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第18章 足んねえ者同士
足んねえ者同士 5
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血で染まった海の色のせいだろうか、それとも元々そんな色の甲冑なのかもしれない。
戦国末期の武将――真田幸村を彷彿とさせる全身真っ赤に鎧った鴉王が、俺と白虎丸を出迎えるように仁王立ちでそこにいた。
にしても、デケえなコイツ!
白衛門より優に一回り以上は立端がありやがる。
精悍な面構えで顎髭が何とも渋い。グゼゲドフの頃の俺よりちょっとだけイケメンだな。貫禄だけじゃ間違いなく”王”と名乗るに相応しい。
ある意味イメージ通りではあるが、長年に渡って海底に沈んでいた割には身綺麗過ぎる感は否めねえ。
コイツには魂がねーんだ。
なのに、この血の量……どうやって今の今までメシ食ってやがったんだ?
育ての母である大鴉がここまで潜って餌を与えてやったとは考えられねえ。だとすりゃ、近づいた魚や海に沈んだ死体を掃除機みてぇに吸引して捕食してんのかもしんねーな。白鬼の例もあるし。
だとすりゃ、こっちも危ねえ。迂闊に近寄ったりしたら……あ、もしかして手遅れとか?
何、かまうもんか。
もしそうなりゃ、俺は死に瀕する直前にまじないごと唱えてスペル魔を召喚すりゃいいんだ。
それきっかけで目の前の鴉王より強くなれるしな。
なら、別に体を鞍替えする必然性はなくなっちまう。このまま拓海の体で生き続けるのも選択肢の一つだ。……無論、そん時は今以上に拓海の原型は消えてるだろうが。
そう、俺にはティッシュマスターのスキルがある。何も恐れる物などねえ。
「鴉王、オメーのお望み通りこうして来てやったぜ」
シーン……
へんじがない。 ただのしかばねのようだ。
いやいやいやッ! コイツが屍なのは最初からわかってんだよ! 返事できねーのも想定内だ。
だけど、何かアクションしろよな、鴉王よ! 大鴉の仲介があったとはいえ、返事できねえ屍のオメーがこの俺をここまで誘ったんだろうが!
「俺の魂が欲しいんだろ? いいぜ。足んねえ者同士、オメーと一緒になって同じ道を歩いてやらぁ。手始めに多島海を統べ、次に打って出るは地球を舞台とする人間界……最終目標は魔王サタン率いる魔界だ。ああ、そうそう。低級魔界ってのもあったな。野望としては決してスケールの小せぇ話じゃねーぜ」
鴉王は相変わらずピクリとも動かねえ。
業を煮やしかけた俺だったが、その直前に白虎丸が手元を離れ相手目掛けて浮遊しやがった。
「オイ、白虎丸! 刀の分際でしゃしゃり出んじゃねーよ! これは俺と鴉王の問題だぞ!」
チ・ガ・ウ
違うだぁ?
「ワケわかんねーや。何が違うってんだよ? ”俺と鴉王の問題”が違うって言いてぇのか?」
ソ・ウ・ダ
「ふざけんなよッ! じゃあ、オメーが割って入りゃ万事解決すんのか?」
チ・ガ・ウ
「えぇい、まどろっこしいな! だから何が『違う』ってんだよ?」
「まどろっこしいのはそっちだよ。……わかんないかなあ、白虎丸が伝えたがってること」
――ッ!????????
目の前の鴉王が喋った。
超久々に耳にするその肉声は紛れもなく……た、拓海ッ!?
俺じゃなく本物――オリジナルの岩清水拓海のモノだ!
「一体化はとうに済んだよ」
「な、な、な、何だと―――ッ!?」
「やっぱり気づいてなかったんだね。これは大鴉の誤算でもあるんだけど……今の鴉王は真の平和を望んでいる。最初から”俺”じゃない”僕”の拓海を選んでいたんだ。だから、その体はもう完全にキミの物だよ。本意じゃないけれど、こうなっちゃった以上しょうがないよね。……譲るよ。キミに”岩清水拓海”……そして、ティッシュマスターの能力を」
拓海……ヘタレの分際で……言うねえ。
譲るだと?
いつの間にそんな上から目線で物申せるようになったんだ? 畜生めが!
目的を失い、絶望と屈辱真っ只中の俺は力なくその場にしゃがみ込んだ。
「いらねーよ、こんな役立たずの異形にセコいスキル……肝心な時にヘマしやがって! 何が”ティッシュマスター”だ!」
それまで全く動かなかった鴉王が重々しい足取りで、俺に向かって近づいてきやがった。
「忠告しとくよ。お願いだから今すぐここから逃げて。……僕の為にも」
「は?」
「まだ一体化して間もないんだ。今の鴉王はただただ本能だけで動いている。僕の自制は利かない」
「だから、それがどーしたって言うんだよ?」
「忘れたの? 鴉王はカニバリズム……今からキミを喰う気なんだよ」
それを受けて、俺は怯むどころか逆にニヤリと口の端を吊り上げた。
だとしたら、これは一発逆転サヨナラホームラン……起死回生のチャンスだ。
鴉王に喰われる死の直前、俺がまじないごとを唱えれればとんでもなく強くなれる!
少なくとも目の前の敵よりも、だ。
例え俺自身が今より醜くなろうとも俺自身には違いねえ!
そう、端から鴉王なんざに寄り添おうとした時点で間違ってたんだ!
咲柚に言わせりゃ俺は確かに偽者――残虐非道なグゼゲドフに違いねぇがよ、少なくとも今のオメーよりは限りなく本物の岩清水拓海だぜ。
チラと斜向かいの白虎丸に目をやる。
クレバーなオメーならわかんだろ?
