11 / 71
2章 二人の悪人
2、隊長、レナは特別ですよ
しおりを挟むいや、どちらかというとその前から起きており、議論に加わるタイミングを伺っていたというべきか。
彼女は胸部にはプレートをしているものの、あとはガントレットすらつけていない。超近距離の白兵戦になった時点で負けと考えているのだろう。
もともと小柄なレナの思想は当たらないことにあり、戦場でも三秒以上止まらないことを是としているようだ。
本人から一々装備の意図を聞くことはないが、シノはそういった意図を組んで、彼女の度を越した軽装を黙認していた。
得物も取り回しの悪い歩兵銃を嫌い、軽量な二丁拳銃をホルスターに収めている。
髪型も動きやすさを重視してか、少年と見間違えるほど短いボブで、ミニスカートは風紀的に見て短すぎる。
「あるだけマシ」と言ったところか。
薄いストッキングから透ける生足は棒のように貧相だが、本人はそれを誇りにこそすれ、引け目に感じることはないだろう。
体がより小さいことは戦場において有利だと信じているのだ。
「私もレナちゃんの意見に賛成ね」
ジョーはレナと視線をかわして笑う。
「さすがジョー様! こんな鉄の塊を背負ってるような奴はあてになりませんよね。いざとなったら、ジョー様はレナがお守りしますに!」
レナは顔をぱーっと明るくさせ、後ろの座席からジョーの腕に手を添えた。
これもレナの身分を考えれば、恐れ多い振る舞いだが、シノは敢えて咎めようとはしなかった。
「そりゃ、前線を張る人間は動きを重視するのも理屈だが、ジョー様はそうじゃねえ。後衛でとにかく死なないことが大事なんだから……」
「ううん、今回は戦争ではないわ。盗賊狩りに前衛も後衛もないわ」
「そうは言いますけどね、ジョー様にもしものことがあったら……」
「もしものことがあったらなんだっていうの? 威力騎馬隊の指揮官はシノでしょう?」
「いや、まあそうですけど……」
「私はあくまでベンチョ地方長官の要請を受けて、トウセキ討伐隊を組織しただけ」
「ですから、本来であればお城で紅茶でも飲んで報告がくるのを待ってればよろしいんですよ」
「それでは騎士道に反するわ。特に、トウセキは五度も討伐隊を派遣しながらも、五度も失敗に終わっている」
「正式には四度。五回目は確かに捕まえて、奴はベルナードで裁判を受けるはずだった」
シノが訂正した。
「どっちにしても、今回で終わりだに。デュアメルも今回は戦争じゃないんだから、もう少し装備を軽くするに」
レナがそう言ってデュアメルの鉄兜を脱がせようとしてくる。
「やめろ」
「ココ・デュアメルは卒業。今日からはサイコロ・デュアメルって呼んであげるに」
「おい、今、さりげなく俺の顔が四角いって馬鹿にしたな? やめろ、マジでやめろって」
「大人しくするに」
「隊長、やめさせてください」
デュアメルはアイアンヘルムを手で押さえながら言った。
「確かにその装備は少し重すぎるようだな」
シノは表情なく言った。
「隊長、レナは特別ですよ。それに俺の馬はこれくらいの重さじゃへばらねえ。お前らの馬よりも長く走ってみせますよ」
「どうだかな」
シノはデュアメルのセリフを適当に流して、会話を終えた。
ガタッ、ガタッ、ガタッ、ガタッ。
勢いよく走る列車の音に加えて、すきま風が悲鳴のような音を立てる。
シノは立ち上がると車両後部まで行き、窓を開けて首を突き出した。
東の空がぼんやりと白んでくるのが見えた。
「ふああ、よく寝た。隊長代わりましょうか?」
車両後部で眠っていた隊員が起き出してきて言った。
シノが率いる威力騎馬隊第七部隊は総勢十六人からなる精鋭集団だったが、個人的な信条を持ち出して勝手な恰好をしているのは、デュアメルとレナだけで、残りのメンバーはシノと似た格好をしていた。マントと腕の記章は指揮官ゆえのものだが、それ以外は第七隊の標準装備だ。
「いや、それより全員を起こすんだ。来るぞ」
シノはのぞき窓から目を離すと、全員を静かに起こして、持ち場に待機させた。
「何か見えたに?」
レナがシノの顔を見上げた。
「何が見えたというわけでもないが……恐らく……始まる」
隙間から流れ込む風の音か、匂いか、湿気か。あるいは一帯にいる者の動きが、音にならない微妙な空気の振動となって皮膚をかすめたのか。
シノ自身、上手く説明することができなかったが、あの日に感じた嫌な予感と全く同質のものを感じ取っていた。
そのときだった。
ギイイイイイイッッッ。
けたたましい音が鳴り響いた。列車が急停止し、シノは前の席に強く押し付けられた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる