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第一章 英雄の序曲
第37話「閑話休題:心を教えて2」
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カルマは優雅に紅茶を楽しんでいた。ユウのフィアンセとして相応しい振舞いの練習のためだ。
「な……なんだか、今日のカルマは少しおかしいな」
「そうですか? いつもおかしいと思いますけど」
ユウとフェンリスが何やら話しているのを見ても、一切心が乱れない。絶対的な優位に立っていると確信しているからだった。
そんな時、神無月から緊急の報告が入り、ユウが出ることとなった。
「カルマは紅茶タイムを楽しんでいていいぞ。フェンリスは付いて来て、後学に役立てて欲しい」
自分も付いて行くと言いかけたが、カルマはグッと堪える。后は王の帰りを信じて待つ者。ここは余裕の気持ちを持って見送ると決意する。
「了解したのじゃ、魔王様。フェンリス、万が一のことがあったら殺すからの?」
だが、釘を刺すのは忘れない。そうしてユウたちを見送った後、カルマは100枚の紙束を持ってアデルの家へ向かう。
「アデル、持って来たぞ?」
「あぁ、カルマさん。私も丁度準備ができたところです。どうぞ、これを」
そわそわしながらカルマは差し出された布製の袋を受け取る。それは手の平サイズの四角形の巾着袋だった。
「これは何じゃ?」
「前にお話しした恋愛成就の御守りです。ここに思いを綴った手紙を入れて渡せば、きっと思いが通じると言われています」
「なるほどのう、なるほどのう! よい、よいのう! それで、これをどうやってねじ込むのじゃ?」
カルマが用意した手紙はA4サイズの100枚綴りだ。どう頑張って折り曲げようとも入るはずがない。
「あ、えーとその……随分と多いですね? なるべく少なくしてって言ったと思ったんですが」
「うむ、身を削る思いで減らしたぞ? これ以上は死を覚悟せねばならぬ」
「そ……そんなに……なんですね。一応、見せて貰えますか? ……うわぁ」
手紙には直径1ミリにも満たない大きさの文字がびっしりと、裏表に書き込まれていた。内容を厳選しようとしたが、アデルは読み取ることができず困り果てる。
「えっと……何が書いてあるんですか?」
「そこに記してあるじゃろう?」
「あ……えっと……あはは、そうなんですけど、できればカルマさん自身の口から聞きたくて」
「そうか! ならば語ろうではないか! まず、ワシが魔王様に拾われた時のことからじゃが……」
カルマの話は長く、そして随所に好きや愛という単語がちりばめられていた。30分我慢していたアデルだったが、遂に限界に達する。
「その時にな、ゼルエル様と共にワシを守って下さったあの時の御背中が逞しくて一層好きに……」
「あ、カルマさん。そろそろユウさんが帰って来てしまうのでは? 作っているところを見付かりたくないでしょう?」
「む、それもそうじゃ。よく気付いたのう、アデル」
窮地を脱したアデルだが、更なる地獄へ足を突っ込んだことを思い出して溜め息を吐いた。どうやってあの量を御守りの中に入れるか考え始め、やがて名案を思い付いた。
「そ……そうだ! 一度、それを燃やしましょう!」
「な……何じゃと!?」
「大切な思いを聖なる炎で清め、その灰を袋に入れることで完成しますから!」
この部分はアデルのオリジナルである。聖なる炎なんてものも存在しないし、そもそも灰にしたら手紙は読んで貰えないので本末転倒ですらある。だが、もうそれしか手段は残っていない。
「なるほどのう、なるほどのう! では、早速燃やすとしようか! それで、その炎はどこじゃ?」
「えーと……それはですね」
更なる嘘をアデルが考えている時だった。異常事態を知らせる村の鐘が鳴り響いたのである。
「な……なんだか、今日のカルマは少しおかしいな」
「そうですか? いつもおかしいと思いますけど」
ユウとフェンリスが何やら話しているのを見ても、一切心が乱れない。絶対的な優位に立っていると確信しているからだった。
そんな時、神無月から緊急の報告が入り、ユウが出ることとなった。
「カルマは紅茶タイムを楽しんでいていいぞ。フェンリスは付いて来て、後学に役立てて欲しい」
自分も付いて行くと言いかけたが、カルマはグッと堪える。后は王の帰りを信じて待つ者。ここは余裕の気持ちを持って見送ると決意する。
「了解したのじゃ、魔王様。フェンリス、万が一のことがあったら殺すからの?」
だが、釘を刺すのは忘れない。そうしてユウたちを見送った後、カルマは100枚の紙束を持ってアデルの家へ向かう。
「アデル、持って来たぞ?」
「あぁ、カルマさん。私も丁度準備ができたところです。どうぞ、これを」
そわそわしながらカルマは差し出された布製の袋を受け取る。それは手の平サイズの四角形の巾着袋だった。
「これは何じゃ?」
「前にお話しした恋愛成就の御守りです。ここに思いを綴った手紙を入れて渡せば、きっと思いが通じると言われています」
「なるほどのう、なるほどのう! よい、よいのう! それで、これをどうやってねじ込むのじゃ?」
カルマが用意した手紙はA4サイズの100枚綴りだ。どう頑張って折り曲げようとも入るはずがない。
「あ、えーとその……随分と多いですね? なるべく少なくしてって言ったと思ったんですが」
「うむ、身を削る思いで減らしたぞ? これ以上は死を覚悟せねばならぬ」
「そ……そんなに……なんですね。一応、見せて貰えますか? ……うわぁ」
手紙には直径1ミリにも満たない大きさの文字がびっしりと、裏表に書き込まれていた。内容を厳選しようとしたが、アデルは読み取ることができず困り果てる。
「えっと……何が書いてあるんですか?」
「そこに記してあるじゃろう?」
「あ……えっと……あはは、そうなんですけど、できればカルマさん自身の口から聞きたくて」
「そうか! ならば語ろうではないか! まず、ワシが魔王様に拾われた時のことからじゃが……」
カルマの話は長く、そして随所に好きや愛という単語がちりばめられていた。30分我慢していたアデルだったが、遂に限界に達する。
「その時にな、ゼルエル様と共にワシを守って下さったあの時の御背中が逞しくて一層好きに……」
「あ、カルマさん。そろそろユウさんが帰って来てしまうのでは? 作っているところを見付かりたくないでしょう?」
「む、それもそうじゃ。よく気付いたのう、アデル」
窮地を脱したアデルだが、更なる地獄へ足を突っ込んだことを思い出して溜め息を吐いた。どうやってあの量を御守りの中に入れるか考え始め、やがて名案を思い付いた。
「そ……そうだ! 一度、それを燃やしましょう!」
「な……何じゃと!?」
「大切な思いを聖なる炎で清め、その灰を袋に入れることで完成しますから!」
この部分はアデルのオリジナルである。聖なる炎なんてものも存在しないし、そもそも灰にしたら手紙は読んで貰えないので本末転倒ですらある。だが、もうそれしか手段は残っていない。
「なるほどのう、なるほどのう! では、早速燃やすとしようか! それで、その炎はどこじゃ?」
「えーと……それはですね」
更なる嘘をアデルが考えている時だった。異常事態を知らせる村の鐘が鳴り響いたのである。
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