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第一章 英雄の序曲
第42話「血塗られた魔導兵器3」
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位置座標は止まったまま動かない。あの元気いっぱいで、戦闘狂のフェンリスが立ち止まる理由。いくら考えても思い付かない。
「この辺りが、最後にフェンリスが暴れ回っていたが……」
「あ、魔王様!」
フェンリスが屈託の無い笑顔を浮かべて走り寄って来た。どこにも傷は見当たらない。どうして戦闘を止めたのか聞こうとしたが、その理由はすぐにわかった。
「ほぉ……魔王か」
修道服を着た女、シスターマリアが剣を構えている。その外観は神具、アヴァロンの剣だ。もしそうなら斬られれば最後、いかなるシールドも意味を成さない物理攻撃の極地だ。
「魔王様、一応大切なことだと思ったので、戦いたいのを我慢して待っていました!」
「そうか……我慢したんだな、ありがとう」
「えへへ……当然のことです!」
フェンリスの頭を撫でると、カルマに抱き疲れる。妙に生臭い匂いが吐き気を催した。
「えぇい、フェンリス! この、離れるのじゃ! 我が愛しき魔王様が汚れる!」
「え、でもカルマも血がべったりじゃない?」
「お……お前ら、一旦離れろ!」
この装備はもう駄目かもしれないな。洗って取れるのか、これ。
「お……お前たち、私を無視するとは良い度胸だ」
「あー……すまない、忘れていた」
「忘れる……忘れる、だと? これは神具なのだぞ?」
カルマが盛大に溜め息を吐いた。また、フェンリスはきょとんとした表情をしている。
「神具の一つや二つ、ようやく同じ土俵に立たれただけ。そう粋がられても滑稽なだけじゃぞ?」
「そうそう、ちょっとびっくりしただけです」
「な……に……? これ以上のランクの武器は存在しないんだぞ? それを、お前らは恐れないと言うのか?」
「お前のような雑魚に何を臆する必要があるのじゃ?」
神具は最高ランクの武器で、出されたらある程度は警戒する。ただし、使い手がそれ相応に強かったらの話だ。ステータスチェックをすると、マリアのレベルは推定50だ。この世界基準なら強いだろうが、俺たちの敵ではない。
「……良い度胸をしているな、お前たち。名前を教えてくれ」
「栄光あるオラクル・ナイツのナンバー3、カルマ。せいぜい本気で来ることじゃ、鈍ら凡人」
「私はマリア。聖リリス帝国の聖天騎士団、四聖が1人。いざ、参る!」
動きがこれまでの雑兵と明らかに違う。そのスピードは一般兵とは段違いで、例えるなら三輪車とスポーツカーを比べた程に差がある。なるほど、大そうな称号を背負うだけの強さはあるようだ。
「温いのう、この程度か?」
だが、それは人間を基準に考えた場合の話。全くもって勝負になっていない。
カルマが反撃に転じ、眷属のコウモリたちを一斉召喚する。それらはまるで黒い霧のようになって、マリアに襲いかかった。
「秘剣、聖天刃!」
マリアが大きく剣を振り下ろすと、剣の軌跡に沿って光が発せられ、それを浴びたコウモリたちが死滅する。空間攻撃のスキルだろう。なるほど、攻撃スキルはまぁまぁなレベルだ。
「面白い攻撃じゃ。アヴァロンの剣は物理攻撃特化型。しかし、今の攻撃は魔法として叩き込んでいるようじゃのう。魔法属性を付与しているのか、それとも改造か」
「まさか、そいつが魔導兵器か?」
「なぜそれを……? 口封じしなくてはならないな」
恐らく図星だろう。見るからに表情が変わったマリアが剣を振り被り、突進攻撃をしかけてくる。
カルマはそれを避ける素振りすら見せず、素手を突き出す。
「秘剣、聖光刃!」
「カオスインパクト」
攻撃が交錯した瞬間、アヴァロンの剣はマリアの手を離れる。意思を持つように飛び立ち、マリアの胴体を貫いていた。
「ほぉ……これはこれは。だが、いずれにしても終わりじゃ、シスター」
カオスインパクト。カルマが使う技の中で最上位の洗脳攻撃だ。特筆すべきはそのスピード。通常の洗脳行為、カルマの場合吸血は相手の血液を吸うと同時にMPを少しずつ流し込んで支配するが、これは一撃で必要量をぶち込んでしまう。
勝利はした。だが、カルマと同じように気になってしまう。本来、あの攻撃でマリアを支配下に置くはずなのだが、なぜかあの剣だけ洗脳した。
「いささか特殊なおもちゃのようじゃが、その程度で喜ぶ餓鬼に本気を出すまでも無いのう」
「……悪魔め。この借りは必ず返す。カルマ……その名前、忘れはしない」
マリアは窓ガラスを突き破って外へ飛び出して行った。どこの世界でも逃げ方は似たようなものらしい。
「えー……もう終わりですか?」
「そう不貞腐れるな、フェンリス。あそこにまだ人影があるぞ?」
