異世界列車囚人輸送

先川(あくと)

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6章 湧き出る盗人

9、悪運

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「うっ」
 シノは呻きながらも、次第に濃くなる影に向かって発砲した。
 煙の中から霧のような血しぶきが飛んできて、シノの顔を染める。
 ピュンッ、ピュンッ――
 続けざまに銃弾を浴び、シノの身体が泳いだ。

 それでもシノは銃弾の飛んできた方向に素早く反撃した。

「ぎぇっ……」
 群盗の呻きはすぐに雄叫びにかき消されてしまう。
「うおおおおおおおおおおおお」
 雄叫びはすぐ目の前まで近づき、シノは反射的に銃口を向けた。
 一発、二発、と射撃と装填を繰り返す。
 腹部に焦げ付くような熱が広がっており、シノはすでに限界だった。

 しかし、群盗は次から次へと突撃を繰り返し、煙の中から姿を現す。

「くはっ――」

 シノはもう何発目かになる銃弾を受けて、殴られたように仰け反った。
 手に力が入らない。
 指に力が入らない。
 自分が銃を手放さないでいるのが不思議なくらいだった。
 それでも、もはや引き金をひくことはできなかった。 
 シノは死を覚悟した。

 反撃をする余裕はすでになく、じきに群盗が一人、また一人と煙の中から姿を現すだろう。
 それは三人、四人と、溢れるように増え、やがてバリケードを超えてくる。
 シノはその光景を確信とともに思い描くことができた。

 ここで終わりか――。

 シノは煙の中の影をじっと見つめた。
 しかし、その影はまったく微動だにしない。

 朦朧とする意識の中で煙に目をやると、影が一つ、また一つと薄くなっていくのが分かった。

「おい!!」

 ダンの苛立った声が聞こえたかと思うと、急速にその影が薄くなった。

「逃げるんじゃねえ!! 逃げるものは俺が殺すぞ!!」

「銃を振り回したってどうにもなりませんや! これ以上は進めません!」

 ダンは必死に声を張り上げるが、群盗たちは聞く耳を持たずに撤退していく。

「逃げるな!! 逃げるんじゃねえ!!」

「撤退しましょう。ダン様も今のうちに。どっちにしろみんな逃げています」

「チッ……まあ良い。馬を調達して出直すとしよう。行くぞ」

 ダンはそう言って、寝台車を後にした。

 列車の中は一変して静かになった。

 シノらはツキに見放されていたわけではなかった。群盗が撤退したと同時に、燃料切れを起こした列車が速度を緩めた。

 もし、燃料切れが撤退よりも早かったら……。

「悪運とはこのことだな……」

 シノは痛みをこらえ、自虐的に呟いた。
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