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第一章 英雄の序曲
第2話「魔王ユウ誕生2」
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目を開けると見慣れてしまった光景が広がっていた。黒を基調とし、白い宝石で装飾した魔王ユウの寝室だ。どうしてここにいるんだろう。
「……あぁ、夢か。でも仕事なんだよなぁ」
起きたくない思いが強いのか、暫く念じてみるものの一向に目を覚まさない。代わりに変な考えが浮かんで来る。これは現実だと。俺はこの世界の住人になったのだと。あり得ない。思わず笑ってしまう。
「どうかなさいましたか、我が君」
振り返るとドラゴンメイドがいた。人型で顔だけは女性の顔だが、他の皮膚は全て竜の鱗。立派な竜の尻尾を携え、灼熱色のウェーブのかかった髪を左側にまとめて垂らしている。琥珀色の目は俺の好みだ。
そして、ドラゴンメイドは決して着ないであろう巫女服が一番の拘り。今はそんなことどうでもいいが、ここが一番のポイントなんだよな。
「ウロボロスか。どうして動いているんだ?」
チーム名、オラクル・ナイツの団長を任せている配下だ。設定上は俺の配下中最も偉いことになっている。その強さは相応のもの。昨日戦った天使なんか瞬殺だろうな。
「申し訳ありません、何か不都合が御座いましたか? それでしたら我が命を持って贖罪させて頂きます」
ウロボロスは短刀を取り出して腹部に押し当てる。
「ま、待て! 物騒なことはやめろ!」
咄嗟に取り上げると、
「我が君、お怪我はありませんか!?」
ウロボロスに手を掴まれる。見ると、刃を強く握り締めていた。普通は深く切れて、激痛で身悶えるだろう。でも、どういう訳か全く痛みを感じない。夢確定だ。
「我が君、重ねて何という失態を……どうか、如何様にも罰して下さい」
さて、夢とわかったら話は別だ。こんな機会は滅多にない。とことん楽しむために、ウロボロスを近くに呼び寄せる。仕事なんて忘れた。
「確認したい。俺は誰だ?」
「我が君、魔王ユウ様でございますが」
「そうか、なら少しだけ我慢してくれ」
モニター越しじゃよく見られないからな。思い返すと10年以上は育成し続けているんだよな、配下たちを。やっとお披露目となった訳である。
感慨深い思いを持ちつつ手を取ってみる。なるほど、随分と細かく作り込まれているな。血行も良いのか、温かい。
「……ん、温かいだと?」
近付いてわかったが、甘い匂いもする。嗅覚まで働いているようだ。
「まさか……ここはひょっとして」
痛覚だけが無効化されているのはライフが減ったからかもしれない。もしそうなら、ここは本当にゲームの世界ということか。いや、あり得ない。ゲームの世界に入り込むなんて奇跡は。
――その願い、叶えましょう
そんなメールの一文を思い出す。まさか、あれは神様が送ってくれたメールだったのか。もし本当にそうなら素敵過ぎるプレゼントだ。神様、マジ神。
「……ははは、まさか、そんな。そうだ、鑑。ウロボロス、俺に鑑を貸してくれないか」
「はい、こちらに」
差し出された手鏡を見ると、俺が作成したユウとは別の顔。俺自身の顔が映っていた。友達によく言われる。平凡な顔だと。
「ウロボロス、真面目に答えて欲しい、俺は誰だ」
「私が唯一絶対的な忠誠を尽くす御君、魔王ユウ様で御座います」
この顔で俺を魔王と呼ぶのか。どういうことだ。仮にゲームの世界だとしても、俺が設計した魔王ユウとは全くの別人なのに。
「あ、いいえ間違えました。私のフィアンセの魔王ユウ様です」
「……そういえば、そういう設定だったか?」
確か冗談で一文、そんな設定を入れた気もする。全配下そうだったような。魔王に対し絶対的な服従を誓っており、その思いはもはや愛に相当すると。ブラック企業に入った結果がこれだよ。
さて、にわかには信じ難いが、ウロボロスの設定からも俺は魔王ユウらしい。
「魔王……俺が魔王ユウなのか」
