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第17章 人肌が足んねえ
人肌が足んねえ 4
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黒いフリルのゴスロリファッション……こんな世界にあんな奇抜なファッション、アイツ以外あり得ねえッ!
だが、ここに来てどうして黒リータが?
確かにヤツの行動はトリッキーそのものだが、それでも意味なく海にダイブしたりしねーし。
――ハッ!
狙いは白鵜……その白鵜はアンドリューの首を抱えてやがる。
黒リータにとってアンドリューは恩人そのものだ。多分、現主人であるこの岩清水拓海に対する忠誠心よりずっと上だろう。そのアンドリューの仇討ち(いまだ喋りやがるけど)と考えりゃ不自然でも何でもねえ!
だけど勝算はゼロだ。人魚相手に海で勝負を挑むなんざ正気の沙汰じゃねーぞ。尤もその無謀な行動、俺は嫌いじゃねーけどな。
……ん、ちょっと待て。
アイツ、確かまばたきできねーんじゃ……掛けてるモンが水中眼鏡でもねえ限り、海水がモロ目に入っちまうぞ。
つーか、摺り足オンリー歩行の黒リータがまともに泳げるワケねーじゃんかよ!
ここまで悪条件揃ってりゃ、無謀を通り越してタダの入水と何ら変わらねえ!
案の定、黒リータめ、手だけバタつかせてそのまま海の底へと沈んでいきやがった。一体全体何がしたかったんだ? 猫のクセして犬死してんじゃねえ! ややこしい話、アンドリューも黒リータも元から死んでんだけどよ。
俺だけじゃねえ。
ヘンリーに憑いてる白虎丸までもが、黒リータの登場即退場を目の当たりにして呆気に取られてやがる。そりゃそーだろ。黒リータ、オメーは金輪際、俺の前に姿を現……
――えぇぇぇぇッ、マ、マジかよッ!?
たった今、海へ沈んだと思った黒リータが素の顔で海面に立ってんじゃねーか!
お、よく見りゃ下から何者かが黒リータを支えてやがる。
だが、誰が……
「あそこに好きな女がいましたものですから……」
「……誰だよ? 小園か? それともフレール?」
「いえ。割れた眼鏡の……」
白鯨ッ!!!
俺と共にフレールの艦から抜け出した人魚3号が今、念願叶って惚れた女と密着状態にある。
だが何でこうも都合よくここに……そうか! この俺が反射的に白鮫人と白鯨に命じて白鵜を追尾させたんだった。そりゃこの場にいるわな。
よく見りゃあのドスケベ野郎、救出を名目にドサクサまぎれて黒リータの巨乳を鷲掴みしてやがる。さすがは俺の精子から成るスペル魔……抜け目ねえ。
にしても、つくづく黒リータにはツキがあるな。案外、こういうヤツが最後まで生き残ったりするんだ(だから死んでるって!)。
その黒リータ、挿げ替えのメス片手に無表情で主の首を持った白鵜に襲いかかる。死体の寄せ集めが猫の生首持ったティッシュの塊に刃物を振り回す……すげぇ光景だな。
畜生、見せつけてくれんじゃねーかよ。体がウズウズしやがる。今までずっと続いてきた消化不良がここに来て爆発寸前だぜ! この俺もその戦いに混ぜろッ!
