異世界列車囚人輸送

先川(あくと)

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最終章 やめられない旅人

7、大地とドラゴン

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「それは、龍の魂を封印し、龍のエネルギーを取り出すことができるから……だろ?」

 ユズキエルは一つ頷き、その石と龍の関係を話し始めた。

「大地と龍は深い関係を持っていてな……山々に流れる龍脈という言葉も……全く無関係じゃない。龍は大地より生ずる。その中でも特に龍に干渉することができるのが、龍鉱石だ。これはドラゴンの意思と無関係に、その魂を内側に引きずり込んでしまう。だが、龍の魂を宿せるのは、その石だけじゃない。あたしがそれを許せば、この中にだって、魂を宿すことができるのさ」

 ユズキエルは言って、胸のメノウを指ではじいた。

「何が言いたいんだよ……」
「あたしに、その身体を預けてみないか? あたしの身体はもう完全に壊れちゃったんでね……それに、角に銃弾を撃ち込まれて、力が出ないんだよ」

「君に身体を預ける?」

「警戒しなくていい。あんたの精神までむしばむつもりはないんだ。あんたの場合は、その石が身体と完全に癒着している。魂をそこに宿しつつ、肉体まで手に入れられるってわけさ」

「そうすれば……君は生きながらえることができるのかい?」

「あのいけすかないケダモノを倒す力も手に入るさ」
 ユーゴは笑った。
 ドラゴンに身体をくれてやるなんて悪い冗談だと思った。
 彼女は角を折られ、力のほとんどを発揮できない状態でいる。

 数々の修道院を焼き尽くしてきた人類の敵をそこまで追い詰めた。

 そのドラゴンに再び力を与えてやろうというのだ。

 それでもトウセキを倒せるならためらう理由はなかった。

「やってくれ、ユズキエル。あるだけで何の役にも立たなくて忌々しいくらいだったんだ」
「分かった。それじゃあ、楽にして、あまり抵抗せんでくれよ……」

 ユーゴがそっと目を閉じ、ユズキエルに身を任せたそのときだった。
 胸のメノウが強く光り、ユーゴはエネルギーの奔流を感じた。
 身体がそれを拒み、激しくりきんだ。
 しかし、ユズキエルの魂はそれをこじ開けて、奥へ奥へと侵入してくる。

「くっ……ああっ……」

 激しい痛みに身心を焼かれた。

 ユズキエルがユーゴの自我の一部を破壊しながら進んでいくのが分かった。あまりに悲惨な出来事に遭遇したときのように、茫然自失となり、心が白くなっていく。
 その空白に、ユズキエルの声が響いてくる。

(あんた、意外と我が強いんだね……もっと、楽にいけると思ったが)

「ユズキエルが強引なだけだよ……、なんかすごくジンジンするんだけど……」

 未だに痛みが尾を引いていた。

(はは……力が湧いてくる証拠だよ)

「成功か?」

(ああ、体が回復していくのが分かるだろう)

 ユーゴは手のひらを太陽にかざし、自分の身体的な変化を確認した。
 体表は黒い鱗に覆われ、濡れたように輝いていた。
 くし形に伸びた爪は氷のように冷たく、垂れ下がる曲牙は三日月のように凛としていた。

 自分自身の顔が見られないのは幸いだったろう。

 額から伸びた角、突き出した顎は、もはやユーゴの面影をわずかにとどめているに過ぎなかった。

「もう動けるのか?」

(ああ、この身体があれば、あたしは完璧な龍になる)

 ユズキエルは銀の銃弾によって、角の付け根を撃ち抜かれていた。

 ユーゴの身体に憑依したことによって、その封印から完全に解放されていた。

「あいつを倒すことも?」

(もちろん。行くよ)

 どちらの意思かはわからなかった。

 恐らくは両方の意思だったのだろう。

 気が付くと地面を蹴っていた。
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