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第一章 英雄の序曲
第19話「魔王の代償6」
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矢はいつまで待ってもやって来ない。目を開けてみると、それはウロボロスによって叩き落とされていた。
「我が君へ害を……許せない……!」
兜で顔が隠れていてもわかるほどにウロボロスは激昂していた。本当なら嬉しいと思うところだろうけど、あの子の警護はどうなったのか気になってしまう。まぁ、今ではそれすらどうでもいいか。
「そこの指揮官は仲間がいないと言っていた。野党だろう。駆逐してしまえ」
何に対して憤っていたんだろう。もうどうでもいい。そんな虚無感で胸がいっぱいだった。
「そのお言葉を待っておりました!」
次の瞬間、ウロボロスの姿が消える。矢の軌跡を辿ったその先に目を向けると、弓兵を脳天から串刺しにしていた。
「……はぁ、それでもやるしかないか」
どれだけ狂ってしまおうとも投げ出す訳にはいかない。俺を信じてくれる配下たちのためにも。そうだ、それだけは忘れるな。俺は配下たちとずっと一緒にいたい。その願いだけは絶対に間違いじゃないんだから。
「さぁ、隠れている兵士諸君。さっさと姿を現してこいつの部下と申し出ろ。そうすれば命は助けてやる。さもなくば漏れなくあの世行きだ。ウロボロス、投降してくる奴は見逃せ。これは命令だ」
次から次へと兵士たちが姿を見せ、口ぐちにこいつの部下だと教えてくれる。
「おかしいな、確かもう兵士はいなかったはずだが? 嘘は許せない。違うか?」
「そ……それは……。お、お願いします! 命だけは! 命だけは助けて下さい! お願いします!」
「安心しろ、今は殺さない。おい、そこの2人! そして這いつくばる雑魚共! 上司に確実にさっきの内容を伝えろ。そうすれば、この場は見逃してやる」
兵士たちが散り散りに走って行く。言いつけ通り、こいつを残して。指揮官は言葉にならない何かを喚き散らしているが、誰も振り返りすらしなかった。
「さて、ウロボロス。こいつは大切なお客さんだ。処遇はわかっているな?」
「はい。アザレアに引き渡しておきましょう。睦月を呼んで運ばせます。加工しても宜しいでしょうか?」
あいつに渡ったらもう生きて帰れないだろうな。こんな悪党でも元は俺と同じ人間だ。せめてもの情けで道中くらいは元気でいて貰おう。
「止めておけ。こいつの利用価値が下がる」
「了解しました」
さて、これで一件落着だ。村人を見ると、一様に怯えた目をしている。
「さて、村人の方々」
どうやって話を進めたものか。色々と感情が欠落してしまった俺でさえ引くような戦いだった。持たれた印象は最悪と言っていい。
「あー……その、何だ。俺たちは助けに来た。それだけはわかってくれるな?」
協力関係を構築するために来たことを思い出す。もう遅いだろうが努めて友好的に、フレンドリーに、穏やかに接してみる。
「答えなさい! 我が君を愚弄するつもりですか!?」
その願いはウロボロスの純真な忠誠心によって打ち砕かれた。もう修復不可能。そう思っていた時、足音が聞こえて来た。
「おぉ……若!」
村人たちがそう口にした人物が現れる。そいつは俺と一緒にいた少女だった。
「我が君へ害を……許せない……!」
兜で顔が隠れていてもわかるほどにウロボロスは激昂していた。本当なら嬉しいと思うところだろうけど、あの子の警護はどうなったのか気になってしまう。まぁ、今ではそれすらどうでもいいか。
「そこの指揮官は仲間がいないと言っていた。野党だろう。駆逐してしまえ」
何に対して憤っていたんだろう。もうどうでもいい。そんな虚無感で胸がいっぱいだった。
「そのお言葉を待っておりました!」
次の瞬間、ウロボロスの姿が消える。矢の軌跡を辿ったその先に目を向けると、弓兵を脳天から串刺しにしていた。
「……はぁ、それでもやるしかないか」
どれだけ狂ってしまおうとも投げ出す訳にはいかない。俺を信じてくれる配下たちのためにも。そうだ、それだけは忘れるな。俺は配下たちとずっと一緒にいたい。その願いだけは絶対に間違いじゃないんだから。
「さぁ、隠れている兵士諸君。さっさと姿を現してこいつの部下と申し出ろ。そうすれば命は助けてやる。さもなくば漏れなくあの世行きだ。ウロボロス、投降してくる奴は見逃せ。これは命令だ」
次から次へと兵士たちが姿を見せ、口ぐちにこいつの部下だと教えてくれる。
「おかしいな、確かもう兵士はいなかったはずだが? 嘘は許せない。違うか?」
「そ……それは……。お、お願いします! 命だけは! 命だけは助けて下さい! お願いします!」
「安心しろ、今は殺さない。おい、そこの2人! そして這いつくばる雑魚共! 上司に確実にさっきの内容を伝えろ。そうすれば、この場は見逃してやる」
兵士たちが散り散りに走って行く。言いつけ通り、こいつを残して。指揮官は言葉にならない何かを喚き散らしているが、誰も振り返りすらしなかった。
「さて、ウロボロス。こいつは大切なお客さんだ。処遇はわかっているな?」
「はい。アザレアに引き渡しておきましょう。睦月を呼んで運ばせます。加工しても宜しいでしょうか?」
あいつに渡ったらもう生きて帰れないだろうな。こんな悪党でも元は俺と同じ人間だ。せめてもの情けで道中くらいは元気でいて貰おう。
「止めておけ。こいつの利用価値が下がる」
「了解しました」
さて、これで一件落着だ。村人を見ると、一様に怯えた目をしている。
「さて、村人の方々」
どうやって話を進めたものか。色々と感情が欠落してしまった俺でさえ引くような戦いだった。持たれた印象は最悪と言っていい。
「あー……その、何だ。俺たちは助けに来た。それだけはわかってくれるな?」
協力関係を構築するために来たことを思い出す。もう遅いだろうが努めて友好的に、フレンドリーに、穏やかに接してみる。
「答えなさい! 我が君を愚弄するつもりですか!?」
その願いはウロボロスの純真な忠誠心によって打ち砕かれた。もう修復不可能。そう思っていた時、足音が聞こえて来た。
「おぉ……若!」
村人たちがそう口にした人物が現れる。そいつは俺と一緒にいた少女だった。
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