「傍観者はここまでだ。今こそ! 格闘ロマンの道を突き進む! 白鮫人ッ!!!」
「ハッ!」
「来いッ!」
俺も黒リータに倣って艦首から大海原に飛び込んだ。
ドンピシャのタイミングだった。白鮫人が着水寸前の俺をその背でかっさらう。
「行けッ! アンドリューの首になんぞ用はねーが、アレ奪ったら何かスッキリする気がする!」
「畏まりました!」
こうして三体の人魚による海上騎馬戦の火蓋は切られた。
当然、圧倒的に不利なのは邪魔なアンドリューの首を抱えている白鵜、しかも俺と黒リータに挟み撃ち状態、数の上でも劣勢は避けられない。そもそも人魚自体に攻撃力は備わっていない。
一方、甲板に残る白虎丸、完全に出遅れもはや戦況を見つめるのみ。
条件的には楽勝だが、一番の敵は……。
「オイ、黒リータ! 危ねぇからむやみやたらに振り回すんじゃねえッ!」
「あ、これはこれは突然トンズラこいて卑怯にも島主の職務をアッサリ放棄された恥知らずの拓海様ではないですか。お久し振りです」
「相変わらず敬語ながら減らず口叩きやがんな。だからその挿げ替えのメスが危ねぇって言ってんだ! まだ俺のチ○コ狙ってんのか?」
「まさか。そのような祖チンよりアンドリュー様の首を奪還することが先決です」
「先決って、首奪還したら削ぐんかいッ!」
「冗談でございますよ。しかしながら、どうにもこうにも手元が言うことを効かないのです。何故でございましょう?」
「決まってんだろ! オイ、白鯨! いい加減に黒リータの乳揉むのやめろ! 今は目の前の白鵜に集中しやがれ!」
「おそれながら拓海様、このような千載一遇のチャンス、またとございますまい。役得役得♪」
「『揉むな』とは言わねえ。だが今じゃねーだろッ!」
「そうですよ。大体こんな”マグロ女”の胸を揉んで何が嬉しいのです?」
「問題はそこじゃねーし、自分で”マグロ女”言うなッ!」
「……ねえねえ、キミ達。一応訊くけど、僕を救ってくれる為にここにいるんだよね? 何か僕、蔑ろなんだけど……」
「やかましい! 生首は生首らしく黙って死んでろ! つーかオメーら、これ以上緊張感を殺ぐな! 俺は真剣に戦いたいんだ! ――白鮫人! もっと白鵜に寄せろ! イチニのサンで飛び乗るぞ!」
「ハッ!」
表情こそねーが、俺の本気に白鵜が怯んでいるのはわかる。
勝ち目はない。
そう判断したヤツは俺と白鮫人が接近する前に、手にしていたアンドリューのヒゲを抜く破れかぶれな行動に出た。
「道連れにコイツをこうしてやるッ!」
「ぎゃああああああ――ッ!!! やめてくれぇぇッ!」
「危ない、アンドリュー様」
猫にとってヒゲは急所、咄嗟に黒リータが飛び込んで挿げ替えのメスを振る。
その刃が白鵜の手首を削ぎ落した。……アンドリューのヒゲ諸共だが。
こうして海上騎馬戦は呆気なく終わった。
結局、俺の見せ場ねーし!
だが、ここに来てどうして黒リータが?
確かにヤツの行動はトリッキーそのものだが、それでも意味なく海にダイブしたりしねーし。
――ハッ!
狙いは白鵜……その白鵜はアンドリューの首を抱えてやがる。
黒リータにとってアンドリューは恩人そのものだ。多分、現主人であるこの岩清水拓海に対する忠誠心よりずっと上だろう。そのアンドリューの仇討ち(いまだ喋りやがるけど)と考えりゃ不自然でも何でもねえ!
だけど勝算はゼロだ。人魚相手に海で勝負を挑むなんざ正気の沙汰じゃねーぞ。尤もその無謀な行動、俺は嫌いじゃねーけどな。
……ん、ちょっと待て。
アイツ、確かまばたきできねーんじゃ……掛けてるモンが水中眼鏡でもねえ限り、海水がモロ目に入っちまうぞ。
つーか、摺り足オンリー歩行の黒リータがまともに泳げるワケねーじゃんかよ!
ここまで悪条件揃ってりゃ、無謀を通り越してタダの入水と何ら変わらねえ!
案の定、黒リータめ、手だけバタつかせてそのまま海の底へと沈んでいきやがった。一体全体何がしたかったんだ? 猫のクセして犬死してんじゃねえ! ややこしい話、アンドリューも黒リータも元から死んでんだけどよ。
俺だけじゃねえ。
ヘンリーに憑いてる白虎丸までもが、黒リータの登場即退場を目の当たりにして呆気に取られてやがる。そりゃそーだろ。黒リータ、オメーは金輪際、俺の前に姿を現……
――えぇぇぇぇッ、マ、マジかよッ!?
たった今、海へ沈んだと思った黒リータが素の顔で海面に立ってんじゃねーか!
お、よく見りゃ下から何者かが黒リータを支えてやがる。
だが、誰が……
「あそこに好きな女がいましたものですから……」
「……誰だよ? 小園か? それともフレール?」
「いえ。割れた眼鏡の……」
白鯨ッ!!!
