痛みの原因が何だか知っている。
けれども陸では初めて。
今までその痛みはプールの中でのみ、しかもリカバリーから水を掻き出す時にしか感じなかったものだ。
オーバーユース症候群……幼少の頃からずっとバタフライヤーだったあたしはこれまで随分と肩を酷使している。時限爆弾を抱えながら泳ぎ続けなきゃなんないことは覚悟の上だった。
でも、まだ早いよ。
あたしはまだまだ泳ぎたい。
それにさ、やっと高校に入学したばっか……あたしの青春(ダサッ!)は始まったばかりなんだよ。
だからお願い。
せめてここを卒業するまでは待っ「いってえぇぇぇ――ッ!!」
「……は?」
我に返ると、目の前には坊主頭のゴツイ男子が右足を抱えつつ左足一本でピョンピョンとその場をジャンプしている。
見るからに体育会。……誰、コイツ?
何でか知んないけど、コケシのような糸目から涙がちょちょぎれてる。それはともかく邪魔だ。
「キモイ奇声上げてないで、サッサとそこどいてくんない? あたしの靴箱あるからさ」
すると、コケシのような糸目が僅かに開いてあたしを睨んできた。
「はぁ? オマエなあ! 人の足踏んづけといて何だよ、その態度はッ!」
踏んだ? 誰が?
まさかね。全然身に覚えがないんですけど。
「ソレ、あたしじゃないから。妙な言いがかりはやめてよね?」
「開き直んなよ! オマエがオレの足踏まなきゃ誰が踏むんだよ? オレら以外ここに誰もいねーじゃん!」
「だから知らないって。アンタ自分で踏んだんじゃないの?」
「そんなのあり得ねえ! 素直に謝ったらどうなんだ?」
あー、ウザイ。
新手のナンパかな? そんな経験ないし、されるほどの容姿でもないのは自覚してるけどさ。同じ部のノン様ならともかくあたしなんてね……いかん。自分で自分がミジメに思えてきた。
結論。とにかく、目の前のコイツはウザイ。
「謝れば通してくれる?」
「おお、オレも鬼じゃねーからな」
「何かごめんねえぇぇぇ」
「『何か』はいらねえッ! 不必要に語尾も伸ばすな! あとさ、オマエほんの一瞬だけ白目剥いたよな? 完全にオレのこと馬鹿にしてんだろ」
「しつこいなあ。もういいでしょ。言われた通り謝ったじゃん」
「『素直に』って言ったんだ! おい、瀬戸! 今から木津川先生んとこ連れてくからちゃんと指導してもらえ!」
木津川って眉毛ハゲ……通称キヅラガワのことだ。
「冗談じゃない! あたし、やっとそこから解放されたばかりなんだから! てかさ、アンタどうしてあたしの名前知ってんのよ?」
「制服の名札は勿論のこと、同じクラスじゃねーか。先週、自己紹介しただろ?」
「したけどさ。あたし、アンタのこと知らないけど……教室にいたっけ?」
「存在感が薄くて悪かったな。柔道部の鷲尾だ」
「あっそ。ワッシー、そこどいて。あたしマジで急いでんの」
「いきなり名字を崩すな! オマエさ、階段下りてこっちに向かってる間、ずっと上の空で歩いてるカンジだったぜ。だから俺の足踏んでも気づかなかったんだよ」
「あ……」
言われてみれば確かにそう!
あたしは肩の不安に悩みを抱きつつ本能的に部活へ行こうとしてたし、そんでもって生徒指導室を出てからここに来るまでの記憶がポッカリ欠落している。
だとすれば、コイツの言う通り本当に足を踏んだかもしれない。
……いや、踏んだな。
だけど、やっぱり頭を下げるのは癪だ。
「踏んだかもしれないけどさ、男ってこういうことが嬉しいんじゃないの?」
「どうしてそうなる?」
「聞いた話だと、わざわざお金を払ってまで女の人にハイヒールで踏んづけてもらいたいんでしょ? だとしたら、ワッシーもあたしにお金を払わなきゃなんなくない? 学割で千円にしとくよ」
「どんな理屈だ! そんなのに喜びを覚えるのって極一部のマニアックな連中だけだろ! 逆にこっちが治療費請求すっぞ!」
「大袈裟だなあ。アンタ、もしかして当たり屋?」
「違うわッ! オマエ、逆の意味でマジ凄いな。そのうち、とんでもないことやらかしそうだ」
「例えば?」
「例えば……万引きとか家出とかオレオレ詐欺とか」
「ないよ、絶対ない! 家出なんて一番考えられないから! あたしの家族、超仲いいし」
「例え話だよ」
「足を踏んだくらいで家出娘に例えないでよ。本当はたいしたことないんでしょ? あたしこう見えて軽いし」
「どこがだよ! いい体してんじゃねーか!」
……は? 何よ、今のセクハラ発言? 超超超超鳥肌立った!
