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3章 荒野の麗人
9、三人目の囚人
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「あれ? お知り合いでしたか? 安心してください。今は傷の手当てをして医者の家で眠っていますよ。もっとも助かるかどうかは、かなり微妙みたいですけど」
「間違いないんだな? この男がアンナの自殺を止めることすらせず、見ていたんだな?」
「ええ、そこの職人が見つけて、医者の家まで運び込んだ次第です。お知り合いならなおのこと許せないでしょう。ぜひ、刑の執行をお許しください。僕たちは善良な市民としては、この男に落とし前をつけさせないと、あとでどんな仕打ちを受けるか分からない。僕たちは、トウセキに忠誠を示すためにもこの男を殺さないといけないんだ」
ユーゴはオウカンの言い分に酷く腹を立てた。まるで、トウセキに怯える市民の立場から、刑を執行したがっているような言い草だ。
誰よりも忠実な部下であり、トウセキからアンナを貰い受けるとまで言っていたくせに。
「トウセキは捕まえたわ。その点については安心しなさい」
「いいえ、トウセキ様はきっと戻ってこられる。もし、この男を無罪放免にしたと知られたら、この町は火の海となるでしょう」
「どうする? シノ」
ジョーは自分一人ではユーゴの処遇を決めかねているようだった。
確かに、自殺はこの国では大罪だ。しかし、自殺を止めようともせずに見ていた者がどんな罪に問えるか、ジョーは知らない。
それに群盗は常に町を襲う口実を探している。この件に関して落とし前をつけなければ、何かと理由をつけて町を襲うのは目に見えている。
ジョーがシノの意向を聞く理由はもう一つあった。
自殺したのがアンナとなれば、シノの意向を抜きにして片をつけることはできなかったのだろう。
ユーゴはシノが何を言いだすか、びくびくしながら見守っていた。
「そこの男が言った通りでしょう。どんな理由があったか知らないが、この男は大罪を犯したことには違いない。であれば、なんらかの罰が与えられるのが当然だ。そうでなきゃ群盗どもも納得しないだろう」
「おっしゃる通りです。こちらのお方は話が分かるようだ」
「ただし」
シノはオウカンを戒めるように言った。
「ただし、今ここで絞首刑にするのは筋にあわない。正しい手続きを踏むためにも、この男は俺たちがベルナードに連れて行こう。ベルナードで裁判を受けさせる」
「そんな、兵隊さんの手を煩わせるわけにはいきません」
「なに、すでに囚人二人を護送することが決まっている。二人も三人も変わらんさ」
「本当にこの男を連れて行かれるおつもりで?」
「ああ、そんなに心配ならベルナードまで傍聴しに来ると良い。さぞ興味深い裁判だろうな」
「結構、僕は忙しいので」
オウカンはいら立ちを募らせていたが、それを完全に抑制していた。
落ち着いた口ぶりで、声は冷静そのものだった。彼の蛆虫を見るような眼差しが印象的で、ユーゴはあとになって何度もその表情を思い出した。
「シノ、じゃあいいわね?」
「ええ」
ジョーはユーゴのもとに歩み寄ると、首にかかった縄を解き、彼を解放した。
「もう心配いらないわ。怖かったでしょう?」
ジョーはユーゴを抱きしめ、彼の頭を優しく撫でた。
「ジョー様、その男は囚人だ。過度に甘やかしてはなりません」
「シノ、でもこの子はきっと……」
「ジョー様、どんな理由があってもです」
「分かったわ、シノ」
ジョーは哀れむような視線をユーゴに送ると「行きましょう」と冷たい声で言った。
「間違いないんだな? この男がアンナの自殺を止めることすらせず、見ていたんだな?」
「ええ、そこの職人が見つけて、医者の家まで運び込んだ次第です。お知り合いならなおのこと許せないでしょう。ぜひ、刑の執行をお許しください。僕たちは善良な市民としては、この男に落とし前をつけさせないと、あとでどんな仕打ちを受けるか分からない。僕たちは、トウセキに忠誠を示すためにもこの男を殺さないといけないんだ」
ユーゴはオウカンの言い分に酷く腹を立てた。まるで、トウセキに怯える市民の立場から、刑を執行したがっているような言い草だ。
誰よりも忠実な部下であり、トウセキからアンナを貰い受けるとまで言っていたくせに。
「トウセキは捕まえたわ。その点については安心しなさい」
「いいえ、トウセキ様はきっと戻ってこられる。もし、この男を無罪放免にしたと知られたら、この町は火の海となるでしょう」
「どうする? シノ」
ジョーは自分一人ではユーゴの処遇を決めかねているようだった。
確かに、自殺はこの国では大罪だ。しかし、自殺を止めようともせずに見ていた者がどんな罪に問えるか、ジョーは知らない。
それに群盗は常に町を襲う口実を探している。この件に関して落とし前をつけなければ、何かと理由をつけて町を襲うのは目に見えている。
ジョーがシノの意向を聞く理由はもう一つあった。
自殺したのがアンナとなれば、シノの意向を抜きにして片をつけることはできなかったのだろう。
ユーゴはシノが何を言いだすか、びくびくしながら見守っていた。
「そこの男が言った通りでしょう。どんな理由があったか知らないが、この男は大罪を犯したことには違いない。であれば、なんらかの罰が与えられるのが当然だ。そうでなきゃ群盗どもも納得しないだろう」
「おっしゃる通りです。こちらのお方は話が分かるようだ」
「ただし」
シノはオウカンを戒めるように言った。
「ただし、今ここで絞首刑にするのは筋にあわない。正しい手続きを踏むためにも、この男は俺たちがベルナードに連れて行こう。ベルナードで裁判を受けさせる」
「そんな、兵隊さんの手を煩わせるわけにはいきません」
「なに、すでに囚人二人を護送することが決まっている。二人も三人も変わらんさ」
「本当にこの男を連れて行かれるおつもりで?」
「ああ、そんなに心配ならベルナードまで傍聴しに来ると良い。さぞ興味深い裁判だろうな」
「結構、僕は忙しいので」
オウカンはいら立ちを募らせていたが、それを完全に抑制していた。
落ち着いた口ぶりで、声は冷静そのものだった。彼の蛆虫を見るような眼差しが印象的で、ユーゴはあとになって何度もその表情を思い出した。
「シノ、じゃあいいわね?」
「ええ」
ジョーはユーゴのもとに歩み寄ると、首にかかった縄を解き、彼を解放した。
「もう心配いらないわ。怖かったでしょう?」
ジョーはユーゴを抱きしめ、彼の頭を優しく撫でた。
「ジョー様、その男は囚人だ。過度に甘やかしてはなりません」
「シノ、でもこの子はきっと……」
「ジョー様、どんな理由があってもです」
「分かったわ、シノ」
ジョーは哀れむような視線をユーゴに送ると「行きましょう」と冷たい声で言った。
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