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第1話「代理人ステラはここから始まります」
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ダンジョン経営代理店。それはダンジョンを管理する魔王たちが楽をするために設立された組織で、魔界中から依頼が殺到している。
今日もまた、とあるダンジョンの魔王がやって来ていた。
「ありがとうございましたー」
新米代理人のステラが笑顔で見送る。対称的に魔王は、
「二度と来るかよ……」
ぶっきらぼうな顔つきで出て行った。
ステラは赤色の肩まで伸びるワンサイドアップに、結っていない部分は背中辺りの長さの髪が印象的なサキュバスだった。他にあるべき特徴が無い事が特徴か。なぜなら、道行く悪魔たちが本当にサキュバスかと疑うほどスレンダーなのだから。
「………また、失敗ね」
ステラの後ろで一体のガーゴイルが肩を落とす。彼はこの代理店92号店のチーフだった。
「えっと……次こそはやってやります!」
「お黙り! 今やりなさい、今!」
「あわわ、ごめんなさい!」
ステラは謝ると同時にカウンター裏に逃げ込む。
「まーた逃げられたの? まったく、進歩が無いわね」
そこにいたのはルーテシア。ステラの同期で、この店にヘルプで呼ばれた普通のサキュバスだ。黒い尻尾をゆらゆら揺らして、意地悪そうに微笑んでいる。
「チーフは優しいからね。私、そんなに足が速くないのに」
ルーテシアは一瞬顔をしかめた後、こめかみを指で押さえた。
「あ……あんたは。誰がチーフから逃げられたことを褒めるのよ! 魔王様が帰ったってことよ!」
「……え?」
事の重大さがわかっていないのか、ステラは首を傾げる。
「……ま、あんたがどうなろうと知ったこっちゃないわ。でもね、これだけは言っておくわ。あんた、もう崖っぷちなのよ? 背水の陣なのよ? その後ろの川は溶岩なのよ? わかっているの?」
ルーテシアの言う通り、92号店は経営難に陥っていた。正社員はステラとチーフしか残っておらず、本部からの給料はほぼ全カット。二人でスーパーの特売品で生活を維持している状況だ。
「もういい加減、覚悟決めたら? あんた、訓練校からオファーが来ているんでしょ?」
ステラはダンジョン経営において必要な罠作成の分野で、歴史上最高の成績を修めて卒業している。普通に考えれば引く手数多になる人材だ。
しかし魔王たちが求めるのは見た目が優れた代理人だ。スレンダーなステラなどお払い箱だが指導員ならば話は別。むしろ勉学に必死になるサキュバスなどほとんどいないため、訓練校はあの手この手でステラを勧誘している。
「んー……それは何度も断っているんだけどね」
ステラは困ったような笑みを浮かべて髪をいじる。
「それは知っているわよ。でも、あんただって食えなきゃやっていけないでしょ?」
「いつも心配してくれてありがとう」
「私が心配しているのはその頭よ、頭! 罠作成はダンジョンを運営する上で必要不可欠じゃない! それをこんなところで燻らせていることが我慢ならないのよ!」
「んー……んんー……じゃあ言っちゃいます。私ね、ここのチーフが大好きなんだ。恩返しもしたいし。だから、絶対にこの店から離れません」
ステラがきっぱりと言い切ると、ルーテシアが溜め息を吐くよりも速くチーフが姿を現す。
「す……ステラー!!」
凶悪な顔に似合わない大粒の涙を撒き散らして、ステラを思いっきり抱きしめた。ステラは何かがひしゃげたような変な声を上げて、手をけいれんさせる。
「あ……あぁ、ごめんなさいね。それよりも、今日は焼き肉よ! 今日の不況はどこ吹く風ってね!」
「ほんと!? さすがはチーフ!」
肉という単語に反応したステラは痛みもなんのその。尻尾を振り回して、翼をはためかせて嬉しそうに踊り始めた。