「ほ、本当ですか!?」
嬉々とした表情でフェンリスは駆け出して行った。その後を追いながら、あの不自然な状態について考えざるを得なかった。
「この辺りが、最後にフェンリスが暴れ回っていたが……」
「あ、魔王様!」
フェンリスが屈託の無い笑顔を浮かべて走り寄って来た。どこにも傷は見当たらない。どうして戦闘を止めたのか聞こうとしたが、その理由はすぐにわかった。
「ほぉ……魔王か」
修道服を着た女、シスターマリアが剣を構えている。その外観は神具、アヴァロンの剣だ。もしそうなら斬られれば最後、いかなるシールドも意味を成さない物理攻撃の極地だ。
「魔王様、一応大切なことだと思ったので、戦いたいのを我慢して待っていました!」
「そうか……我慢したんだな、ありがとう」
「えへへ……当然のことです!」
フェンリスの頭を撫でると、カルマに抱き疲れる。妙に生臭い匂いが吐き気を催した。
「えぇい、フェンリス! この、離れるのじゃ! 我が愛しき魔王様が汚れる!」
「え、でもカルマも血がべったりじゃない?」
「お……お前ら、一旦離れろ!」
この装備はもう駄目かもしれないな。洗って取れるのか、これ。
「お……お前たち、私を無視するとは良い度胸だ」
「あー……すまない、忘れていた」
「忘れる……忘れる、だと? これは神具なのだぞ?」
カルマが盛大に溜め息を吐いた。また、フェンリスはきょとんとした表情をしている。
「神具の一つや二つ、ようやく同じ土俵に立たれただけ。そう粋がられても滑稽なだけじゃぞ?」
「そうそう、ちょっとびっくりしただけです」
「な……に……? これ以上のランクの武器は存在しないんだぞ? それを、お前らは恐れないと言うのか?」
「お前のような雑魚に何を臆する必要があるのじゃ?」
神具は最高ランクの武器で、出されたらある程度は警戒する。ただし、使い手がそれ相応に強かったらの話だ。ステータスチェックをすると、マリアのレベルは推定50だ。この世界基準なら強いだろうが、俺たちの敵ではない。
「……良い度胸をしているな、お前たち。名前を教えてくれ」
「栄光あるオラクル・ナイツのナンバー3、カルマ。せいぜい本気で来ることじゃ、鈍ら凡人」
「私はマリア。聖リリス帝国の聖天騎士団、四聖が1人。いざ、参る!」
動きがこれまでの雑兵と明らかに違う。そのスピードは一般兵とは段違いで、例えるなら三輪車とスポーツカーを比べた程に差がある。なるほど、大そうな称号を背負うだけの強さはあるようだ。
「温いのう、この程度か?」
だが、それは人間を基準に考えた場合の話。全くもって勝負になっていない。
カルマが反撃に転じ、眷属のコウモリたちを一斉召喚する。それらはまるで黒い霧のようになって、マリアに襲いかかった。
「秘剣、聖天刃!」
マリアが大きく剣を振り下ろすと、剣の軌跡に沿って光が発せられ、それを浴びたコウモリたちが死滅する。空間攻撃のスキルだろう。なるほど、攻撃スキルはまぁまぁなレベルだ。
「面白い攻撃じゃ。アヴァロンの剣は物理攻撃特化型。しかし、今の攻撃は魔法として叩き込んでいるようじゃのう。魔法属性を付与しているのか、それとも改造か」
「まさか、そいつが魔導兵器か?」
「なぜそれを……? 口封じしなくてはならないな」
恐らく図星だろう。見るからに表情が変わったマリアが剣を振り被り、突進攻撃をしかけてくる。
カルマはそれを避ける素振りすら見せず、素手を突き出す。
「秘剣、聖光刃!」
「カオスインパクト」
攻撃が交錯した瞬間、アヴァロンの剣はマリアの手を離れる。意思を持つように飛び立ち、マリアの胴体を貫いていた。
「ほぉ……これはこれは。だが、いずれにしても終わりじゃ、シスター」
カオスインパクト。カルマが使う技の中で最上位の洗脳攻撃だ。特筆すべきはそのスピード。通常の洗脳行為、カルマの場合吸血は相手の血液を吸うと同時にMPを少しずつ流し込んで支配するが、これは一撃で必要量をぶち込んでしまう。
勝利はした。だが、カルマと同じように気になってしまう。本来、あの攻撃でマリアを支配下に置くはずなのだが、なぜかあの剣だけ洗脳した。
「いささか特殊なおもちゃのようじゃが、その程度で喜ぶ餓鬼に本気を出すまでも無いのう」
「……悪魔め。この借りは必ず返す。カルマ……その名前、忘れはしない」
マリアは窓ガラスを突き破って外へ飛び出して行った。どこの世界でも逃げ方は似たようなものらしい。
「えー……もう終わりですか?」
「そう不貞腐れるな、フェンリス。あそこにまだ人影があるぞ?」
「ほ、本当ですか!?」
嬉々とした表情でフェンリスは駆け出して行った。その後を追いながら、あの不自然な状態について考えざるを得なかった。
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