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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊
44話 クジ引き国王と謁見する
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「はい」
「……………………そう。それで六世は誰が?」
「えーっと、フリアーナ五世の弟です」
「弟は分かってるわよ。何番目?」
ミタカさんが苛ついた口調で言う。俺は慌ててミーノを見た。
「えーっと、フリアーナ六世は一番下の弟さんです。末っ子の物語を書いてた」
「あのろくでなしが国王に?」
ミタカさんが眉間にしわを作った。
「はい。フリアーナ五世はみんなが納得するために、クジ引きで国王を決めるようにって」
ミーノが説明した。
「そう……」
ミタカさんの表情は硬かった。
ミタカさんはフリアーナ五世と恋愛関係にあったという噂だ。先入観のせいかもしれないが、死を悼む彼女の姿は恋人のそれのようにも見えた。
「俺たちは、あなたをフリアーナ六世のところまで連れてくるようにと」
「行かない」
ミタカさんはきっぱりと言った。
「あのろくでなしが考えそうなことくらい分かるわ。私の赤ちゃんが国王の血を受け継いでいるか、確認するつもりでしょう?」
「おそらくはそうだと……」
「違うと言っておいて。私の赤ちゃんは国王の子どもじゃないわ。それだけ分かればじゅうぶんでしょう? 私はもう王都には戻りたくないの」
「そうですか……」
「悪いわね」
ミタカさんとのあいだには、緊張感が漂っていた。ただ初対面というだけではない。彼女は俺たちを拒絶していた。
「ところでミタカさんは、どうしてこの家のトイレにいたんですか?」
俺は会話を途切れさせまいと聞いてみた。
「王都を離れて霊力が強まる方へと歩いてたの。まあ、足はないから、この場合は滑ってきたわけだけど。この一帯はかなり霊力が強いのね。中でも一番強いのがここ。この家のトイレは地面から水が湧くみたいに、じゃんじゃん霊力が湧いてくるの。」
「はあ、それで順番待ちを……」
「ええ、彼女も常連の一人よ。もういい? そろそろ私寝たいんだけれど」
「あ、はい」
「じゃあ、お疲れさま。おやすみなさい」
ミタカさんはそう言って、すーっと消えていった。
「ダメだ」
フリアーナ六世は、無表情で言った。痩せて、骨ばった顔がいかにも神経質に見える。
ミーノの言動や、ミタカさんのろくでなし呼ばわりを聞いて、ちゃらんぽらんな男を想像していたが、フリアーナ六世はやつれた文豪を思わせる静かな人だった。
「ダメなんですか?」
「私は、あのメイドの幽霊を連れてこいと言ったのだ。女に話を聞いて来いとは言ってない」
「赤ちゃんの血統を確認することが目的ではなかったんですか?」
俺が食い下がってるのを見て、隣で跪くコフネさんが頭を抱えている。
一介の冒険者が国王と謁見できるわけもなく、俺はコフネさんに仲介を頼んだ。
コフネさんとは、「ジェタクの果印」を見つけたときに知り合ったのだが、国王との面会を取り付けることもできるみたいだ。さすが、王立魔法図書館の特別顧問だ。
「全く。国民の噂には手が付けられないな……。その通りだよ。私は跡継ぎ争いを未然に防ぐためにも、赤ん坊の出生を明らかにする必要がある。いくらメイドの子どもとは言え、兄の血を継いでいれば、国王になるかもしれん」
「ならいいじゃないですか。国王の子どもじゃないってミタカさんが言ってるんですから。本人が言ってるなら確実でしょう?」
「バカめ。わが子の人生が、他人の思惑に振り回されるかもしれんのだぞ? 母親ならそれくらいの嘘は言うだろう」
フリアーナ六世は切れ長の目をさらに細めて言った。
「それはそうかもしれませんけど……じゃあ、ここに連れてきてどうしようって言うんです?」
