魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第10話「配下たちの暴走3」

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 軍議の間に全配下が集っていた。その場を指揮するのはアザレア。ユウが外に出ると聞いて、緊急会議を開いたのだ。

「確認するまでもなく、この危機的な状況を理解できているかな?」

 アザレアの問いにカルマが反論する。ウロボロスに任せると誓った以上、黙って聞き逃せる話ではない。

「待って貰おうかのう、雑草君。ウロボロスでは役不足と言うのではなかろうな?」

 アザレアにしてみれば、これほど明確な愚行はあり得ない。そして、この状況を打開するためにはそんな愚者、つまりカルマの協力が必要不可欠だ。頭痛を堪えながら彼は説明を始める。

「私たちはこの世界に対し余りにも無知だ。現時点ではこの周囲にモンスターの反応は無い……が、それは私たちが捜索した時の情報。魔王様に反応する敵がいる可能性もある」
「仮にそうだとして、何か問題でも? ウロボロスが……まして、魔王様が出し抜かれると、本気で思うのかのう?」

 カルマはドミニオンズの世界で全配下中最強と謳われたウロボロスを、そしてユウを心から信頼している。同じ配下としてなぜ信じられないのかと、心から不愉快に思っていた。

「……だが、それは慢心とも言う」

 その危険性を指摘するのはムラクモだ。アザレアだけでなく、配下の中では極めて常識人の彼にまで言われたカルマは驚いた表情を浮かべた。

「その思いは誰もが抱くべきものだろう。だが、ここは未知の世界。我らの常識、ステータス、スキル……そういったものが通用するとは言い切れない」
「でも、魔王様が負けるところなんて想像できないよ?」

 フェンリスには到底理解の及ばない話であった。カルマも同様の考えであったが、

「犬ころと同じ考えというのは虫唾が走るが……まぁ、脳が足りぬ愚か者共に諭すには丁度良いレベルかもしれぬのう」

 フェンリスと同レベルであるはずがない。しかし、ムラクモの言葉は無視できない。そんな複雑な思いもあり、毒を吐いて平静を保つ。
それに追い打ちをかけたのはメイド代表の神無月であった。

「カルマ様、今は可能性の話をしております。そう断言するのは早計ではありませんか?」
「それは……主らの総意と受け取っても良いのかのう?」
「異世界なのですから、如何なる不測事態にも備えるべきでしょう」

 神無月の返答に対し、アザレアは頷く。ここまで諭されてもなお反論があると予想しており、彼は先手を打った。

「様々な面を考慮して、魔王様のお供はカルマこそ相応しかった。空間移動、蘇生能力、物理、魔法両面に長けたステータスとスキル、魔法を所持している。更には眷属を放ち牽制、情報収集、罠の誘発等々、ウロボロスには……いいえ、私たちにはできない護衛に適したものを数多く有しているのですから」
「む……それは薄々感じてはおったが。しかし、ウロボロスは常識では考えられぬステータスを持っておる。あの化け物では不服と言うのか?」

 これを好機と見てアザレアは畳みかける。

「魔王様は何と命令されたかな? 自分の傍にいるべきはカルマ。その御言葉を蔑ろにされるつもりかい?」
「確かに……ワシは……何という不敬を……」

 今回はウロボロスと行くと決めたのもまたユウであったのだが、そう思い至る前にアザレアが止めを刺す。

「なれば、これはむしろ名誉挽回の機会とは言えないかい?」
「何じゃと……?」
「魔王様の御身を御守りすることこそ、私たちが本来果たすべき責務。既に魔王様の道中を警護する完璧なプランを立てている。力を貸してくれないかい?」

 それはどんな果実よりも甘美な誘惑であったが、カルマはユウにオラクル・ラビリンスの防衛を任されている。それが枷となり頷けずにいた。

「このダンジョンの防衛システムはおおよそ完成している。ここはムラクモ君、神無月たちに任せても良いだろう。魔王様の御命が最優先さ」

 カルマは顔がやつれるほど悩んだ後、遂に結論を出す。

「……魔王様の御身はワシが守る」
「あぁ、それを聞いて安心したよ」

 言いながら、アザレアは内心でガッツポーズしていた。アザレアとてユウの護衛をしたいと強く願っていたのだから。それなのに命じられたのはダンジョンの防衛。こちらも大切ではあるが、ユウの初陣に付き従う栄誉が何よりも欲しいものであったのだ。
 それを知っているムラクモは、その無駄な才能の使い方に溜め息を吐いたのだった。
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