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その3・黒い糸くず
はっと気が付くと、もう夜更けだった。
ごんごんする頭と、凄まじく気分が悪いのとで、座り込んだまま、しばらくわたしは自分がどこでどうしているのか思い出せなかった。
ぼんやりとした照明がついている。けれど、重苦しい気分の時には不思議とそうであるように、今この時も、あたりのものはいやにくっきりとした輪郭で迫って来た。
銀の炊飯器。ターンテーブルに乗った醤油と食卓塩と胡椒。
レース柄のテーブルクロス。そして、焼酎の青い瓶。
やっと思い出してきた。ここは梟荘の台所で、わたしは自棄飲みをしてフテ寝していたのだった。
バイトから帰って来た恰好そのままで、飲み潰れてテーブルにうつぶせていた。顔に触ると、ほっぺたにテーブルクロスの模様がごつごつと移っていた。
クルクルポー、クルクルポー。
廊下にある、古風な鳩時計が鳴いている。二時か。
バイトから帰宅したのが10時で、すぐに飲み始めたから、この台所のテーブル席に座ってから、だいたい4時間経っていることになる。尻が痛かった。
じゃらじゃらと玉のれんを掻き分ける音がした。
あまりにも頭が痛いので首を回すことができなかった。そっちを見ないままで、ああ起きてたのいとちゃん、と一応言っておいた。
いとちゃんは無言でテーブルの向かい席につき、あのなんともいえない黒い目でわたしの体たらくを見つめた。
テーブルにうつ伏せてあったグラスを取ると、いとちゃんは焼酎の瓶に手を伸ばした。
とくとく。
透明なグラスに注がれる、強いお酒。
いとちゃんは水で割ることも、氷を入れることもせず、ストレートでぐっと飲んだ。
「一人で飲んでも気が滅入るだけだと思うし、ひとつ、糸のはなしでもしようかと思って」
と、いとちゃんは言った。
糸のはなし。
猛烈に痛む頭。額に手をあて、ひじをテーブルにつきながら、わたしは無言を貫いた。
正直、放っておいてほしい気分だった。
(そう言えば、今日帰ってからいとちゃんを見るのは始めてだ)
厳密にいえば、もう日付は変わっているのだけど。
このところ、だいたいいつも帰宅したら部屋から出て人間らしい活動をしているいとちゃんだったが、昨夜に限ってはヒキコモリに戻っていたっけ。お陰でふて腐れて荒れぎみだったわたしは、存分に酔いつぶれるまで一人の時間を過ごすことができたのだ。
いとちゃんの「糸のはなし」とは、手芸の糸のことではないだろう。
多分、全く違う「糸」のことだ。目に見えない糸。人の運命をいとも簡単に左右する、恐るべき糸のこと。
わたしはそういう糸がこの世に存在し、糸のいたずらで色々な事象が起きていることを、小さい頃から知っていた。ただ、わたしは母の様な占い師でもないし、霊感なんか全くないので、糸を見ることはできない。
これまで、その糸の事について他人と話したことはなかった。
どういうわけか、今夜、いとちゃんのほうから糸のはなしをしようと持ちかけてきて、お陰でわたしは確信したのである。
(いとちゃんは、糸のことをよく知っているのに違いない)
いとちゃんと生活するようになって、まだそれほど経っていないけれど、なんとなくいとちゃんの不思議さを感じていた。目に見えないものを見て、理解不能だけど的確な予知をすることができる。
例えば、カレー事件の時とか。
頭をおさえたまま固まったわたしを気遣うふうでもなく、いとちゃんは何度も焼酎をお代わりして、軽やかに飲み干した。そしていとちゃんは、語ったのだった。
「ちょっと触れたり、絡まったりしただけで、それまで何事もなく流れていたものごとが狂ったり、間違った方向に行ってしまったりする」
いとちゃんは言った。
ちらっと上目で見てみたら、もう何杯も飲んだくせになんともない顔をして、いとちゃんは淡々としていた。
その黒い目は何を見ているのやら分からない。片手はコップを持ち、もう片手は人差し指を立て、まるで何かをなぞるかのように宙をさ迷っていた。
「全部の糸は繋がっているのだけど、どうしようもなく絡まったり、ねじれたりした部分は、時々ちょきんと切ってやることもある。そうしたら、いらない澱んだ部分が取り払われて、正常な部分同士がまた繋がり合って、物事がまた流れ始める」
