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5章 運ばれゆく罪人
15、ユーゴの頼み
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「なんだ?」
「俺はもしかしたら死刑になるかもしれないんだ。この国では自殺は大罪だからね。自殺する人間を黙って見てたわけだから。状況が状況だから、罪が軽くなるようって取り計らってくれるってジョー様は言うけど、最後は判事の一存だろ。死刑もありうるんだ」
「それがどうかしたか?」
「ユズキエルはドラゴンだから、その額の銃弾さえ取り除けば後は何とでもなるんだろう? だったら、俺が吊るし首になる前に、アヴィリオンの医者の所までひとっ飛びして、自殺しようとした女が助かったかどうか聞いてきてほしいんだ」
「なんであたしにそんなこと頼むんだ?」
「ユズキエルしか頼める人がいないから。シノはあんな感じだし」
ユーゴはつづけた。
「それに俺は正直、きみがどうなろうとあまり興味がないんだ。ドラゴンはドラゴンだろう? 人間の都合で悪者にされてるけど、そっちにはそっちの言い分があるんだろ。だから、俺は君が脱走しようとしても邪魔しない。なんなら手伝ってあげるよ。トウセキが逃げ出そうとしたら、なんとしてでも阻止するつもりだけど」
「なるほど。脱走を手伝うから、逃げ出せたときは頼みを聞いてほしいと」
「まあ、そうだね」
「そういうことなら構わないよ。ただし、交換条件だ」
「なんだい?」
「さっき見えた、あんたの胸の石があるだろう?」
「それがどうしたんだい? くれって言われてもあげられないな……。皮膚と完全に癒着してしまってるから……」
「ほしがるもんかい。ただ、どうして石なんか身体にくっつくことになったんだい? そのいきさつに興味を持ってね……」
「ああ……、それは石をあげるよりもずっと難しいな……。実を言うと、人に話したくなるような話じゃないんだ。誰にも見せたくもない、屈辱的な話なんだ」
ユーゴは顔をしかめた。
「そう言われると余計に気になるじゃないか」
「必ず彼女の無事を確かめるって約束してくれるかい? 俺がもし死刑になったら、絞首台の足場が落ちる前に、必ず彼女がどうなったか伝えにくるって」
「分かったよ。絶対に聞いてきてやる」
ユーゴは満足そうに頷いた
「それなら話すよ。この傷は……」
ユーゴは肉体にメノウが埋没した経緯について話し始めた。
村が群盗に襲われたこと。
その群盗の頭領に好きだった少女が連れ去られたこと。
群盗のボスを殺そうと家を飛び出したこと。
村の男たちが群盗にすべて奪われていながら、報復を恐れてユーゴの暴走を止めようとしたこと。
十人がかりで抑えつけられたときに、地面の石が胸にめり込んだこと。
ユーゴは恥ずかしそうに顔を赤らめ、ときおり決まり悪そうに言葉を詰まらせた。
恋心を打ち明けるときは瞳を揺らし、無鉄砲な自分については自嘲気味に笑った。
そして、自分の無力を恥じ入り、卑屈な村人にさえガキ呼ばわりされたところでは、すっかり意気消沈していた。
ユズキエルは静かに聞いていたが、ユーゴがあまりにも恥辱に耐えながら話すので、最後には気の毒になって彼の言葉を遮った。
「もういいよ、少年」
ユズキエルはユーゴの頭に手を置いた。
「え……? いや、でも約束が……」
「良いんだ、大体わかったから」
「そ、そうかい?」
「だから、もう話さなくていい」
「分かった。じゃあ話すのはやめにするよ」
ユーゴは力なく笑って、俯いてしまった。
そのまましばらくユーゴは口をきかなかった。
「俺はもしかしたら死刑になるかもしれないんだ。この国では自殺は大罪だからね。自殺する人間を黙って見てたわけだから。状況が状況だから、罪が軽くなるようって取り計らってくれるってジョー様は言うけど、最後は判事の一存だろ。死刑もありうるんだ」
「それがどうかしたか?」
「ユズキエルはドラゴンだから、その額の銃弾さえ取り除けば後は何とでもなるんだろう? だったら、俺が吊るし首になる前に、アヴィリオンの医者の所までひとっ飛びして、自殺しようとした女が助かったかどうか聞いてきてほしいんだ」
「なんであたしにそんなこと頼むんだ?」
「ユズキエルしか頼める人がいないから。シノはあんな感じだし」
ユーゴはつづけた。
「それに俺は正直、きみがどうなろうとあまり興味がないんだ。ドラゴンはドラゴンだろう? 人間の都合で悪者にされてるけど、そっちにはそっちの言い分があるんだろ。だから、俺は君が脱走しようとしても邪魔しない。なんなら手伝ってあげるよ。トウセキが逃げ出そうとしたら、なんとしてでも阻止するつもりだけど」
「なるほど。脱走を手伝うから、逃げ出せたときは頼みを聞いてほしいと」
「まあ、そうだね」
「そういうことなら構わないよ。ただし、交換条件だ」
「なんだい?」
「さっき見えた、あんたの胸の石があるだろう?」
「それがどうしたんだい? くれって言われてもあげられないな……。皮膚と完全に癒着してしまってるから……」
「ほしがるもんかい。ただ、どうして石なんか身体にくっつくことになったんだい? そのいきさつに興味を持ってね……」
「ああ……、それは石をあげるよりもずっと難しいな……。実を言うと、人に話したくなるような話じゃないんだ。誰にも見せたくもない、屈辱的な話なんだ」
ユーゴは顔をしかめた。
「そう言われると余計に気になるじゃないか」
「必ず彼女の無事を確かめるって約束してくれるかい? 俺がもし死刑になったら、絞首台の足場が落ちる前に、必ず彼女がどうなったか伝えにくるって」
「分かったよ。絶対に聞いてきてやる」
ユーゴは満足そうに頷いた
「それなら話すよ。この傷は……」
ユーゴは肉体にメノウが埋没した経緯について話し始めた。
村が群盗に襲われたこと。
その群盗の頭領に好きだった少女が連れ去られたこと。
群盗のボスを殺そうと家を飛び出したこと。
村の男たちが群盗にすべて奪われていながら、報復を恐れてユーゴの暴走を止めようとしたこと。
十人がかりで抑えつけられたときに、地面の石が胸にめり込んだこと。
ユーゴは恥ずかしそうに顔を赤らめ、ときおり決まり悪そうに言葉を詰まらせた。
恋心を打ち明けるときは瞳を揺らし、無鉄砲な自分については自嘲気味に笑った。
そして、自分の無力を恥じ入り、卑屈な村人にさえガキ呼ばわりされたところでは、すっかり意気消沈していた。
ユズキエルは静かに聞いていたが、ユーゴがあまりにも恥辱に耐えながら話すので、最後には気の毒になって彼の言葉を遮った。
「もういいよ、少年」
ユズキエルはユーゴの頭に手を置いた。
「え……? いや、でも約束が……」
「良いんだ、大体わかったから」
「そ、そうかい?」
「だから、もう話さなくていい」
「分かった。じゃあ話すのはやめにするよ」
ユーゴは力なく笑って、俯いてしまった。
そのまましばらくユーゴは口をきかなかった。
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