「言うまでもないことだ。デュオス神とアオイ女神。この二柱の神に真実を明かしてもらう」
「……………………そう。それで六世は誰が?」
「えーっと、フリアーナ五世の弟です」
「弟は分かってるわよ。何番目?」
ミタカさんが苛ついた口調で言う。俺は慌ててミーノを見た。
「えーっと、フリアーナ六世は一番下の弟さんです。末っ子の物語を書いてた」
「あのろくでなしが国王に?」
ミタカさんが眉間にしわを作った。
「はい。フリアーナ五世はみんなが納得するために、クジ引きで国王を決めるようにって」
ミーノが説明した。
「そう……」
ミタカさんの表情は硬かった。
ミタカさんはフリアーナ五世と恋愛関係にあったという噂だ。先入観のせいかもしれないが、死を悼む彼女の姿は恋人のそれのようにも見えた。
「俺たちは、あなたをフリアーナ六世のところまで連れてくるようにと」
「行かない」
ミタカさんはきっぱりと言った。
「あのろくでなしが考えそうなことくらい分かるわ。私の赤ちゃんが国王の血を受け継いでいるか、確認するつもりでしょう?」
「おそらくはそうだと……」
「違うと言っておいて。私の赤ちゃんは国王の子どもじゃないわ。それだけ分かればじゅうぶんでしょう? 私はもう王都には戻りたくないの」
「そうですか……」
「悪いわね」
ミタカさんとのあいだには、緊張感が漂っていた。ただ初対面というだけではない。彼女は俺たちを拒絶していた。
「ところでミタカさんは、どうしてこの家のトイレにいたんですか?」
俺は会話を途切れさせまいと聞いてみた。
「王都を離れて霊力が強まる方へと歩いてたの。まあ、足はないから、この場合は滑ってきたわけだけど。この一帯はかなり霊力が強いのね。中でも一番強いのがここ。この家のトイレは地面から水が湧くみたいに、じゃんじゃん霊力が湧いてくるの。」
「はあ、それで順番待ちを……」
「ええ、彼女も常連の一人よ。もういい? そろそろ私寝たいんだけれど」
「あ、はい」
「じゃあ、お疲れさま。おやすみなさい」
ミタカさんはそう言って、すーっと消えていった。
「ダメだ」
フリアーナ六世は、無表情で言った。痩せて、骨ばった顔がいかにも神経質に見える。
ミーノの言動や、ミタカさんのろくでなし呼ばわりを聞いて、ちゃらんぽらんな男を想像していたが、フリアーナ六世はやつれた文豪を思わせる静かな人だった。
「ダメなんですか?」
「私は、あのメイドの幽霊を連れてこいと言ったのだ。女に話を聞いて来いとは言ってない」
「赤ちゃんの血統を確認することが目的ではなかったんですか?」
俺が食い下がってるのを見て、隣で跪くコフネさんが頭を抱えている。
一介の冒険者が国王と謁見できるわけもなく、俺はコフネさんに仲介を頼んだ。
コフネさんとは、「ジェタクの果印」を見つけたときに知り合ったのだが、国王との面会を取り付けることもできるみたいだ。さすが、王立魔法図書館の特別顧問だ。
「全く。国民の噂には手が付けられないな……。その通りだよ。私は跡継ぎ争いを未然に防ぐためにも、赤ん坊の出生を明らかにする必要がある。いくらメイドの子どもとは言え、兄の血を継いでいれば、国王になるかもしれん」
「ならいいじゃないですか。国王の子どもじゃないってミタカさんが言ってるんですから。本人が言ってるなら確実でしょう?」
「バカめ。わが子の人生が、他人の思惑に振り回されるかもしれんのだぞ? 母親ならそれくらいの嘘は言うだろう」
フリアーナ六世は切れ長の目をさらに細めて言った。
「それはそうかもしれませんけど……じゃあ、ここに連れてきてどうしようって言うんです?」
「言うまでもないことだ。デュオス神とアオイ女神。この二柱の神に真実を明かしてもらう」
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