ちょきん、と言ったとき、いとちゃんは目に見えないハサミを使う仕草をした。
ちょきん。
ぼうっとしながら、わたしは頬杖をついた。
目の前のいとちゃんは、わたしと視線を合わせるでもなく語り続ける。とくとく。また焼酎をついだ。
「でもね、時々糸の中に、変なものが混じり込むことがある」
ぐびっと一気飲みした。
黒い、糸。
いとちゃんは吐き出すように言った。
絡まり合い、もつれ合う糸の中に、何の脈絡もなく、クズ糸が紛れ込むことがある。
その黒い糸は、関わらない方が良いものだ。もし関わってしまったら。
いとちゃんの黒い目が、かちっと音を立てるかのような正確さでわたしを射貫いた。
その瞬間、頭の奥でくすぶっていた悪酔いの余韻や、胃の気持ち悪さが爆風で飛ばされるかのように消滅した。
(バイト先の、憧れの社員さん)
がっしりした体つきで、目が優しくて、会話が楽しい人で、仕事ができる。
わたしは、チェーン店の居酒屋のホール係のバイトをしていた。そこで彼と出会い一発で恋に落ちた。
好きだなあ、彼女いないなら狙い目かなあ、なんて思っていたら、彼の方もまんざらではないそぶりを見せて来たので、このところバイトに行くのが楽しみでしょうがなかったのだ。
ところが昨晩、憧れの彼が、別のバイトの子と深い関係になっていることを知った。地味で無口な子で、なんとなくうまが合わないタイプの子だった。
つまり、わたしは失恋した。
(もうバイト辞めるんだ)
と、決意し、帰宅途中で焼酎を買った。
そういう経緯があった。
「黒い糸は、こう」
ふっ。
いとちゃんは、目に見えないなにかを指でつまむと、口をとがらせて吹き飛ばす仕草をした。
目に見えないゴミが取り払われた。
いとちゃんは、無表情でまた焼酎をついだ。
何杯目だろう。
ヒキコモリのくせに、なんという酒豪か。他人の酒を飲んでいるというのに、遠慮の欠片も見えないところが、逆に清々しい。
ごっ、ごっ。
お酒を勢いよく飲み干して、とん、とコップをテーブルに置くと、いとちゃんは唐突に立ち上がった。
どうやら「糸のはなし」はここで終わったらしい。
起承転結もない。オチなしヤマなし。一体なんだったんだ。わたしは唖然とした。
玉のれんをくぐりながら、いとちゃんは言った。
「関わっちゃいけない相手だから、恋は実らなかった。ゆめちゃんは実はラッキー。もしその彼と付き合う事になったら、五年後の夏に、全裸で富士の樹海に捨てられることになるところだった」
さらっと物凄いことを言って、いとちゃんは去っていった。
じゃらん。玉のれんが揺れている。廊下を歩く音がして、まもなくぱたんと扉がしまる気配がした。
いとちゃんは自室に戻った。きっと寝るのだろう。
もしかしたら、自分もお酒を飲みたくなっただけなのかもしれないな。
なんて思ったけれど、そんな気楽な思考は一瞬で消えた。
じゃらん、じゃらん。
玉のれんの向こう側は暗黒の廊下。
(いとちゃんは何を告げに来たんだろうか)
なんとなく背筋が寒い思いで、揺れる玉のれんを眺めていた。
ふと、テーブルに放り出して置いた携帯が目に入った。チカチカ光っている。着信しているらしい。
見てみると、同じバイト先のコからメールが入っていた。このコはわたしの失恋を知っている。メール文を読んでいるうちに、わたしはぞおっとしてきた。
件の彼と、その地味な彼女。
実は彼女は妊娠してしまっているらしい。否が応でも結婚しなくてはならなくなって、来月籍を入れるとか。
「彼女、有頂天になってるみたいだよ。赤い糸が繋がった、とか言ってるらしいよ」
赤い、糸。
ふいに、あの、筋肉質で楽しくて優しい彼の、細くて目じりが垂れた目を思い出した。
茶色い彼の目。
(そうか)
わたしはやっと思い当たった。
いつも楽しくて笑っている彼だけど、あの目はいつだって、絶対に笑っていない。
表面と、心の中が、まるで違う方向を向いているひとの目。
富士の樹海は鬱蒼と青いだろうか。
光が差し込まない、湿った土の上に横たえられる白い肌。左手の薬指には見えない糸が結びつけられているのかもしれないけれど、果たしてそれが赤色なのか黒色なのか、そんなことを考えているうちに時計の鳩が三時を告げた。
(ゆめちゃんは、実は、ラッキー)
ふわっと鼻先を土と樹木の濃い匂いが過ったような気がして、わたしはぞうっと頭を振ったのだった。
