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5章 運ばれゆく罪人
5、緊急事態
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「ん、もうこんな時間か……」
雑談にかまけている間に、かなりの時間が立っていたようだ。
デュアメルは懐中時計を見て驚いた。
「何時だ?」
「もう六時ですよ」
「にしては……ちょっと進みが遅いんじゃない?」
ジョーは外を眺めて言った。
「確かに、来るときにのった列車はもっと早く走ってたような……それにさっきから全然景色が変わらないに……」
レナはジョーと顔を寄せるようにして窓に張り付いた。
ベルナードまではどれだけ急ごうと一晩はかかるため、列車の速度が少しくらい遅くてもどうということはない。 朝一番につくのも、十時過ぎにつくのも変わらない。保安部隊の詰め所の連中からすれば、遅い方がありがたいくらいだろう。
それでも隊員たちはよくない兆候を感じ取って、表情を引き締め始めた。
確かに、まだこのあたりか……と、ユーゴは思った。
イーシャからベルナードに向かうのであれば、砂と岩だけの風景はやがて森や草原に変わり、それに伴って民家の数も増えてくるものだ。
そして、ベルナードにつく頃には、森や草原も消え、ずらりとレンガ造りの建物が続く都市へと変わる。
だが、まだ荒野の中にいるということはアヴィリオンからもそう遠くへは行けていないことになる。
流石に遅いか、と思ったそのとき、列車は体感でもわかるほど、速度を落とした。
ガタッ、ガタッ、ガタッ、ガタッ……ガタッ……ガタッ……ガタッ……。
車輪の回転によっておこる振動が、間延びし始めた。
「なによ、これ。こんなのじゃ走るのと変わらないじゃない」
ジョーが言った。
「何が起こったに?」
これはさすがに遅すぎた。この速度なら、一晩どころか三日かかってもベルナードにつくことはないだろう。
退屈のあまり眠っていたトウセキとユズキエルも、脱走の機会を嗅ぎ取ったのか、目を開け、抜け目なく周囲を伺い始める。
「ちょっと運転室を覗いてこよう。ジョー、後ろの兵士に警戒態勢を取るように伝えてほしい。レナは囚人の見張りを頼む。デュアメル、俺と一緒に来てくれ」
シノは囚人用車両のドアを開けると、周囲の様子を伺った。
日はかなり落ちているが、藍色の空はかろうじて目視を可能にしている。
目を凝らしても、周囲に人の姿はない。
それらしい音もせず、全く気配を感じないのがかえって不気味だった。
群盗が馬で追ってきたのだとしたら、もう少し音がしてもいいはずだ。
というか、彼らが本当に列車に追いつくことは可能なんだろうか、と考え、それ自体はあり得ると思った。
レールは山や森など、障害物を迂回するように敷かれている。
ベルナードまで最短のルートを走っているわけではなかった。
それに対して馬は自由に進路を取ることができる。
群盗らが森を突っ切るルートや、山の洞窟を抜けるルートを知っていて、馬を潰すつもりで遮二無二走らせれば、列車に追いつけることも可能だろう。
それにさっきからこの列車は明らかに速度を落としている。
今では列車の横を並走できるほどだ。
シノは周囲の安全を確認すると、列車の影を進んで機関車両を横切った。機関車両では魔道機関が紫色の煙を吐き、車両前部にいる火夫が、スコップに魔晶石を貯めながら気難しい顔をしていた。
「おい、どうしたんだ?」
シノは火夫に向かって言った。
「ああ、兵隊さん……」
「全員無事か? 運転室の様子は?」
「いいえ、別に大したことはないんですがね……」
火夫はそういって言葉を濁した。
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