「ヘ、ヘ、ヘンタイ! どこ見てんのよッ!!!」
あたしが咄嗟に両手をクロスして胸を隠すと、ワッシーは顔真っ赤でブンブン首を横に振るまくる。
「そ、そこじゃねえッ! 肩幅とかガタイがいいって意味だ! それにオマエ、そこだけは全然ねーし」
――ブチッ!
「このオスのコケシ野郎! これでもくらえ――ッ!!!!!」
ワッシーの脛に渾身のローキックを見舞う。しかも踏んだ右足をもう一度踏んであげた。
ザマミロ! これで二千円だからね!
これがあたし――瀬戸入果とワッシーこと鷲尾征二郎の記念すべき(?)初遭遇。
2013年の春のこと。
これ以上ないくらい最悪な出会いだけど、何故だかあたしはワッシーと喋ってる時が一番自分らしいと感じる。コイツに教えてもらった整骨院もいまだ通ってるし。
立ち話で罵り合って盛り上がってもっと喋りたいところで「バイバイ」……それだけの関係。ヘンなの。
友達未満、恋人……
もっと未満!
さて、2014年始動。
朝の筋トレを終え、友達から届いた年賀状に心躍る。
水泳部の同期――ノン様、景子、美鈴、何でか知らないけど男子の柿谷からも。
あれ、アイツに住所教えたっけ?
あと、ついでに顧問の山ピー。
今年の干支は午だからわかるとして、未成年にサラブレッドの写真を送られてもね。
エリザベス女王杯優勝馬 キタシラカワブーケ……だから何なの?
年賀状なら、せめて『あけおめ』くらい書いてよ。
水泳部以外だと仲良しの玲ちゃん、美智子、カオリン、その他クラスメート多数。
ワッシーからは届いてない。こっちも出してないしね。
何か違うんだ。そういうのじゃない、ワッシーとは。
あたしの肩はまだ何とか動く。
このままだといつか必ず壊れちゃうけど、それでもやっぱりあたしは泳ぎ続ける。
誰のためでもない、あたしのためだ。
とりま、今年はインターハイでも目指しますかな。
特にそこへ出たいワケでもないけれど、何かしら目標があった方が青春っぽいしね。
……ダサッ!
プール周りの清掃だけで今日の部活は終わりそうだ。
みんなはとっくにジャージに着替えてデッキブラシでゴシゴシ磨いてるんだろうな。新人のあたしが遅れるなんて、また先輩から嫌みを言われそう。
「やっぱ、全中(※全国中学校水泳競技大会)常連のエリートは違うね」ってさ。
いつもいつもそう言われるけど、過去の実績なんて関係ないし! そんな名声引っ下げる気マンマンなら、わざわざこんな弱小水泳部を選んだりしない。
それに今日はしょうがないじゃん。今の今まで生徒指導主事に説教されてたんだから。
あたしの茶髪が気に食わないんだってさ。塩素水で脱色してるだけでワザとじゃないのに。
フン! 悔しかったら茶髪にしてみろってんだ、眉毛ハゲ!
――ッ!
下足室へと向かう途中、何の前触れもなく激痛がズキンと右肩を襲う。
あたしはその痛みの原因が何だか知っている。
けれども陸では初めて。
今までその痛みはプールの中でのみ、しかもリカバリーから水を掻き出す時にしか感じなかったものだ。
オーバーユース症候群……幼少の頃からずっとバタフライヤーだったあたしはこれまで随分と肩を酷使している。時限爆弾を抱えながら泳ぎ続けなきゃなんないことは覚悟の上だった。
でも、まだ早いよ。
あたしはまだまだ泳ぎたい。
それにさ、やっと高校に入学したばっか……あたしの青春(ダサッ!)は始まったばかりなんだよ。
だからお願い。
せめてここを卒業するまでは待っ「いってえぇぇぇ――ッ!!」
「……は?」
我に返ると、目の前には坊主頭のゴツイ男子が右足を抱えつつ左足一本でピョンピョンとその場をジャンプしている。
見るからに体育会。……誰、コイツ?
何でか知んないけど、コケシのような糸目から涙がちょちょぎれてる。それはともかく邪魔だ。
「キモイ奇声上げてないで、サッサとそこどいてくんない? あたしの靴箱あるからさ」
すると、コケシのような糸目が僅かに開いてあたしを睨んできた。
「はぁ? オマエなあ! 人の足踏んづけといて何だよ、その態度はッ!」
踏んだ? 誰が?