ごんごんする頭と、凄まじく気分が悪いのとで、座り込んだまま、しばらくわたしは自分がどこでどうしているのか思い出せなかった。
ぼんやりとした照明がついている。けれど、重苦しい気分の時には不思議とそうであるように、今この時も、あたりのものはいやにくっきりとした輪郭で迫って来た。
銀の炊飯器。ターンテーブルに乗った醤油と食卓塩と胡椒。
レース柄のテーブルクロス。そして、焼酎の青い瓶。
やっと思い出してきた。ここは梟荘の台所で、わたしは自棄飲みをしてフテ寝していたのだった。
バイトから帰って来た恰好そのままで、飲み潰れてテーブルにうつぶせていた。顔に触ると、ほっぺたにテーブルクロスの模様がごつごつと移っていた。
クルクルポー、クルクルポー。
廊下にある、古風な鳩時計が鳴いている。二時か。
バイトから帰宅したのが10時で、すぐに飲み始めたから、この台所のテーブル席に座ってから、だいたい4時間経っていることになる。尻が痛かった。
じゃらじゃらと玉のれんを掻き分ける音がした。
あまりにも頭が痛いので首を回すことができなかった。そっちを見ないままで、ああ起きてたのいとちゃん、と一応言っておいた。
いとちゃんは無言でテーブルの向かい席につき、あのなんともいえない黒い目でわたしの体たらくを見つめた。
テーブルにうつ伏せてあったグラスを取ると、いとちゃんは焼酎の瓶に手を伸ばした。
とくとく。
透明なグラスに注がれる、強いお酒。
いとちゃんは水で割ることも、氷を入れることもせず、ストレートでぐっと飲んだ。
「一人で飲んでも気が滅入るだけだと思うし、ひとつ、糸のはなしでもしようかと思って」
と、いとちゃんは言った。
糸のはなし。
猛烈に痛む頭。額に手をあて、ひじをテーブルにつきながら、わたしは無言を貫いた。
正直、放っておいてほしい気分だった。
(そう言えば、今日帰ってからいとちゃんを見るのは始めてだ)
厳密にいえば、もう日付は変わっているのだけど。
このところ、だいたいいつも帰宅したら部屋から出て人間らしい活動をしているいとちゃんだったが、昨夜に限ってはヒキコモリに戻っていたっけ。お陰でふて腐れて荒れぎみだったわたしは、存分に酔いつぶれるまで一人の時間を過ごすことができたのだ。
いとちゃんの「糸のはなし」とは、手芸の糸のことではないだろう。
多分、全く違う「糸」のことだ。目に見えない糸。人の運命をいとも簡単に左右する、恐るべき糸のこと。
わたしはそういう糸がこの世に存在し、糸のいたずらで色々な事象が起きていることを、小さい頃から知っていた。ただ、わたしは母の様な占い師でもないし、霊感なんか全くないので、糸を見ることはできない。
これまで、その糸の事について他人と話したことはなかった。
どういうわけか、今夜、いとちゃんのほうから糸のはなしをしようと持ちかけてきて、お陰でわたしは確信したのである。
(いとちゃんは、糸のことをよく知っているのに違いない)
いとちゃんと生活するようになって、まだそれほど経っていないけれど、なんとなくいとちゃんの不思議さを感じていた。目に見えないものを見て、理解不能だけど的確な予知をすることができる。
例えば、カレー事件の時とか。
頭をおさえたまま固まったわたしを気遣うふうでもなく、いとちゃんは何度も焼酎をお代わりして、軽やかに飲み干した。そしていとちゃんは、語ったのだった。
「ちょっと触れたり、絡まったりしただけで、それまで何事もなく流れていたものごとが狂ったり、間違った方向に行ってしまったりする」
いとちゃんは言った。
ちらっと上目で見てみたら、もう何杯も飲んだくせになんともない顔をして、いとちゃんは淡々としていた。
その黒い目は何を見ているのやら分からない。片手はコップを持ち、もう片手は人差し指を立て、まるで何かをなぞるかのように宙をさ迷っていた。
「全部の糸は繋がっているのだけど、どうしようもなく絡まったり、ねじれたりした部分は、時々ちょきんと切ってやることもある。そうしたら、いらない澱んだ部分が取り払われて、正常な部分同士がまた繋がり合って、物事がまた流れ始める」
ちょきん、と言ったとき、いとちゃんは目に見えないハサミを使う仕草をした。
ちょきん。
ぼうっとしながら、わたしは頬杖をついた。