俺と共にフレールの艦から抜け出した人魚3号が今、念願叶って惚れた女と密着状態にある。
だが何でこうも都合よくここに……そうか! この俺が反射的に白鮫人と白鯨に命じて白鵜を追尾させたんだった。そりゃこの場にいるわな。
よく見りゃあのドスケベ野郎、救出を名目にドサクサまぎれて黒リータの巨乳を鷲掴みしてやがる。さすがは俺の精子から成るスペル魔……抜け目ねえ。
にしても、つくづく黒リータにはツキがあるな。案外、こういうヤツが最後まで生き残ったりするんだ(だから死んでるって!)。
その黒リータ、挿げ替えのメス片手に無表情で主の首を持った白鵜に襲いかかる。死体の寄せ集めが猫の生首持ったティッシュの塊に刃物を振り回す……すげぇ光景だな。
畜生、見せつけてくれんじゃねーかよ。体がウズウズしやがる。今までずっと続いてきた消化不良がここに来て爆発寸前だぜ! この俺もその戦いに混ぜろッ!
「傍観者はここまでだ。今こそ! 格闘ロマンの道を突き進む! 白鮫人ッ!!!」
「ハッ!」
「来いッ!」
俺も黒リータに倣って艦首から大海原に飛び込んだ。
ドンピシャのタイミングだった。白鮫人が着水寸前の俺をその背でかっさらう。
「行けッ! アンドリューの首になんぞ用はねーが、アレ奪ったら何かスッキリする気がする!」
「畏まりました!」
こうして三体の人魚による海上騎馬戦の火蓋は切られた。
当然、圧倒的に不利なのは邪魔なアンドリューの首を抱えている白鵜、しかも俺と黒リータに挟み撃ち状態、数の上でも劣勢は避けられない。そもそも人魚自体に攻撃力は備わっていない。
一方、甲板に残る白虎丸、完全に出遅れもはや戦況を見つめるのみ。
条件的には楽勝だが、一番の敵は……。
「オイ、黒リータ! 危ねぇからむやみやたらに振り回すんじゃねえッ!」
「あ、これはこれは突然トンズラこいて卑怯にも島主の職務をアッサリ放棄された恥知らずの拓海様ではないですか。お久し振りです」
「相変わらず敬語ながら減らず口叩きやがんな。だからその挿げ替えのメスが危ねぇって言ってんだ! まだ俺のチ○コ狙ってんのか?」
「まさか。そのような祖チンよりアンドリュー様の首を奪還することが先決です」
「先決って、首奪還したら削ぐんかいッ!」
「冗談でございますよ。しかしながら、どうにもこうにも手元が言うことを効かないのです。何故でございましょう?」
「決まってんだろ! オイ、白鯨! いい加減に黒リータの乳揉むのやめろ! 今は目の前の白鵜に集中しやがれ!」
「おそれながら拓海様、このような千載一遇のチャンス、またとございますまい。役得役得♪」
「『揉むな』とは言わねえ。だが今じゃねーだろッ!」
「そうですよ。大体こんな”マグロ女”の胸を揉んで何が嬉しいのです?」
「問題はそこじゃねーし、自分で”マグロ女”言うなッ!」
「……ねえねえ、キミ達。一応訊くけど、僕を救ってくれる為にここにいるんだよね? 何か僕、蔑ろなんだけど……」
「やかましい! 生首は生首らしく黙って死んでろ! つーかオメーら、これ以上緊張感を殺ぐな! 俺は真剣に戦いたいんだ! ――白鮫人! もっと白鵜に寄せろ! イチニのサンで飛び乗るぞ!」
「ハッ!」
表情こそねーが、俺の本気に白鵜が怯んでいるのはわかる。
勝ち目はない。
そう判断したヤツは俺と白鮫人が接近する前に、手にしていたアンドリューのヒゲを抜く破れかぶれな行動に出た。
「道連れにコイツをこうしてやるッ!」
「ぎゃああああああ――ッ!!! やめてくれぇぇッ!」
「危ない、アンドリュー様」
猫にとってヒゲは急所、咄嗟に黒リータが飛び込んで挿げ替えのメスを振る。
その刃が白鵜の手首を削ぎ落した。……アンドリューのヒゲ諸共だが。
こうして海上騎馬戦は呆気なく終わった。
結局、俺の見せ場ねーし!
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