どっちにつけば甘い汁が吸えるかを……。
来いよ、鴉王に魂を売ったヘタレ岩清水拓海!
オメーが勝つかこの俺が天下を取るか、
今こそ雌雄を決する時が来た!
戦国末期の武将――真田幸村を彷彿とさせる全身真っ赤に鎧った鴉王が、俺と白虎丸を出迎えるように仁王立ちでそこにいた。
にしても、デケえなコイツ!
白衛門より優に一回り以上は立端がありやがる。
精悍な面構えで顎髭が何とも渋い。グゼゲドフの頃の俺よりちょっとだけイケメンだな。貫禄だけじゃ間違いなく”王”と名乗るに相応しい。
ある意味イメージ通りではあるが、長年に渡って海底に沈んでいた割には身綺麗過ぎる感は否めねえ。
コイツには魂がねーんだ。
なのに、この血の量……どうやって今の今までメシ食ってやがったんだ?
育ての母である大鴉がここまで潜って餌を与えてやったとは考えられねえ。だとすりゃ、近づいた魚や海に沈んだ死体を掃除機みてぇに吸引して捕食してんのかもしんねーな。白鬼の例もあるし。
だとすりゃ、こっちも危ねえ。迂闊に近寄ったりしたら……あ、もしかして手遅れとか?
何、かまうもんか。
もしそうなりゃ、俺は死に瀕する直前にまじないごと唱えてスペル魔を召喚すりゃいいんだ。
それきっかけで目の前の鴉王より強くなれるしな。
なら、別に体を鞍替えする必然性はなくなっちまう。このまま拓海の体で生き続けるのも選択肢の一つだ。……無論、そん時は今以上に拓海の原型は消えてるだろうが。
そう、俺にはティッシュマスターのスキルがある。何も恐れる物などねえ。
「鴉王、オメーのお望み通りこうして来てやったぜ」
シーン……
へんじがない。 ただのしかばねのようだ。
いやいやいやッ! コイツが屍なのは最初からわかってんだよ! 返事できねーのも想定内だ。
だけど、何かアクションしろよな、鴉王よ! 大鴉の仲介があったとはいえ、返事できねえ屍のオメーがこの俺をここまで誘ったんだろうが!
「俺の魂が欲しいんだろ? いいぜ。足んねえ者同士、オメーと一緒になって同じ道を歩いてやらぁ。手始めに多島海を統べ、次に打って出るは地球を舞台とする人間界……最終目標は魔王サタン率いる魔界だ。ああ、そうそう。低級魔界ってのもあったな。野望としては決してスケールの小せぇ話じゃねーぜ」
鴉王は相変わらずピクリとも動かねえ。
業を煮やしかけた俺だったが、その直前に白虎丸が手元を離れ相手目掛けて浮遊しやがった。
「オイ、白虎丸! 刀の分際でしゃしゃり出んじゃねーよ! これは俺と鴉王の問題だぞ!」
チ・ガ・ウ
違うだぁ?
「ワケわかんねーや。何が違うってんだよ? ”俺と鴉王の問題”が違うって言いてぇのか?」
ソ・ウ・ダ
「ふざけんなよッ! じゃあ、オメーが割って入りゃ万事解決すんのか?」
チ・ガ・ウ
「えぇい、まどろっこしいな! だから何が『違う』ってんだよ?」
「まどろっこしいのはそっちだよ。……わかんないかなあ、白虎丸が伝えたがってること」
――ッ!????????
目の前の鴉王が喋った。
超久々に耳にするその肉声は紛れもなく……た、拓海ッ!?
俺じゃなく本物――オリジナルの岩清水拓海のモノだ!
「一体化はとうに済んだよ」
「な、な、な、何だと―――ッ!?」
「やっぱり気づいてなかったんだね。これは大鴉の誤算でもあるんだけど……今の鴉王は真の平和を望んでいる。最初から”俺”じゃない”僕”の拓海を選んでいたんだ。だから、その体はもう完全にキミの物だよ。本意じゃないけれど、こうなっちゃった以上しょうがないよね。……譲るよ。キミに”岩清水拓海”……そして、ティッシュマスターの能力を」
拓海……ヘタレの分際で……言うねえ。
譲るだと?
いつの間にそんな上から目線で物申せるようになったんだ? 畜生めが!
目的を失い、絶望と屈辱真っ只中の俺は力なくその場にしゃがみ込んだ。
「いらねーよ、こんな役立たずの異形にセコいスキル……肝心な時にヘマしやがって! 何が”ティッシュマスター”だ!」
それまで全く動かなかった鴉王が重々しい足取りで、俺に向かって近づいてきやがった。
「忠告しとくよ。お願いだから今すぐここから逃げて。……僕の為にも」
「は?」
「まだ一体化して間もないんだ。今の鴉王はただただ本能だけで動いている。僕の自制は利かない」
「だから、それがどーしたって言うんだよ?」
「忘れたの? 鴉王はカニバリズム……今からキミを喰う気なんだよ」
それを受けて、俺は怯むどころか逆にニヤリと口の端を吊り上げた。
だとしたら、これは一発逆転サヨナラホームラン……起死回生のチャンスだ。
鴉王に喰われる死の直前、俺がまじないごとを唱えれればとんでもなく強くなれる!
少なくとも目の前の敵よりも、だ。
例え俺自身が今より醜くなろうとも俺自身には違いねえ!
そう、端から鴉王なんざに寄り添おうとした時点で間違ってたんだ!
咲柚に言わせりゃ俺は確かに偽者――残虐非道なグゼゲドフに違いねぇがよ、少なくとも今のオメーよりは限りなく本物の岩清水拓海だぜ。
チラと斜向かいの白虎丸に目をやる。
クレバーなオメーならわかんだろ?
どっちにつけば甘い汁が吸えるかを……。
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