「ルーも食べて行くよね!?」
「あ……あんたたちはー!! そこに座りなさい!!」
般若の顔をしたルーテシアにこってり絞られたのは言うまでもない。
今日もまた、とあるダンジョンの魔王がやって来ていた。
「ありがとうございましたー」
新米代理人のステラが笑顔で見送る。対称的に魔王は、
「二度と来るかよ……」
ぶっきらぼうな顔つきで出て行った。
ステラは赤色の肩まで伸びるワンサイドアップに、結っていない部分は背中辺りの長さの髪が印象的なサキュバスだった。他にあるべき特徴が無い事が特徴か。なぜなら、道行く悪魔たちが本当にサキュバスかと疑うほどスレンダーなのだから。
「………また、失敗ね」
ステラの後ろで一体のガーゴイルが肩を落とす。彼はこの代理店92号店のチーフだった。
「えっと……次こそはやってやります!」
「お黙り! 今やりなさい、今!」
「あわわ、ごめんなさい!」
ステラは謝ると同時にカウンター裏に逃げ込む。
「まーた逃げられたの? まったく、進歩が無いわね」
そこにいたのはルーテシア。ステラの同期で、この店にヘルプで呼ばれた普通のサキュバスだ。黒い尻尾をゆらゆら揺らして、意地悪そうに微笑んでいる。
「チーフは優しいからね。私、そんなに足が速くないのに」
ルーテシアは一瞬顔をしかめた後、こめかみを指で押さえた。
「あ……あんたは。誰がチーフから逃げられたことを褒めるのよ! 魔王様が帰ったってことよ!」
「……え?」
事の重大さがわかっていないのか、ステラは首を傾げる。
「……ま、あんたがどうなろうと知ったこっちゃないわ。でもね、これだけは言っておくわ。あんた、もう崖っぷちなのよ? 背水の陣なのよ? その後ろの川は溶岩なのよ? わかっているの?」
ルーテシアの言う通り、92号店は経営難に陥っていた。正社員はステラとチーフしか残っておらず、本部からの給料はほぼ全カット。二人でスーパーの特売品で生活を維持している状況だ。
「もういい加減、覚悟決めたら? あんた、訓練校からオファーが来ているんでしょ?」
ステラはダンジョン経営において必要な罠作成の分野で、歴史上最高の成績を修めて卒業している。普通に考えれば引く手数多になる人材だ。
しかし魔王たちが求めるのは見た目が優れた代理人だ。スレンダーなステラなどお払い箱だが指導員ならば話は別。むしろ勉学に必死になるサキュバスなどほとんどいないため、訓練校はあの手この手でステラを勧誘している。
「んー……それは何度も断っているんだけどね」
ステラは困ったような笑みを浮かべて髪をいじる。
「それは知っているわよ。でも、あんただって食えなきゃやっていけないでしょ?」
「いつも心配してくれてありがとう」
「私が心配しているのはその頭よ、頭! 罠作成はダンジョンを運営する上で必要不可欠じゃない! それをこんなところで燻らせていることが我慢ならないのよ!」
「んー……んんー……じゃあ言っちゃいます。私ね、ここのチーフが大好きなんだ。恩返しもしたいし。だから、絶対にこの店から離れません」
ステラがきっぱりと言い切ると、ルーテシアが溜め息を吐くよりも速くチーフが姿を現す。
「す……ステラー!!」
凶悪な顔に似合わない大粒の涙を撒き散らして、ステラを思いっきり抱きしめた。ステラは何かがひしゃげたような変な声を上げて、手をけいれんさせる。
「あ……あぁ、ごめんなさいね。それよりも、今日は焼き肉よ! 今日の不況はどこ吹く風ってね!」
「ほんと!? さすがはチーフ!」
肉という単語に反応したステラは痛みもなんのその。尻尾を振り回して、翼をはためかせて嬉しそうに踊り始めた。
「ルーも食べて行くよね!?」
「あ……あんたたちはー!! そこに座りなさい!!」
般若の顔をしたルーテシアにこってり絞られたのは言うまでもない。
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