まさかね。全然身に覚えがないんですけど。
「ソレ、あたしじゃないから。妙な言いがかりはやめてよね?」
「開き直んなよ! オマエがオレの足踏まなきゃ誰が踏むんだよ? オレら以外ここに誰もいねーじゃん!」
「だから知らないって。アンタ自分で踏んだんじゃないの?」
「そんなのあり得ねえ! 素直に謝ったらどうなんだ?」
あー、ウザイ。
新手のナンパかな? そんな経験ないし、されるほどの容姿でもないのは自覚してるけどさ。同じ部のノン様ならともかくあたしなんてね……いかん。自分で自分がミジメに思えてきた。
結論。とにかく、目の前のコイツはウザイ。
「謝れば通してくれる?」
「おお、オレも鬼じゃねーからな」
「何かごめんねえぇぇぇ」
「『何か』はいらねえッ! 不必要に語尾も伸ばすな! あとさ、オマエほんの一瞬だけ白目剥いたよな? 完全にオレのこと馬鹿にしてんだろ」
「しつこいなあ。もういいでしょ。言われた通り謝ったじゃん」
「『素直に』って言ったんだ! おい、瀬戸! 今から木津川先生んとこ連れてくからちゃんと指導してもらえ!」
木津川って眉毛ハゲ……通称キヅラガワのことだ。
「冗談じゃない! あたし、やっとそこから解放されたばかりなんだから! てかさ、アンタどうしてあたしの名前知ってんのよ?」
「制服の名札は勿論のこと、同じクラスじゃねーか。先週、自己紹介しただろ?」
「したけどさ。あたし、アンタのこと知らないけど……教室にいたっけ?」
「存在感が薄くて悪かったな。柔道部の鷲尾だ」
「あっそ。ワッシー、そこどいて。あたしマジで急いでんの」
「いきなり名字を崩すな! オマエさ、階段下りてこっちに向かってる間、ずっと上の空で歩いてるカンジだったぜ。だから俺の足踏んでも気づかなかったんだよ」
「あ……」
言われてみれば確かにそう!
あたしは肩の不安に悩みを抱きつつ本能的に部活へ行こうとしてたし、そんでもって生徒指導室を出てからここに来るまでの記憶がポッカリ欠落している。
だとすれば、コイツの言う通り本当に足を踏んだかもしれない。
……いや、踏んだな。
だけど、やっぱり頭を下げるのは癪だ。
「踏んだかもしれないけどさ、男ってこういうことが嬉しいんじゃないの?」
「どうしてそうなる?」
「聞いた話だと、わざわざお金を払ってまで女の人にハイヒールで踏んづけてもらいたいんでしょ? だとしたら、ワッシーもあたしにお金を払わなきゃなんなくない? 学割で千円にしとくよ」
「どんな理屈だ! そんなのに喜びを覚えるのって極一部のマニアックな連中だけだろ! 逆にこっちが治療費請求すっぞ!」
「大袈裟だなあ。アンタ、もしかして当たり屋?」
「違うわッ! オマエ、逆の意味でマジ凄いな。そのうち、とんでもないことやらかしそうだ」
「例えば?」
「例えば……万引きとか家出とかオレオレ詐欺とか」
「ないよ、絶対ない! 家出なんて一番考えられないから! あたしの家族、超仲いいし」
「例え話だよ」
「足を踏んだくらいで家出娘に例えないでよ。本当はたいしたことないんでしょ? あたしこう見えて軽いし」
「どこがだよ! いい体してんじゃねーか!」
……は? 何よ、今のセクハラ発言? 超超超超鳥肌立った!
「ヘ、ヘ、ヘンタイ! どこ見てんのよッ!!!」
あたしが咄嗟に両手をクロスして胸を隠すと、ワッシーは顔真っ赤でブンブン首を横に振るまくる。
「そ、そこじゃねえッ! 肩幅とかガタイがいいって意味だ! それにオマエ、そこだけは全然ねーし」
――ブチッ!
「このオスのコケシ野郎! これでもくらえ――ッ!!!!!」
ワッシーの脛に渾身のローキックを見舞う。しかも踏んだ右足をもう一度踏んであげた。
ザマミロ! これで二千円だからね!
これがあたし――瀬戸入果とワッシーこと鷲尾征二郎の記念すべき(?)初遭遇。
2013年の春のこと。
これ以上ないくらい最悪な出会いだけど、何故だかあたしはワッシーと喋ってる時が一番自分らしいと感じる。コイツに教えてもらった整骨院もいまだ通ってるし。
立ち話で罵り合って盛り上がってもっと喋りたいところで「バイバイ」……それだけの関係。ヘンなの。
友達未満、恋人……
もっと未満!
さて、2014年始動。
朝の筋トレを終え、友達から届いた年賀状に心躍る。
水泳部の同期――ノン様、景子、美鈴、何でか知らないけど男子の柿谷からも。
あれ、アイツに住所教えたっけ?
あと、ついでに顧問の山ピー。
今年の干支は午だからわかるとして、未成年にサラブレッドの写真を送られてもね。
エリザベス女王杯優勝馬 キタシラカワブーケ……だから何なの?
年賀状なら、せめて『あけおめ』くらい書いてよ。
水泳部以外だと仲良しの玲ちゃん、美智子、カオリン、その他クラスメート多数。
ワッシーからは届いてない。こっちも出してないしね。
何か違うんだ。そういうのじゃない、ワッシーとは。
あたしの肩はまだ何とか動く。
このままだといつか必ず壊れちゃうけど、それでもやっぱりあたしは泳ぎ続ける。
誰のためでもない、あたしのためだ。
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