そう自然と思うのは夢だからか、それともそう考えるよう仕向けられているのか。いずれにしてもこの世界のことをよく知る必要がある。
「……あぁ、夢か。でも仕事なんだよなぁ」
起きたくない思いが強いのか、暫く念じてみるものの一向に目を覚まさない。代わりに変な考えが浮かんで来る。これは現実だと。俺はこの世界の住人になったのだと。あり得ない。思わず笑ってしまう。
「どうかなさいましたか、我が君」
振り返るとドラゴンメイドがいた。人型で顔だけは女性の顔だが、他の皮膚は全て竜の鱗。立派な竜の尻尾を携え、灼熱色のウェーブのかかった髪を左側にまとめて垂らしている。琥珀色の目は俺の好みだ。
そして、ドラゴンメイドは決して着ないであろう巫女服が一番の拘り。今はそんなことどうでもいいが、ここが一番のポイントなんだよな。
「ウロボロスか。どうして動いているんだ?」
チーム名、オラクル・ナイツの団長を任せている配下だ。設定上は俺の配下中最も偉いことになっている。その強さは相応のもの。昨日戦った天使なんか瞬殺だろうな。
「申し訳ありません、何か不都合が御座いましたか? それでしたら我が命を持って贖罪させて頂きます」
ウロボロスは短刀を取り出して腹部に押し当てる。
「ま、待て! 物騒なことはやめろ!」
咄嗟に取り上げると、
「我が君、お怪我はありませんか!?」
ウロボロスに手を掴まれる。見ると、刃を強く握り締めていた。普通は深く切れて、激痛で身悶えるだろう。でも、どういう訳か全く痛みを感じない。夢確定だ。
「我が君、重ねて何という失態を……どうか、如何様にも罰して下さい」
さて、夢とわかったら話は別だ。こんな機会は滅多にない。とことん楽しむために、ウロボロスを近くに呼び寄せる。仕事なんて忘れた。
「確認したい。俺は誰だ?」
「我が君、魔王ユウ様でございますが」
「そうか、なら少しだけ我慢してくれ」
モニター越しじゃよく見られないからな。思い返すと10年以上は育成し続けているんだよな、配下たちを。やっとお披露目となった訳である。
感慨深い思いを持ちつつ手を取ってみる。なるほど、随分と細かく作り込まれているな。血行も良いのか、温かい。
「……ん、温かいだと?」
近付いてわかったが、甘い匂いもする。嗅覚まで働いているようだ。
「まさか……ここはひょっとして」
痛覚だけが無効化されているのはライフが減ったからかもしれない。もしそうなら、ここは本当にゲームの世界ということか。いや、あり得ない。ゲームの世界に入り込むなんて奇跡は。
――その願い、叶えましょう
そんなメールの一文を思い出す。まさか、あれは神様が送ってくれたメールだったのか。もし本当にそうなら素敵過ぎるプレゼントだ。神様、マジ神。
「……ははは、まさか、そんな。そうだ、鑑。ウロボロス、俺に鑑を貸してくれないか」
「はい、こちらに」
差し出された手鏡を見ると、俺が作成したユウとは別の顔。俺自身の顔が映っていた。友達によく言われる。平凡な顔だと。
「ウロボロス、真面目に答えて欲しい、俺は誰だ」
「私が唯一絶対的な忠誠を尽くす御君、魔王ユウ様で御座います」
この顔で俺を魔王と呼ぶのか。どういうことだ。仮にゲームの世界だとしても、俺が設計した魔王ユウとは全くの別人なのに。
「あ、いいえ間違えました。私のフィアンセの魔王ユウ様です」
「……そういえば、そういう設定だったか?」
確か冗談で一文、そんな設定を入れた気もする。全配下そうだったような。魔王に対し絶対的な服従を誓っており、その思いはもはや愛に相当すると。ブラック企業に入った結果がこれだよ。
さて、にわかには信じ難いが、ウロボロスの設定からも俺は魔王ユウらしい。
「魔王……俺が魔王ユウなのか」
そう自然と思うのは夢だからか、それともそう考えるよう仕向けられているのか。いずれにしてもこの世界のことをよく知る必要がある。
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