目の前のいとちゃんは、わたしと視線を合わせるでもなく語り続ける。とくとく。また焼酎をついだ。
「でもね、時々糸の中に、変なものが混じり込むことがある」
ぐびっと一気飲みした。
黒い、糸。
いとちゃんは吐き出すように言った。
絡まり合い、もつれ合う糸の中に、何の脈絡もなく、クズ糸が紛れ込むことがある。
その黒い糸は、関わらない方が良いものだ。もし関わってしまったら。
いとちゃんの黒い目が、かちっと音を立てるかのような正確さでわたしを射貫いた。
その瞬間、頭の奥でくすぶっていた悪酔いの余韻や、胃の気持ち悪さが爆風で飛ばされるかのように消滅した。
(バイト先の、憧れの社員さん)
がっしりした体つきで、目が優しくて、会話が楽しい人で、仕事ができる。
わたしは、チェーン店の居酒屋のホール係のバイトをしていた。そこで彼と出会い一発で恋に落ちた。
好きだなあ、彼女いないなら狙い目かなあ、なんて思っていたら、彼の方もまんざらではないそぶりを見せて来たので、このところバイトに行くのが楽しみでしょうがなかったのだ。
ところが昨晩、憧れの彼が、別のバイトの子と深い関係になっていることを知った。地味で無口な子で、なんとなくうまが合わないタイプの子だった。
つまり、わたしは失恋した。
(もうバイト辞めるんだ)
と、決意し、帰宅途中で焼酎を買った。
そういう経緯があった。
「黒い糸は、こう」
ふっ。
いとちゃんは、目に見えないなにかを指でつまむと、口をとがらせて吹き飛ばす仕草をした。
目に見えないゴミが取り払われた。
いとちゃんは、無表情でまた焼酎をついだ。
何杯目だろう。
ヒキコモリのくせに、なんという酒豪か。他人の酒を飲んでいるというのに、遠慮の欠片も見えないところが、逆に清々しい。
ごっ、ごっ。
お酒を勢いよく飲み干して、とん、とコップをテーブルに置くと、いとちゃんは唐突に立ち上がった。
どうやら「糸のはなし」はここで終わったらしい。
起承転結もない。オチなしヤマなし。一体なんだったんだ。わたしは唖然とした。
玉のれんをくぐりながら、いとちゃんは言った。
「関わっちゃいけない相手だから、恋は実らなかった。ゆめちゃんは実はラッキー。もしその彼と付き合う事になったら、五年後の夏に、全裸で富士の樹海に捨てられることになるところだった」
さらっと物凄いことを言って、いとちゃんは去っていった。
じゃらん。玉のれんが揺れている。廊下を歩く音がして、まもなくぱたんと扉がしまる気配がした。
いとちゃんは自室に戻った。きっと寝るのだろう。
もしかしたら、自分もお酒を飲みたくなっただけなのかもしれないな。
なんて思ったけれど、そんな気楽な思考は一瞬で消えた。
じゃらん、じゃらん。
玉のれんの向こう側は暗黒の廊下。
(いとちゃんは何を告げに来たんだろうか)
なんとなく背筋が寒い思いで、揺れる玉のれんを眺めていた。
ふと、テーブルに放り出して置いた携帯が目に入った。チカチカ光っている。着信しているらしい。
見てみると、同じバイト先のコからメールが入っていた。このコはわたしの失恋を知っている。メール文を読んでいるうちに、わたしはぞおっとしてきた。
件の彼と、その地味な彼女。
実は彼女は妊娠してしまっているらしい。否が応でも結婚しなくてはならなくなって、来月籍を入れるとか。
「彼女、有頂天になってるみたいだよ。赤い糸が繋がった、とか言ってるらしいよ」
赤い、糸。
ふいに、あの、筋肉質で楽しくて優しい彼の、細くて目じりが垂れた目を思い出した。
茶色い彼の目。
(そうか)
わたしはやっと思い当たった。
いつも楽しくて笑っている彼だけど、あの目はいつだって、絶対に笑っていない。
表面と、心の中が、まるで違う方向を向いているひとの目。
富士の樹海は鬱蒼と青いだろうか。
光が差し込まない、湿った土の上に横たえられる白い肌。左手の薬指には見えない糸が結びつけられているのかもしれないけれど、果たしてそれが赤色なのか黒色なのか、そんなことを考えているうちに時計の鳩が三時を告げた。
(ゆめちゃんは、実は、ラッキー)
ふわっと鼻先を土と樹木の濃い匂いが過ったような気がして、わたしはぞうっと頭を振ったのだった。
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